業務効率化とは?メリットや生産性向上との違いを徹底解説
企業の利益をさらに追求するには生産性を上げる必要があります。本記事では、『業務効率化』について詳しく知ることで、普段の業務に潜むさまざまなムリやムダ、ムラを発見する足掛かりになるでしょう。また生産性向上との違いや、効率化を実現するためのアイデアを紹介しますので、積極的に取り入れられるように学んでおきましょう。
業務効率化とは
『業務効率化』というのは、仕事上において「ムリ」「ムダ」「ムラ」の3要素を発見したのちに、それらを取り除いた上で、業務(実務)の能率を大きく上げることです。それにより会社全体の能率性を高めることができ、コストカットも目指すことが可能になるのです。3要素について例を挙げると、「社員にとって負担が大きくなるようなスケジュールになっていないか(ムリ)」、「工数や資源全般を求められる数以上に費やしていないか(ムダ)」、「従事者やタイミング、場面によってアウトプットが偏っていないか(ムラ)」等を指します。企業はそれらの非効率性を取り除くような、あらゆる手法を考える必要があるのです。
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業務効率化が必要とされる背景や目的
『業務効率化』が必要であると言われる原因について考えてみましょう。その理由の一つに、日本の深刻な少子高齢化問題があります。これにより労働力が不足しているため、機能的な実務を遂行し、その問題を解消しなければならないのです。新たな背景としては、新型コロナウイルスの感染拡大によるテレワークの普及によるものです。これまでのように出社して行なっていた実務にも対応しなければならないため、能率を上げるためにも『業務効率化』がさらに求められています。
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業務効率化のメリット
『業務効率化』には大きく分けて3つのメリットがあります。
業務時間・経費の削減
仕事上の不要な3要素を取り除くことで、仕事を進める上でかかってしまう不要な時間を節約することができ、全体的な実務の時間を減らせます。またその結果として、光熱費や人件費といった経費のカットにも繋がるのです。
従業員のモチベーション向上
実務時間をカットし、能率的な仕事が可能になると、従業員一人一人の仕事が会社の利益につながっていると認識しやすくなります。また残業時間の短縮や、休日出勤が減るため、従業員のワークライフバランスも実現しやすくなり、やる気アップに役立つことでしょう。
新規ビジネスへの注力
『業務効率化』によって生まれた時間を活かすことで、新たな挑戦を行いやすくなります。これまでは時間や資源全般の不足により取り組むことが叶わなかったビジネスチャンスに対しても着手することが可能になるので、組織強化や生産性の向上に繋げることができます。
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生産性向上との違い
基本的には『業務効率化』と同じような言葉として使われがちなのですが、『生産性向上』はパフォーマンスの向上が強く求められるのです。『業務効率化』は「ムリ」「ムダ」「ムラ」の3要素を取り除くことで、必要な時間や資源全般を抑えるという改善が目的でした。一方で「生産性向上」は、成果に直接繋がる行動が重視されるため、そのための1つの方針として『業務効率化』があると覚えておくと良いでしょう。
⇒業務効率化と生産性向上の違いについて詳しく知りたい方はこちら
業務効率化のアイデアと手法
ではいったいどんな風にすれば『業務効率化』を図ることができるのでしょうか。いくつかのアイデアと手法の例を挙げるので、自社でうまく取り入れるには何をしたら良いのか考えてみましょう。
無駄を無くす
これまで当たり前に感じていた実務内容を見直し、その中に不要なものはないか把握しておきましょう。『この会議は本当に必要か』『会議で不要なやりとりはないか』『この実務はテレワークでできないか』『不要な資料作りに時間をかけていないか』『頻度や回数を抑えられないか』など、思った以上にいらない部分を発見できるかもしれません。無駄を見つけるためのコツは「今行なっている実務の意味は何か」と日頃から考える癖をつけておくと良いでしょう。
自動化
全ての実務を人間が行う必要はなく、自動で行えるようにすれば『業務効率化』を目指すことが可能です。例えば『毎日繰り返し行なっていること』『体系的にまとめられるもの』など、エクセルのマクロやプログラムによって簡単に処理が可能になります。もちろんマクロを学ぶ時間はかかってしまいますが、一度手順を覚えれば、日々の作業へ容易に取り入れられるようになります。自動化することで人間によるミスを減らせて、不要な実務のカットにつながるでしょう。
分業化
一部分の従事者や組織しか携われなかった実務を分けることで、『業務効率化』を図ることができます。役割を分担することで社員が各々の役割に集中でき、その役割を担うためのトレーニングを行うことで、素早く新戦力を育成できるというメリットがあります。
業務を一つに集約
先ほどとは逆に業務を1つにまとめるという方法です。いくつかの従事者や組織で取り組んでいた実務を特定の従事者や組織に集めることで、情報の把握がしやすくなり、かえって生産性が上がるという場合もあります。
時間の短縮
実務にかかる時間を短くすることで能率性を上げます。例えば、『高い処理能力を持つパソコンを使って、読み込みにかかる時間を減らす』『ショートカットキーを覚えて、操作を簡略化する』『チャットやメールを見る時間を減らす』『その分野が得意な人に実務を任せる』『ショートカットを登録する』などです。
優先順位を付ける
何から着手すべきか順番を付けてみるというのも能率性を上げるには適しています。優先度が最も高い実務に時間と資源全般を割くことで、最適化を図ることが可能です。逆に優先度を低く位置付けた実務にはあまり資源を割かず、いっそのこと省略するのも1つの手段です。これにより余った資源を他の実務に回せるようになるため、『業務効率化』に近づくことができるようになります。
アウトソーシング
優先度の低いものや、シンプルで体系化しやすい実務は、外部の企業や人材に委託してみるのも1つの方法です。いわゆるアウトソーシングという方法で、労働力不足を解消する手段としても用いられます。逆に自社の従業員にはより重要なタスクに取り組んでもらうという考えがあります。
業務の担当者の変更
言い換えると『適材適所』のことで、ある仕事の従事者を変更することで能率性が段違いに変わることがあります。特にその分野に精通している従業員がいれば、その人に変えることで大きな効果が望めます。注意点は頻繁に担当を変えすぎていると、人材育成が叶わなくなってしまうという点です。なので担当部署の上司や人事担当者が密にコミュニケーションをとり、将来の希望を考えた上で従事者を変えることが求められます。
業務のマニュアル作成
業務のルールや進め方などを体系的にまとめておくことで、作業を均一化でき、仮に担当者を変えてしまったとしても同様のクオリティを期待できます。ですがマニュアルを作成するのにはかなり手間がかかる上に、誰が読んでも分かるようにしておくことが強く求められます。その分今後の実務の能率性が変わってくるので検討してみるのも良いでしょう。
業務のフローチャート作成
業務がどんな風に進められるのか、その流れをフロー図で描画しておくことも能率を上げることに繋がるでしょう。上で述べたマニュアルで実務の詳細を知ることができるので、フローチャートで作業全体の流れを把握することになります。さらにリマインドツールを使えば、その日にやるべき作業を知らせてもらえます。
データベースの活用
過去にその企業で使用されてきたデータを蓄積したシステムを『データベース』と呼びます。大量のデータの中から欲しい情報を容易に検索できるので、従事者が急に変更になったとしても対応しやすくなります。データベースには3種類あり、ツリー状に構成される『階層型データベース』、網状に構成される『ネットワーク型データベース』、表で構成される『リレーショナルデータベース』があります。
データや情報の共有
データや情報を社内で共有する意識を高めることが、『業務効率化』を達成することに繋がるでしょう。従業員が簡単にアクセス可能な環境を準備できれば、時間の節約にもなります。中でもITツールを使ったデータや情報の共有が大きな効果を発揮します。ビデオ通話システムを利用することで、場所に縛られずに報告会を実施可能です。またビジネスチャットツールを導入すれば、チームメンバーとリアルタイムで情報を共有できます。
業務効率化を図る上で押さえるべきポイント
ここまで挙げてきた12個の方法で、業務の生産性向上を達成することは可能ですが、正しいやり方や知っておくべき要点を取りこぼすと、ただ工数・費用、資源全般が増えるだけで、無駄になってしまう危険性があります。そのようなことを防ぐためにも、これから紹介するいくつかの要点をしっかりと覚えておくと良いでしょう。
手間やコストの増加
現場には合わない方法を取り入れてしまうとミスマッチが起きてしまい、逆に社員の手間や費用が増加する可能性があります。特に取り入れて間もない時期は、新たな工程を未経験である従業員への負荷が大きくなる可能性も十分にあるのです。そのような事態を避けるためにも、マニュアルや事前の研修で情報の共有をしておくことが求められます。他にも『ノー残業デー』による残業時間の削減を目指した結果、残った仕事を家に持ち帰る社員が出てくるというような問題も起こり得ます。
品質の低下やミスの増加
さまざまな方法を積極的に取り入れたことによって、反対に品質が下がったり、ミスが引き起こってしまう可能性があります。実務時間をむやみに減らすのではなく、必要な工程にはしっかりと時間をかけて、ミスが頻繁に起こることが無いように文書や口頭で伝えるようにしましょう。
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アイデアの同時実行
実務の能率を上げるための方法を全部同時に遂行しようと思索すると、どの方法もうまく機能しないまま中途半端に終わる可能性があります。もし複数の方法を自社に取り入れたいのであれば、一度に全て取り入れるのではなく、容易に扱えるものから試すのが良いでしょう。また、その手法が本当に重要なのか、従事者の能力や準備されたツールの機能性等から、前もって見定めることも必要となります。
手段の目的化
効率性を求めるための方法を取り入れるべき目的が正確に定められていなければ、それを行うこと自体が目的となる危険性があり、これでは業務の生産性を高めるという収穫が得られません。あくまで不要な3要素を取り除くことが目的で、その結果としてどのような状態になるのが理想なのか考えておくことが重要です。
現状の把握
実際に利用される場面や環境を知らない社員が、実務の改善に向けたタスクの設計を行うとうまくいかないことがほとんどでしょう。これはきちんと今の状況を分かっていないことが大きな原因であり、現場の声をしっかりとヒアリングしたり、現状をよく理解している従事者に委ねるといったことが要点となります。
業務効率化の体制整備
十分な土台が準備出来ていない状態で、むやみに新しい制度や仕組みを取り入れてしまうと、普段の実務にも支障がでかねません。本当に導入しても問題は生じないか、かえって不要な3要素が増えるというような結果に繋がらないか、現場の状況を知っておく必要があります。
ツールやシステムの使いやすさ
会社に取り入れたツール等が扱い辛く、逆に実務の能率性が下がってしまうのであれば、何の意味もありません。もちろん機能性に優れていることも重要ですが、社員にとって「直感的に操作が可能」「見やすい画面表示」である必要があります。口コミだけを見て取り入れるのではなく、実際に自分の目で確認することをお勧めします。
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業務の質の追求
質を高めることは全く悪くありませんが、あまりにも質を追求していては、作業能率を下げてしまうことになりかねません。まずは依頼者の目的に沿った水準を満たすことを目指し、その中で実務の時間を大きく伸ばすことなく質を高めることを目指しましょう。
ミスの活用
実務中にミスは必ずと言っていいほど発生するものであり、完全に無くすことはできません。ですが何度も同様の誤りを犯すのは業務の能率化を目指す上で望ましくありません。一度犯したミスは可能な限り、繰り返してしまうといったようなことを未然に防ぎ、文書や口頭で振り返りを行なって修正できるようにしましょう。
業務効率化を進めていく際のコツ
企業が、業務の生産性向上を達成する上で知っておくべきコツをいくつか紹介します。
現状を把握と業務の可視化
最初にすべきことは、今の状況をしっかりと認識して、何をやるべきなのか一目瞭然で分かるようにすることでしょう。全体像はどのようになっているのかを正しく認識し、実務の棚卸しを行い、能率性を高めるべき箇所を知ることから始めましょう。実務の棚卸しとは、『実務を書き出す』、『エクセルでフォーマットの作成』、『フォーマットに実務を記入』、『フォーマットに発生のタイミングと処理時間を記入』というエクセルを用いた工程で行われることが多いです。
可視化しておくべき業務には、『従事者の名前』や『作業プロセス』、『人数・部署』、『使用しているツール』、『実務に求められる時間』、『要求される能力・技術』、『どれくらいの頻度で発生するか』などです。これらを詳細に洗い出すことで、業務の能率化を目指して正確な改良の道筋を描けるでしょう。
効率化させる業務
今の状況を認識し、何を最初にすべきかが分かれば、今度はどの業務の生産性を上げれば良いのか考えなければなりません。ボトルネックはどこにあるのか見つけた上で、能率化した結果が目に見える実務を選ぶのがお勧めです。例えば、毎回定められた同じ手順や方法で実施できる、体系化しやすいものが良いでしょう。また核となる実務を選ぶことをお勧めします。核ではない実務はアウトソーシングしながら能率性を高められるので、積極的に行うと良いでしょう。
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効率化を図る方法
生産性を上げるべき実務を決定したら、次はどんな手段で業務の効率性向上を達成するかを思索することが求められます。その際の指針である「改善の4原則」、『ECRS』と『PDCA』を解説します。
ECRS
Eは排除(Eliminate)、Cは結合(Combine)、Rは交換(Rearrange)、Sは単純化(Simplify)で、各々の単語の頭文字を組み合わせた造語です。
・排除(Eliminate):業務をなくすことは可能か?
・結合(Combine):業務を1つにまとめることは可能か?
・交換(Rearrange):業務の順番や場所などをチェンジすることによって、能率を上げることは可能か?
・単純化(Simplify):業務をもっと単純にすることは可能か?
E→C→R→Sの順番で改善すべきことを思索することで、最適な優先順位で実務の改善を目指します。
PDCA
Pは計画(Plan)、Dは実行(Do)、Cは評価(Check)、Aは改善(Act)で、各々の単語の頭文字を組み合わせた造語です。
・計画(Plan):目標設定をして、その目標を達成するための行動計画作成を行います
・実行(Do):設定した目標を実行するために行動していきます
・評価(Check):成果の測定、行動を実施した際の問題点や課題を洗い出します
・改善(Act):Checkで出た問題点や課題を元に改善案を作成して業務の改善を行います
P→D→C→A→P→…のサイクルを回すことで、さらに精度を上げて改善を目指します。
業務効率化におすすめのツール
RPA
RPAとはRobotic Process Automation の略称です。主に事務作業をロボットに行ってもらい、業務効率化を図る手法です。データ移行作業や電子化作業などの業務を自動化する事で社員の負担を減らし、より優先順位の高い作業に時間や労力を割くことができます。
⇒業務効率化できるRPAについて詳しく知りたい方はこちら
オンラインストレージサービス
クラウド上で情報を保管・共有できるサービスです。アカウントの権限設定も可能であるため共有範囲も制限でき、より安全に情報の管理ができます。
また、通信環境さえ整えばどこからでもアクセスが可能なので、テレワークの際の情報共有にも役立ちます。
まとめ
業務の効率性を高めるために、企業に求められる方法を紹介してきましたが、ただ闇雲に取り入れて遂行するだけでは逆効果になる場合もあります。今自社に最も求められるものは何か、現場の受け入れ体制は万全か等をしっかりと考慮した上で取捨選択していきましょう。中でも特に大切なのは、自分たちの会社に、どのアイデアが適切なのかを見極めることです。さまざまな企業が社会の変化に合わせた働き方を採用しており、ビジネスのあり方やコミュニケーションの方法も多様化しています。そういった変化に乗り遅れないように前向きに検討してみてください。