有資格者一覧表はなぜ必要?作成目的と管理する際の注意点を解説
会社には必ずと言っていいほど資格を保有している社員がいます。ところが「誰が何の資格を持っているか分からない」「うちの会社で国家資格を所持している人はいる?」など、管理していない企業も多いです。
有資格者一覧表としてまとめておけば、様々なメリットがあります。そこで今回は有資格者の特徴や一覧表を作成する目的を中心に解説していきます。
有資格者一覧表とは
有資格者一覧表とは資格を保有している従業員を管理する表です。とくに従業員数が多い企業や資格保有者が大勢いる場合はまとめておいて損はありません。
誰もが見やすい表として一元化しておけば生産性も上がります。一覧表については後述するポイントを押さえて作成していきましょう。
必要な資格を整理する
まずは一覧表にまとめる際は必要な資格だけを整理していきましょう。なぜならば、業務につながらない資格を表に記載しても意味がないからです。
加えて不要な資格を表に記入してしまうと、本来重要な資格を見逃したり、整理する際に時間が掛かったりしてしまいます。
そのためにもあらかじめ「どんな資格が必要か?」「うちの会社では何の資格が業務に役立てるか?」を精査しておきましょう。具体的に落とし込んでいけば、本当に必要な資格が分かってきます。
決められたフォーマットはない
一覧表に決められたフォーマットはありません。後述するExcelで作成するのが一般的であるものの、社内システムで独自の管理をしても良いでしょう。
また「有資格者一覧表 フォーマット」でインターネット検索すると、無料でダウンロードできるサイトが見つかります。サイズが複数あったり、使用目的によってフォーマットがいくつか用意されていたり。好みに合わせてダウンロード出来るのがポイントです。
このようなフォーマットを自分達で加工し、使いやすくしても良いかもしれません。
有資格者一覧表の項目
有資格者一覧表の項目に必要な情報をあらかじめ記入しておきましょう。例えばExcelで作成する場合は一番左の列から順に「社員番号」「氏名」「資格名」「その他情報」といったかたちで記入していきます。
資格名には必要な資格を羅列していき、重要度から順に左→右へと並べていきましょう。書ききれない場合はページ数を分けたり、部署ごとにフォーマットを分けたりしてもかまいません。重要なのは見やすいかどうかがポイントになります。
表が完成したら社員番号や氏名を記入し、該当する資格名欄を黒丸で埋めていきましょう。黒丸で表示しておくと、一目で取得可否が分かります。全員分の項目を埋めたら完成です。
有資格者とは
有資格者とは持ち合わせている技能やスキルを証明するための資格を所持している人です。企業が効率的かつ売上向上を目指すのであれば、有資格者に対する理解を深める必要があります。
なぜならば資格所持者の情報を適切に把握しておくと「この業務は専門資格を持ったあの人に任せよう」「自社はある特定の資格を持った社員が多いから、それを活かした新部署をつくれるかもしれない」などの判断がつくからです。
実際に順調に売上を上げている企業は何百種類もの資格を管理しているのも事実。会社がレベルアップするには有資格者の管理が不可欠なのです。
会社が管理する代表的な資格
会社が管理すべき代表的な資格は国家資格・民間資格・社内資格などです。
具体的には国家資格であれば行政書士や歯科衛生士、民間資格はアロマテラピー検定資格やカラーデザイン検定資格、社内資格は管理者育成資格や顧客対応インストラクター資格など。
いずれも知識やスキルがなければ取得できない資格であり、資格によっては取得倍率が何十倍にのぼる場合もあります。
管理すべき有資格
会社が管理すべき資格は前述した「会社にとって利益を生み出せるであろう資格」です。業務に活かせ、売上につながる資格になります。
そのため趣味程度で取得した資格、あるいは業務とは無関係な資格は効力を発揮しません。後述する一覧表に記載してもほぼ意味がないということです。管理者側は資格を管理すべきであるものの、重要性のある資格のみをまとめていく必要があります。
有資格者一覧表の必要性
企業が業務を行う際、「特定の資格を有している」必要があると法令で定められている業務があります。例えば、建設の工事現場では、工事全体の管理者として、経験や技術を持った人を現場に配置することが義務付けられています。その人員配置の際に資格を所有しているかの提出を求められます。
企業側は法令を順守しなければならないので、社員全員の資格情報や経験を含めて把握しておく必要があります。また、人員配置をする際にその情報を基に適切な配置をしなければなりません。
誤った情報で人員配置をしてしまい、法廷違反となった場合は、会社の存続が脅かされる事態になってしまいます。それくらい、資格所有は大切なこととされています。
また、業界によっては、多数の資格が存在しており、数百単位での資格の管理をしている企業もあります。その場合は、社員全員の資格情報を紙で管理するのは現実的ではなく、抜け目なく管理するためにはシステムの導入をしている企業も多くなってきました。
労働安全衛生法で主に求められている資格
- クレーン・デリック運転士免許
- 移動式クレーン運転士免許
- 揚貨装置運転士免許
- 高圧室内作業主任者免許
- 発破技士免許
- ガス溶接作業主任者免許
- ボイラー整備士免許
- 衛生工学衛生管理者免許
- 第一種衛生管理者免許
- 第二種衛生管理者免許
- 林業架線作業主任者免許
- エックス線作業主任者免許
- ガンマ線透過写真撮影作業主任者免許
- 潜水士免許
- 特定第一種圧力容器取扱作業主任者免許
- 特級ボイラー技士免許
- 一級ボイラー技士免許
- 二級ボイラー技士免許
- 特別ボイラー溶接士免許
- 普通ボイラー溶接士免許
建築業法で主に求められている資格
- 1級建設機械施工技士
- 2級建設機械施工技士(第一種~第六種)
- 1級土木施工管理技士
- 2級土木施工管理技士(土木)
- 1級建築施工管理技士
- 2級建築施工管理技士(仕上げ)
- 1級建築士
- 2級建築士
- 1級管工事施工管理技士
- 2級管工事施工管理技士
- 1級造園施工管理技士
- 2級造園施工管理技士
- 技術士試験 建設・総合技術監理(建設)
- 技術士試験 農業「農業土木」・総合技術監理(農業「農業土木」)
- 技術士試験 水産「水産土木」・総合技術監理(水産「水産土木」)
有資格者一覧表はExcelで作成することが多い
有資格者一覧表は自由に作成できますが、基本的にExcelで作成するケースが多いです。なぜならシンプルで管理者の作成労力も最小限に防げるからです。
前述のように一覧表は社員番号・氏名・資格名などの項目をつくり、全社員の情報を埋めていく作業になります。誰でも簡単に作成でき、過度に作り込む必要はありません。オリジナリティあふれた一覧表を作成してしまうと、かえって見づらくなり本末転倒。加えて作業に時間がかかるだけでなく、作成担当者が退職した際の引継ぎも一苦労です。
以上のような理由から有資格者一覧表はExcelで作成するのが良いでしょう。
有資格者を管理する際の注意点
有資格者一覧表を管理する際はいくつか注意点があります。まず最も気を付けておきたいのは資格の更新・有効期限です。期限が過ぎた資格は無効となるため、効力を発揮しません。
管理者が期限を従業員と共有しておくのに加え、場合によっては「有効期限」の欄を加えておくのもおすすめです。また、一覧表が完成したら常に追加や修正を行っていきましょう。更新作業を後回しにしてしまうと、いざ業務に活かそうにも役目が果たせません。そのため、新入社員入社シーズンや人の入れ替わりが激しい時期はまめに管理しておきましょう。
一覧表の書き方と記入の例
以下の情報を基に一覧表の記入をしていきます。
- 会社名や事業所の名称
- 作成日 ※必ず最新の情報が記載されている日付か確認しましょう。
- 有資格者の氏名
- 資格名称
有資格者一覧表を作る目的は3つ
ここからは有資格者一覧表を作る目的を解説します。
法令に対して順守・安全な業務を行うため
有資格者一覧表を作るのは法令順守・安全担保が目的です。業務によっては資格が必要な場合もあります。例えば、ボイラを取り扱う場合はボイラ技士免許が必要不可欠。他にも吊上げ荷重が5トン以上のクレーン運転の業務にはクレーン運転士免許が必要です。
資格が必要な業務は多岐に渡るため、あらかじめ一覧表で管理しておくのが重要になります。また、ある業務に資格が必須でなくても「資格が無ければ業務を安全に遂行できない」「資格を保有していないと危険な作業」といった場合もあります。そのようなケースに備えるためにも一覧表の作成が必須です。
製品やサービスの品質を維持・向上させるため
有資格者一覧表を作成することで製品やサービスの品質を維持・向上させられます。
例えば、家電量販店のスタッフは家電アドバイザー資格の取得が必須ではありません。とはいえ取得者が多いに越したことはないでしょう。一覧表をもとに資格の推進を行えば取得者が増え、お客様に最適な家電をおすすめできます。結果的にサービスの向上につながるのです。
このように一覧表を作成すれば、サービス品質の底上げを図れます。
社員の能力を向上させるため
一覧表を作成すれば社員の能力やスキルアップにつながります。ある企業では資格取得者一覧表を社員出入口に掲示。誰がどの資格を取得しているのか従業員全員一目で分かるのです。
結果「私も負けずに取得を目指そう」「あの先輩へ追いつくためにワンランク上の資格を取ろう」となります。会社全体に競争力がうまれ、一人一人の能力やスキルアップにつながりやすいです。
社員のモチベーションを上げたい場合は有資格者一覧表を上手く活用していきましょう。
有資格者のみが業務を行うようにする
当然ながら資格が必要な業務は有資格者のみが行うべきです。万が一無資格者が業務を行った場合、会社全体の連帯責任となり罰則対象となります。
そのため、管理者は一覧表で管理するだけでなく、有資格者のみが業務を行う仕組みをつくらなければいけません。例えば、資格が必要な業務を行うフロアにカード認証装置を設置。有資格者のみに専用カードを持たせ、業務を行う際は有資格者だけが入室できる流れにします。
このようなシステムをつくれば、有資格者のみが業務を行えます。他にも顔認証システムを採用する会社もあるため、業務に参加できるシステムを見直すと良いでしょう。
従業員のスキルは有資格者一覧表で管理しましょう
有資格者とは持ち合わせている技能やスキルを証明するための資格を所持している人です。その上で、資格者を表にまとめたのが有資格者一覧表になります。一覧表は資格保有者を見える化するだけでなく、法令順守や安全担保にもつながります。
決められたフォーマットはありませんが、シンプルにExcelで作成すると管理しやすいです。また、一覧表は鮮度が重要なため、随時追加や修正を行っていきましょう。一覧表を適切に管理できれば業務の生産性も上がるはずです。