ノーレイティングとは?メリット・デメリットや導入時の注意点を解説
現代の社会は技術が進歩するスピードが速いため、常に時代に沿った新しい手法が求められます。それはIT技術や働き方だけでなく、根底にある「制度」も同様です。従来の評価制度が思うように機能しなくなった今、近年「ノーレイティング」という新しい評価制度が注目を浴びています。
今回はその制度の概要と導入時のポイントについてご紹介します。
ノーレイティングとは?
ノーレイティングとは、普段の人事制度で行う従業員のランクづけをやめ、数値・記号以外の基準で評価する制度です。従業員は設定した目標に対して行動し、その過程をフィードバックしながら評価を決定します。
社会のIT化が進行している今、企業間の競争スピードは徐々に高まっています。その変化が激化している環境に対応できるのがノーレイティングです。1on1での面談やフィードバックをとおして頻繁に評価を行うので、現代に適した評価制度といえるでしょう。国内の有名企業も少しずつ導入が開始されていることもあり、注目が集まっています。
この制度が推進される背景には、従来のランクづけを行う評価制度「レイティング」に問題が生じはじめたことがあげられます。従来の評価は一定の基準で決定することが多く、従業員が優秀なスキルを保有していても反映しにくい面がありました。また従業員の大半は中間的な評価になるので「努力しても結果につながらない」というモチベーションを下げる原因にもなっています。このような問題点を払拭するために、新しい制度の普及が進んでいると考えられます。
ノーレイティング導入のメリットとデメリット
新しい制度であるノーレイティングにはメリットがある反面、デメリットも存在します。こちらでは、それぞれについて詳しく説明します。
ノーレイティングのメリット
ノーレイティングのメリットは以下の2点です。
- 外部環境の変化に対応しやすい
- 人材のモチベーションを高めやすい
今までの制度では時代の変化に対応できず、評価にズレが生じるケースがありました。しかしノーレイティングは1on1面談やフィードバックの頻度が多いため、社会や経済状況の変化に対応しやすいです。リアルタイムで評価を行うので、時代の変化にうまく乗りつつ適宜調整が可能です。
また定期的なミーティングとフィードバックにより、人材のモチベーションが高めやすいです。従来のレイティングでは一方的な評価を下されることが多く、従業員のモチベーションを下げる原因となっていました。ノーレイティングでは頻繁にコミュニケーションをとることで上司の認識、評価基準が明確となるため、従業員が納得しやすいです。今後の改善点も発見しやすいので、さらなる成長意欲が生まれるきっかけにつながります。
ノーレイティングのデメリット
ノーレイティングのデメリットは以下の2点です。
- 上司のマネジメントスキルが必要
- チーム全体の負担が増加する
従来のレイティングは、一定の基準をもとにして評価を決定します。しかしノーレイティングには基準がはっきりしていないため、上司の高いマネジメントスキルが求められます。上司のスキルが低いと妥当性のある評価を下せず、従業員からの不満が増える危険性があるでしょう。それでは新しい評価制度を導入する意味がありません。上司の判断で評価は大きく左右されるので、場合によっては事前のマネジメント研修が必要です。
またノーレイティングでは頻繁な面談とフィードバックを行う必要があるので、時間の確保が重要です。そのため上司と従業員を含めたチーム全体の負担が増加します。とくに上司は各従業員と細かいコミュニケーションを行うことになるので、時間的リソースを多く割かなければいけません。その結果他の業務を行う時間がなくなり、残業時間が増えてしまう危険性があります。企業によってはこの制度の導入自体が難しい場合もあるでしょう。
まとめると、ノーレイティングを導入するメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット
- 外部環境の変化に対応しやすい
- 人材のモチベーションを高めやすい
デメリット
- 上司のマネジメントスキルが必要
- チーム全体の負担が増加する
この点を念頭に置いたうえで、企業が新制度を導入する際の課題点を考えてみましょう。
ノーレイティングと給与の関係とは
従来の評価制度はランクに応じて給与が決定される仕組みでしたが、ノーレイティングはその基準がなく、上司の判断で決定します。上司は従業員との面談やフィードバック、業務成績などを考慮したうえで給与を配分するケースが多いです。
このような点からも、上司の負担の大きさがわかります。しかし頻繁なコミュニケーションをもとに給与が決定されるため、その分妥当性も高く従業員の納得も得られやすいです。上司の権限により給与の基準が大きく変動するので、新制度の導入を慎重に検討する企業も珍しくありません。
ノーレイティングを導入するためには?
ノーレイティングのメリット・デメリットを理解しましたが、導入前にはどのような準備をすればいいのかわからない方もいるのではないでしょうか。今回は3つに分けて導入前のポイントを説明します。
- 人事評価制度の課題を可視化する
- 管理職の研修を行う
- 従業員の理解を得る
人事評価制度の課題を可視化
最初に現在採用している人事評価制度の課題点を考えてみましょう。その課題点の原因を分析し、どのような手段を用いれば改善できるのかを調べます。ノーレイティングで課題が解決するようであれば、導入の検討を進めてみましょう。
「他の企業が導入しているから」「流行に乗りたいから」といった単純な理由だと、うまく運用できずに失敗する可能性が高まります。あくまでもノーレイティングは解決策の1つであり、すべての企業に当てはまるわけではないので、安直な理由で導入しないように注意が必要です。
管理職の研修
ノーレイティングは管理職のスキルの有無で効果が大きく変動します。そのため、導入する際は管理職に対しての研修を行うことをおすすめします。とくに重要なスキルは以下のとおりです。
- 信頼関係を作る
- 従業員の声を傾聴する
- 共感する
- 従業員の潜在パフォーマンスを高める
- 的確なアドバイスを伝える
このようなマネジメントを含めたヒューマンスキルは、仕事に関わらず重要といえるでしょう。その他にも新制度をスムーズに実施するために、面談の頻度や評価方法も事前に検討しておきましょう。管理職が研修を行うことで、ノーレイティングの成功率が高まります。
従業員の理解
ノーレイティングをうまく運用するためには、上司だけでなく従業員の理解・協力が必要不可欠です。「どんな制度なのか」「今までとどう違うのか」「どんなメリットがあるのか」など、従業員が疑問を持ちやすいポイントを事前に説明しておきましょう。
この説明が不十分だと、うまく制度が機能しなかったり、従業員から不満の声が出たりする危険性があります。各従業員の不安点、疑問点を取り除きつつ、新しい制度の理解・協力を得ましょう。
まとめると、ノーレイティングを導入するためのポイントは以下のとおりです。
- 人事評価制度の課題を可視化する
- 管理職の研修を行う
- 従業員の理解を得る
中途半端な準備では高い効果が出ないことが多いので、企業のシステムだけでなく上司・従業員ともに理解を深めていきましょう。
ノーレイティング導入の際の注意点
ノーレイティングを導入する注意点として「従業員とのコミュニケーションの継続」です。この制度は、従業員との密なコミュニケーションが非常に大きなキーポイントです。上司のマネジメントスキルも大切ですが、その土台にコミュニケーションがあります。そのため上司の時間的リソースを考慮しつつ、面談・フィードバックの機会を絶やさずに継続できるかが、その後の課題となります。
新しい制度の導入の前に、企業内での従業員とのやりとりが不足しているようであれば、まずはコミュニケーションを増やすことからはじめる必要があるでしょう。
メリット・デメリットを理解してノーレイティング導入を
ノーレイティングは利点だけではなく、同時にデメリットも理解したうえで導入を検討する必要があります。また運用を成功させるためには、上司と従業員を含めたチーム全体の協力が必要不可欠です。しかし従来までの評価制度を一新する画期的な手法でもあり、うまく運用すれば企業として大きな成長が期待できるでしょう。ノーレイティングを考えている企業は、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。