育児休業の詳細を徹底解説!具体的な制度の内容と利用方法、育児休暇との違いとは
共働き世帯の増加などの影響で女性が働きに出る機会が増加しています。女性の社会進出に伴い、企業が妊娠や出産といったライフイベントをどう取り扱うかが重要視され始めています。
育児休業制度は、時代に合わせて変化してきた制度の一つで、現代の人たちが取得しやすいような工夫がされています。しかし実際に育児休業を取得するにあたって、具体的な制度の対象者や取得方法を把握していないとスムーズに手続きを完了できません。
今回は、自社の従業員が育児休業制度を利用する際の人事担当者としてすべきことや、手続きの流れなどを具体的に解説します。
育児休業(育休)とは
育児休業は、「育休」と省略される場合が多くあるので、育休という言葉の方が馴染み深い人が多いのではないでしょうか。育児休業とは法律で定められた、「子を養育する労働者が法律に基づいて取得できる休業」を意味します。仕事と子育ての両立を支援する目的で、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」において平成3年に制定されました。
この法律は、時代の変化に合わせるように改正を繰り返しており、平成29年には待機児童問題を対象にした内容に改正されています。
平成7年以降、日本国内のすべての事業所に育児休業制度の導入が義務化されています。企業は従業員から希望があった場合には、必ず育児休業を取得させなければならないのです。
育児休業と育児休暇の違い
「育児休業」と区別しにくい言葉に、「育児休暇」があります。どちらも同じものだと思いやすいですが、2つの言葉は実は違いがあるので使い分けに注意しましょう。
「育児休業」は法律で定められている制度のことで、法律で制度の詳細が細かく規定されています。日本企業は法律に則って従業員へ育児休業を認める必要があるため、企業ごとの差はありません。
「育児休暇」は子育てのために仕事を休める制度ですが、法律で保障されている制度ではありません。そのため、権利や給付制度などはなく、企業ごとに保障範囲が異なります。
2つの大きな違いは法律の適用範囲内か範囲外かです。中には育児休業と育児休暇を併用して利用できる企業があります。
育児休業制度の概要
育児休業は女性だけに関係する制度ではありません。昨今では、女性の社会進出に伴い、男性が子育てや家事を行うことも珍しくなくなっています。
しかし、育児休業制度の利用率は女性に比べて男性が圧倒的に低い現状が続いています。そこで、男性が育児休業を利用しやすい制度が新たに創設されています。
産後パパ育休(出生時育児休業)
2022年10月に、「パパ休暇」に代わって「産後パパ育休(出生時育児休業)」が新たに創設されました。
通常の育児休業に加えて取得が可能な制度です。改正により分割して2回の取得(改正前は1回)ができるようになり、より育児への参加がしやすくなりました。
対象期間は、子の出生後8週間以内に、4週間(28日)まで取得できます。
育児休業では原則就業は不可となっている一方、この制度は、労使協定を締結している場合に限り労働者が合意した範囲で休業中に就業することが可能になります。
パパ・ママ育休プラス
共働き世帯の増加を背景に新設された制度です。母親と父親が同じタイミングで利用するときの休業期間が2ヶ月延長されます。
延長するには、いくつかの条件をクリアしなければいけません。取得要件は以下の通りです。
- 父親と母親が同時期に利用すること。
- 子どもが1歳を迎える前に、父親か母親が育休制度を利用していること。
- 父親の休業開始日が子どもが満1歳を迎えるよりも前であること。
- 母親の休業期間初日よりも後に、父親が育児休業を取得すること。
条件に合致していなければ利用できません。また、上記の要件をクリアしても下記の例に当てはまる場合は、利用できないので注意が必要です。
- 取得希望者が入社1年に満たない場合
- 取得申請をした日から1年以内に従業員の雇用期間が終了する場合
育児休業の対象者、条件
育児休業についてより詳しく解説します。
育児休業の対象者
制度の対象となる人はどのような人なのでしょうか。育児休業の対象となる人は、法律で明確に指定されているので、従業員から利用申請があった際は、条件に合致しているかしっかり確認するようにしましょう。
育児・介護休業法において定められている、対象者の要件は原則として「1歳未満の子どもを養育する労働者であること」のみです。
しかし、パートタイムやアルバイト勤務をしている人は、さらに利用条件が追加されるため注意が必要です。雇用期間に定めがある人の場合は、以下の条件に当てはまるか確認しましょう。
- 1年以上同じ企業に勤めている。
- 子どもが1歳6ヶ月を迎えるまでに雇用期間が終了しないこと。
この2つの条件をクリアしていれば、雇用期間に定めがあっても育児休業制度を利用できます。
育児休業を取得できない労働者
育児休業は原則として子どもが1歳未満であれば誰でも利用できます。アルバイトやパートなど、有期雇用の場合もいくつかの条件を満たした人であれば利用することが認められています。
ただし、無期雇用の人であっても利用対象とならない場合があるので注意してください。
例えば、入社して1年未満の人や、申請日から1年以内に退職が決まっている人、1週間のうち労働するのが2日以下の人などが該当します。
従業員から育児休業の申請があったときは、細かい条件までチェックして、対象範囲内かどうか確認することが大切です。
育児休業期間の調べ方
取得できる育児休業の期間は人によって異なる場合が多いので、従業員一人ひとりに対して適切な期間を指定しなければなりません。しかし、個々の休業期間はどのように定められているのでしょうか。期間の調べ方を具体例とともに紹介します。
女性を対象とした場合の期間は、「出産後8週間の産休を取得後の、産休明けから子どもが1歳になる前日まで」の1年間とされています。女性の場合は、産後休暇期間が含まれている点が特徴だといえます。
男性の場合は産後休暇がないため、育児休業が認められた日から1年間が対象期間となります。
ただ、子どもが1歳を過ぎても取得できるパターンがあります。例えば、保育園や保育所を利用できないなどの理由があると、1歳6ヶ月まで延長できます。さらに、平成29年の法改正によって子どもが2歳になるまで延長が可能になりました。
具体的な調べ方を紹介します。
2002年12月25日が出産予定日だった場合について考えてみましょう。このときの各種休業制度を利用したとき、以下のようになります。
産前休業:2002年11月14日から2002年12月25日まで
産後休業:2002年12月26日から2003年2月19日まで
育児休業:2003年2月20日から子どもが1歳になる誕生日の前日まで
産後休業期間の開始日は、出産予定日よりも実際の出産日を優先するので多少前後します。
育児休業期間は、子どもが満1歳となる前日までなので、仮に2002年12月25日の出産予定日通りに出産したときの育児休業終了日は、2003年12月24日となります。
休業する期間については、個人の考え方や保育所や保育園の空き状況などから人によって前後します。従業員の考え方を尊重して、休業期間中でも業務に支障がないように職場環境や人材配置を整えておくことをおすすめします。
育児休業給付金(育休手当)とは
育児休業給付金は育休手当とも呼ばれ、国から給付されるお金のことを指します。育休手当は雇用保険法という法律で定められており、休業中に減ってしまう収入面の不安を軽減するために支給されます。
育休手当の支給により、従業員は経済的不安が軽減され、育児へ集中できるようになりました。さらに、育児と仕事を両立しやすくなってキャリアも私生活も諦めなくて良くなるなど、ポジティブな変化が期待できます。
育休手当の特徴は、課税対象のお金ではないため社会保険料が免除される点です。超少子高齢化社会といわれる日本にとって、子育てしやすい環境を整えることが重要視されているため、育休手当の支給などを通して子育て世帯が暮らしやすい配慮がされているのです。
育児休業給付金の受給資格
育児休業給付金は、誰でも受け取れるわけではありません。一定の受給資格が設けられているため、支給にあたっては十分な確認が求められるでしょう。
具体的な受給要件は以下の通りです。
- 養育する子どもが1歳未満であること。
- 一般被保険者または高年齢被保険者であること。
- 育休開始前の2年間において、賃金支払基礎日数が11日以上となる月が12ヶ月以上であること。
上記を満たせば、育児休業中の人であれば誰でも受給申請が可能です。ただし、アルバイトやパートタイム勤務など、雇用期間に定めのある人の場合は以下の要件を満たすことが求められます。
- 同じ企業に1年以上勤めていること。
- 子どもが1歳6ヶ月を迎える前に雇用期間が終了しないこと。
人事担当者は、従業員それぞれが受給資格を持っているか確認し、適切に処理するように心がけることが大切です。
育児休業給付金の支給条件
育児休業給付金は、要件を満たしただけでは支払われないときがあるので注意が必要です。支給されるための条件を紹介します。
- 支給対象期間中は常に被保険者となっていること。
- 休業中に支払われる賃金が、休業前の80%以下であること。
- 休んでいる間の労働日数が10日以下であるか、10日以上の場合は労働時間が80時間以内となること。
休業前と同等の給与を受け取っている場合や、同程度の時間勤務している場合などは支給が認められません。従業員の雇用形態や契約形態を加味して、対象範囲を確認するようにしましょう。
育児休業給付金(育休手当)の計算方法
支給額は固定ではないため、従業員によって異なります。間違いのないように注意して適切な給付額を算出しましょう。
具体的な計算式は「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」で表されます。ただし、休業期間が始まってから6カ月が経過しているときには、支給割合が67%から50%に引き下げられます。
育休手当は、休業前の給与の6割以上か5割が基本的な支給額となります。この場合、給与が高いほど支給額が多くなる計算ですが、育休手当には下限および上限の金額が決められています。そのため、上限額を超えた金額を受け取ることはできません。
休業開始時賃金日額の算出方法
育児休業給付金の計算式は「①休業を開始した時点の賃金の日額×②支給する日数×67%」です。
アルバイトやパートタイム勤務の人は、月ごとの収入額が一定ではありません。そのため、日ごとの収入額を算出して支給額などを決定する必要があるのです。
では、①と②はどのように算出されるのでしょうか。
①は「育休開始6ヶ月前から育休開始直前までの収入の合計額÷180日」で計算できます。収入の金額は保険料を含めた額とし、賞与額は含めません。
②は1ヶ月の労働日数(仕事を休んだ日数)を意味します。多くの場合は30日とされています。
こうして算出された数字を掛け合わせた数字に、67%または50%の支給割合を掛けると正確な額が算出できるでしょう。
具体的な数字を用いて計算してみます。ある人の育休取得前6ヶ月の収入合計が180万円だった場合、①は「1,800,000円÷180日」より、1万円だとわかります。
②が一般的な30日とすると、「①×②×67%」の計算式に当てはめて「10,000円×30日×67%」で求められます。つまり、支給額が20万1,000円だと計算できるでしょう。
なお育休がスタートしてから6カ月以上経っている場合は、支給割合が67%から50%に引き下げられます。このときの支給額は「10,000円×30日×50%」より、15万円となります。
育児休業に必要な書類と手続き
具体的な手続きの流れを解説します。
【従業員】産休から復帰までの流れ
女性従業員が子どもを授かってから職場復帰するまでの間に利用できる休業制度はいくつか存在します。
一般的には、出産する予定日の6週間前から子どもが生まれる当日までを産前休業として取得が可能です。ちなみに双子だったときはさらに長い期間取得できる場合が多いでしょう。
子どもを出産してから8週間は産後休業期間に該当します。その後、子どもが満1歳を迎える前日までが対象の休業期間です。男性は休業に入る初日から1年間が対象期間になります。
その後、特別な事情や希望がない限りは職場に復帰します。
【人事】産休取得時に行う手続き
従業員が産前・産後休業を取得する場合、人事担当者が行うべきことはあるのでしょうか。産前・産後休業は合わせて「産休」と称されますが、産休に入る際の人事担当者のタスクを紹介します。
まずは社会保険料の免除申請を行うと良いでしょう。産休中の従業員の社会保険料は免除の対象となります。そのため事前の申請が必要ですが、手続きは人事部の担当範囲となっています。手続きはできるだけ速やかに行う必要があり、遅くても産休期間が終了するまでに完了しておく必要があります。
免除申請にかかわる書類は、企業の管轄の年金事務所に提出します。書類に不備がなければ、社会保険料が従業員の負担分も会社負担分も、両方免除されます。
また、出産手当金の支給申請も行いましょう。これは、産休中に減額される給与を補填するために支給される支援金です。産休期間に入った人であれば誰でも申請でき、各企業が加入している健康保険組合などに必要書類を提出して申請します。
【人事】出産後に行う手続き
子どもが生まれる前までは各種制度の基準日となる出産日が不明確なため、処理可能な手続きは限られます。しかし、子どもが誕生して出産日がはっきりしたら育児休業をスタートさせる手続きを行うことができるでしょう。
従業員が出産後、育児休業制度の概要や育休手当の支給要件、支給額などの詳細を説明しておくと、従業員も安心して育児休業期間に入れるはずです。制度の説明を受けてから従業員から育児休業を取得したいという希望があったら、休業期間について相談するようにしましょう。
育児休業の取得時、開始予定日と終了予定日を明確にして企業に申告するように法律で定められています。
【人事】育児休業中に行う手続き
従業員が育児休業期間に入ったら、いくつかの手続きを行いましょう。
まずは、社会保険料の免除手続きが必要です。産休中と同様、育児休業中も社会保険料が免除されるため、該当期間の免除申請を行なっておくようにしましょう。
また、従業員が育児休業給付金(育児手当)の受給資格を満たしているか確認しておくことも大切です。育児休業に入った翌日から、ハローワークで受給資格の有無を確認することが可能です。
育児休業給付金の受給資格がある従業員の場合は、受給申請処理を行います。初回の申請は育休開始から1ヶ月後であり、その後は1ヶ月ごとに申請するような仕組みとなっています。申請の際は企業の管轄のハローワークに必要書類を提出しましょう。
【人事】育休終了後に行う手続き
育児休業期間が終了したら、人事担当者は何をすべきでしょうか。
まず第一に行うべきは、終了届を提出することです。従業員が育児休業を取得し終えたことを証明する書類で、管轄の年金事務所に届け出る必要があります。これは、予定よりも早く育児休業を終了した場合に必要な手続きなので、忘れないようにしましょう。
終了届けの提出に伴い、会社と従業員負担分の社会保険料の免除期間も終了となります。
また、社会保険料の月額を変更するように申請する手続きが必要です。月額変更届を提出することで、従業員の社会保険料を職場復帰後の給与額に合わせて変更することができます。
月額変更届は、職場復帰から3ヶ月が経過したら年金事務所に届け出ます。年金事務所では、従業員の復帰後直近3ヶ月の給与額をもとに、4ヶ月目以降の社会保険料を改定します。
一般的な企業では、育児休業から復帰した際の給与額は休業に入る前よりも少なくなっている場合がほとんどです。そのため、月額変更届を提出することで、給与額に応じて支払う社会保険料を減額できるでしょう。
さらに、厚生年金の特例申請を行なっておくと安心です。これは、従業員の労働時間が短縮されるなどして、社会保険料が減額されても、将来受け取れる年金額が減額されないようにする手続きです。
正式には厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例と呼ばれる制度です。この特例の申請は、社会保険料の報酬月額変更届の提出と同時に行うと効率的でしょう。
こうした制度や特例措置があることを、多くの従業員は知らないでしょう。制度の概要や人事部が担当する事務手続きについては、従業員本人にも説明しておくことが大切です。
平成29年の法改正により、育児休業期間が最大2年に延長
「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」は、平成3年の制定以来、時代の変化に合わせて内容の改正が繰り返されてきました。
特に変化が大きかったのは、平成29年10月1日に実行された法改正でしょう。これによって、取得できる休業期間が最大2年まで延長されたことで話題になりました。
この法改正の背景には、待機児童問題があります。保育所や保育園などの空きがなく、子どもを預ける場所を失った人たちがやむを得ず職場復帰を諦めて離職したり、妊娠出産を機に退職したりする人が多いことから、対象期間の延長が決定されたのです。
法改正よりも以前に認められていた休業期間は、原則として子どもが満1歳を迎えるまででした。ただし、事情がある場合は1歳6ヶ月まで延長可能だった期間が、現在は2年までに延長されています。
育児休業等制度の個別周知
育児休業の利用にあたって、企業から従業員へ制度の概要などを直接説明することが求められています。これを個別周知と呼びます。
企業は育児をする人を対象とした制度があるということをまずは従業員に伝え、その概要を説明した上で従業員が制度を利用するかどうか自由に選択できるようにすることが推奨されています。
これは性別にかかわらず、従業員本人かその配偶者が妊娠または出産した場合に行われます。職場への迷惑を考慮して育児休業を取得したいと言い出しにくい現状を踏まえて規定されたもので、個別周知によって従業員が育児休業を取得しやすくなることが期待されています。
育児目的休暇の新設
育児休業制度とは異なる制度に、「育児目的休暇」があるのをご存じでしょうか。平成29年の法改正の際に、男性の育児への参加を促進するために新たに設立されています。
この制度は、会社規定に定められている場合に利用できるもので、学校で就学する前の子どもを養育する従業員に適用されます。厚生労働省が助成金を設立したことをきっかけに導入する企業が増えています。
育児目的休暇は、主に男性が育児を目的とした休暇を取りやすくするためのものです。この制度が新設された背景には、男性が育児のために休みにくい社会と、休みを取得する際に年次有給休暇を消化している人が多いという現状があります。
育児目的休暇が新設され、導入する企業が増加することで、性別にかかわらず多くの人が育児に参加できるような社会になることが期待されているのです。
日本における育児休業取得の現状
日本の現状を解説します。
性別による育児休業取得率の違い
育児休業の取得率は男女で差があるのが現状です。三菱UFJリサーチ&コンサルティングが公開した、「平成27年度仕事と家庭の両立に関する実態把握のための調査」では、具体的な性別による取得率の違いを知ることができます。
平成24年から平成25年にかけての1年間の育休取得率を見てみると、女性の90%が育休を取得していることがわかりました。この数値は、正社員などの正規雇用者も、アルバイトやパートなどの非正規雇用者も同じ結果となり、雇用形態によらず女性のほとんどが制度を利用していることが明らかになっています。
女性のほとんどが育休制度を利用している一方で、男性の利用率は低い水準にあります。女性と同じく平成24年から25年までの1年間における男性の育休取得率は平均して4.85%でした。
正社員の場合は2.1%、雇用期間に定めがある人の場合は5.5%という結果で、正規雇用の人の方が、「仕事を休みにくい」と感じていることが伺えます。
育休取得率の変化
「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)」が制定されてから、育休の取得率はどのように変化しているのでしょうか。
厚生労働省が発表した「令和3年度雇用均等基本調査」の結果によると、令和3年度の育休取得率は女性が85.1%、男性が13.97%でした。
平成24年時点では女性が90%、男性が4.85%だった結果と比較して、女性の社会進出が進んだことや、男性が育児に参加するようになったなどの変化があったとわかります。
【子供が1歳以上の場合】育児休業の利用状況
育児休業制度は、原則として子どもが満1歳となる前の日まで利用できます。しかし保育所の空きがないなどを理由に、2歳になるまでの子どもなら期間の延長が認められています。
さらに企業によっては会社独自の制度を導入し、2歳以上の子どもを養育する家庭の場合でも育休を取れる場合があります。
「令和3年度雇用均等基本調査」では、育休制度のある企業のうち60.5%が「子どもが2歳になるまで」取得が可能だと発表されています。2歳未満としている企業は28.4%、2歳以上3歳未満まで休業できるとする企業は7.8%という結果でした。
また「平成27年度仕事と家庭の両立に関する実態把握のための調査」によると、子どもが1歳以上になっても育児休業を取得した人は83.6%でした。その理由として多かったのは「保育所に入れない」場合です。次いで、「会社の制度で認められていた」というものです。
産休を利用するほとんどの人が期間を延長して子育てに取り組む一方、男性の育児参加率は上昇傾向にあるとはいえ依然として低いままです。
例えば、男性の育児参加を目的に創設された「パパ・ママ育休プラス」の利用実績がある企業は全体の5%という結果が得られています。
企業の課題は、男性が育児に参加しやすい雰囲気や制度をつくることだといえます。「パパ・ママ育休プラス」や「パパ休暇」などの制度の存在を周知して、誰でも利用できる環境を整えることが重要です。
子育て支援に力を入れる企業は、離職率が低く従業員の満足度が高くなりやすいでしょう。従業員が長く働きやすい会社を目指すと、結果的に企業の成長が期待できます。
両立支援等助成金とは
世間には育児や介護などを理由に働きたくても働けない人や、本人の意思に反して退職した人が数多くいます。こうした現状は日本の労働人口の減少をさらに加速する一因となっています。そこで、仕事と家庭の両立を図るために国から企業に「両立支援等助成金」が支給されています。
これは、企業に勤める人が育児や介護をこなしながら仕事に取り組めるような支援を行う企業や、女性の社会進出を後押しする取り組みを実施する企業に対して政府からの助成金が給付される制度を指します。
年度ごとに複数のコースが設立され、各コースに該当する事業に対して助成金が支払われる点が特徴なので、詳細は厚生労働省のホームページなどで確認すると安心です。
育児休業に関連するコースには、男性の育児参加を支援するコースや仕事と育児の両立を支援するコースがあります。
そのほか、介護と仕事の両立をサポートする「介護離職防止支援コース」や不妊治療を行う世帯をサポートする「不妊治療両立支援コース」などがあります。
育児休業等支援コース
複数あるコースの中でも「育児休業等支援コース」は、育休を取得した人が育休を取得しやすくするほか、職場復帰しやすくするために設立されました。
助成金を申請するためには、以下のような取り組みを実施することが求められます。
- 育休取得時または職場復帰時
育休復帰支援プランを作成し、プランに沿って従業員の円滑な育休取得から職場復帰に関わる取り組み。
- 業務代替支援
育休が終わってからの従業員の取り扱いについて就業規則で規定し、休業した人の代わりを務める人に手当の支給などを行う取り組み。かつ、休業した人が職場復帰することが必要。
- 職場復帰後支援
看護休暇制度や保育サービス費用の補助制度を導入して、従業員が職場復帰後にその制度を利用するよう後押しする取り組み。
育児休業を積極的に取得できるよう支援を行いましょう
女性の社会進出や男性の育児参加が活発になっている昨今、働いている人が気兼ねなく育児休業を取得できる社会体制の実現が求められています。
育児休業の取得率は性別による差が大きく、男性の取得率は女性と比べるとまだまだ低い現状です。誰でも利用できる制度でありながら取得率が上がらない背景には、職場復帰後のキャリアへの不安や、休業中に収入が減ることへの不安があります。
企業は、育児休業制度やパパ休暇制度について社内に周知して利用促進に取り組むなど、従業員が育児と仕事を両立できるような支援を行う必要があります。