マインドフルネスとは?7つのビジネス効果・やり方を徹底解説
昨今、働き方改革や一般化する転職の影響で、誰もが自由に働き方や仕事を選べるようになっています。従業員が転職する理由はさまざまですが、業務過多や職場の人間関係にストレスを感じ、転職を選ぶ人も一定数います。
企業が優秀な人材を確保し続けるためには、従業員のメンタルヘルスの維持をサポートしなければなりません。
そこで注目を集めているのが「マインドフルネス」です。ビジネスに取り入れた企業が効果を実感したことから、導入を進める企業が増加しています。
今回は、マインドフルネスの概要や効果、具体的な実践方法などを解説します。
マインドフルネスとは?
「マインドフルネス(mindfulness)」とは、身体に意識を集中して「今この瞬間だけ」を知覚している状態を指します。
ふとした時に過去の失敗経験が思い出され、苦しい感情を抱いた経験はないでしょうか?
誰しも日常生活では、常にさまざまな物事を見聞きし、思考しています。それは良いことばかりではなく、将来への不安や仕事のプレッシャーなど、つい考えがちなネガティブな内容も含みます。
「今この瞬間」に意識を向けてマインドフルネスな状態になると、雑念を払って集中力を高められます。また、ストレス緩和といった効果が見込まれます。
マインドフルネスは、スピリチュアル的な考え方だと敬遠するかもしれません。しかし、1979年にはアメリカで医療行為として実施されています。精神的な負担を抱えている人や自己理解を深めたい人にとって有効であると認められているのです。
マインドフルネスは、集中力アップやストレス緩和の効果が期待されます。そのため、企業が導入すると従業員の生産性上昇を実現できるでしょう。
例えば、Google社などで効果を発揮したマインドフルネス瞑想は、ストレスマネジメントやセルフマネジメントといった目的で活用可能です。
マインドフルネスによる5つのビジネス効果
5つの効果を解説します。
効果①マネジメント力が高まる
マインドフルネスでは、自分の「今」を注視します。
例えば、
- 今、自分がどんな感情を抱いているのか(喜怒哀楽)
- (怒りを感じているなら)今、何をして欲しかったのか
- 今の自分の長所は何か
- 今の自分ができることは何か
- 今の自分が目指す姿は何か
などを確認するのです。
自分自身の内面を深掘りして自己を正しく認識すると、自分の感情をコントロールしやすくなります。これは、セルフマネジメント力が向上するといえるでしょう。
マネジメント力の向上は、従業員一人ひとりが感情に振り回されずに、冷静な判断を下すのに役立ちます。
例えば、「今、仕事に集中できていないから、立ち上がって気分転換しよう」「今、自分がやるべきことはこれだ」といった思考が身につきます。マインドフルネスにより、従業員一人ひとりが、その時々に合った判断をしやすくなるでしょう。
効果②仕事の効率化を図れる
仕事中であっても、仕事と直接関係ない物事を思い浮かべるのは普通のことです。
例えば、
- マルチタスクのプレッシャー
- 締め切りの心配
- 上司の評価
- 同僚との付き合い
- 育成すべき後輩への懸念
- 私生活との両立
などです。
これらが気になって仕事に集中できなかったり、仕事の優先順位を変えて作業したりした経験がある人は多いのではないでしょうか。
この場合、マインドフルネスを取り入れて雑念に時間を割かないようにすることが大切です。そうすると、仕事への集中力をアップさせ、仕事の効率化が実現できるでしょう。
効果③レジリエンスが高まる
レジリエンス(resilience)とは、困難や精神的ストレスを乗り越え、回復する力を意味します。
レジリエンスが低い人は、ストレス耐性が低い状態です。そのため、責任の大きい仕事を任されたり、上司の指摘を受けたりすると、精神的負担が大きくなりやすく離職する可能性が高いといえます。
マインドフルネスは免疫機能向上につながり、結果的にストレスを軽減させる効果が期待できます。うつ病や自律神経失調症といった、精神的な不調の予防につながるので、メンタルヘルスケアの一環として取り入れると良いでしょう。
効果④心にゆとりができる
心にゆとりがない状態は、仕事の進捗を始めさまざまな場面に影響を及ぼします。
タスクが多く「あれもこれもやらなければ」と思いながら仕事をするのは大きなストレスです。子育てなど家庭の事情のために仕事にかける時間が取れないのもストレスになり得ます。
マインドフルネスは自分の感情や状況を俯瞰し、過去や現在、未来の自分を知る手法です。自分が何にストレスを感じているのかを知り、適切な対策を見つけられるきっかけとなるでしょう。その結果、ストレスが緩和されて心にゆとりができるのです。
効果⑤コミュニケーション能力が高まる
ストレスがたまっていて、つい周囲に冷たい態度を取ってしまった経験はないでしょうか。
「あんなことを言うつもりではなかった」「感情的に怒ってしまった」と後から反省した経験があるなら、マインドフルネスが効果的です。
感情を抑えられず怒りや苛立ちを表に出しては、職場の雰囲気が悪くなってしまいます。マインドフルネスを実施して、自分の感情と向き合う習慣をつければ、精神的な安定が得られるでしょう。精神的安定により、対人関係がスムーズになる効果が期待できます。
マインドフルネスをやってはいけない人
さまざまな効果が得られるマインドフルネスですが、誰もがその効果を享受できるとは限りません。人によっては、逆効果となる可能性があるため、実行する前の慎重な検討が重要です。
企業が取り入れる場合は、従業員一人ひとりの状況に合わせて実施するようにしましょう。実施に適していない人の例を2つ紹介します。
心に深刻な不調を抱えている人
精神疾患を抱えている人には、マインドフルネスはおすすめできません。症状によっては、悪化させてしまうおそれがあるからです。
精神疾患とは、
- うつ病
- 統合失調症
- 適応障害
- 睡眠障害
などを指します。
自覚症状がなくても、精神疾患を抱えている可能性があります。心に不調を感じている人は、事前に医師の診断と判断を仰ぎましょう。
強いトラウマを抱えている人
PTSDや強いトラウマを持っている人は、マインドフルネスを実行するのは避けましょう。
マインドフルネスによって呼び起こされる過去の記憶がきっかけに、トラウマ体験がフラッシュバックするおそれがあります。フラッシュバックは意識的に避けられるものではありません。予期しないタイミングでフラッシュバックして、パニックに陥る事態があり得るのです。
医師との相談の上で実行し、安全を確認することが大切です。
マインドフルネスのやり方
マインドフルネスを初めて聞くような人にとっては、具体的なやり方が想像できない人も多いでしょう。
マインドフルネスの実践方法は、
- 静座瞑想法
- 歩行瞑想法
- ボディー・スキャン
の3つがあります。
人それぞれ適した方法があるため、一番リラックスして集中できる方法を選びましょう。3つのやり方について解説します。
(1)静座瞑想法
いくつかある方法のうち、特によく行われています。初めての瞑想におすすめで、まずは1日1回10分から始めると無理がありません。慣れてきたら30分以上を目指して、徐々に集中する時間を伸ばしていきましょう。
- 姿勢を整える
- 座って行う瞑想法で、頭から首、首から背中が一直線になる姿勢が理想的です。座る場所に制限はありません。自分がリラックスできる場所であることが重要です。
- 呼吸に集中する
- 「今」の自分に意識を向けるため、呼吸を整えていきます。深呼吸をしてから、自分の息遣いを感じてみましょう。呼吸によって肺や胸が動く様子を感じます。
- 身体や思考に意識を向ける
- 「今」の自分の身体全体、考えていることを意識してみましょう。何を感じていてどう思っているのか、体全体や浮かんでくる思考に向けます。もし雑念が生まれたら、呼吸に集中する段階に戻ると良いでしょう。
- 意識を通常に戻していく
- 集中する時間を終えたら、意識をゆっくりと自分自身から周囲に向けていきます。急に切り替えるのではなく、できるだけ時間をかけてゆっくりと意識を戻すことが大切です。
(2)歩行瞑想法
瞑想は座ったり横になったりして行うものというイメージが強いかもしれません。歩行瞑想方は、歩きながら実施できる方法なので日常生活に取り入れやすいといえます。
歩いているときに、周囲ではなく自分自身に意識を向け、何を感じているかに着目する方法です。
- 環境を整える
- 歩きながら行う瞑想法です。瞑想中は周囲への意識が薄れるため、安全を確保できる場所で行うようにしましょう。交通量の多い道や雑踏の中、大勢の人がいるオフィスなどでは、集中力が切れやすいのでおすすめできません。
- 歩きながら呼吸に集中する
- ゆっくり歩き始め、自分自身の呼吸に意識を移していきます。歩くスピードが速すぎると瞑想に集中しにくくなるため、歩行速度はゆっくりにするよう心がけましょう。深呼吸をして、呼吸をしている自分自身を確認します。この際、周囲の景色に目を向けず、視線は正面に固定することが大切です。
- 身体や思考に意識を向ける
- 歩いている最中、何をどう感じているのか、自分の体に意識を向けます。足の感覚や腕の動き、頭の重さなど、さまざまな部位の感覚を探ってみましょう。
- 意識を戻していく
- 十分な時間が経ったら、意識を自分の呼吸や身体から周囲に向けていきます。ゆっくり時間をかけて意識を戻し、自分以外の物事を感じましょう。
(3)ボディー・スキャン
全身の部位に一つずつ意識を向けるボディー・スキャンは、立っていても座っていても実施できます。頭の先からつま先まで一つずつ確認する方法なので、実施に要する時間は長くなりがちです。しかし、時間をかけて丁寧に行うため、自分の感情や感覚を深く知覚できるでしょう。
- 姿勢を整える
- 立つ場合は肩幅に足を広げてゆったりと、座る場合は頭から背中を一直線にして椅子に座ります。目を閉じるとより集中できます。
- 呼吸を意識する
- リラックスしながら、自分自身の呼吸だけに意識を集中させます。息遣いや息を吸う動作、息を吐く動作、上下する胸など、細かく確認してみましょう。
- 身体の部位に意識を向ける
- 呼吸に集中できたら、身体全体に意識を向けていきます。このとき、一気に全身を感じようとするのではなく、部位ごとに行うことが重要です。最初に左足のつま先からふくらはぎ、膝、太もものように、少しずつ意識を向ける場所をずらします。最終的には首や頭へ向けて、下から上へ意識を移すと良いでしょう。
- 意識を戻す
- 全身に意識を向けて、どんな感覚や感情を抱いたか確認できたら、ゆっくりと意識を元に戻していきます。時間をかけて周囲へも意識を向けるようにしましょう。
マインドフルネスの注意点
注意点は2つです。
「今」に意識を向ける
効果を最大化するには、雑念をできる限りなくして「今」に集中することが大切です。初めて実施する場合は特に、周囲の雑音や関係ない物事へ意識が逸れやすくなります。
集中できていないと感じた際、無理に「集中しなければ」と思う必要はありません。「気が逸れてしまった」と、その事実を受け止めましょう。集中していない自分を責めるのではなく、もう一度深呼吸をしながら、集中を高めていくことをおすすめします。
瞑想の目的を考える
なぜ今の自分にマインドフルネスが必要なのか、目的を明らかにしてから臨みましょう。目的が明確であるほど集中しやすく、効果が高まります。
例えば、
- 思考を整理したい
- 仕事に集中したい
- 心の不安を解消したい
- 感情に振り回されないようにしたい
といった目的があります。
マインドフルネスをビジネスに取り入れよう
物理学や心理学の領域で活用されてきたマインドフルネスは、昨今ビジネスの現場でも利用されています。
ビジネスに利用すると、企業はさまざまなメリットを得られます。従業員にとっても、職場環境の改善や仕事のしやすさ、精神的安定といったメリットがあるため、企業が導入する価値は高いといえるでしょう。
慣れるまで注意すべき点がありますが、うまく活用すれば大きな効果を実感できるはずです。実施に適さない人を除き、多くの従業員にマインドフルネスを実践してもらうと良いでしょう。