ノウハウとは?意味やメリット、蓄積する方法を解説
日常的に耳にする「ノウハウ」という言葉。昨今はビジネスでも重要だとして注目を集めていますが、正しく意味を理解している人は多くありません。
ノウハウの共有は、企業の成長や業務効率化につながるでしょう。それにも関わらず「共有ができていない」「重要性が社内に理解されていない」と悩む人事担当者は多くいます。
今回はノウハウの定義や似た言葉、使い方や共有のポイントなどを具体的に解説します。
ノウハウとは簡単に言うと「知識」や「コツ」
「ノウハウ」という言葉は、英単語の組み合わせから生まれました。その単語とは、「know(知る)」と「how(手段・方法)」の2単語です。
一般的には、
- 知識
- コツ
といった意味で使われます。
難しく捉えがちな言葉ですが、さまざまな場面で使えます。ビジネスでもよく使われるようになり、日常的に使う人が増えた言葉です。
ビジネスにおけるノウハウとは
ノウハウという言葉を、仕事上で耳にしたり使ったりした経験はあるでしょうか。
この言葉は、日常生活だけでなくビジネスでも一般的に使われています。
ビジネス上の意味としては、
- 特定分野に関する知識
- 専門知識や専門的な技術(スキル)
などです。
基本的な知識に限らず、専門性が高い知識も含めてノウハウとして扱われます。
例えば、「毎月売上目標を達成する営業ノウハウ」「製造工場で不良品を減らすノウハウ」など、仕事で必要な知識はすべてノウハウだといえるでしょう。
ノウハウは蓄積された経験や知識からなります。そのため、企業にとってのノウハウは「知的財産」だと言い換えられます。企業秘密となり得る情報を多く含む場合があるので、企業は自社のノウハウを適切に管理しなければなりません。
ノウハウの例文
ビジネスにおいて、言葉の意味を正しく理解して使うことは、ミスコミュニケーション予防の観点から非常に重要です。
ノウハウとは、実際にどのように使う言葉なのでしょうか。ビジネスシーンにおける具体例を紹介します。
- 顧客満足度アップのための接客ノウハウを学ぶ
- 中途採用者のノウハウは自社の新規事業展開に役立つ
- SNS採用のノウハウを社内で共有した
- ITを活用したマーケティングのノウハウは一朝一夕で得られない
ノウハウは「知識」といった意味だけでなく、 蓄積された知識、経験といった意味を含む場合があります。専門性があったり、個人の経験によるものであったり、さまざまなシーンでノウハウという言葉が使われます。
ノウハウと合わせて確認したいビジネス用語
3つの用語を解説します。
ナレッジ
「ナレッジ」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。日常生活で聞く機会は多くありませんが、昨今のビジネスシーンでは注目を集めています。
ナレッジとは「知識・知恵」を意味しています。企業では「付加価値となる経験や知識」として使われるケースが多くあるので、ノウハウとよく混同されます。
ノウハウとの違いは、専門性の高さです。個人が経験を通して得た知見や知識、コツといった物事をノウハウと呼ぶのに対して、ナレッジには個人の実体験は必要ありません。書籍や動画配信サービスなどを通じて得た知識もナレッジとして扱われるため、実体験を伴うノウハウの方が、より専門性や具体性が高いといえるでしょう。
スキル
「スキル(skill)」は、技能や技術、資格などの意味を含みます。技術という意味を持つために、ノウハウと同一視されやすい言葉なので注意が必要です。
ビジネスシーンでのスキルとは、専門性の高い技能や能力を意味します。経験や知見があるかどうかによらず、単純な技術の有無にフォーカスされるのが特徴です。
ハウツー
英語の「how to」をもとにした言葉に、「ハウツー」があります。これは、初心者などを対象にした方法ややり方を意味しています。
ノウハウとの違いは、レベルの差にあるといえるでしょう。基礎的な内容を意味するハウツーに対して、ノウハウは中級者以上向けの手法を指す場合が多くあります。
専門的な内容や高度な内容は、ハウツーと呼ばれることは少ないでしょう。
ノウハウを共有するメリット
メリットは3つです。
生産性を向上できる
ノウハウは会社にとって大きな財産となり得ます。なぜなら、長年蓄積したノウハウを社内で共有することで、生産性アップが期待できるからです。
従業員全員がゼロからやり方や効率的な方法を試行錯誤すると、成果を上げるまでに必要以上に時間がかかります。そこで、過去の知見をもとにしたノウハウを共有し、成果を挙げられる方法を共通認識として持つのです。
情報を共有すれば、若手社員であっても早い段階で成果を上げやすくなるでしょう。誰もが効率的に仕事に取り組めるようになり、会社全体の生産性が向上します。
社員の問題解決能力が上がる
知識や経験をもとにしたノウハウを活用すると、従業員一人ひとりがそのノウハウをもとに新たな発見や知見を得るきっかけができます。
従業員が得た新しい発見は、さらに新しいノウハウとして社内に共有できるでしょう。
これを繰り返すことで、従業員がさまざまな状況に対応できるようになるのです。社員の問題解決能力が上がるため、業務がスムーズに回るようになるはずです。
また、ノウハウの蓄積されていない未経験の問題であっても、柔軟な対応が可能になります。
業務の属人化を防げる
ノウハウを社内で共有することは、業務の属人化防止につながります。「属人化」とは、特定の従業員に業務負担が偏り、他に任せられる人がいない状態のことです。
業務の属人化が起きると、担当者が不在の際に業務がストップして、社内全体へ悪影響を及ぼすおそれがあります。もしくは、不在の穴を埋めようとした結果、業務のクオリティが低くなるといった点が懸念されます。
事前にノウハウを共有しておけば、属人化せず誰もが一定水準以上のクオリティで仕事を進められるようになるでしょう。
ノウハウを蓄積するポイント
3つのポイントを押さえましょう。
蓄積するべきノウハウを明確にする
企業にはさまざまな仕事が存在します。一つひとつの業務について、丁寧にやり方やコツをまとめていくのは現実的ではありません。
まずは、企業の成長につながる業務を洗い出しましょう。優先して蓄積したいノウハウをあらかじめ明らかにしておけば、その後のノウハウの共有がしやすくなります。
蓄積するべきノウハウが明確化できたら、経営上層部だけでなく、現場のマネージャー職や一般職の従業員にも伝えると良いでしょう。全員で目的意識を持つと、ノウハウの蓄積と共有がスピーディに行えます。
誰でも理解できる内容にする
ノウハウを共有する際は、誰もが理解できるように情報を整理して、段階的に共有すべきです。
業務未経験の人に対して、いきなり上級者向けのノウハウを伝授しても活用できません。共有する相手の理解度やスキルレベルに合わせて、適切なレベルのノウハウを伝える必要があるでしょう。
段階的に行うことで、ノウハウの共有がスムーズになります。まずはテキストでまとめた業務マニュアルを読んでもらってから、実際に体験してみるなど、わかりやすさを心がけた情報共有を徹底することをおすすめします。
実際に活用しながら改善していく
ノウハウは蓄積されたものが完璧とは限りません。実際に活用しながら、社会や技術の変化に合わせて柔軟にアップグレードしていくべきでしょう。
昨今普及しているリモートワークやテレワークによって、IT化を進める企業が増えています。IT技術やAIを活用すると、より効率的に業務を進められるかもしれません。このようにノウハウを活用、改善しながら、企業全体の生産性アップにつなげましょう。
ノウハウが蓄積されない理由
2つの理由が挙げられます。
業務量が膨大
「なかなかノウハウが蓄積されない」と悩みを持っているなら、業務の属人化が起きている可能性があります。従業員の業務量や偏りを確認してみましょう。
業務量が従業員のキャパシティーを超えていると、ノウハウを共有するために割く時間を持てないものです。人件費の削減や働き方改革などを背景に、残業して取り組むのも歓迎されないなか、優先度の低いノウハウ共有を就業時間内に行うのは難しいのが現状でしょう。
企業は従業員の業務負荷をしっかり把握し、適切な業務を割り振るように意識する必要があります。
業種によってはノウハウを言語化しにくい
ノウハウを蓄積する方法や共有する方法を工夫しなければ、ノウハウ蓄積が滞ってしまうので注意しましょう。
業種によっては、口伝で伝えるのが難しいノウハウが多くあります。また、ノウハウを持っている人にとっては「当たり前」と思える事柄でも、未経験者にとってはうまく理解できないことは少なくありません。
言語化しにくいノウハウは、テキストによるマニュアル化も難しいものです。感覚的な内容や経験値に頼る内容のものについては、ノウハウを蓄積しやすい仕組みづくりが重要だといえるでしょう。
ノウハウが蓄積されない時の対処法
具体的な対処法は3つです。
アウトソーシングする
アウトソーシングとは、社外に業務を依頼することです。社内にノウハウがない場合は、すでにノウハウを持っている個人や法人に外注するのも一手でしょう。
アウトソーシングのメリットは、その道のプロの知識や経験を活かして業務にコミットしてもらえることです。社内のリソースを割かずして、しっかりとした成果が見込まれるので、予算があれば積極的に利用することをおすすめします。
業務量を調整する
業務過多になっていると、ノウハウの蓄積や共有がスムーズにできません。ノウハウの蓄積を促すのなら、従業員一人ひとりが適切な業務量で仕事に向き合えているのかを確認する必要があります。
特定の従業員に業務が偏っている場合は要注意です。業務の属人化が起こり、担当者が多忙なあまりノウハウ共有もできていない可能性が高いといえます。
多すぎる業務量は、適度に調整することが大切です。管理職のマネジメント力が求められます。
OJTを併用する
社内の従業員同士でノウハウの共有をするように指示しても、優先度の低いノウハウ共有は後回しにされがちです。業務が忙しいと思うようにノウハウ共有が進まず、従業員の成長が促進されません。
従業員の業務効率を上げるには、OJTを併用して人材育成に取り組むことが重要です。OJTは「On-the-Job Training」の略であり、社内の実務を通して先輩社員の指導のもと業務を身につける手法です。
OJTを実施すると、業務時間内に企業がノウハウ共有のための時間を設けられるでしょう。OJTとともに、社内でノウハウを共有しやすい仕組みづくりや、後輩が先輩社員に質問しやすい雰囲気づくりなどに取り組むことも重要です。
ノウハウを蓄積していきましょう
知識やコツを意味する「ノウハウ」は、ビジネスにおいても重要な言葉です。企業が世代交代をしながらも成長を続け、生産性を上げていくためには、自社ノウハウを蓄積することが重要です。
社内の就業環境がしっかりと整備されていなければ、ノウハウの蓄積はスムーズにできません。また、適切な仕組みができていないと、ノウハウを共有するに至りません。これは、人材の成長が阻害される要因となるので注意が必要です。
自社に必要なノウハウを明らかにした上で、適切な管理をしながらノウハウ蓄積に取り組むと良いでしょう。