コラム

人事関連でお役に立つ情報を掲載しています。ぜひご活用ください。

  1. トップ
  2. コラム
  3. タレントマネジメント・人材管理
  4. ITSSのスキルレベルとは?7段階のスキルレベルの解説と資格について

ITSSのスキルレベルとは?7段階のスキルレベルの解説と資格について

スキルマップとは?

インターネットを中心としたビジネスが普及し、ITは欠かせないものとなっています。そしてその普及に伴い、IT人材の需要も高まっています。

ITSSは高度なIT知識や技能を持つ人を育成するための指標として作成されました。IT領域ではどのようなスキルが必要になるのかを明確に示しており、ITSSを基にスキルの習得を目指すことができるようになっています。

スキルレベルの明確化に役立つ「ITスキル標準(ITSS)」とは

スキルマップの導入が有効な企業として、真っ先にあげられるのが大企業です。大企業になると従業員は数百~数千人にのぼります。評価のたびに一から全社員のスキルを認識するのは骨が折れます。スキルマップを活用すれば、蓄積したデータから効率的に評価できるのです。

加えてスキルマップは情報共有を円滑に行えます。例えば、社員の特性を上司に報告しなければいけない場合、エクセルで管理したチェック表を見せればスムーズに伝達できます。

退職せざるを得なくなった場合、新任担当者への引継ぎも苦労なくできるはずです。

また、従業員の伸び悩みや離職率の高い企業も、スキルマップの導入が適しています。従業員が成長しきれていないのは、長所を伸ばしきれていないからです。強みを把握できていないとも言い換えられます。スキルマップなら社員の長所・短所を瞬時に認識でき、育成に役立てられるのです。

最後に、社員がすぐに辞めてしまう企業はモチベーションの低さが影響しています。一人一人に合っていない仕事を与えている可能性もあります。スキルマップであれば、適材適所の配置が実現します。

ITスキル標準が策定された背景と目的

経済産業省によって2002年に策定されたITスキル標準(ITSS)は、急成長するIT産業と企業のIT化に応えるために作られました。IT業界では高度な専門知識を持つ技術者が需要であり、ITの導入によって業務効率化や正確な分析が可能になり、競争優位性が生まれました。

多くの企業はIT人材の獲得や育成、システムの改善を必要としましたが、適切なスキルの評価は難しく、それを解決するためにITSSが策定されました。

この標準化により、企業は求めるスキルを明確にし、適切な人材の採用や育成が可能になりました。また、IT人材は自身のスキル向上の目標としても活用されています。

ITSSが規定する7段階のレベル評価

ITスキル標準(ITSS)は、IT系知識と能力を持つ高度な人材として活躍できるかを確認できるように、レベルを7つに分類しています。判断基準がまとめられているため、客観的に人材の到達度を判別する際に活用できます。

これからの時代に欠かせないIT人材を獲得および育成するにあたって、自社に必要なレベルを明確にしておきましょう。

ITSSの7段階レベル

個人に合わせてレベルを判断するのは、慣れないうちは難しいでしょう。判断がブレてしまわないように、しっかりと内容を理解しておくことが大切です。また、内容を理解した上で、はっきりとした判断基準を持つことで、正確な評価が可能となります。

ここでは評価の参考になるように、それぞれのレベルについて詳細に解説します。

  • レベル1

エントリーレベルです。業務未経験の人や、新卒採用者などが該当します。必要最低限の知識を持っている状態なので、実務ですぐに活躍できるほどではありません。レベルアップを目指して、積極的な勉強の必要があるとされています。

この段階に到達していると判断できる資格は「ITパスポート試験」です。その他、「LPICレベル1」や「情報検定(J検)情報活用試験」などを保有していると、レベル1には達していると判断できるでしょう。

  • レベル2

ミドルレベルであり、ある程度簡単な作業であれば担当できる程度の知識とスキルがあります。実務では上長の指示監督下での作業が必要で、一人で業務をこなすには不十分だといえるでしょう。

「基本情報技術者試験」「情報セキュリティマネジメント試験」などの資格を持っていると、到達していると判断可能です。

  • レベル3

ミドルレベルですが、レベル2よりも高度なスキルを有しています。仕事を一人でこなせるようになっている段階で、基本知識に加えて応用知識も持っています。

この段階は「応用情報技術者試験」「マイクロソフト認定システムエンジニア(MCSE)」などの資格保持者が該当します。

  • レベル4

ここからハイレベルだといえます。専門とする業務が定まって「高度IT人材」として後進育成にも取り組める能力を有します。

「高度情報処理技術者試験」「情報処理安全確保支援士」といった資格を持っていると、レベル4に到達していると判断可能です。ただし、試験の合格だけでなく、実務経験も評価の指標に加えられます。

また、「ITコーディネータ」や「オラクルマスター(プラチナ級)」なども同レベルだといえます。

  • レベル5

企業のハイエンドプレイヤーとして活躍できるレベルです。誰かの指示で動く立場から、指示を出す立場となって、社内のメンバーを牽引していける人材だといえるでしょう。

「ITストラテジスト試験」「プロジェクトマネージャ試験」「システム監査技術者試験」が、このレベルだと判別できる資格とされていましたが、資格の有無以上に実務経験が重視されます。

  • レベル6

スーパーハイクラスに該当するレベルであり、企業内のみならず日本にとって欠かせない人材といえます。

テクノロジやメソドロジ、ビジネスを創造する立場として、多くのメンバーを牽引していける知識と能力を有しています。

このレベルの判断は難しく、豊富な知識だけでなく、多くの実務経験を積んでいる必要があります。実務経験の豊富さや、プロジェクトのリーダー経験の有無などから、総合的に判別するようにしましょう。

  • レベル7

最も高いレベルの人材です。世界的に活躍できるIT人材としての素養を持っていると判断できるレベルなので、該当する人材は多くありません。

豊富な知識と実務経験はもちろん、世界基準の知識も有している必要があります。先進的かつ革新的なITサービスの開拓および市場化を実現できる人材です。

スキルマップとは?

スキルマップというのは、その名の通り「スキル」をマッピング化したもので、社員がどのようなスキルを持っているのか一覧にしておくことです。これはスキル管理には絶対に欠かせないものであり、スキルの一覧を視覚化しておくことで、のちの業務遂行において役立ちます。スキルには「知識」「経験」「資格」があり、業務において求められる水準と比較して、各社員のどの部分が不足しているのかを確認する際にも大いに役立つでしょう。不足している能力を発見することができれば、研修などでサポートしつつ、その力を向上させる方向性で、計画を新たに立てることもできます。

スキルマップと最適配置

スキルマップの作成は、人材の適材適所にも大いに役立ちます。社員の保有スキルが可視化していれば、どの分野に強いのかや弱いのかが分かります。その強みを活かせる業務を担当させることができれば効率的な仕事ができますし、逆に弱い場合はスキルを持った人と組ませて学ばせることもアイデアの1つです。特に中途採用の社員は即戦力として期待されている場合がほとんどですので、保有スキルを最も活かせる部署に配置することでパフォーマンスを発揮できるでしょう。

スキルマップの目的

スキルマップの目的について解説します。

スキルレベルの明確化

スキルマップを活用できれば、従業員の能力やスキルが明確化します。従業員名とスキル項目が星取表のような一覧表に数値化されているため、習熟度がはっきり分かります。「どの人がどんなスキルを所持しているか?」が一目瞭然です。反対に「交渉力は誰が優れているか?」といった逆引きも可能になります。近年は在宅勤務やテレワークが普及しているため、社員が積み上げた技術を知れる機会はなかなかありません。管理表を見れば一目で分かるのは大きな強みです。

また、スキルマップは棚卸表のような使い方ができるのも特徴です。社員一人一人のスキルや能力を部署や企業全体で取りまとめられます。例えば、営業部において交渉力が「5」である人数の割合も知れるのです。適切な人材配置が行えるだけでなく、管理職や経営層にとって、戦略を立てるヒントが得られます。

生産性の向上

ここ数年、人事評価に苦労する企業が増えてきました。それは一人一人と直に話す機会が減っているからです。前述のとおり、在宅勤務の普及が大きく関係しています。加えてコンプライアンスの厳格化により、深い話がしづらくなったのも影響しているはずです。結果的にコミュニケーションの量・質ともに低下し、評価者は苦悩してしまいます。

また、能力やスキルを把握せずに評価すれば、不満がうまれます。社員のモチベーションが下がり、生産性が低下するのは言うまでもありません。そこでスキルマップにはじまる人材マップを導入すれば、評価体制はがらりと変わります。社員間で情報共有が可能になるため、スキルを一から確認する必要はないです。加えて従業員を的確に評価できることで、企業全体の士気が高まります。業務効率化へとつながり、売り上げアップが現実味を帯びてきます。

社員育成の強化

スキルマップに書かれた評価表を参考にすれば、社員育成の強化につながります。スキルマップが注目されている理由のひとつに、ビジョンに沿った人材育成計画の実現があります。一般的な人事評価は交渉力や接客力など、ビジネスマンとして必要な基本的な項目が並べられています。一方、スキルマップはそのような項目に加え、企業が必要とする人材に沿った項目を加えられるのです。例えば「チャレンジ精神のある人材を育てたい」と企業で掲げたとすれば「プレゼンでの発信力」「任意研修への参加頻度」などを加えます。

結果的に上記の項目を中心にスキルマップを作成すれば、チャレンジ精神のある人材が増えます。このようなオリジナルな作り方が実現できるのも、スキルマップが社員の能力やスキルを細かく表現できるからこそです。社員育成の強化を目指している企業は導入する価値があります。

タレントマネジメントにおけるスキルマップとは?

タレントマネジメントとは、社員がどのようなスキルを持っているのかという情報から、人材配置や新プロジェクトのメンバー選定、育成プランを立てることです。ですが、社員一人ひとりに現時点での知識や経験のレベルを聞いていくのは非効率的です。そこで「スキルマップ」を活用し、『社員に関する欲しい情報』をいつでも取り出せるようにしておくのです。スキルの視覚化をしておくことで、業務に対する能力が足りないと感じた社員は育成プランに組み込むという風に対応することもできます。今まで発見できなかった社員の弱みにも気づくことができる点でも、「スキルマップ」は人材育成において欠かせない要素といっても過言ではないでしょう。

⇒グローバルタレントマネジメントについて詳しく知りたい方はこちら

スキルマップの作成の方法

具体的なスキルマップの作成方法は大きく分けると3ステップに分類されます。一段階ずつ解説していきますので、自社でどのようにアクションを起こすか考えてみましょう。

必要なスキルを可視化

あらかじめ業務で必要となる知識や、部下や後輩に身につけて欲しいスキルを考えてきてもらい、グループワークなどの発表し合う場を設けます。そこで各自15〜20分ほどの時間を設けて、考えてきた内容を具体的に発表してもらいます。例を挙げると、「Excelが操作できる」のような曖昧な意味のものではなく、「Excelで〇〇までの操作ができる」という風に発表できると良いでしょう。

ここで重要になるのは具体的な身につけてほしいスキルや知識だけを話し合うのではなく、いつまでに身につけて欲しいのかといったような期限も設定できるといいでしょう。

スキルを分類

次に「可視化した必要なスキル」をいくつかのグループで分類します。主にグループで議論しながら、必要なスキルをどの階層やどの年次までに身につけて欲しいかを決定します。基本的で習得があまり困難ではないスキルであれば早い年次に設定し、習得にはやや時間や経験が必要なスキルであれば遅めの年次に設定すると良いでしょう。

また階層や年次だけではなく、スキルの種類(専門スキル、社会的スキル)などの区別で分類しておくと後で整理しやすくなります。ただし種類での分類が曖昧なものが含まれる場合は、厳密に区別する必要はありません。ここの分類はあまり時間をかけず、大まかにで結構ですので作業を完了させましょう。

スキルマップを人事担当と共有

ここまででスキルマップに必要なステップは完了しているので、70%程度の出来になれば人事担当にその内容をシェアします。70%の理由は、現場ニーズから出る必要なスキル案ではカバーしきれない部分が多いためです。人事目線から会社を全体的に見た時に、労務管理などの組織運営には欠かせない要素が見つかるでしょう。そのため最初から100%の出来を求めることは困難であり、ある程度完成したところで提出した方が効率的なのです。

また会社全体の目標を達成するために必要なスキルの洗い出しから追加までの作業を行うのもこのフェイズです。マーケティングや広告宣伝などがそれに当たります。

ITSSとスキルマップを活用しましょう

会社の人材を無駄なく効率的に活用するためには、その人自身の能力や経験を一括管理しておき、いつでも即座に活用できるようなシステムを作っておくことが重要です。

そのために「スキルマップ」が大いに役立ち、社員のタレントマネジメントに大きな良い影響を及ぼすことでしょう。いきなり全ての情報の可視化を行うことは難しいため、些細なことからデータを収集して分析してみましょう。

スキルの可視化を行うことで、これまで気づかなかった自社の強みと弱みが見えてくるため、今後どの分野に注力していくべきか気づくと思います。この機会に「スキルマップ」を活用して、組織力アップに役立ててみてはいかがでしょうか。