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「HRテック(HR Tech)とは」その市場規模と種類、企業導入事例 #1|HRテック(HR Tech)とタレントマネジメントの関係

HRテック(HR Tech)という言葉が最近話題となっていますが、その意味は今一つ明確になっていません。
HRテックとは一体何なのでしょうか?

HRテックとは?

HRテックとは、「人事関連業務(HR)を最新のIT技術(テック)を使って改善すること及びそれを実現するシステム」と定義されます。

HRテックの市場規模

HRテックの市場規模は拡大しており、特にタレントマネジメント・エンゲージメント領域のサービスへの注目が高まっています。

HRテックの種類

HRテックには膨大な種類が存在していますが、サービスの利用される領域によって下記に大別されることが多いです。

1.採用管理

Applicant Tracking System(ATS)と呼ばれる、国内におけるHRテックで最もホットな領域です。新卒・中途、正規・非正規を問わず多くの企業が様々なサービスを展開しており、AI(人工知能)が組み込まれたサービスも登場しています。
主に、応募から採用までの流れを一貫してシステム上で管理できるようにしたものであり、求人管理、情報管理、選考管理、内定者管理等の機能が包含されています。
近年では、上記4機能のうちの特定機能に特化したサービスも提供されるようになってきています。

2.タレントマネジメント

「組織の成果を向上させるために組織にとって重要なポジションを決定し、そのポジションに最適な人材の定常的な配置を計画・実践する仕組み」と定義されるタレントマネジメントの、企業への導入・運用を支援するシステムをタレントマネジメントシステムと呼びます。
一般的にタレントマネジメントシステムと呼称されるシステムは、人材データの一元管理に留まらず、人材データの分析機能や異動シミュレーションなどを兼ね備えたものを指します。
タレントマネジメント自体を明確に導入している日本企業はまだまだ少ないのが現状ですが、ジョブ型雇用制度の普及に伴い、今後はタレントマネジメントシステムの導入を検討する企業が増えると予想されています。

3.労務管理

HRテックの発端となった領域であり、採用管理と並んで多くの企業がサービスを展開しています。勤怠管理、入退室管理、従業員の健康管理、給与計算等の様々な業務をサポートするシステムが揃っており、統合的に多くの機能を内包したサービスから、単一の機能を追求したものまで、種類・数ともに豊富です。
業務効率化の文脈で語られることの多いDXの波に乗って、近年市場が拡大しています。

4.上記統合型

上述した複数領域のHRテックが保有する機能を1つのシステム上に搭載したものを指しています。具体的には、SAPやOracleなどが提供するサービスが該当し、社員数が1万人を超えるようなグローバル企業での導入が目立ちます。

HRテックの種類についてご紹介してきましたが、そもそもなぜHRテックがこれほどまでに普及してきたのでしょうか?その背景には、技術の進歩があります。

なぜHRテックがトレンドになっているのか?

技術進歩がHRテックの普及を加速させた

技術の進歩により、今までは難しかったデータの収集・保管・処理が可能になりました。それらを可能にした技術をご紹介します。

1.クラウド

1つ目のポイントはクラウドです。

従来の人事システムでは、自社でシステムを準備して運用する「オンプレミス型」が主流で、専任のIT組織や潤沢なIT予算をもたない中堅、中小企業は社員情報、給与計算といった必要最低限のシステムを利用することが精一杯でした。

HRテック(HR Tech)では、最新技術を使ったシステムがクラウド型のサービス(Saas)で提供されるのが一般的ですので、中堅・中小企業でも比較的容易に利用が可能になっています。

2.デバイス(端末)

2つ目のポイントは端末です。

今までシステムへのデータの入力あるいは情報の検索は、PC端末から行っていましたが、HRテック(HR Tech)では、社員一人一人が持っている携帯電話、スマートフォンが主流です。今までの人事関連業務システムは、主に人事担当者による利用を前提として作られていたため、一般社員にとっては使いづらいものでした。

一方、HRテック(HR Tech)では、一般社員が携帯端末で使用することを想定した非常に使いやすいインターフェイスが提供されています。

これは、ユーザの利便性を向上させることでシステム(クラウド型サービス)の利用度を最大にするという目的もありますが、もう一つ重要な目的があります。

後で詳しく説明しますが、HRテック(HR Tech)では、一般社員が入力する情報の量と精度が非常に重要でそのためには、社員が直接システムにリアルタイムに正確な情報を入力することが前提となります。

携帯端末からの直接入力は、以前の出社を前提としたPC端末からの入力、あるいは人事スタッフによる代理入力よりもはるかに迅速で正確なデータの収集を可能にしています。

3.ビッグデータとAI

3つ目のポイントは、ビッグデータ解析とAIです。

膨大なデータ(ビッグデータ)を短時間で処理し、統計解析的な高度な分析を行う技術は、ここ数年で飛躍的に発展しています。これと、2つ目のポイントで述べた入力端末の発達が合わさることで、今までは不可能だったさまざまなデータ分析が可能になっています。

同時に、機械学習を中心としたAI技術を利用した業務の自動化技術が発達しています。この技術は主に管理部門の定型業務に適当されており、人事業務も例外ではありません。

それでは、HRテック(HR Tech)によって具体的にどのような業務が改善されるのでしょうか。

HRテックで改善される業務

1.定型業務の効率化・自動化

もっとも近い将来、実用化され普及すると考えられているのが、労務管理における定型業務の効率化、自動化です。

労務管理業務における定型業務は、人事担当者の多くの時間と作業工数を消費するだけではなく、一般社員から見ても、手続きの煩雑さ、人的作業によるミスのリカバリーといった「やる気を削ぐ」面ばかりが目立ってきました。

HRテック(HR Tech)では、主にAI技術を利用して、これらの定型業務の効率化、自動化を実現しています。対象となる定型業務は多岐にわたりますが、代表的な例としては、社員の入社/退社手続き、扶養家族の追加/削除、社員の住所変更、報酬月額の変更などがあります。

2.社員の動向予測

労務管理分野の次に期待されているのが、社員データの一元管理を前提とした、ビッグデータ解析による社員の動向予測です。

具体的な事例として代表的なものが、社員の退職リスクの算出です。

過去の退職者のデータから退職に至る要因を分析し、待遇改善を図ることで人材の流出リスクを回避することができるようになります。

ただし、この分野は、労務管理分野とは異なり、ビッグデータ解析の技術が効果を発揮するためには、多種多様な人事関連データを正確に長期間にわたって蓄積し、一元的に管理することが必要となります。まさに、ここがHRテック(HR Tech)とタレントマネジメント(システム)の接点といえます。

第2回では、このポイントを正しく理解していただくために、実際の退職者リスクの分析を簡単な例を用いて、統計解析知識のない方にとってもわかりやすく解説します。

HRテックが企業にもたらす効果と導入事例

HRtechによって企業が得られる主な効果は、以下が挙げられます。

1.コミュニケーションギャップの解消

HRtechの普及により、スケジュール調整やアンケート、共有情報の周知等がより簡単になります。

2.従業員データの分析の簡易化

HRtechの活用により、従業員データの分析が簡単なクリック操作のみで可能になりました。従業員データの適切な分析により、より効率的な働き方を促進したり、適切な評価システムを採用することができます。
(参考:導入事例「株式会社 クロスキャット 様」

3.採用活動の簡易化

AIの活用や応募者データの整理簡易化により、採用活動に要する工数を大幅に削減することが可能になりました。一部の企業では、エントリーシートの合否をAIによって決めているようです。
(参考:導入事例「三井住友トラスト・システム&サービス株式会社 様」

4.業務効率の向上

紙やExcelを使った管理から解放される等、人事業務の大幅な効率化が見込まれます。特に人事評価業務や労務において大きな工数削減が実現されています。
(参考:導入事例「日産トレーデイングオペレーションジャパン株式会社 様」


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第2回「HRテック適用例~退職者リスクの分析

第3回「HRテックが効果を発揮するための前提条件

第4回「HRテックに必要なタレントマネジメントシステムの機能