360度評価システムの魅力は?導入メリットや採用企業の成功事例を解説
社員を正しく公平に精査する目的として、360度評価システムの導入企業が増加しています。そして、採用企業の多くは業績が伸びているのも特徴です。では取り入れる重要性は一体何でしょうか。今回は360度評価システムの特徴や導入メリットを中心に紹介していきます。
360度評価システムとは
360度評価システムは一人の社員を上司だけでなく、部下や同僚を巻き込んで多角的かつ段階的に審議するシステムです。制度を一から全て作り上げる必要はなく、AIが項目や内容を正しくチェックしてくれます。例えば、評価の基準となる目標設定が適しているかを社員ごとに判断。添削までをAIが自動で行ってくれるため、上長の手間が省けます。とくに社員数が多い企業は上層部の評価効率が上がるメリットは大きいでしょう。360度評価システムは近年販売社数も増加しており、サービスによって価格・特徴・実績が大きく異なります。自社に合ったシステムを導入し、効率的な評価を行っていきましょう。
そもそも360度評価とは
360度評価についての概要は以下のとおりです。
360度評価・多面評価の概要
360度評価は別名多面評価とも呼ばれ、一人に対してあらゆる角度から評価する制度です。一般的な従来の評価は社員を上司のみが査定し、給与アップやボーナスの決定基準としてきました。しかし、近年企業の評価状況は一転。上長だけでなく、多様な視点から精査する動きが出てきたのです。背景には企業によるコスト削減やサポート役の重要性が挙げられるでしょう。現代では政府による働き方改革により、一人一人の勤務効率化が求められています。以前のように、上司が部下の功績を一部始終把握する時間がなくなったため、同僚や部下による評価も必要になりました。また、事務やバックヤード業務を行う社員は給与水準こそ低いものの、会社にとってはなくてはならない存在です。縁の下の力持ちを担う社員を正しく評価するためにも、360度評価は必要になります。
360度評価の主な質問項目
360度評価を導入するには、社員を正しく評価するための質問項目を設定しましょう。適正な質問が設定されていれば、勤務状況がリアルに分かる回答結果が得られるからです。そのためにも、まずは管理職・一般職で質問カテゴリーを分けていきます。管理職は部下トレーニング・リーダーシップ・判断力・チーム作り、一般職は危機管理・積極性・コミュニケ―ション・自己学習意欲などの質問カテゴリーをつくると良いでしょう。さらに、各質問に対して詳細項目を加えていきます。例えば、部下トレーニングであれば「部下が納得するまで本人と向き合っていたか」「短所よりも長所を見つけ、伸ばす努力を行っていたか」などを組み込んでいきましょう。最後に、各項目に対して5つの回答を用意していきます。達成できた・やや達成できた・どちらともいえない・あまり該当しない・努力が必要と設定。回答者が分かりやすく、簡潔に答えられるシステムを作るのが重要です。
360度評価コメントの書き方
360度評価は前述した5点評価のほかにも、コメント欄を設定してフィードバックを行います。コメントの書き方は具体的かつ次へつながる記載をしていくのがポイントです。例えば一般職の積極性項目であれば「もっと失敗を恐れずにチャレンジしましょう」ではなく「営業において単日アプローチ数を10→20件に増やすと成約につながりやすいです。相手の疑問点を抽出するスキルがあるため、自信を持って活かしていきましょう」などが良いです。受け取った本人は数字を使った具体的な説明により、イメージがつきます。さらに、今まで気付かなかった長所を発見したため、成長への足がかりとなるでしょう。360度評価は単純に社員を精査するだけではなく、一人一人を成長させてモチベーションを高める意味合いも含んでいます。具体的かつやる気の上がるコメントで書いていきましょう。
360度評価を行うメリット・デメリット
360度評価を行うメリット・デメリットは以下のとおりです。
360度評価を行うメリット
360度評価を行う最大のメリットは多角的に社員を精査できる点です。今までのトップダウン評価では判断に偏りが出ていたのも事実。上長による好き嫌いで評価がアンバランスなケースもあったでしょう。360度評価であれば、上だけでなく下や真ん中からの精査で信頼性があります。また、評価される社員は新たな気付きが発見できるのも利点。今までの一方通行な視点だけでなく、多種多様な観点から自身を把握できます。とくに長所や短所は自分でなかなか気付けません。多角的な意見があれば、自己成長へとつながります。360度評価は従来における人事制度の弱点を補う魅力的なシステムと言えるでしょう。
360度評価を行うデメリット
360度評価を行う最大のデメリットは体裁にこだわったコミュニケーションがうまれる点です。部下が上司を精査するとなれば、上司は評価を気にして部下へ思い切った指導ができなくなります。本来、部下の行動を是正するのは上長の役目であり、成長を後押しする役割を果たす必要があるのです。部下が行き過ぎた行動を取ったり、伸び悩んだりしても、部下が適正な指導を受けられない可能性があるのは念頭に置いておきましょう。また、360度評価の導入にあたって、時間や労力を要する可能性があります。今までは上司の審査だけでよかったものの、360度評価は部下や同僚の評価が加わります。そのため、社員全体の負担が加わり、評価結果の発表が従来よりも延びてしまうでしょう。前述の質問項目数や回答スタイルでバランスを取ると評価に掛ける時間も減らせます。
360度評価が可能な人事評価システムを選ぶ8つのポイント
360度評価システムの選定ポイントを解説します。
提供形態
360度評価システムを導入する場合、提供形態を必ず確認する必要があります。「オンプレミス」「クラウド」があり、自社システムに沿ったタイプを導入していきましょう。オンプレミスは自社サーバーに評価システムを組み込むタイプ。自社設備に導入するため、セキュリティが高く、統一性を保てるメリットがあります。とくに従業員数が多い企業に向いており、個人情報を徹底した運営を希望する会社に最適です。一方、クラウドは自社サーバーを持たずにインターネット上で利用するタイプ。サーバー導入・維持費用がかからず気軽に取り入れられるのが特徴です。しかし、オンプレミスほどセキュリティ強度が高くないため、場合によっては導入できない可能性もあります。セキュリティ対策を検討した上で、採用の可否を決めていきましょう。いずれにしても、まずは人事評価システムを組み込む基盤の確認が必要です。
従業員規模や料金体系
360度評価システム導入時は従業員規模や料金体系を加味していきましょう。従業員規模は大きく小~中規模・大企業向けで分かれ、300・500・1000名などを境に料金分けしているケースが多いです。一般的には従業員規模によって大きくサービス内容が変わるわけではなく、料金が変動します。また、料金体系についても、前述のオンプレミスとクラウドにより異なるのが特徴。オンプレミスは初回に従業員数に応じたライセンスを買い切るのが一般的です。必要であれば年間保守契約を結んでも良いでしょう。他にも、サーバー導入・維持費用も掛かり、オンプレミスでシステムを採用するには初期費用がかさむのは念頭に置いておきましょう。一方、クラウドは導入コストを抑えられる代わりに月額費用が生じます。利用人数によって料金が変動する方式と利用者が増減しても変わらない2タイプが一般的。社員の入れ替わりが頻繁にあるか否かを基準にすると良いでしょう。従業員規模や料金体系によってコストが大きく変わるため、自社に合ったシステムの導入がおすすめです。
評価シートを自由に編集できるか
評価シートを自由に編集できるどうかで360度評価システム導入に大きく関わります。老舗企業であれば人事ノウハウが構築されており、ある程度まとまった評価システムが出来上がるでしょう。しかし、ベンチャー企業や設立間もない中小企業は人の入れ替わりも激しければ、人事評価も手探りの状況です。毎年人や体制がガラリと変わるとなると、必然的に柔軟な評価シートの導入が必要になります。質問項目はもちろん、回答方式や回答項目も自由に編集できるかがポイント。今後人事評価の劇的な変化や社員の入退社が予定されているかを一つの基準として決めていくと良いでしょう。
評価者と対象者の関連付けが可能か
360度評価システムを導入する場合、評価者と対象者の関連付けが可能かどうかも確認しておきましょう。最近の評価システムは回答者選定機能があり、社員間で設定する手間を省いています。評価システム導入時にありがちなトラブルとして、評価者が誤った対象者を選択しているケースや予定より多くの社員を評価している問題が生じているのです。評価システムによっては精査後の変更がきかない場合もあり、再度評価しなくてはいけません。余計な業務が増えるのはもちろん、社員のモチベーションが下がる可能性もあるでしょう。そんなトラブルを避けるためにも、評価者と対象者の紐づけができる評価システムがおすすめです。評価の効率がより上がっていきます。
集計・分析機能があるか
集計・分析機能があるかどうかも360度評価システム導入時に大きく関わります。人事評価は対象者に回答してもらって終了ではありません。結果を集計し、社員一人一人が成長するための分析を行う必要があります。360度評価を導入する悩みとして、集計の手間が発生する声が多いです。「入力してもらったはいいものの、目を通す時間がない」「全社員の結果を一目で見れるツールがほしい」など。実際に、上記の声に応えるべく、評価システムによっては滞りなく集計してくれる機能もあります。さらに、集計結果から社員の成長につながるポイントを分析する機能もあるのです。360度評価導入にあたってPDCAを上手くまわせ、会社全体の業績アップへとつながっていくでしょう。集計・分析機能があるかどうかは予想以上に重要です。
1on1など面談の補助機能も併用できるか
360度評価システムを導入する場合、1on1など面談の補助機能も併用できるかも確認しておきましょう。一般的に360度評価後に面談を行うのが良しとされています。普段言葉を交わせない社員同士で、文字では伝えられない本人の強みや弱みを発信できるからです。文章で読み取るよりも、社員の成長へ大きくつながります。面談においては録音や文章などで履歴を残すのが重要。後日振り返った際に本人の発言をもとに、あらためて評価項目設定時に利用できます。360度評価システム自体の付加価値を追い求めるのも重要ですが、評価後の面談における機能の充実性も確認しておきましょう。
使いやすいか
360度評価システムが使いやすくて分かりやすいかも重要です。会社はパソコン操作に長けた社員ばかりではありません。新入社員や情報リテラシーが低い方もおり、よりシンプルなシステムが求められます。例えば、「困った際に画面説明が組み込まれているか?」「パソコンだけではなく、外出先でスマホやタブレットでも操作可能か?」なども考慮していきましょう。システムによっては付加価値をつけすぎたがゆえに、かえって見づらく操作しにくい場合もあります。管理するシステム部門へ度々質問がくるのでは非効率。360度評価システムを導入する際は低い目線に立ち、パソコン操作が苦手な方を基準に採用していきましょう。
サポート体制
360度評価システムを導入する場合、サポート体制が充実しているかも確認しておきましょう。初めて評価システムを採用する場合は右も左も分からないかもしれません。基本的な操作に限らず、社員の成長に向けた効果的な使い方も知っていく必要があります。優秀な360度評価システムでは操作説明はもちろん、具体的なデータベースの設計までも支援してくれるのです。具体的には電話相談・勉強会・オンラインミーティングで丁寧かつ迅速にサポート。初めてシステムを触る社員でも不安なく利用できるようアシストしてくれます。実際、導入企業ではあらゆる質問が飛び交っているのも事実。社員間の手間を防ぐためにも、360度評価システム導入時はサポート体制も加味していきましょう。
360度評価システムの成功事例
360度評価システムの導入成功事例を解説します。
①360度評価の工数が8分の1に|株式会社チュチュアンナ
最初に紹介する成功事例は株式会社チュチュアンナです。チュチュアンナは靴下・下着・ルームウェアを手掛ける女性に人気のアパレル企業。創業40年を迎えるにあたり、人事評価に限界を感じた経営トップが制度一新を図るために360度評価を導入しました。結果的に年間240時間掛かった評価を8分の1である30時間まで削減。社員一人一人の負担が軽くなっただけでなく、業務が効率的にまわり始めたのだそう。具体的にチュチュアンナは5つのカテゴリー・20項目で360度評価を実施。内容は模範性・支援力・育成力・方針・評価の5点です。当初は「導入して本当に評価できるのか?」との声も多くあがったものの、採用後は社員の成長にとどまらず、今ではアパレル業界を代表する企業へ成長しました。360度評価を導入し、工数削減が実現した模範と言えるでしょう。
②360度評価とMBOの融合をシステムで実現|株式会社グローバルトラストネットワークス
続いて紹介する成功事例は株式会社グローバルトラストネットワークスです。グローバルトラストネットワークスは外国人専門の不動産・旅行事業を手掛ける企業。現在、15年目となるベンチャー企業です。社内の約7割が外国人である背景からも、チームワークと業務バランスの効率を上げられるシステムの導入に検討していました。さらに、MBO(Management By Object)を加えて目標管理を徹底する狙いもあったそうです。360度評価であれば、チーム内コミュニケーションが円滑にいくと同時に、一人一人目標を持って責任感を持てる利点から導入に至りました。結果、社員間の風通しが良くなり、成績もうなぎのぼり。360度評価を導入し、意思疎通と目標管理の両立を実現したモデルと言えます。
③アンケート機能で手軽に360度評価を導入|株式会社えん
最後に紹介する成功事例は株式会社えんです。えんは福岡で賃貸事業を手掛ける企業。創業年数が長く、ベテラン社員が多かった影響もあり、評価業務の大半を紙ベースで行っていまいた。社員に大きな負担がかかる中で、不安の声もあがっていたそう。そんな中で、評価業務をデータで一元化できる360度評価を取り入れたのです。とくに、えんが惹かれたのはアンケート機能。項目を考案する手間が省けたのは非常に大きく、本来の業務に集中できたとのことです。加えて、項目の質が上がり、社員に新たな気づきがうまれました。評価業務を紙媒体からデータへ移行し、工数を大幅に減らせた優秀な例と言えます。
まとめ
360度評価は上司だけでなく、部下や同僚を巻き込んで多角的かつ段階的に審議するシステムです。今までの上司によるトップダウン評価では判断に偏りが出ていたものの、360度評価では精査に一貫性が取れます。社員のモチベーションが上がり、結果的に会社全体の業績へとつながっていくでしょう。実際に導入して結果が出ている企業もあり、是非一度360度評価採用を検討してもらえると幸いです。