エンジニアの評価制度における課題とは?評価ポイントや企業事例を紹介
自社のエンジニアをどのように評価すべきか分かっていないという悩みを抱えている企業は多いです。本記事では、評価の悩みから実際に行うための方法、ポイント、企業実例について解説していきます。
エンジニア評価の課題
各企業が抱える『エンジニア評価』に関する問題は、以下の通りです。
1位:技術者出身のマネジメント人材の不足
2位:評価制度(正確さ、納得感)
3位:リファラル採用
4位:給与、報酬、雇用形態全般
5位:事業開発力を持つ技術者の不足、人材育成の困難さ
これらの課題を見ると、特に「採用、育成、評価」に関するものが多く、いずれも組織の成長には欠かせない要素となっています。
エンジニアの評価の悩み
各企業に属するエンジニアが抱える評価に関する悩みには以下のようなものがあります。
- 事業に対する貢献のレベル評価と能力評価を共に両立させることが困難
- 評価に誠実であろうとするために、賃金制度が複雑になる
- 成長目標のロールモデルが立っていない
- 適正な評価をされることで得られる成長実感
これらの悩みを放置していると、不満を募らせたエンジニアが退職を考えるきっかけになりかねないため、企業としては早急に対応しなければなりません。
エンジニア評価する方法
実際に企業の対応として、エンジニアを適正評価するためにはどうすれば良いのでしょうか。
まず前提として、人事評価は「賃金制度」「等級制度」「評価制度」の3つからなります。それぞれの制度を上手にリンクすることで、会社としての方向性や求める人材などが分かります。
なので評価する方法としては、「人事・評価制度の目的を認識する」「行動目標を明確にする」「成果目標を明確にする」「正当性のある評価を行う」「フィードバックを確実に行う」という流れが推奨されます。
エンジニアの人事評価のポイント
ここでは、人事評価においてエンジニアのために押さえるべきポイントについて解説します。
定量評価の実施
数値を用いて評価することを「定量評価」と呼びます。 定量評価は、数値を用いて表現されるため、定性評価と比較して具体的にイメージしやすく、だれにでもわかりやすいというメリットがあります。また訂正評価だと評価者の主観が入り混じる可能性があるため、エンジニアにとって納得のいかないものになる危険があります。
項目評価の細分化
まずは評価するべき項目を細分化しましょう。ここでのポイントは「できた」「できなかった」を明確にすることです。
例①組織への貢献度に対する評価
どの程度組織に貢献してくれたのかを測る指標として、「何を持って貢献度が高いとするか」と「それを達成できたとする基準」を明確に設定する必要があります。
例えば、「自身が持つスキルを自分以外のメンバーにも伝え、全体としてのスキルアップを目指してほしい」という指標だった場合、判断する項目として「月1回のスキルアップ講習会を開いた」のように設定すれば、容易に達成できたかどうかを評価することができるでしょう。
例②技術スキルに対する評価
次にエンジニアが持つスキルを適正に評価する方法として、具体的な「スキルを所有していることを示す基準」を設定しましょう。
例えば、「Javaの開発スキルがある」ということを示す場合、判断する指標として「基本的な構文が頭に入っていて、かつ理解している。単体機能においては自身の力のみで開発が進められる」のように設定すれば、現状のスキル熟練度についても測ることが可能です。
上長評価と自己評価
人事評価には自己評価が用いられます。自己評価を行うのは、社員本人だけではありません。直属の上司も評価を行い、双方が評価結果をもちより面談を行います。
もし、社員の仕事に対する考え方で気になる部分があれば、上司から指摘をするのがよいでしょう。意見を言い合うことで、社員と上司の関係性が構築され、双方が納得いく自己評価が完成します。
エンジニア自身による自己評価の実施
自己評価とは、「自分で自分を評価する」ためのものです。自己評価の過程で自身の業績などを振り返り、良かった点や悪かった点を発見することで、今後の業務につなげることが可能になります。
自己評価を繰り返すことにより、自分の成長を振り返ることができます。定期的な自己評価は、自身の成長が確認できるとともに、課題に対するこれからの行動を明確にするという点でも重要な役割を果たします。
褒めと注意の按排
エンジニア自身の業績でイマイチだったところばかりを話すのでは、モチベーションを下げてしまうことに繋がりかねないので、バランスよく褒めと注意を行いましょう。
目安としては褒めと注意を、7対3か8対2くらいの意識で行うことをお勧めします。
客先常駐のエンジニア評価
社内の従業員とは違い、評価面談まで放置されることが多く、モチベーションの低下に繋がってしまいます。客先常駐の従業員に対しての評価では、さらに注意が必要となります。
日頃からのコミュニケーション
普段顔を合わせたり、会話もしないような上司から自身の働きを評価されると、エンジニアにしてみれば「分かったつもり」だと思われてしまい、反発を起こしてしまいます。結果的に退職の道を選んでしまうエンジニアも少なからずいるので、普段からのコミュニケーションは意識して行うように努めましょう。
1on1ミーティングの実施
1on1は「上司と部下が1対1で行う対話」のことで、たいていの場合、週に1回、最低でも月に1回実施します。
また、1回の実施時間は30分程度で設定している企業が多いようです。もちろん会社やチーム、職種によっても異なりますが、「短いサイクルで定常的に実施する」ことが通常の面談と1on1の大きな違いです。
⇒人事評価制度について詳しく知りたい方はこちら
エンジニアの評価制度を取り入れている企業事例
具体的にはどのような制度を取り入れているのか、企業事例をご紹介しましょう。
Gunosy/戦略的なエンジニアチームの育成を実現
グノシーは、2019年7月からエンジニアを対象とした新しいキャリアパスと評価制度をスタートさせました。具体的に行ったことは以下の通りです。
- 「リードエンジニア」という新しい職制の設立
- 所属チームのマネージャーと、チームのエンジニアを束ねるリーダー的存在である「リードエンジニア」が評価
こうした仕組みが確立された結果、従来の事業成果主体の評価ではできなかった、より戦略的なエンジニアチームの育成が可能になりました。
VOYAGE GROUP/技術力評価会の実施
人が育つ「評価制度」を綿密に構築しているのが、株式会社VOYAGE GROUPです。同社では、半期の取り組みを評価する「技術力評価会」を中心とした評価制度を作りました。具体的には、
- 半年に1度「技術力評価会」を実施。自分の半年間の仕事の中から1つネタを選んで発表して、上のグレードの人が評価。
- 被評価者に対して、サポーターが1人付き、評価会にどんなネタを持っていくのかを、被評価者と一緒に考えます。
これによって、同業種の社員による評価で納得してもらい、能力面においてもしっかりと評価が可能になります。
GMOペパボ/エンジニア評価制度と職位制度
技術者の仕事を「もっとおもしろくする」特徴的な制度として、エンジニア評価制度と職位制度があります。
エンジニア評価制度:半期ごとに上級エンジニアが評価する制度で、全技術者が対象です。エンジニア全体に適用可能な評価軸で評価します。
職位制度:半期ごとの評価制度と同時期に行われ、エンジニアから立候補してもらい、その後の面談を経て、通過すると4等級以上の専門職として昇格するエンジニア独自の制度です。
同社では、最高のサービスを提供するために、パートナーの働く環境づくりにも力を入れているようです。
クックパッド/テックリードの新設
同社には、エンジニアが100名を超えており、また若手の割合が増えたことで、「組織のなかで、成果の出し方をどのようにして教えるのか」という課題が出てきました。
それに伴い、2017年7月より「テックリード」と呼ばれるポジションを新設しました。
それぞれのテックリードが、所属するチームの技術者のマネジメントに責任を持ち、エンジニア全員がエンジニアによって評価される体制を作ることで、よりチームとしての力を最大化することが狙いです。
はてな/メンターによる評価の実施
「はてなブログ」や「はてなブックマーク」などのサービスを運営する企業です。
- 新卒・中途・入社年数には関係なく、技術者には1人のメンターをつける
- 評価する際には「成果」「行動スキル」「専門スキル」の三つの軸で行う
- メンターは評価点をつけるだけでなく、定性的なフィードバックもおこなう
という「評価制度」を取り入れており、メンターによって「専門スキル」という観点でメンティーの専門性を適切に評価することが可能になります。
まとめ
エンジニアの評価方法は各企業によって異なり、自社に合ったやり方を採用することが重要となります。またエンジニアに対して適正な評価を与えることで、モチベーションが向上し、組織全体の生産性も高まることでしょう。なので、まずは自社できちんと評価できているかを話し合い、早急に改善すべきところから手をつけていきましょう。