人事評価とタレントマネジメントの違い~第3回「昇進とキャリアアップの違い」
「タレントマネジメント」という言葉が最近トレンドとなっていますが、その意味を正しく把握している方は意外に少ないのではないでしょうか。
その原因は、以前からある「人事評価」との違いがきちんと理解できるような情報が提供されていないことが原因のように思われます。
そこで、この連載では、「人事評価とタレントマネジメントの違い」について、4つのテーマに沿って、説明したいと思います。
第3回のテーマは、「昇進とキャリアアップの違い」です。
昇進とキャリアアップは別物
昇進とキャリアアップは、似て非なるものといえます。これまでは、昇進は会社が自社組織の都合に沿って考えるもので、キャリアアップは個人が転職も含めて自己都合で考えるものと考えられてきました。
しかし、最近では、会社が優秀な社員を確保するための条件として、会社から社員に対してキャリアプランを提示し、昇進とは別の仕組みを作ってキャリアアップの道筋を用意する必要が出てきています。
これを人事業務の観点から考えると、人事評価で決定するのは昇進だけであって、キャリアプランを管理し、キャリアアップを判定するためにはタレントマネジメントが必要ということになります。
伝統的な昇進の基準は組織と給与体系に依存しますので、画一的なものにならざるを得ませんでしたし、多くの企業では、昇進につれて、より高い管理能力を求めるのが一般的でした。しかし、キャリアプランを管理し、キャリアアップを判定するためには個々の社員の志向を反映した非画一的なものである必要があります。
しかし、社員の希望を一方的に取り入れても、それが会社の戦略や目標に貢献するものにはなりません。従って、キャリアプランを管理するための前提条件として、会社の戦略や目標達成に必要な様々な役割を想定した会社の求める人材像の定義が必要となります。
スキルナビでの人材像の定義
従って、タレントマネジメント業務を支援する「タレントマネジメントシステム」には、会社の求める人材像を定義し、それを標準化されたスキル定義にマッピングすることでキャリアアップを測定可能にする機能が必要となります。
クラウド型タレントマネジメントシステムスキルナビの場合、会社の求める人財像を人材モデル(レベル判定枠)として定義します。
人材モデルには、その理想的な人材像に必要なタスクが関連付けられ、さらに個々のタスクの要求レベルが設定されます。
さらに、人材モデル自体にレベルを作成し、それぞれのレベルに対して要求される異なったタスクレベルを設定することもできます。
以下の図は、スキルナビで営業職の人材モデルに沿った判定結果を表示する画面の例です。この例では、人材モデルにおける現在のレベルが「E3」と判定されおり、次の目標とすべきレベルが「M1」であることがわかります。
スキルナビでは、人材モデル(のレベル)とタスク(のレベル)が関連付けられていますので、現在の人材モデル評価において目標とすべき上位のレベルに対して、具体的に何が足りないのかを可視化することができます。
以下の2つの図は、スキルナビで営業職の上位レベル「M1」に対して、タスクの観点から何が足りないかを達成度数値やレーダーチャートで表示した画面の例です。この例では、「目標管理」タスクだけが人材モデル「M1」レベルに要求されるレベルに到達していないことがわかります。
このように、会社や部門が求める人財像が可視化されることで、社員自身が、必要とされる人材に近づくために、どのスキルを強化すれば良いかが明確になり、モチベーションの向上に繋がります。
また、人事・研修担当部門にとっても、会社や部門の求める人財と社員の能力のギャップが可視化され、キャリアパス(ジョブ・ローテーション)、育成ポイントが明確になり、効果的な研修プログラムが実施できるという効果があります。
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