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評価制度のトレンドを解説!メリット・デメリット、企業事例、注意点は?

評価制度のトレンド

昨今、人事による評価制度は次第に変化しており、さまざまなトレンド傾向が現れています。適切な評価制度を取り入れることができれば、優秀な人材の離職を防いだり、新たな人材獲得の競争力を高められるといったメリットがあります。また流行の評価制度を取り入れた企業事例についてもご紹介します。

⇒評価制度について詳しくしりたい方はこちら

評価制度の流行の特徴

『評価制度』のトレンドにはいくつか特徴があります。ここでは4つの点について解説します。

人事制度の役割主義型への変遷

年功主義』が国内の企業における評価制度でのメインだった1990年代の後、バブル崩壊を境として、年齢や勤務期間ではなく、さらに『能力』に焦点を当てた『能力主義』の評価制度がメインになりました。従来の『年功主義』と比較すると、実際の業務で発揮しているスキルが重視されるように変わったものの、すべての能力を細かく把握できるわけではないため、結果的には「年功的」な仕組みと大きくは変わらないケースも多々ありました。

1990年代後半〜2000年代まではバブルの崩壊による不景気のため、『成果主義』の評価制度を重視する会社が急速に増加し、仕事の「結果」を重視した評価制度が重要視されつつありました。さらに2000年代後半から、『役割主義』を重要視する会社が国内でも現れ始めました。理由は、人件費の削減を目指すための手段として、勤続年数に対して待遇が上がってしまう『能力主義』の評価制度を廃止し、実際に担っている「役割」で待遇を決定する仕組みが採用されるようになったためです。

このように、『仕事主義』の制度が国内で導入されるようになったのは、実はこの10年、15年くらいの話になります。また『仕事主義』の制度であっても、今の日本企業では『役割主義』の評価制度が大部分であり、厳密にいうと『仕事主義』である『職務主義』の評価制度については、まだまだ浸透していないというのが現状です。


評価基準の行動へのフォーカス

これまでの評価基準では「勤続年数」、「その人自身が持つスキルや資格」、「どんな成果を出したか」という点にフォーカスされていました。ですが上で解説した『役割主義型』の評価制度では、「行動」にフォーカスされるのです。

本来、企業としては成果にフォーカスすべきなのですが、成果が出ない原因には「重要業務によっては成果が出にくい」「そもそも重要業務をやっても成果が出ない」という場合があります。

なので成果が出たかどうかは一旦脇においておき、「どう行動したのか」にフォーカスすることで正当に評価することができます。


リアルタイムな評価

評価をする期間が長期間だった『成果主義』から、短期的でリアルタイム式の評価である『行動主義』に変わっていきました。

リアルタイムに評価するようになった理由として、社員の行動をその都度評価すれば良いので、成果が現れるまで待つ必要がなくなったということが挙げられます。

評価の見える化

人事評価における『見える化』とは、ざっくり言うと、評価制度の過程や結果を「共有」することを意味します。この「共有」の範囲は、評価者と被評価者の間だけを示すこともあれば、評価者と人事担当者、場合によっては評価者・被評価者を含む全社員を示すこともあります。

見える化された人事評価は特に、「オープン主義評価(公開評価型の評価制度)」と呼ばれます。

『見える化』によるメリットは、「評価制度の進捗状況を確認できる」や「評価に対する納得性、信頼性を高めることができる」があります。

最新の手法

近年の評価制度の特徴を理解した上で、具体的にはどのような手法がトレンドになっているのか解説します。特に注目されている7つの方法をご紹介しましょう。

ノーレイティング

「S」「A」「B」のような評価で従業員を『レイティング』しない新しい制度のことです。国外の主要企業で広く採用されており、その数は増えてきています。現在ではどれだけ業績が向上しても、評価に反映されるまでに時間がかかり、モチベーションの低下につながる可能性があります。

ですが、『ノーレイティング』であればその都度ゴールを決め、上司からフィードバックをもらうことが可能です。そのため、環境の変化に対応しやすく、社員のモチベーションを高めることにもつながります。

ノーレイティングの特徴は、従来の評価方法よりも上司と部下の対話を大事にしているという点です。なので、業績アップにつなげられるかどうかは、上司との面談によるものが大きいといえます。ただし、何度も面談の数を重なるごとに上司に負担がかかるため、実際に導入が可能なのか慎重に判断する必要があります。


バリュー評価

バリュー評価とは、会社の価値観を理解していかに行動できたかを評価します。 バリュー評価が必要な理由として、インターネットやSNSの普及により情報が早く広範囲に伝わるため、商品や提供するサービスのライフサイクルも短命となってしまうということが考えられます。

つまり、会社が生き残るためには常に先を読み創造し続ける力が必要となります。例えば、新たなヒット商品やサービスは、社員が会社の価値観を理解して「自らやるべき仕事」を考え、判断し、行動しなければ決して生まれないのです。


360度評価

360度評価とは、複数のさまざまな立場の関係者が1人の従業員の評価を行なうものです。一般的な評価制度では直属の上司によって評価されるケースがほとんどです。

360度評価では、上司だけでなく同僚や部下、他部署の社員などによって多面的に評価されるものです。1人の従業員が仕事上のさまざまなフェーズ(360度)で関わる人たちです。取引先や顧客の声も評価として抽出されることもあります。

社員の作業量や仕事内容を上司が把握するのが困難で、かつ上司以外の従業員と広く関わるような業務につく職場での評価制度として適切です。


パフォーマンス・デベロップメント(PD)

パフォーマンス・デベロップメントは、年1回や半年に1回といったスパンではなく、より頻繁に上司と部下が日々の仕事の進捗やキャリアの方向性について話し合い、部下の成長を支援していくマネジメント手法です。

これまで多くの企業は「目標管理制度」を採用し、目標によって部下を管理してきましたが、この制度による弊害も出ています。特に目標の管理と評価で上司に多大な負担(評価のための部下面談や評価会議への出席など)がかかること、目標を持つことで部下のモチベーションやチームワークが阻害される可能性があること、変化の激しい時代に年1回や半年に1回といった頻度では変化に対応できないといったことが指摘されています。


チェックイン(Check-in)

アドビシステムズ株式会社が開発した「チェックイン(Check-in)」には、大きく分けて2つの特徴があります。

1つ目の特徴は、「継続的な対話」です。アドビシステムズ株式会社では「チェックイン」制度のもと、四半期に一度の上司と部下が業績目標について話し合う点です。上司から一方的に話すのではなく、部下からも意見を話すことができます。

2つ目の特徴は、1年間の継続的な面談から、マネージャーが部下の昇給を決定するマネージャーが予算を与えられ、自分の意志で部下に割り当てることができる点です。


ピアボーナス

ピアボーナスは、従来のような「会社から社員に対して贈られる報酬」とは違い、「社員同士で報酬を贈りあうことができる仕組み・制度」のことです。

スマートフォンアプリや、社内チャットツールから、評価や感謝を贈りたい相手に、ポイントやメッセージを送信。月ごとなど、一定のタイミングで換算し、社内公表や手当の支払いを行います。

利点としては、社員同士がお互いを手軽に称賛し合うことができ、贈った・贈られたタイミングでコミュニケーションが発生します。社内風土の改善、ひいては離職率の低下にも繋がると言われています。


OKR

『OKR』とはゴールの設定・マネジメント方法のひとつで、「Objectives and Key Results(目標と主要な結果)」の略称です。アメリカのIntel社で生まれ、GoogleやFacebookなど、シリコンバレーの有名企業が取り入れていることで、昨今注目を浴びています。

『OKR』は、これまで計画していた方法よりも高い頻度で「設定、追跡、再評価」するという特徴を主に持ちます。また、『OKR』の目標は社員全員が同じ方向を向き、確固とした優先順位を持ち、一定の間隔でプランを進めることとされています。

高い頻度で設定、追跡、再評価を目指すなら、 評価制度を効率よく回すことが重要です。

最新の手法を導入するメリット・デメリット

具体的にどのような手法がトレンドになっているか把握した上で、それらを企業に取り入れることによるメリットとデメリットをそれぞれ解説します。

メリット①組織の生産性向上

最新の手法を導入すれば、組織全体の生産性を高められるという利点があります。

評価制度を最新のものにアップデートすることで、社員の働きに対して正当な評価をすることができるようになり、結果として生産性の底上げにつながるでしょう。

現在、『成果主義』の評価制度でこれ以上の成長が見込めないという企業は、最新の評価制度を取り入れることで、成長のきっかけになるかもしれません。


メリット②人材獲得の競争力強化

人事評価制度の導入により、「企業の方向性」、「目標管理」、「査定」が視覚化され従業員の目に見える状態となります。企業の方向性の提示とはまさに「何のために自社企業が存在するか」であり、ビジョンやミッションに相当します。この自社企業の方向性に賛同できる社員かどうかは、期待される効果と密接にリンクしているのです。

一例をあげれば、ビジョンへの高い共感を示す社員ほど離職率が低くなるという相関があることがこれまでの研究で触れられています。またトレンドの手法を取り入れることで、社会のニーズに応える企業と認識され、就職・転職活動中の人からの注目を集めることにも繋がります。


メリット③生産性の低い人材の放出

「人事制度の役割主義型への変遷」でお話ししたように、年功的な評価がされなくなるので、これまで勤務実態があやふやになっていた社員に対しても、正当に評価が下されるようになりました。

企業がさらに成長していくためには、生産性が低く、成長についてくる意欲のない社員の存在が問題となるのは間違いありません。

またトレンドである「オープンな透明性のある手法」によって、そういった制度が合わないと感じる人は自ら離職を選ぶでしょう。結果として、生産性の低い人材の放出に繋がっていくのです。


デメリット①ベテラン社員からの反発

メリット③の反面、年功的な評価をされなくなることで、ベテラン社員にとっては良い気はしません。むしろ反発が起きてしまい、優秀な年長社員の放出にもつながる可能性があります。

それでは最新の評価制度を取り入れることによる生産性の向上を望めないので、新しい制度導入に込められた企業のビジョンや問題意識を伝え、納得してもらえるように努めるべきでしょう。


デメリット②組織弱体化の恐れ

トレンドの評価制度を取り入れたからといって、必ずしも良い方向に傾くとは限りません。むしろ組織全体の弱体化に繋がるケースもあり、十分な検証が必要となります。「なんとなく流行しているから」「あの企業が導入しているから」といったような安直な理由で取り入れないことが重要です。

自社の従業員たちの生活を左右する評価制度であることを肝に銘じた上で、さまざまな角度から考慮すると良いでしょう。

トレンド人事制度を導入した企業事例

では実際にトレンドの評価制度を取り入れた企業事例を見ていきましょう。3つの企業をピックアップして解説します。

アドビシステムズ/チェックイン制度による評価制度

アドビのこれまでの評価制度では、管理者が社員1人を年次評価するのに8時間費やしていました。その原因は、社員一人一人に360度評価を実施し、関係者からの承認を経てレポートを作成していました。その過程が非常に複雑なので、評価にかかる時間は自ずと長くなっていました。

Donna Morris氏はこれまでの評価システムを撤廃することを決め、社員が正当なフィードバックと評価をもらえていると感じられるような評価制度に変えました。その結果採用されたのがチェックイン制度です。

チェックインは3つの制度から構成されており、「期待・フィードバック・キャリア開発」で、結果的に「従業員とマネージャーの関係改善」、「ノーレーティング評価への移行」、「自主退職が減少」という成果に繋がりました。


ゼネラル・エレクトリック/社員の育成を主軸にした新しい制度

GE(ゼネラル・エレクトリック)は人事評価モデル「9ブロック」を長年使用していたのですが、2016年に9ブロックを廃止し、「PD(パフォーマンス・デベロップメント)」と呼ばれる新しい人事制度を導入しました。

従来の評価制度では「社員の育成」と「評価の通知」という2つの役割を担っていましたが、PDではそこから「社員の育成」を主軸として切り出しているのです。


メルカリ/新グレード体系による多面的な評価の実施

これまでの評価制度では、メンバーの能力や成果にランク付けを行わないシステム「ノーレイティング」、設定された目標をどの程度達成できたかを評価する「絶対評価」を採用していました。現在は、10段階のグレードごとに、期待される貢献を「期待効果」と「バリュー評価」で定義される、新グレード体系を採用しています。

変更の理由は「暗黙知が増えて納得感が低下」と「組織の多様化」で、評価制度を変えたことによって、多面的な評価を可能にしました。

新しい人事制度を取り入れる注意点

トレンドの手法を取り入れる際に気をつけるべきことを解説します。

プラス・マイナス要素の分析

トレンドの手法を取り入れることによるメリットとデメリットをご紹介しましたが、それを踏まえて企業にとってのプラス・マイナスとなる要素のバランスを考えなければなりません。

そのためには客観的なデータを基にして検証する必要があり、その手法を導入することで本当に企業の成長に繋がるのか考えましょう。


制度の本質の見極め

企業事例から、「どうしてその企業でうまくいったのか(本質)」を見極める必要があります。本質を理解しないまま、闇雲にトレンド手法を導入するだけでは、他社のように成功するとは限りません。

自社に制度をしっかり適合させるためにも、最新手法の細部を自社専用にカスタマイズすると良いでしょう。


導入プロセスの設計

どの手法を自社に取り入れるか検討したのちに、「どんなプロセスで導入するか」についても考えなければなりません。具体的には「実施時期」「社員へどう説明するか」「導入後の問題にどう対応するか」などがあげられます。

従業員に納得して受け入れてもらえるような説明が、組織として生産性を高めるためにはとても重要です。

まとめ

現代社会ではビジネスのスピードが非常に重視されており、社内制度の見直しとして「組織の生産性を向上させる評価制度の導入」が求められます。

従来の評価制度では時代に合わないものが多いので、トレンド手法の導入を是非検討してみてください。

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