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テレワークにおける健康管理の課題!具体的な解決方法を解説

政府による働き方改革の推進を背景に、テレワークを導入する企業が増えています。しかし、テレワークを始めてから従業員の健康管理に頭を悩ませる人事担当者は少なくありません。従業員が心身ともに健康な状態で仕事に前向きに取り組めるように、新しい働き方を導入した後は、従業員一人ひとりの健康を管理することが大切です。

今回は、テレワークでの健康管理における課題とその解決方法を紹介します。従業員が抱えている負担にいち早く気づき、離職防止や働きやすさ向上に努めていきましょう。

テレワーク時の健康管理とは

「テレワーク」と聞くとどのようなイメージが思い浮かぶでしょうか。多くの人が、通勤時間がなくなり、リラックスできる自宅で仕事ができることなどから、「自由」「開放的」というイメージを抱いています。

しかし、自宅で仕事をするテレワークは精神的な負担や肉体的な負担が大きくなりやすいというリスクがあります。企業は従業員のメンタルケアに加え、体の健康維持に気を配る必要があるのです。

  • 精神面の健康管理

自宅を仕事場とすると、プライベートと仕事の切り替えが難しくなります。ONとOFFの切り替えができないために、集中力が低下して業務効率が下がると、企業としても損失につながってしまいます。

また、テレワークは職場の同僚や上司とコミュニケーションをとる機会が減少し、孤独感を抱きやすい点にも注意が必要です。オフィスに出社していた場合はランチを一緒に食べたり、小休憩に雑談をしたりして息抜きできていましたが、そうした時間がなくなることで精神的な負担を感じやすくなります。

  • 身体面の健康管理

テレワークを始めると、従業員は通勤する手間がなくなるというメリットを得られます。その一方で、通勤のために歩いていた運動時間がなくなって運動不足に陥ってしまうというデメリットもあります。

さらに、テレワークはパソコン1台でほとんどの業務が完結するために座り姿勢が続くことも、身体の健康に悪影響を及ぼす一因です。座りっぱなしでいると、発がんリスクや糖尿病のリスクが高まるという研究結果を国立がん研究センターが発表しています。

テレワーク時の健康管理の課題とは

大きく分けて2つの課題があります。

社員の健康

テレワークを導入する場合は、従業員一人ひとりの健康に悪影響を及ぼさないように注意しなければなりません。なぜなら、テレワークではプライベートとの切り替えがしにくいために、ついつい「規定の労働時間を超えて働いてしまった」というパターンや、「座りっぱなしで腰と肩を痛めてしまった」というパターンが起こり得るからです。

人とのコミュニケーションが少なくなることで孤独感が強くなり、精神面での健康に影響が出る場合もあります。

こうした従業員の心身の変化は、上長や人事担当者の目が届かないテレワークでは把握しにくいという課題があります。具体的には2つの課題が挙げられます。

体調不良に気づけない

テレワークは自宅を就業場所にするので、家族以外に周囲の目がありません。そのため、従業員が体調不良になっていても気づけないという課題があります。

オフィスに出社していたら、同じフロアに勤務する同僚などが「顔色が悪い」などの変化に気づいて声をかけてくれたり、早退を促してくれたりします。テレワークにおいては、従業員本人から体調が悪いことを申告しない限り、周囲は体調不良に気づけないのです。

また、本人が気づかないうちに精神的な負担が大きくなっていて、仕事に対するモチベーションが低下したり、うつ状態になったりする場合があります。心身の不調に周囲が気づける環境づくりや、従業員本人が体調不良だと申告しやすい雰囲気づくりが重要です。

生活習慣が乱れやすい

「生活習慣病」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。生活習慣病とは、食事や運動、飲酒などの生活習慣が要因となって発症する病気の総称です。

テレワークでは、長時間の座り姿勢や通勤時間削減などによる運動不足が悩みの種になります。さらに、仕事とプライベートの境界線があいまいになることで食生活の時間が不定期になったり、睡眠時間が安定しないなど、生活習慣が悪化しやすくなります。

こうした生活習慣が引き金となって肥満などの生活習慣病になるリスクが高まることが、テレワークの課題の一つです。肥満は、高血圧症や進行すれば心筋梗塞などの重大疾患の要因になるため注意が必要です。

従業員が規則正しく生活できるように、会社側での健康管理を行うことが大切です。

労務の管理

テレワークになると労務上の管理がしにくくなるという課題があります。テレワークを始めるにあたって各企業は、従業員一人ひとりの労働環境を整えたり適切な指示出しをしなければなりません。この際は、事務所衛生基準規則や労働安全衛生規則を参照することが大切です。

労務の管理において重要なのは、従業員の労働時間を正確に把握することです。テレワークは時間を忘れて長時間労働する従業員が発生しやすく、休憩時間を取らないで働く従業員がいる場合が考えられます。

規定の労働時間を超えて勤務させることは法律で禁じられているため、各企業は従業員が適切な労働時間を守っているかしっかりと管理しなければなりません。

また、テレワーク時は労働安全衛生法に記載されている健康管理についての準備が必須です。第66条では、従業員に対して医師による健康診断を実施することや、ストレスチェックの実施が義務付けられています。

オフィス出社からテレワークに切り替わっても、ストレスチェックや健康診断を続けられるように事前の体制準備をしておきましょう。

テレワーク時の健康管理の方法

3つの方法を紹介します。

未然に防ぐ工夫をする

従業員の健康状態を一人ひとり把握するのは、規模の大きい会社ほど困難です。そのため、会社全体の仕組みやテレワークへの取り組み方を明確にして、健康被害を未然に防ぐ工夫を全社的に取り入れるようにしましょう。

テレワークの普及の影響で、昨今は多くの勤怠管理ツールやタスク管理ツールが開発されています。勤怠管理システムを利用することで、長時間労働になりそうな従業員にアラートを表示してサービス残業の防止や休憩をとるように促せるようになります。

また、タスク管理ツールを導入すれば従業員がそれぞれに抱えている業務量や業務の偏りに気づきやすくなります。そのため、誰か1人に極端に負担をかけることなく、メンタル面の健康維持が期待できます。

没交渉になりやすいテレワークにおいては、仕事と関係のない話を気兼ねなくできるチャットルームを用意するのが有効です。悩みや不安を吐き出しやすい場所をつくり、従業員の孤独感を取り除く工夫をしましょう。

周りが気づける仕組化をする

従業員がもしも不調を感じていたら、周囲がそれに気づけるような仕組みをつくることで、健康管理が容易になるでしょう。

たとえば、定期的にストレスチェックの機会を設けて従業員本人も気づいていないような精神的負担を発見しやすくしたり、健康相談のための専門窓口を社内に設置して相談しやすくしたりすると良いでしょう。

相談窓口の設置だけで終わらず、従業員が正直に相談できるように、気軽に話しかけられる雰囲気づくりに努めることも大切です。

労働時間の管理をする

長時間労働になりやすいテレワークでは、労働時間を徹底して管理する必要があります。中には、始業と終業時間をメールで知らせる、就業時間外の場合には会社のデータにアクセスできなくするなどのシステムを導入している企業があります。

労働時間の管理を楽にするために、専用のシステムや、時間管理に役立つツールの導入を検討してみることをおすすめします。

テレワーク時に気を付けるべき健康管理のポイント

テレワークを導入した企業が健康管理を適切に行うためには、社内の人事担当者や労務担当者、管理下にある従業員本人など、社内全体で連携して情報を管理する必要があります。

特に従業員の健康情報は個人情報として大切に取り扱い、閲覧制限を設けたり、関係者ごとに操作できる範囲を定めるようにしましょう。ただし、担当者ごとにシステムやフォルダを作成すると、データの重複や確認漏れなどの人的ミスが発生しやすくなるため、データはできるだけ一元管理できると良いでしょう。

テレワーク時の健康管理を仕組化しましょう

テレワークやリモートワーク、在宅勤務など、新しい働き方が社会全体に普及するとともに、従業員の健康管理に関する課題が目立つようになりました。上長や人事、労務担当者の目が届かないテレワークでは、気づかぬうちに心身の健康状態が悪化している可能性があります。

企業が健康管理を徹底することで、法律を遵守しながら従業員の健康を守ることができるでしょう。そのためには、健康被害を未然に防ぐ工夫を講じ、不調を抱える従業員がいたらいち早く気づける仕組みを構築することが大切です。

従業員の健康が損なわれれば、会社にとっては生産性の低下につながりかねません。社内の関係部署と連携しながら、健康管理の体制を最適化していきましょう。