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ジョブローテーションが退職につながるケースとは?対策方法を解説

ジョブローテーションが退職につながるケース

社員の育成を図るために「ジョブローテーション」を自社に導入する企業は少なくありません。さまざまな経験を積ませることで多角的な視点を持たせることができるメリットがありますが、その一方で社員の負担にもなっているケースがあります。その影響により、社員が退職を考えてしまう場合もあるようです。本記事ではどのような理由によって社員が退職してしまうのか紹介したのちに、ジョブローテーションが退職につながらないための対策方法を解説します。

ジョブローテーション

社員にさまざまな経験を積ませることを目的とした「人材育成システム」です。具体的には、一定期間ごとに部署が変更になり、担当する仕事内容がその都度変わるため、1つの会社で多くの業務をこなすことになります。これにより比較的短期間で実践経験を積ませることができ、視点を広げることにもつながるでしょう。中には部署だけではなく、勤務地が変わる場合も少なくないようです。

⇒ジョブローテーションについて詳しく知りたい方はこちら


人事異動との違い

どちらも部署や勤務地が変わる点において共通しているのですが、ジョブローテーションは社員の育成を目的としたものであり、人事異動は社員同士の競争を目的としたものです。成果を出せた社員は今ある自身の地位を守ることができ、成果を出せずに競争に負けた社員は別の地位を与えられることになります。これがいわゆる『人事異動』であり、ふるいにかけられた人だけが残る仕組みとなっています。


ジョブローテーションのデメリット

社員の育成をするにあたって、ジョブローテーションは効果的ですが、その反面いくつかのデメリットも存在します。


退職のリスク

本記事のメイントピックとして取り上げていますが、デメリットの1つとして「退職のリスク」が挙げられます。ジョブローテーションによって社員は仕事に対して新鮮さを感じることができますが、その反面として個人の適性を無視したシステムであるとも言えます。また社員が仕事に慣れてきたところで部署が変わってしまい、結局専門性が身に付かず、浅い経験しか得ることができません。こういった不満が積もり積もった結果、社員が退職という選択をとってしまうケースがあります。


スペシャリストが育たない

上でも述べた通り、社員が仕事に慣れてきた頃にジョブローテーションによって部署が変わってしまうため、専門性がつかず終いになってしまいます。確かに様々な経験ができるためゼネラリストは育つのですが、専門性のあるスペシャリストが育たないため、何かの分野に突出した社員がいないということになりかねません。ゼネラリストとスペシャリストの割合がバランスよく存在する会社を目指していくべきです。


ジョブローテーションによる退職理由

ジョブローテーションを導入したことにより、スキルのある社員が退職してしまうケースがあります。その理由を大きく分けて3つ解説します。


これ以上成長できる機会がない

優秀な社員は「これ以上この会社では成長できそうにない」と感じたときに、退職を選ぶケースが多いです。育成目的のジョブローテーションではそこまで深い経験を積むことができず、自身のスキルを今以上に磨くことができないと感じた時点で退職を考えてしまいます。


自分の権限で仕事が出来ない

優秀な社員ほど、自身の裁量でより効率的に仕事を行いたいと考えます。そのためのアイデアを提案できるような環境が与えられず、上司の気分次第で無かったことにされるケースもあり、少しずつ不満が積もっていきます。特にジョブローテーションによって自身の得意な仕事を受け持つことができず、スキルを活かせないと感じた場合にも退職を考えてしまうでしょう。


会社の将来性に共感を持てない

ジョブローテーションによってさまざまな経験ができる職場環境でかつ、福利厚生や給与面での待遇が悪くないとしても、優秀な人材は退職してしまうケースがあります。それは会社の将来性に期待できず、このまま長く勤めていてもキャリアアップに繋がりそうにないと感じた場合が当てはまります。また会社の経営方針に納得できない場合にもやはり退職を考えてしまうことが多く、いくつかの要員を考慮しておく必要があると言えるでしょう。


ジョブローテーションの悪い例

人材育成を目的としたシステムですが、本来の目的を見失った悪い例を2つご紹介します。


意味のないジョブローテーション

最も懸念される要因として「意味のない異動」となってしまうような事態を防がなければなりません。定期的な部署の入れ替わりによって、社員にとってももはや新鮮味もなく、与えられたポジションで役割を果たすだけになることがあります。それでは本来の人材育成という目的を達成できず、惰性でこなすだけになってしまいます。必ず部署が変わる直前までに、異動の意図や何を得て欲しいのかを上司と話し合う機会を設け、目的意識を明確にするようにしましょう。


社員の意向を無視している

たとえ人材育成が目的でさまざまな経験を積ませるためとはいえ、社員の意向を汲み取らずに部署の異動などを行えば必ず反発が起こります。特に今いるポジションの仕事に慣れてきて、これからさらに専門性を磨こうとする中で突然違う部署に異動させられてしまうケースがあります。そうなるとこの会社では自身の専門性を高められず、これ以上の成長は見込めないと判断されてしまい、退職に繋がってしまいかねません。


退職させないためのポイント

人材育成のためにジョブローテーションを行いつつ、社員が退職を考えないようにするために覚えておくべき内容を2つ解説します。


ジョブローテーションを行う目的を伝える

社員が退職してしまう理由として、「何のためのシステムなのか分からない」というものが大きな要因として挙げられます。そこで社員一人ひとりにとって、どのようなメリットやデメリットがあるのか話すと良いでしょう。具体的にはメリットで将来的にその部署で得た知識や経験がどのように役立つのかを話し、デメリットでは正直に今いるポジションから離れることによる影響を話します。ここでメリットとデメリットを比較したときに、納得できるメリットであれば、意図が伝わり退職を防ぐことができるでしょう。


期間やミッションのすり合わせを行う

別の部署に異動してからどのくらいの期間、どのようなことをするのか等、異動前にすり合わせを行っておきましょう。何のために異動させられたのか分からない状態が続くと、社員のモチベーションが下がり、結果的に退職につながるケースも珍しくありません。必ず社員に納得してもらえるような事前説明を行い、一方的な通達で終わるという事態は防ぎましょう。


まとめ

ジョブローテーションは様々な実践経験を積ませられる点で人材育成には最適であり、実際に多くの企業でこのシステムが取り入れられています。ですがその反面、社員の意向を無視した異動になったり、目的が漠然とした状態で一方的に通達されるという問題が起こります。その結果、優秀な社員が会社を離れてしまうという事態になり、会社としては育成による恩恵を受けられません。今回解説した2つのポイントをよく把握し、人材育成を進めていきましょう。