ポテンシャル採用とは?メリットや失敗しないポイントを解説!
優秀な人材を確保する方法として注目を集めている、ポテンシャル採用を導入する企業が増えています。しかし、「実際どんな採用方法なのか」「メリットがあるのか」「失敗する可能性はないのか」など、疑問に思う人事担当者も多くいます。
今回は、その言葉の意味から、導入のポイントを解説します。
ポテンシャル採用とは?
ポテンシャル採用とは、応募時に持っているスキルや資格、経験にこだわらず、求職者の人柄や成長の可能性を重視した採用方法のことです。「ポテンシャル(potential)」は、「潜在能力」と訳され、採用された従業員は、潜在能力を開花させて将来的に会社を牽引する存在として活躍することが期待されます。
特徴的なのは、即戦力としての採用ではなく、将来性や成長を見込んでの採用になる点だといえます。そのため、やる気が見られれば未経験職種でも積極的に採用する企業が多く、応募者にとってはやりたい仕事に挑戦しやすい採用方法です。
ポテンシャル採用の対象範囲は明確に定められているわけではありません。しかし、未経験から活躍できる人材になるまでの教育期間やコストを踏まえて、20代から30代の若手人材や第二新卒者をターゲットとしている企業が多いでしょう。
新卒採用や中途採用との違い
ポテンシャル採用と従来の採用方法の違いは何でしょうか。
新卒採用とは、学校を卒業したばかりで企業での労働経験のない人を採用することです。経験やスキルのない人材を対象とする点はポテンシャル採用と同じですが、採用活動を行う時期や、応募資格などが異なります。
新卒採用では、学校を卒業する人が多い4月や9月と期間がある程度決まっています。また、「令和○年度に大学を卒業する者」や「卒業後○年以内の者」など、応募できる人に制限を設けている場合がほとんどです。
一方、ポテンシャル採用は不定期に実施され、採用基準や応募資格も企業や職種によってバラバラです。
中途採用とは、社会人経験のある人を採用することを指し、「即戦力としての活躍」が求められる場合がほとんどです。「キャリア採用」とも呼ばれ、前職で築いたキャリアを活かすことが前提のため、スキルや経験、知識が必要になります。
ポテンシャル採用が注目されている背景
ポテンシャル採用が注目されている背景には、日本における働き方の変化などがあります。特に、以下の2つが影響しているといえるでしょう。
- 人材の獲得競争が続いている
近年の就職市場、転職市場では、売り手市場が続いています。売り手市場とは「企業からの求人数が求職者数を上回っている状態」のことで、企業は優秀な人材を獲得しにくいことを意味します。特に中小企業では人材の獲得競争が激しく、応募者が集まらなかったり、内定者に辞退されてしまったりして、必要な人材を確保しにくい状態が続いています。
難航する人材採用を打開する方法として、ポテンシャル採用が注目を集めているのです。経験者や資格保持者に限らず、未経験者でも応募できるように間口を広げることで、必要な人材を確保しやすくなるでしょう。
- 既存の仕組みでは獲得できない人材がいる
日本では働き方や学び方が多様化しており、海外の大学を卒業して日本企業に就職する人もいれば、ワーキングホリデー経験のある人もいます。海外の卒業シーズンと日本の卒業シーズンにはズレがあるため、新卒採用では海外経験豊富な人材を獲得しにくくなっていました。
採用基準や応募期間の枠組みにとらわれず、優秀な人材を確保するためにもポテンシャル採用は有効です。さまざまな経験やキャリアを持つ人材と出会えるようになるでしょう。
ポテンシャル採用のメリット
3つのメリットを紹介します。
優秀な若手人材を採用できる
応募時点で持っている経験やスキルで採用可否を判断するのではなく、採用後の成長度や仕事に対する意欲を重視して判断するポテンシャル採用によって、伸びしろのある若手人材を獲得できます。
また、働き方の多様化が進んでいることを背景に、これまで主流だった年功序列や終身雇用の考え方も変化しています。昨今は自身が求めるキャリアに応じて転職することは珍しくありません。特に若手人材は「より自分を活かせる企業に転職をしたい」と考えるようになり、成長意欲にあふれた人材も多くいます。
ポテンシャル採用はそのような高い意欲を持ち、企業で活躍できる能力を秘めた人材を見つけ出す上で効果的な方法だといえるでしょう。
また、優秀な若手人材を採用すれば、企業の経営層に厚みを持たせることができます。企業が成長を続け存続するためには、次世代を育てていく必要があります。早いうちにリーダーや経営陣として教育しておくことをおすすめします。
ビジネスマナーを習得した人材を採用できる
ポテンシャル採用は可能性を重視した採用方法ですが、対象となるのは新卒者や社会人経験のない人ばかりではありません。他社で経験を積んだ人もポテンシャル採用の対象です。
他社で社会人経験を積んだ人をポテンシャル採用する場合は、職種や業界に対する知識や経験がなくとも、最低限のビジネスマナーを習得していると考えられます。そのため、マナー研修にかける費用や時間を削減できる分、業務理解に時間を使えるでしょう。
社会人経験のある人材は、ビジネスマナーだけではなく、パソコンの基本的な操作方法、仕事におけるスケジューリングやタスク管理の方法を知っています。専門スキルや知識さえ身につければ、新卒採用者以上にはやく戦力となり得るのです。
若手層の応募が集まりやすい
多くの企業では、ポテンシャル採用の対象は20代ぐらいの若手層とされています。可能性重視の採用であるため、「未経験者歓迎」とする求人が多く、経験の少ない若手人材には応募のハードルが低く感じられるでしょう。
応募総数が増えるほど、企業とマッチする人材を獲得できる可能性も高まります。しかし、応募のハードルが低いということは、自社が求める人材像から遠く離れた人からも応募が届くということです。
ポテンシャル採用では、応募者の素養や性格を見極めて、本当に自社に必要な人材なのかを慎重に検討する必要があるのです。
ポテンシャル採用のデメリット
ポテンシャル採用は大きなメリットを得られる採用方法ですが、以下のようなデメリットもあります。メリットだけでなくデメリットも踏まえて、自社への導入を検討すると良いでしょう。
- 教育コストがかかる
潜在能力を評価して採用する場合、業務に関する知識や経験がありません。そのため、入社後は研修を行う必要があるでしょう。
社会人経験があればビジネスマナー講習などは必要ありませんが、社会人経験がない場合はマナー研修やパソコンスキル講座なども必要になるため、教育にかかる費用と時間がかかるというデメリットがあります。
さらに、業界知識をゼロから教えるための教育制度や、マニュアルなどの準備も必要です。長い目で見て企業に貢献する人材を育てるために、「OJTとOFFJTの併用」や「オンラインによる外部研修」「メンター制度の導入」などの仕組みづくりに取り組むと良いでしょう。
- 人材の見極めが難しい
ポテンシャル採用は応募者の経験や保有資格などから、応募者の力量を測ることができません。もし会社の雰囲気や業務内容が合わないと感じた場合、従業員は離職してしまうこともあり、それまでにかけた研修費用や教育コストが無駄になってしまいます。
採用の参考になるような客観的な指標がないため、自社で活躍できる人材かどうかの判断が難しい点が、ポテンシャル採用のデメリットです。
面接では、応募者をさまざまな観点から見極めるように注意しましょう。社会人としての基本的なスキルや態度、仕事に対する考え方が分かるような質問をしたり、未経験業種に挑戦する意欲を聞いたりしておくことが大切です。
また、社会人経験者のポテンシャル採用を検討する場合には、前職の離職理由や空白期間の有無などを確認しておき、仕事に対する向き合い方や自社に合う資質のある人かを見極めましょう。
ポテンシャル採用で失敗しないポイント
ポイントは4つです。
人材育成が前提の採用を行う
潜在能力を重視する採用であるということは、未経験者をゼロから育てなければならないということです。ポテンシャル採用は即戦力の獲得が目的ではなく、将来的に活躍する人材の獲得が目的であるため、人材育成が前提の採用であることに留意しましょう。
最低限の社会人スキルがあったとしても、業界知識や職種経験はない場合がほとんどなので、時間をかけて教育するために教育制度を整えておく必要があります。
上長との定期的な面談の機会を設けるなどして、ポテンシャル採用の人の悩みや相談を打ち明けられる機会を作ると教育も効率的に進むでしょう。
戦力化には研修などのサポートが必須
ポテンシャル採用者が実務で戦力として活躍できるようになるには、社内研修や外部研修を活用したサポートが必須です。いち早く業務理解を深めてもらうために、メンター制度を導入して不明点があればすぐに聞ける体制を整えたり、分かりやすいマニュアルを作成したりしましょう。
また、ビジネスマナーや基本的な仕事への考え方については、外部企業が提供するオンライン講習などでカバーできます。自社内ですべて完結する必要はないので、ポテンシャル採用者の成長を支える工夫や仕組みを取り入れましょう。
自社が求めるポテンシャルを明確化する
ポテンシャル採用で失敗する要因の一つに、「自社が求める能力が分からないまま採用した」ことが挙げられます。潜在能力という、数値化しにくい物事を見極めて自社に適した人材を獲得するためには、自社が求めるポテンシャルを明確化することが大切です。
たとえば、「どんなスキルを習得して欲しいか」「どんな人間性の人材か」「必要な素養は何か」など、できる限り求める人材像を具体的にイメージし、採用活動に関わる人全体に共有するのです。
「この人は成長する気がする」と、あいまいな感覚で採用を決めてしまっては、ポテンシャル採用のメリットを受けにくくなります。入社後にミスマッチが発覚して人材の流出やコストの無駄を避けるためにも、求職者に求める項目を明確にしておきましょう。
キャリアビジョンの擦り合わせを行う
ポテンシャル採用に応募する人は、自分自身の中に明確なキャリアビジョンを持っている場合があります。また、企業も応募者の持っている可能性に合わせてキャリアビジョンを考えることになるでしょう。
お互いの考えるビジョンが違えば、入社後のミスマッチから離職に繋がりかねません。採用面接などの選考過程で入社後のキャリアについて擦り合わせを行っておきましょう。
たとえば、「店長になってエリアで一番の売上を達成したい」「マネジメント職について新人教育を担当したい」など、職種によってさまざまなビジョンが考えられます。応募者の描くキャリアビジョンを自社で実現できるかどうかを検討しながら、選考を進めることが大切です。
ポテンシャル採用の導入事例
2社の事例を紹介します。
ヤフー株式会社
ヤフー株式会社は第二新卒者や既卒者、海外大学出身者など、幅広い求職者に柔軟に対応するため、2016年10月に新卒一括採用を廃止しました。
ポテンシャル採用を導入後は、18歳以上30歳以下の人材であれば卒業年度や経験を問わず誰でも応募できるようになり、優秀な人材を獲得しやすくなっています。
サイボウズ株式会社
かつては「29歳以下」という年齢制限を設けていたサイボウズ株式会社では、ポテンシャル採用の導入と同時に年齢制限を撤廃しました。
専門的なスキルや経験がなくても、挑戦しやすい環境を整えています。
ポイントを押さえて自社とマッチする人材を見つけよう
ポテンシャル採用は、新卒採用や中途採用とは異なり、間口を広くしてより多くの応募者を集められる採用方法です。応募者の成長の可能性や人柄を重視した採用をすることで、企業の次世代を担う人材を育てられるほか、自社とマッチする人材を見つけやすくなります。
しかし、教育コストや研修制度の導入が必要になるなどのデメリットがあるため、事前の準備をしっかりしておくことが求められるでしょう。
失敗しないためには、重要ポイントを押さえて採用活動にあたることが大切です。中長期的な目線で見て、自社で活躍できる人材を採用しましょう。