今注目されるクレドとは?導入のメリットや方法
「クレドって何?」「どのような効果があるの?」
そのような疑問を抱えていないでしょうか。
今回は、ビジネス界で注目を集める「クレド」に焦点を当てて紹介します。効果的なクレドの策定は、企業の発展や業績拡大のために欠かせません。
本記事では、クレド導入のメリットや、導入方法や具体的な成功事例などを紹介します。
クレドとは?企業理念との違い
クレドとは、企業や組織が共有すべき重要な信念や価値観を示す言葉や文書のことを指します。企業理念との主な違いは、クレドの方がより具体的で直感的な表現であり、社内外の従業員に向けて広く浸透させることを重視している点です。
企業理念は、企業の目標やビジョンを抽象的に表現したものであり、従業員や関係者の労働指針となる理念を明確にする目的を持ちます。
一方、クレドはシンプルで分かりやすい文章化した言葉で、より具体的な行動指針や行動規範を示します。そのため、クレドの方が組織のメンバーが理解しやすく、日々の業務や意思決定に反映させやすいといった特徴があります。
クレドは、社内の従業員にのみだけでなく、顧客やビジネスパートナーなどの外部の業務関係者にも伝えることが重要です。クレドを通じて企業の価値観を共有し、考えを浸透させることで、企業における信頼関係の構築やブランドイメージの向上を実現します。
クレドを導入するメリット
クレドを導入すると、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。考えられるメリットとして4つ紹介します。
人材育成
クレドの導入は、従業員の成長と発展に役立ちます。明確なクレドがあることで、組織内のメンバーは共通の目的に向かって努力し、目標に向かって行動する意識を高められます。
クレドは社内での行動規範を示すため、従業員が自らの行動を振り返り、成長の機会を見出すことができます。その結果、主体性や責任感が向上し、組織全体のパフォーマンスの向上に繋がります。
さらに、クレドが明確になれば、組織内のメンバーに対して教育や育成プログラムを効果的に展開しやすくなるといった利点もあります。
従業員が成長しやすい環境を構築することは、企業にとって競争力を高める重要な要素であり、クレドの導入は人材育成の場でも重要な役割を果たすのです。
コンプライアンス強化
クレドの導入は、企業のコンプライアンス体制を強化する効果を持ちます。クレドには、具体的な倫理観や行動指針が示されており、従業員が遵守すべきルールや道徳的な原則を明確にする役割を果たします。
なお、「倫理観」とは、個人や組織が行動する際に、何が正しいかや良識に合った判断をするための基準や価値観を指します。倫理観は、社会的なルールや規範に合致し、公正で道徳的な行動を促す重要な要素です。
これにより、従業員は日常業務や意思決定において、倫理的な意識を持ちながら適切な行動を取りやすくなります。
さらに、クレドを外部の関係者にも公開することで、企業が倫理観を重視し、公正かつ誠実なビジネスを行っていることを示せます。顧客や取引先、株主などが企業のクレドに共感し信頼できると感じれば、結果として信頼関係が築かれ、企業評判の向上が狙えます。
結果として、クレドによるコンプライアンス強化は企業の信頼性を高め、社会的な評価を向上させる重要な要素となります。倫理観を持つ従業員と信頼される企業としての地位を築くために、クレドは欠かせないツールと言えるでしょう。
他社との差別化
競争が激しいビジネス環境では、企業が他社との差別化を図ることは重要な課題です。クレドの導入は、その点でも強力な武器となります。
独自のクレドを持つ企業は、自社のブランドイメージを明確にし、顧客に対して独自の価値を提供できると認知されやすくなり、企業価値を高めやすくなるのです。
企業の強い使命感や価値観を顧客に共感してもらうことで、企業が持つブランドに信頼を抱いてもらいやすくなるのは、クレドの持つメリットと言えるでしょう。
また、クレドに基づいた独自の行動や取り組みは、従業員の意識改革にも繋がりやすくなります。
モチベーションアップ
クレドの導入は、従業員のモチベーションを高める効果も期待できます。クレドによって、従業員は自らの仕事に対する目的を明確に認識し、仕事に対する意欲や自主性を高める効果を促進しやすくなるのです。
共通の価値観に基づく共感や連帯感によって、組織全体が目標に向かって努力する環境が生まれやすくなるのもクレドの利点と言えるでしょう。
また、従業員はクレドに示された価値観や行動基準に従って仕事を遂行することで、個々の役割が重要であると認識し、自己成長のための意欲を高める動機付けとしても効果的です。
従業員のモチベーションが高まることで、組織全体の生産性の向上や意識変革を促進する効果も期待できます。
クレドを導入する方法
クレドを導入する方法は具体的にどうすればいいのでしょうか。
ここからは、効果的なクレド導入の手順をステップごとに紹介します。効果の高いクレドを企業に取り入れ、組織の成果を上げるためには、適切な方法で検討を進めることが重要です。
これからクレド策定を考えている場合は、ここに記載する手順を参考にしてみてください。
クレドを作成する目的を明確にする
クレドを作成するには、まず明確な目的を制定することが重要です。クレドは企業の核となる信念や価値観を表すものであり、組織全体が理解しやすく、行動に落とし込みやすいものが理想とされます。
クレドの目的を定める際には、企業のビジョンや理念に合致していることを確認し、組織が成長するための指針になるような内容を設定します。明確な目的を持ってクレドを作成することで、組織の方向性が明確になり、従業員が組織全体の目的に向けた行動を起こしやすくなります。
従業員はクレドを通じて、企業が持つ価値観と行動指針を理解し、組織の一員として自覚を持てるようになります。同時に、顧客や取引先、株主など外部の関係者に対しても、企業のクレドを公開することで、信頼関係を築く手段となります。
このように、クレドを作成する目的を明確にすることは、組織内外の共感を促進し、組織の一体感を高めるために必要な重要なステップです。
プロジェクトチームを作る
クレド導入の目的を明確にしたら、プロジェクトチームを結成しましょう。ここで策定したチームで、クレドの策定や導入に関する計画を立てていきます。
プロジェクトチームの人員選定は、
- 経営者
- 関連部署の代表者
- 従業員
などで構成されることが一般的です。多様な視点や意見を取り入れることで、より多角的な意思を組み込んだクレドを策定できる可能性を高められます。
プロジェクトチームの役割を明確にし、円滑なコミュニケーションを図ることで、クレドの導入プロセスを効果的に進めやすくなります。
経営者や従業員にヒアリング
クレドの策定にあたっては、経営者や従業員にアンケートを取るなどして、意見を十分にヒアリングすることが大切です。経営者のビジョンや理念を反映したクレドや、従業員が共感できるクレドを作成するためには、従事関係者の声を反映させることが欠かせません。
ヒアリングを通じて、組織の特性や価値観を把握し、それらをクレドに反映させることで、組織全体がクレドに向き合う意識や姿勢をより高める効果が期待できます。
クレドの効果を最大限に発揮するためにも、従業員の声を反映させることが重要です。
クレドを文章化する
クレドの導入は、従業員や関係者に向けて、分かりやすく訴えかけることが重要です。クレドを具体的に文章化する際には、簡潔な言葉選びや具体的な表現が求められます。
簡潔で覚えやすいフレーズやスローガンを取り入れることで、クレドはより効果的に組織全体へと浸透しやすくなります。文章化されたクレドは、組織内外で広く共有されるため、誰もが理解しやすい表現を心掛けましょう。
クレドを共有する
クレドを導入したら、組織全体に共有しましょう。従業員や関係者にクレドを浸透させることで、クレドの価値がより広く理解され、行動に反映される機会が増えます。
クレドを効果的に共有するには、内部向けの会議や打合せの場や、社内報やメールなどを活用する方法があります。また、外部向けにはウェブサイトや広告、パンフレットなどを通じてクレドを発信することで、顧客やパートナーとの共感を高めやすくなります。
また、後術する行動指針を確認できるクレドカードを作成し、関係者に配布する方法も効果的です。クレドの共有を継続的に行うことは、組織の一体感を高め、クレドの力を最大限に発揮するために欠かせないステップです。
クレドカードの活用
クレドカードとは、企業が持つクレドを簡潔にまとめたカードのことであり、従業員や関係者にクレドを視覚的に伝える効果的な手段です。クレドカードは、コンパクトで持ち運びが便利なため、オフィス内での共有や会議時に活用されることが一般的です。
クレドカードには、クレドの基本的な内容やキャッチフレーズが記載され、ビジュアル的な要素が強調されます。
クレドカードの活用には、以下のようなポイントを押さえておきましょう。
- 簡潔かつ具体的なスローガンやキャッチコピーにする
- 視覚的な分かりやすいデザインにする
- 持ち歩きやすいアイテムにする
クレドカードは、クレドのメッセージを簡潔に伝えるだけでなく、視覚的な印象を与えることで強力なツールとなります。従業員のモチベーションを高めるとともに、企業のブランドイメージを強化し、ステークホルダーとの共感を深めるためにも、クレドカードの活用を検討してみてください。
クレドの導入でよくある失敗
クレドの導入は、企業の拡大に大きな価値をもたらす一方で、いくつかの失敗する例もあります。以下に紹介する失敗例を把握し、事前に対策を練っていきましょう。
クレドを作成する時の失敗
クレドを作成する際に失敗に終わってしまう要因として、以下が考えられます。
- 抽象的すぎる
- 組織全体の参加不足
- 現状とかけ離れすぎている目標や指標
- 抽象的すぎる
クレドは具体的な行動指針を示すものであるべきですが、抽象的な内容になってしまうことがあります。あいまいな言葉や重要事項の欠落は、クレドが組織に浸透しない原因となります。
例えば、
「高品質なサービスを提供する」
という抽象的な表現では、具体的な行動が不明確であり、従業員の実践に繋がりにくくなります。成功するクレドは、誰もが理解し、共感できる具体的な言葉で示す必要があります。
- 組織全体の参加不足
クレドの作成には、経営者や従業員の参加と共感が必要です。一部の意見だけで策定すると、組織メンバー全体からの共感を得られにくくなります。
クレドは企業や組織全てに共通した考えや価値観を表すものであり、全ての従業員が主体的に認識し、取り組むことが重要です。上層部のみでクレドを定め、従業員がそれを受け入れるだけでは、クレドの本来の意味や力が発揮されません。
上層部のみでなく、従業員全体の声をヒアリングして反映させることで、効果的なクレド策定が可能となります。
- 現状とかけ離れすぎている目標や指標
クレドに盛り込まれる目標や指標が、現状とかけ離れすぎていると、従業員からクレドの共感を得られにくくなります。クレドは現実に即した内容でなければなりません。
クレドには、組織の理念や価値観を反映させつつ、現実的かつ達成可能な目標を制定しましょう。現場の実情に即した内容であれば、従業員が自らの行動に活かしやすくなります。
クレドを共有する時の失敗
クレドを共有する際によくある失敗例としては、以下の点が挙げられます。
- コミュニケーション不足
- 形式化した共有
- リーダーの不在
- コミュニケーション不足
クレドを導入した後も、共有の機会が少ない場合があります。クレドの重要性を再確認するためにも、継続的なコミュニケーションが必要です。
クレドは組織の目的や意志を示すを形成する重要な要素であり、従業員が理解し共感を得ることが不可欠です。しかし、上層部からの情報伝達が不十分な場合、従業員がクレドを認識する意味や目的を正しく理解できず、実践的な行動に繋げられないことがあります。
- 形式化した共有
クレドを共有する際に、形式的な行事や紙面だけで終わってしまうことがあります。そのため、従業員がクレドが持つ重要性を理解できず、企業の意志や行動指標を汲み取れないままになってしまう可能性もあるでしょう。
共有の場を積極的に活用し、従業員がクレドを実践に落とし込む機会を作りだすことが重要です。
クレドを単なる壁面に掲示するだけで終わってしまい、従業員がそれを生活や業務に活かせない状況では、意味が薄れてしまいます。クレドは日常的な行動に結びつけるようになることで、組織文化の一部として機能するのです。
- リーダーの不在
経営者や上位のリーダーがクレドを積極的に共有しない場合、従業員の関心を引くことが難しくなります。各部署や現場のリーダーの意思表示が組織全体への共有の成功に大きく影響します。
リーダーは組織の指針となるべきクレドを体現し、従業員に示す役割を果たすべき存在でなくてはいけません。しかし、リーダー自身がクレドに関心を示さず、実践しない場合、従業員のモチベーションにも悪影響を及ぼし、クレドの共有が機能しなくなる可能性が高まってしまいます。
これらの失敗を回避するためには、クレド作成や共有のプロセスに時間と努力をかけることが必要です。また、管理者やリーダー層がクレドを組織全体に共有する正しい意味の把握や、姿勢を持つことも大切となります。
従業員の参加や理解を促進し、クレドが組織にとって意味のあるものとなるように取り組んでください。
クレドの成功事例と例文
以下では、実際にクレドを活用し、ビジネスに成功した企業をご紹介します。他企業の事例を参考に、自社に適したクレドの策定にお役立てください。
楽天
楽天は、日本有数のインターネット通販事業を展開する企業です。楽天では、グループとしての名を高めるために「成功の5つのコンセプト」というクレドを掲げています。
このクレドによって、楽天の従業員は自らをプロフェッショナルとして位置付け、業務において顧客満足の追求に力を入れる意識を持てる効果が期待できます。
さらに、楽天は
- 「現状に満足せずに従業員一人ひとりが強い意志を持って、物事を進めていく主体的な人材になる」
という行動指針を掲げ、顧客・従業員・株主・取引先などのステークホルダーと共有することで、さまざまな成果を上げています。
楽天のクレドは、従業員のモチベーションを高め、顧客との信頼関係を強化するための重要な要素となっています。その実践によって、企業としての成功に大きく貢献していることが伺えます。
リッツ・カールトン
ホテル業界で大きな成功を収めているリッツ・カールトンでは、独自の企業理念をクレドカードにまとめています。従業員にはこの、クレドカードの携行が義務付けられています。
クレドには、
- お客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供する
- お客様に心あたたまるような、満足いく雰囲気を提供する
- お客様が言葉にしない要求やニーズも先に予測して答えるサービスの心を持つ
のような行動指針が提唱されています。
このような指針を従業員が心に刻み、実践することで、顧客への満足度向上を実現しているのです。
リッツ・カールトンのクレドはホテル業界のみならず、接客に携わる他の企業にとっても参考になる例です。こちらのサービスバリューの具体的な内容を実践することで、顧客にとって価値の高いサービスを提供し続けているのです。
参考:リッツ・カールトン | ABOUT THE RITZ-CARLTON
ニチレイフーズ
食品関連商品の会社として有名なニチレイフーズでも、クレドを策定しています。
ニチレイフーズは、「従業員のモットー、及び行動方針」として、「ハミダス」と称した行動指針を制定しいます。「ハミダス」とは、従業員が「思いやりを持ち」「挑戦して」「楽しく」仕事をするという想いが込められたニチレイフーズ独自の造語です。
同社では、このハミダスの考えに準じた行動指針を5つ掲げています。それぞれの指針について、具体的な行動や考えが示されていて、社員全体に浸透しやすい言葉となっているのが特徴です。
例えば、
- 「お役に立つ価値提案のために食と生活を見つめます。」
という指針では、従業員がお客様に価値の高い商品を提供する気持ちを忘れずに接することが求められている意志を受け取れます。
従業員が自らの行動を振り返り、企業の目的に沿った改善や向上に取り組むことで、組織全体のパフォーマンス向上に繋がっていると考えられます。
参考:ニチレイフーズ | 企業コンセプト・ミッション・ビジョン
クレドの導入を検討してみましょう
この記事では、企業のクレド導入における重要性と具体的な手法について解説しました。
クレドは、組織の価値観や行動指針を明確に示すことで、企業の発展に関する多くのメリットをもたらします。
効果的なクレドの作成には、クレドカードの活用方法や失敗例にも注意を払いつつ、クレドを活用している他社の取り組みを参考にするのも有効です。
企業の業績拡大や成長に繋がる可能性を広げるためにも、本記事の内容を参考に、クレド導入の検討を進めてみてください。