イニシアティブの意味とは?シーン別の使い方や仕事におけるポイントを解説
イニシアティブはビジネスやスポーツの場面で使われるワードです。「イニシアティブを取るのが重要」「イニシアティブを取ってこそ成功に導ける」などと表現します。とはいえ本来はどのような意味があるのでしょうか。そこで今回はシーン別の意味と仕事におけるポイントを解説します。
イニシアティブとは?
イニシアティブとは一般的に主導や先導といった意味で使われるケースが多いです。両者とも何かを導く際に使う点ではほぼ変わりません。しかし、意味が若干異なるのは念頭に置いておきましょう。前者の場合は「主導権を握る」「主導的な立場で業務に携わった」などと使われます。
具体的には場の雰囲気を自分自身がコントロールし、一丸となって引っ張る言葉として使われるのが一般的。一方、先導の場合は先頭に立ち、方向付けを行う際に使うケースが多いです。大きな違いは中心に立ってリードするかどうか。主導は輪の中心に入って全員をまとめていきます。
先導はあくまで方向性を導くだけです。マラソンや駅伝で言う「先導車」をイメージしてもらえれば良いでしょう。レースには参加せず、選手が走るべきコースを導くのが仕事です。以上のように同じイニシアティブでも、使われるシーンで意味がわずかに異なります。
イニシアティブ(initiative)の意味
イニシアティブは英語のinitiativeから来ています。主導や先導といった意味を持ち合わせているのは同じです。とはいえその他にも様々なシーンで使われるのは押さえていきましょう。
例えば、initiativeには構想や戦略などの意味があります。plan(計画する)に近い使われ方をし「manager announced an initiative to rebuild team」で「マネージャーはチーム再建の計画を発表した」と翻訳可能。
また、自発性ややる気といった意味を持ち「She showed a lot of initiative as a player」で「彼女は選手として多くの自発性を見せた」と訳せます。日本でイニシアティブと言えば立場を示す言葉として使われますが、initiativeはこのように構想ややる気などで使われるケースが多いです。外国人を相手にビジネスを行う方は、違いを知っておいて損はありません。
イニシアティブのシーン別での意味、例文
シーン別の意味と例文について解説します。
ビジネスにおけるイニシアティブ
一般的にビジネスでは主導権を指すケースが多いでしょう。「競合企業にイニシアティブを握られてはいけない」「業界内で一刻も早く主導権を握るべきだ」などと使います。自分と相手における立場を示す意味として使われるのです。利用シーンは社外だけでなく、社内でもリーダーシップを発揮するシーンで見受けられるもの。
「組織の主導権を握ってほしい」とあれば「メンバーをまとめてしかるべき方向へ進んでほしい」という意図が含まれています。また、ビジネスのシーンでは自発力の意味として使われるのも事実。「イニシアティブをもっと発揮してほしい」とあったら、積極性を前面に出して仕事へ取り組んでほしいと捉えられます。
一般的には主導権の意味で使われるものの、積極性や自発力を促すシーンでも使われるのは念頭に置いておきましょう。
スポーツにおけるイニシアティブ
スポーツでは優勢な場面で使われるケースが多いです。例えば野球では「3点リードしているからイニシアティブを握っている」「ホームゲームだから主導権を取りやすい」などと使われるでしょう。
反対に「相手はエースピッチャーで主導権を握られている」とあれば、不利な状況であると捉えられます。とくにスポーツは一瞬のプレーで有利・不利が入れ替わるため、主導権がどちらに傾くか予想できないのも特徴。スポーツ実況の中ではしきりに主導権やイニシアティブといったワードが飛び交います。
また、チームリーダーに対し、先導や主導などの意味で「チームのイニシアティブを取ってほしい」とマネージャーから伝えられる場面もあるでしょう。とはいえ、一般的には有利・優勢を指す意味として使われます。
政治的におけるイニシアティブ
政治のシーンでは構想や国民発案の意味として使われます。例えば構想では「都市型推進イニシアティブが政府によって発足された」「未来共創イニシアティブが発表された」などと使うシーンが多いです。ニュースでも頻繁に見受けられるでしょう。
また、国民発案では「いかなる市民もイニシアティブを起こし案を提案できる」「イニシアティブが可決されるには過半数の賛成が必要だ」などと使われます。国民発案とは国民投票の一つであり、国民が憲法に提案を行える制度です。
日本は地方公共団体で住民による提案が認められています。住民投票にて可否決定するのです。このように、政治的におけるイニシアティブはビジネスやスポーツの場面と大きく異なります。
イニシアティブの類語と対義語
イニシアティブの類義語と対義語を解説します。
イニシアティブの類義語
イニシアティブの類義語を解説します。
リーダーシップ
イニシアティブと似た語句としてリーダーシップがあります。2つとも「組織を引っ張っていく」「集団の先に立って案内する」などの意味を持ち合わせているため、そのようなシーンではどちらを使っても問題ないでしょう。
しかし、リーダーシップを使う場合、対象人物はあくまでリーダーであるのが条件です。キャプテン・部長・チームリーダーが組織やチームを引っ張る際「キャプテンがリーダーシップを発揮している」「部長のリーダーシップのおかげで組織はまとまっている」と使えます。
一方、イニシアティブは肩書を持たない人も対象となるのです。一般職の方に対し「イニシアティブを存分に発揮してほしい」と使えます。以上のように本来の意味は同じでも、対象人物の違いで使う言葉が異なるのは念頭に置いておきましょう。
率先
イニシアティブには主体的の意味もあり、率先との違いが分からない場面もあるでしょう。どちらも集団の前に立ち、行動を起こす意味として使われます。「率先して雑用を行いましょう」「主体的に自己学習をするべき」「率先して若手に手本を見せましょう」などと使うシーンが多いです。
2つの違いとして、こちらもリーダーシップと同様に対象者が異なります。率先はあくまでリーダーや上位役職者が対象。一般職や部下に向けて行動を起こし、進んで手本を見せる意味として使われます。
一方、イニシアティブは権力や役職を問いません。若手のメンバーや新入社員も対象となるのです。そのため、年齢や社歴が浅いメンバーを奮い立たせたい場合はイニシアティブを使っていきましょう。
積極的
かかんな行動を表現する言葉として、積極的もしくは積極性があります。このような意味も含まれており、混同するケースが多いでしょう。違いは表現する対象です。イニシアティブは主に行動へ焦点を当てています。
例えば「誰よりもイニシアティブを取ってくれて助かった」「苦しい瞬間にイニシアティブを発揮して頼もしかった」などと使います。一方、積極的は性質そのものを表現する際に使うのが一般的。「Aさんは積極的だね」と表現します。ここで「Aさんはイニシアティブだね」とは使いません。
行動に対して使う際はイニシアティブ、人の性格を表現する際は積極的と覚えておくと良いでしょう。
イニシアティブの対義語
イニシアティブの対義語を解説します。
追従、追随
イニシアティブの先導や率先における対義語として追従や追随があります。追従とは他人の言動に従う言葉です。「Bさんはすぐに人の意見に追従する」「日本はアメリカに追従した姿が目立つ」などと使われます。どちらかというと、ポジティブな場面よりもネガティブな表現として使われるケースが多いです。先導や率先と対極にあるのが分かるでしょう。
また、追随とは前を行くものに従う言葉です。「他国の株価に追随し日本の株価も上昇した」「自社のサービスは他の追随を許さない」などと使います。追従と同様、人やものの後に続く意味を持ちあわせているのです。
追従と追随の明確な違いは姿勢が前向きであるかどうか。追随は「優れた人/もののまねをする」意味を持ち、ポジティブな場面で使われます。追従は前述の通り、ネガティブな場面で使われるのを念頭に置いておきましょう。
フォロワーシップ
フォロワーシップとはリーダーシップの対義語として使われます。フォロワー(follower)はリーダーやマネージャーを補佐する人。後に続く人を指します。そのため、リーダーの支援を目的とした活動と言い換えられるでしょう。
フォロワーシップはチームの成果を最大限引き出すために必要不可欠です。「業務を効率化させるためにメンバーへデータを共有する」「部下の成長を期待してアドバイスを送る」などは立派なフォロワーシップと言えます。時代の変化によって、リーダー一人で企業の舵を切るのは困難となりました。
従業員のサポートや多角的な視点が必要となった中で、フォロワーシップが求められはじめたのです。
リーダーシップの心理学的側面
リーダーシップはビジネスマンに求められる重要な要素です。統率力が高い人は出世し、会社の重要なポストを担っています。もしくは自らビジネスをはじめ、起業家として活躍する方も多いです。「仕事のデキる方=組織やチームをまとめられる」と認識している人が一般的かもしれません。
しかし、優秀な方全員がリーダーシップを持ち合わせているとは限らないのです。任された仕事を100%まっとうできても、人の心を掴めるわけではありません。反対に求められた仕事が80%程度の出来でも、リーダーシップが人一倍高い方もいます。この違いは後述するEQが大きく関わっているのです。
リーダーシップとEQ
EQとは心の知能指数です。リーダーシップが高い人には、共通してEQが高いと言われています。アメリカの心理学者であるダニエル・ゴールマンは、EQは自己認識・自己統制・モチベーション・共感・ソーシャルスキルから構成されていると提唱しています。
自己認識とは自分自身のスキルや感情を理解する能力。「己を知ってこそ戦いに勝利する」と言われる背景からも、自分を理解する力は必要です。自己統制は感情や行動をコントロールする力。一歩踏み出す前に考えられる能力が高ければ、最善な判断を下せます。
モチベーションは仕事に対する情熱です。モチベーションが高いと、周囲も自然とやる気に満ち溢れていくでしょう。共感やソーシャルスキルは人との関わりをはかるスキルです。チームの意見を聞き、悩みや困りごとに寄り添えば、自然と周りには人が集まってきます。このようにチームだけでなく、自分自身を管理できる人がリーダーに向いているのです。
仕事でイニシアティブをとるためのポイント
イニシアティブをとるためのポイントを解説します。
目的を明確にする
イニシアティブを取るためには目的の明確化が必要です。目的をはっきりさせることで、周囲は納得して後からついてきます。目的が決まれば取るべき行動も明確になるため、メンバーの迷いもなくなるでしょう。
反対に目的が不明瞭であると、周囲のモチベーションは上がりません。結果的にチームのまとまりがなくなってしまうのです。
そのためにも、目的は数値を使って細かく設定するのがポイント。例えば「今年は去年よりも営業部署成績を上げていこう」よりも「各メンバー昨年より5件の上乗せがあれば目標達成できます」と掲げれば、意識高く行動してくれるでしょう。
自分の意見を発言する
イニシアティブを発揮するためには自分の意見を発言する必要があります。自ら考えを述べれば、同意したメンバーは自然とついてくるでしょう。反対に意見を発言しなければ、前述した追従と同じです。誰かの後を追う行為と同様であり、イニシアティブな行動とはかけ離れてしまいます。
しかし、ここで注意したいのが発言の仕方です。現在は時代の変化により、100%の正解はほぼありません。どの方法を取っても、やり方次第で問題をクリアできます。逆に一つの考え方にこだわっていては壁はこえられません。周囲の意見を参考にした上で発言するのがポイントです。
視線を意識する
イニシアティブを取るには、人の視線を意識するのが重要です。メンバー全員の視線が同じ方向に向いてると、安心感がうまれます。例えば映像やホワイトボードを活用してプレゼンテーションを行えば、視線が集まりやすいです。人々の視線は一点に集中し、聴衆はあたかもプレゼンターが偉い人のように感じます。
結果的に発言者はイニシアティブを取りやすく、発言しやすい雰囲気になるのです。これを利用しているのが学校。先生はイニシアティブを取るために黒板を利用し、生徒の注目を集めるつくりにしています。
聞き役になる
一般的に話し手が主導権を握っていると思われがちであるものの、聞き役は場をリードしやすくなります。なぜなら話を聞けば、相手の状況をより深く知れるからです。結果的に場の雰囲気を瞬時にくみとれ、イニシアティブを取れるもの。
話し手は聞き手に対し「自分の話を聞いてくれて安心するな」「この人なら何を話しても大丈夫そう」などと信頼関係がうまれやすいです。
とはいえ、単純に話を聞くだけでは効果が低いでしょう。なぜ・どこで・何を・誰がを中心に質問を進め、相手の情報を正確に仕入れるのがポイントです。
問題の解決、再発防止に取り組み改善の機会を探す
通常トラブルや問題が起きると尻込みしてしまう方は多いでしょう。とはいえそんな瞬間こそチャンスです。誰もが嫌がる仕事を率先して行えば、社員からの信頼を勝ち取れます。例えばトラブルに対して解決策を提案し、積極的に行動へ移せばイニシアティブを握れるのです。
一人で問題を解決するのはむずかしいため、周囲へ協力を依頼すれば更にイニシアティブが取れるでしょう。トラブル対処後に再発防止策を一緒に考えていくと、より信頼性は高まります。
準備、根回しをする
準備や根回しを欠かさないのも、イニシアティブを握る上で重要です。「仕事の結果は準備の段階で決まっている」と言われる背景からも、仕事において準備が大きなウェイトを占めるのも事実。その中の一つに根回しがあります。根回しとは目的を達成するため、事前に下交渉をしておく行動を指します。
とくに会議やプレゼンテーションでは、どれだけ自分の味方をつけるかで結果が変わってくるのです。「当日こんな内容を話すから賛同してほしい」「マイクを渡すから前向きな意見を述べてほしい」と伝えておくと、より自分自身が有利な会合へとうまれかわります。
自分と周囲のベネフィットを考える
イニシアティブを取る際は周囲のベネフィットも考えていきましょう。主導権を握ろうとすると、周りが見えなくなるのはよくあります。例えば営業成績アップに向けてイニシアティブを取る際、単純に稼働時間を増やすのは危険かもしれません。
なぜなら残業や休日出勤が増えれば、社員はモチベーションを失います。家庭持ちの社員であれば、自分の周りから離れてしまうでしょう。今回の場合は稼働時間をそのままに、ライバル企業のデータを提供して効率的に運用したり、一人一人と向き合って悩みを解決したりするのが最適です。
両者にとってWin-Winの関係を築くのが最終目的と言えます。
決断力を持つ
周囲を引っ張っていくには決断力が必要です。近年は世の中の流れが早く、決断がわずかに遅れるだけでもチャンスを逃してしまいます。とくに情報が容易に入手できる世の中へと変わった今、より決断力が求められているのです。判断に困る中で、迅速かつ正確な判断ができれば、イニシアティブを握れます。
「あの人について行けば大丈夫」「判断に迷ったらAさんに相談すれば間違いないだろう」と思ってもらえると、信頼を勝ち取れるのです。そのためにも、日頃から決断力を磨く努力が必要になります。
例えば、少ない選択肢でも早く決めたり、物事を裏側からも見つめてみたり。日々の生活を意識すれば、決断力は磨かれていきます。
現実的な基準を設ける
イニシアティブを取るには、現実的な基準を設けるのがポイントです。企業の人・物・金には限度があり、それを超えて先導しても失敗してしまいます。例えば新しいプロジェクトに対し、担当部署の予算すべてを使うのは危険でしょう。
最初は試験的に予算を投入し、結果次第で徐々に規模を大きくするのが現実的。また人の観点で言えば、自分自身がどこまで業務の幅を広げるのかもポイントです。あらゆる社員の業務を手伝ってしまうと「あの人がやってくれるからいいや」「困ったらあの人に任せてしまおう」と下手に見られてしまいます。
業務量のバランスを見て、イニシアティブを握っていきましょう。
イニシアティブを意識し業務に取り組んでいきましょう
イニシアティブは主導や先導といった意味があります。場の雰囲気を自分自身がコントロールし、一丸となって引っ張る言葉として使われるのが一般的。とくにビジネスの場では相手との立場を示す言葉として使われます。
イニシアティブを握れれば業務が円滑に進み、自分が理想とする結果になりやすいのです。そのためにも目的を明確化し、積極的に発言するのがポイントと言えます。ぜひこの機会にイニシアティブを意識し業務に取り組んでいきましょう。