ES調査とは?具体的な分析方法と導入のメリットを解説!
人事を担当していると耳にすることの多いES調査。そもそも何を意味しているのでしょうか。得られるメリットと具体的な方法は?
そんな疑問を解消し、各企業が確保した優秀な人材が会社に定着する環境整備を進めていくために、ES調査について解説します。
ES調査とは?
まず、ESとは「Employee Satisfaction」の頭文字からなる略語で、意味は「従業員満足」です。つまり、ES調査とは従業員の満足度を調べる策であり、働き方改革や少子高齢化、グローバル化を背景に注目されるようになりました。
厚生労働省でも顧客満足度(CS)とともに従業員満足度(ES)の向上に努めるように発表しており、ES調査を実施する日本企業は増加傾向にあります。
従業員の表面化しにくい思いや、会社への認識を数字で確認することができるのが、ES調査なのです。
⇒ES調査について詳しく知りたい方はこちら
ES調査によるメリットと目的
結果的に会社にとってどのようなメリットがあり、何を目的に実施すると良いのでしょうか。ES調査においては、目的意識を持つことが重要です。
そのために、ES調査によって得られる3つのメリットについて理解を深めましょう。
従業員の労働環境向上
まず1つ目は、従業員の労働環境向上に役立つという点です。従事する仕事に対して、さまざまな観点から従業員満足度を測った結果をもとに適切な人事戦略を立てて実行すると良いでしょう。効率的な労働環境の改善につながり従業員の離職率低下が期待できます。
また、ES調査の導入により気付きにくい過酷労働や各種ハラスメントの抑制にも効果があるのも大きなメリットだといえます。
企業の業績向上
2つ目は業績向上が望める点です。ESが向上し従業員がストレスなく働ける環境が整うと、仕事に対するやる気や向き合い方が変化します。集中できる環境で業務を進めることは従業員一人ひとりの生産性向上が実現でき、顧客満足度にも良い影響を与えます。その結果、企業の業績向上につながるのです。
さらに、厚生労働省が実施した調査では、ESを重視した環境整備をしている企業はES向上への取り組みをしていない企業と比較して、利益率が高く売り上げも多いという結果が得られています。
人材確保強化
3つ目は人材確保強化となる点です。ES調査を行うことはすなわち、「従業員を大切にしている社風である」と社内外に伝えることを意味します。企業イメージがクリーンになるので、より良い労働環境を求めている求職者にとって魅力的な企業だと認識されるでしょう。
さらに、ES調査結果を活用した環境改善により従業員の定着率も高まることが期待できるのです。
質問項目の設定
ES調査では従業員にアンケートを取るため、事前に以下3要素の設定をする必要があります。
- 調査項目
ES調査の目的に合わせて「キャリアプランに関する満足度調査」などと設定しましょう。
- 設問
業務に負担をかけない範囲(時間・労力)で回答できるよう、設問内容は分かりやすく簡潔に。かつ適量にするようにしましょう。
- 回答形式
選択肢から適切な回答を選んでもらう「選択回答形式」か、従業員が自由に記述できる「自由回答形式」などがあります。
自由回答形式は回答者の負担が大きいため一般的なES調査では用いられません。
以上3要素を設定した後、ES調査を実施しましょう。
ES調査の分析方法とは?
ES調査の有用性をお伝えしてきました。実際に社内で実施するにあたり、どのような調査方法があるのでしょうか?
ES調査方法は主に7つの方法があります。それぞれについて詳細に解説していきましょう。
単純集計
最も基本的な集計方法が「単純集計」です。これにより、従業員全体が抱いている満足度の傾向を知ることができます。前回の結果との比較もしやすく、ざっくりとした職場の課題を見つける際に効果的です。
単純集計の際は、一つの質問項目データを全体の調査実施数で割ることで平均値を算出します。得られた平均値から従業員の満足している項目と、不満を抱いている項目が明白になるのです。
クロス集計
単純集計よりさらに属性を絞った集計方法が「クロス集計」です。調査したい従業員の属性と質問項目をかけ合わせ、より具体的な調査を行います。
例えば、「新入社員が感じている職場の働きやすさ」を調査したいときなどに有効です。
複数の属性においてES調査を行うことで、その性別、年代、あるいは役職で抱えやすい問題や特徴を把握することができるのです。
他社比較分析
「他社比較分析」は社内だけで完結せず、他社と比較する方法です。ES調査の質問項目は多岐に渡りますが、他社(特に同業他社)のES調査結果と同じ項目で結果を比較することで改善点や参考になる施策案が得られるでしょう。
ただし、他社のES調査結果は入手しにくいデータであるため、他社比較分析を行う際はデータを保有しているコンサルティング会社や外部の調査会社に依頼する方法がメジャーです。
経年比較分析
経過年数によるES調査結果の比較分析を行う方法が「経年比較分析」であり、施策の効果を数値化する際に有効です。
こうした経年比較は多くの調査でも活用される手法ですが、ES調査においても例外ではありません。会社がより働きやすくなり、従業員もそれを実感しているかどうかを確認する場合に経年比較分析を用いると良いでしょう。
ポートフォリオ分析
「ポートフォリオ分析」では各項目の従業員満足度と、その項目の重要度を数値化してグラフに表す方法です。縦軸を満足度・横軸を重要度として見える化することで、優先的に取り組む必要のある項目を割り出すことができるのです。
優先順位をつけて施策を練ることが、ESを高める最短ルートだといえるでしょう。
相関分析
2つのデータの関連性を数値化することで、会社にとって本当に必要な施策かどうかを検討する際に役立つのが「相関分析」です。
例えば、ESとCS、ESと利益の相関分析などに用います。ES向上によるCS向上が本当に会社の利益につながるのかどうかが分かるため、会社ごとの業種や業態に合わせた相関関係を算出することができるのです。
満足度構造分析
「満足度構造分析」という手法からは、就業環境に対してどんな傾向の人物がより高い満足度を得ているのかを検証できます。
総合的な満足度が高い従業員が、どの項目を重要視しているのかを分析することにより、会社における各項目の重要度も明らかになるでしょう。満足度構造分析には統計学(重回帰分析)の知識が必要ですが、会社の特性・傾向を知る上でも有効です。
ES調査の指標、質問項目の注意点
ハーズバーグ(アメリカの臨床心理学者)が提唱した二要因理論では、会社に対してどんな項目がプラスに働き、どんな項目がマイナスに働くのかが明らかにされました。
二要因理論を基にすると、ES調査の指標は大きく以下の3つに分けられます。
- 動機づけ要因(プラスに働く=あるほどに満足度が高まる)
仕事内容/仕事量/評価基準/異動や昇進制度/スキルアップ
- 衛生要因(マイナスに働く=整備されていないと不満を感じる)
経営方針/職場の雰囲気/人間関係/報酬/福利厚生/労働条件
- 総合的な項目
全体の満足度/働きがい/会社への愛着
この指標をもとに、質問項目を設定すると良いでしょう。
例えば、動機付け要因に関する項目は「評価基準は適切か」「成長機会は十分か」などです。衛生要因に関しては「職場の雰囲気が合っているか」「人間関係は良好か」などが挙げられます。
分析結果を有効活用するポイント
ES調査で得られた調査結果を、会社の未来のために活用することが大切です。分析結果を共有して終わることなく、有益に活用する際に気を付けたい3つのポイントをお伝えします。
会社の目指す姿と実際の姿が乖離しないように、自社にES調査を導入する際の参考としてください。
分析・集計は必ず仮説を持って行う
より会社にとって有益な情報を得るためには、事前に仮説を立ててから質問項目や分析方法の選択を行うことが重要です。なぜなら質問項目も分析方法も多種多様なES調査において、全てを網羅した分析は困難だからです。
例として、「入社3年以内の従業員の基本給を上げると、総合満足度が高まる」という仮説を人事戦略として立てた場合です。この時、ES調査では給与に対する満足度をヒアリングすると良いでしょう。さらに、入社年次や役職という属性でのクロス集計を行うことで、仮説に対する答えが得られるのです。
分析結果のフィードバックを行う
ES調査後、分析結果のフィードバックを行いましょう。つまり、実際の職場環境の改善につながる施策を実施することが重要です。速やかなフィードバックがないと、従業員に不信感を与えかねません。
ES調査に協力してもらう従業員に対して何かしらのアクションを行い、改善までの過程も共有すると良いでしょう。
前回の調査内容との比較し、改善されているか確認
ES調査では定点観測を行い、過去の調査結果と比較して変化を確認することも重要です。過去に実行した策は、効果があったかどうかを確かめる必要があるのです。
正しく比較検証するために、調査項目は変えない方が望ましいでしょう。継続的かつ定期的にES調査の分析と改善を繰り返すことで、よりES向上が期待できます。
まとめ
従業員が会社に対して抱いているイメージを知り、改善点を明らかにしていくためにES調査は有効です。
多くの質問項目や分析方法から会社の現状や特徴に合わせてカスタマイズしたES調査の実施により、優秀な人材が定着しやすくモチベーション維持がしやすい会社に成長することができるのです。