女性管理職の比率はなぜ上がらない?その理由と高めるための方法とは
近年ではダイバーシティが尊重されて女性の社会進出が目覚ましく、優秀な人材が管理職に昇進するケースも非常に多くなりました。
しかし、管理職の全体数から考えるとまだまだ女性の割合は少ない傾向にあるため、企業によっては昇進するためのルートやノウハウが整備されていません。
女性の昇進が少ないのは企業にとっても大きな損失といえ、個人や企業の成長を妨げる原因です。
今回は女性管理職が少ない理由に加えて、増やすメリットについても解説するので、参考にしてみてください。
女性管理職比率が注目されている理由
企業ごとの女性管理職比率が注目されている理由としては、以下の3点が挙げられます。
- 少子高齢化の進行にともなう労働人口の減少
- 男女共同参画社会基本法の施行
- 女性活躍推進法の改正
一昔前の日本では女性が社会進出するのが難しい側面も大きかったのですが、近年では一人ひとりが自分らしく生きられるように法律面からもさまざまな変更がされました。
それぞれの女性管理職比率が注目されている理由についても解説するので、気になる方は参考にしてみてください。
少子高齢化の進行にともなう労働人口の減少
少子高齢化の進行にともなって労働人口はどんどん減少しているのが現状であり、働ける世代の人たちには積極的に働いてもらわなければいけません。
少し前のように男性管理職だけでは企業も十分な人数の管理職が確保できない部分も大きく、優秀な人材なら男女問わずに活躍の場を用意するようになりました。
また、男女の能力を比較しても性差による能力差はほとんどないといえるため、積極的に登用している企業も少なくありません。
男女共同参画基本法の施行
男女共同参画基本法の考え方としては男女があらゆる場面で均等に機会が与えられ、さまざまな場面で活躍できる社会を目指している法律です。
職場においては女性管理職が活躍しやすいようにさまざまな工夫が必要になりますが、持っている能力を活用できると業績向上などのメリットも期待できます。
どうしても一昔前の価値観に縛られているケースも珍しくないため、男女が持っている価値観について見直すきっかけにもなるでしょう。
女性活躍推進法の改正
女性活躍推進法は女性が職場で活躍しやすいような環境をつくる法律であり、常時働いている従業員が101人以上の事業者に対して義務付けられているのが特徴です。
施行されたのは2020年ですが、2022年に法改正がされました。
内容としては2026年3月31日までに企業や国では積極的に女性が活躍できるようにサポートして、計画的に女性管理職を増やすなどに取り組みましょう。
また、従業員のモチベーションを保つためにも、女性が働きやすい職場の整理は急務です。
直近の女性管理職比率データ
出典:男女共同参画局 I-2-13図 上場企業の役員に占める女性の割合の推移
直近の女性管理職比率データについては国土交通省が発表しており、まだまだ進んでいないといえます。
具体的民間企業においても上場企業においても発展途上といえ、これからも取り組みが必要になるでしょう。
日本では女性管理職への登用が積極的にされ始めたのが最近である点も、比率が少ない理由の1つとして挙げられます。
日本の上場企業における状況
日本の上場企業における状況について確認してみると、全体数で考えると右肩上がりに増えていることがわかるでしょう。
しかし、実際の割合については10%を下回っているため、上場企業では全体で考えれば管理職の90%以上が男性です。
国全体の取り組みとしては女性管理職は30%を目指していても、達成するためにはまだまだ時間がかかります。
一方で確実に女性管理職が増えているのも事実であり、企業では少しずつノウハウについて蓄積しているのは良い点です。
諸外国との比較
出典:国土交通白書 2021 第3節 多様化を支える社会への変革の遅れ ■2 世界各国との比較
諸外国と比較してみると女性就業者の数に関しては大きな違いはなく、実際に女性が社会で働いていること自体は珍しくありません。
日本では女性が管理職になると仕事が進まないと考えられている風潮もありますが、実際には管理職割合が増えたとしても問題ありません。
実際は女性の割合も非常に高く、取り組み方次第では解消できる問題ともいえるでしょう。
なぜ女性の管理職は少ないのか?
働いている人たちの中ではまだまだ女性の管理職の数は少なく、実際にどれくらいの人数が昇進できているかは企業によって異なります。
女性管理職が少ない理由としては、以下の4点が代表的です。
- 出産までのライフイベントをサポートする体制が社会や企業に無い
- これまでの歴史や風習が根付いてしまっている
- 組織に慣習がなく、管理職になるための経験や教育の機会がない
- 女性管理職のロールモデルが組織内に不足している
企業としてはこれらの理由に対策を立てる必要があるため、少しずつでも取り組んでいかなければいけません。
出産などのライフイベントをサポートする体制が社会や企業に無い
女性はどうしても出産・育児などのライフイベントのために長期休暇を取得することが多く、キャリアアップや昇進に向けてサポートする体制が社会や企業にないのも問題です。
日本では古くから長期的に継続して働いている人材を重宝する傾向があり、勤続年数の長さが重視される年功序列が採用されています。
そのため、女性が長期休暇によって評価を落としてしまうケースも珍しくなく、結果的にキャリアアップや昇進の機会を失ってしまうのが理由です。
これまでの歴史や風習が根付いてしまっている
これまでの歴史や風習が根付いてしまっているのも理由として挙げられ、旧来の男女の役割分担について残っています。
例えば男性は仕事に一生懸命取り組んで家族を養えるように稼いで、女性は家事・育児を担当して家を守るという考え方です。
人事権を持っている上層部ほどこのような考え方が根強いため、女性を管理職に昇進させるのを躊躇している傾向にあります。
しかし、時代の流れとともに考え方が変化している側面も大きく、若い人材が多いベンチャー企業では少しずつ解消されているといえるでしょう。
組織に慣習がなく、管理職になるための経験や教育の機会がない
組織にまだまだ女性に管理職を任せる慣習がなく、企業としても個人としても管理職になるための経験や教育の機会がありません。
管理職は一般従業員と違って部下を持って指導・管理が主な役割になるため、企業としても管理職としての働きかたについては教育機会を設けるのが大切です。
しかし、組織に慣習がないとキャリアアップや昇進についてのサポートができず、女性従業員も昇進に対して積極的な意欲を持てなくなります。
女性管理職のロールモデルが組織内に不足している
企業によっては女性管理職が一人も存在していないケースも多く、ロールモデルが不足しているのも珍しくありません。
ロールモデルの多さは企業のノウハウとしても大切な財産になりますが、存在していない状態では興味を持っていても働き方に対しての不安が大きいです。
前例が多くなると仕事と家庭の両立についてもイメージがしやすくなるのに加えて、企業としてもサポート体制や労働環境についても改善がしやすいといえます。
女性の管理職比率が高まることによる組織のメリット
一昔前までは男性管理職の比率がほぼ100%でしたが、女性管理職の比率が高まることで企業などの組織でも大きなメリットが期待できるでしょう。
具体的なメリットについては、以下の4つが挙げられます。
- 優秀な女性人材の増加・離職防止
- 女性人材のモチベーションアップにつながる
- ESG投資家からの評価が高まる
- 取り組みの中でさまざまなレガシー制度の改善も図れる
企業によっては男性管理職にこだわりを持っていますが、女性ならではの考え方や感じ方も大きな魅力です。
優秀な女性人材の増加・離職防止
近年では入社した後に一生懸命働いてキャリアアップや昇進を目指している女性も多いため、就職活動・転職活動において女性管理職の人数を重視する方も少なくありません。
向上心が強い人材は企業において貴重な人材になるだけでなく、優秀な女性人材の増加・離職防止にも効果的です。
女性管理職の人数が多くなると企業としての注目度も高まるため、働いている従業員も優良企業と判断して評価もよくなります。
人材の確保は企業力向上・維持には必要不可欠なので、優秀な人材を増やしながら退職しないような取り組みは重要です。
女性人材のモチベーションアップにつながる
一昔前まではどれだけ優秀な人材であっても、女性という理由だけでキャリアアップや昇進ができない時代でした。
また、一生懸命働いて仕事に対しての理解を深められたとしても、出産・育児でキャリアを失ってしまうケースも挙げられます。
そのような背景から女性人材はモチベーションを保つのが難しい部分がありますが、しっかりと働いて昇進できる環境を整備するとモチベーションアップが可能です。
一人ひとりが働きやすいようにサポートしましょう。
ESG投資家からの評価が高まる
ESG投資家は環境・社会・ガバナンスを評価して投資をおこなう投資家なので、企業がおこなっている取り組みが重要です。
女性管理職の増加も取り組みの1つとして認められているため、一人ひとりが向上心を持って業務ができるかどうかも判断基準として挙げられます。
考え方によってはESG投資家からの評価が高い企業は、社会的責任を果たしている企業といえるでしょう。
結果的にESG投資家にとって、魅力的な投資先になります。
取り組みの中でさまざまなレガシー制度の改善も図れる
レガシー制度とは企業経営の中で生まれてしまった、作業の複雑化やブラックボックス化が問題となっている制度です。
そのまま放置しているとノウハウが属人化したり、企業内に運用スキルが不足したりとさまざまな問題が起きます。
女性管理職を増やすために企業内のルールやマニュアルについて見直す取り組みをおこなえば、そのようなレガシー制度についても改善が図れるでしょう。
どちらにしてもレガシー制度は企業が解決するべき問題であるため、同時に問題解決のために進めるのはおすすめです。
組織内の女性管理職を増やすためにできること
組織内の女性管理職を増やすためには従業員一人ひとりの努力だけでなく、企業側も働きやすい環境を意識的に整えなければいけません。
組織ができる取り組みとしては、以下の5点が挙げられます。
- 女性特有のライフイベントがあってもキャリアを維持できるようにする
- ワーク・ライフ・バランス維持のための制度を充実させる
- 女性管理職輩出のための教育制度・人事制度を整備する
- 特に管理職クラスから、企業風土を改善する
- 昇進・管理職登用の基準を明確にする
一気にすべての取り組みを進める必要はありませんが、できるだけ早く進められるようにするのが大切です。
女性特有のライフイベントがあってもキャリアを維持できるようにする
女性特有のライフイベントとして出産や育児がありますが、どうしても数か月間は働けない期間が生まれます。
女性が継続的に勤務できるように「リモートワーク」「時短勤務」などをおこない、従来の働き方以外にも幅を持たせるのが重要です。
特にリモートワークでは自宅からも仕事ができるため、妊娠中や育児中でも業務量を調整すれば本人の希望に合わせながら働けます。
残業を前提とした労働環境や男性優位の企業風土も妨げる原因であるため、一人ひとりが働きやすい環境を意識しましょう。
ワーク・ライフ・バランス維持のための制度を充実させる
結婚や出産を機にワーク・ライフ・バランスが崩れてしまうケースは多く、以前のように働くのが難しくなって退職してしまう女性は後を絶ちません。
そうならないためにもワーク・ライフ・バランス維持のために制度を充実させて、出産・育休後でも職場復帰がしやすいようにします。
そのためには女性自身に対してのサポート以外にも、配偶者の男性側が安心して育児に参加できるようなサポートも大切です。
積極的な育児参加を推奨する企業も増えており、配偶者が出産した後には休業の取得を促進しています。
女性管理職輩出のための教育制度・人事制度を整備する
女性管理職排出のための教育制度・人事制度を整備するのも求められますが、男性管理職に対してのものと同じようにはできません。
仕事を続けやすいような環境を整備したら、一人ひとりの能力や向上心に合わせながら適切な教育をするようにしましょう。
企業にまだまだ女性管理職が少ないとロールモデルの不足によって不安を抱える可能性は高く、企業側も丁寧に教育をおこない成長を促すのが大切です。
特に管理職クラスから、企業風土を改善する
日本では上司からの指示を部下が受けて業務をおこなうのが基本であるため、特に管理職クラスから企業風土を改善する意識を持たなければいけません。
どれだけ企業全体で企業風土を改善しようと取り組んでいても、一部が古い体質を押し通すと若い世代が離職する原因になる可能性が高いです。
企業では管理職が方針や人事評価を決定している部分も大きいため、改善するためにも管理職にも教育をおこなう必要があります。
昇進・管理職登用の基準を明確にする
昇進・管理職登用の基準を明確にするのは一人ひとりのモチベーションアップにも役立ち、具体的な基準は努力する方向性についても把握可能です。
しかし、基準を明確にするには企業が求めているスキルの一覧化に加えて、メンバーそれぞれのスキル可視化が重要になります。
なかなかメンバーのスキル可視化は企業単体でおこなうのは難しいですが、スキルナビを活用すれば問題ありません。
人材管理を効率化できるタレントマネジメントシステムであり、非常にコストパフォーマンスに優れています。
女性管理職比率向上に取り組みましょう
女性管理職を増やすのは企業だけの問題ではなく、国全体の問題として解決しなければいけません。
しかし、まだまだ日本では古くからの風習や慣行が根強く残っているため、一気に改善するのは難しいです。
そのような状況でも企業は少しずつ問題を解決できるように取り組んで、女性従業員が高いモチベーションを保って働けるようにサポートします。
女性管理職が多くなるとさまざまなメリットが期待できるため、積極的に働きやすい環境を整えるのが大切です。