離職率が高い企業・会社の特徴とは?影響と対策方法について解説
社員がすぐに会社を辞めてしまうから、新たな人材を採用して一人一人育成する手間が増えてしまうといった悩みはありませんか?社員一人を採用するのにも莫大な時間と労力がかかっているので、離職率が高いということはそれだけ会社の負担が大きくなってしまうのです。
そこで本記事では離職率が高い企業の特徴と、高いことによる影響、対策方法等についてご紹介します。
離職率とは
『離職率』とは、ある期間のなかで退職した人の割合を表す割合のことで、その数値が大きいほど、労働者数に対して退職者が占める割合が大きいということになります。
また会社によって目的に合わせた計算をする必要があり、「入社1年後の離職率」や「入社3年後の離職率」など、実態に合わせて算出することが重要です。
離職率を用いる場面として例を挙げると、新卒採用のために「入社3年後の社員の動向」を確認といったような場合があります。
⇒離職率について詳しく知りたい方はこちら
離職率の平均
『離職率』の平均は、厚生労働省によると、2018年が14.6%で、2017年が14.9%、2016年が15.0%となっています。年々減少傾向にはあるのですが、このデータは全体での平均ですので、入社年数や業界によっても大きく異なります。
離職率計算方法
厚生労働省によると以下の計算方法によって算出されます。
『離職率』=「離職者数」÷「1月1日時点での常用労働者数(年齢階級別は6月末日時点での常用労働者数)」×100
例を挙げると、200名在籍している会社で、4名が退職した時、次のような計算をします。
4(離職者数)÷200(社員の総数)×100=2%(離職率)
同じ退職者数でも、分母の労働者数が多いと『離職率』は低くなります。
新入社員3年以内の離職率の平均
男性が26%、女性が27.7%という数字が出ており、これは入社して3年以内に退職する社員の割合を表します。やや女性の方が大きい数値になっており、どちらも3割ほどですので「10人のうち2〜3人は3年以内に退職してしまう」ということが分かるでしょう。
企業としてはせっかく手間とコストをかけてまで確保した人材に退職されるわけですので、可能な限りこの数字を下げたいところです。
離職率が注目されている理由
離職率が注目されている理由について解説します。
働き方の多様化
近年テレワークや在宅勤務など、働き方に変化が見られてきています。実際、出社だけなく様々なワークスタイルを提供している会社は、離職率が低い傾向にあるのも事実です。現在の状況に合った勤務が実現できると「ずっと働きたい」と思うのは当然と言えます。
結果、離職率に注目が集まり「離職率が低い=ワークライフバランスが実現できる」と感じやすいです。
転職に対する考え方の変化
以前までは「転職は悪」と捉えられてきましたが、現在はそのようなイメージは払拭されつつあります。転職した回数よりも、スキルや経験に注目がいきはじめたのです。終身雇用制度の撤廃が進みはじめ、実力至上主義が加速化しているのも背景にあります。
ゆえに転職のハードルが低くなり、かんたんに離職できる世の中となっています。結果的に離職率に注目が集まり、数値が低い企業へ人が集まります。
離職率が高いor低いと言われる数値の基準は?
厚労働省が発表したデータによると、令和元年の離職率平均は11.4%となります。例えば令和5年4月に100人入社した場合、令和6年3月までの退職者は11人が一般的です。
このデータを参考にすると12%以上で高く、10%以下で低いとなります。業界別でみると、飲食業やサービス業は20~30%と数値が高く出ています。
業界別離職率
ここでは『離職率』が特に高い業界と低い業界をご紹介します。両者の間には、どのような違いがあるのかに注目しましょう。
離職率が高い業界
最も『離職率』が高い業界は「宿泊業・飲食サービス業」で、その次に「サービス業や娯楽業」が続くので、接客に関する仕事での退職率が高いということが分かります。
「離職率が高い」=「悪い会社」というわけではなく、さまざまな要因が絡み合った結果『離職率』が高くなっていることを知っておきましょう。
離職率が低い業界
一方で、『離職率』が低い業界では「複合サービス事業」がトップになり、その次に建設業や製造業が続いています。
「複合サービス事業」とは、郵便事業、銀行窓口業務及び保険窓口業務の全てを行うとともに、市町村等からの委託を受けることなどによって、複合的に各種サービスを提供する事業所を指します。
こちらも「離職率が低い」=「良い会社」というわけでは必ずしもないということを覚えておいてください。
離職率が高い企業・会社の特徴
では一体どういった要素によって『離職率』が高くなってしまうのでしょうか。全部で5つの面から解説していきます。
労働時間の長さ
36協定で決められている労働時間を過ぎて働かせている企業は、自ずと『離職率』が高くなることでしょう。また月の残業時間が大幅に増えたり、休日出勤も当たり前という風になってくると、従業員からの信頼感を無くしてしまいかねません。みなし残業の悪用や労働の対価として支払うべき割り増し賃金の未払いなどは避けるべき事態です。
職場での人間関係
上司や同期入社の社員とのコミュニケーションがうまくいかないと、居心地の悪さや、お互いに無意識に傷つけあう結果になってしまいます。
またセクハラやパワハラ、マタハラといったような様々なハラスメントも問題になっており、そういったことのないように企業としては十分注意を払わなければなりません。
給与の適切性
従業員の労働時間に見合った給与がもらえていないと、不満が募って離職につながるということがあります。他にもボーナスが少ないあるいは全くないようなことや、福利厚生があまり充実していない等の、社員にとっての不利益があると『離職率』は上がるでしょう。
同じ業界・規模にも関わらず、市場とかけ離れている給与体制になっているのであれば、今すぐ見直すことが必要でしょう。
評価の適切性
従業員がどれだけ真剣に仕事に向き合ったとしても、正しい評価を上司や人事からしてもらえなければ、自ずと不満は大きくなっていくことでしょう。また客観的な評価ではなく、個人的な感情(主観)で評価するような事態も避けなくてはならない状況です。
従業員への評価は人事考課として給与や昇進に関わってくるので、評価のタイミングで離職を決意する人も現れるでしょう。なので、評価する立場の人は妥当性のある評価をするようにすべきです。
業界や会社の将来性
企業の業績不振によって先が見えない状態や、それにより従業員の給料が大きく減らされてしまうといったようなことになってしまうと、社員はこの先の将来性に期待することができなくなり、その結果離職につながる可能性があります。
また業界自体の将来性がなく、衰退する一方だと見切られてしまった場合、別の業界に移ろうと試みる社員が増え、『離職率』の増加に繋がるでしょう。
離職率が低い企業・会社の特徴
離職率が低い企業・会社の特徴を解説します。
残業時間が短い
残業時間は離職率と大きく関係しています。現代はプライベートの時間を大切にしたいと考える人が増えたため、残業時間が短い会社は退職しにくいです。最近は強制的に残業できないルールをつくったり、残業チケット制にしたり、定時退社がベースとなる会社も増えました。趣味や習い事に時間を割けるため、仕事とプライベートの両立化が実現します。
一方、残業時間が長い会社は必然と淘汰されてしまいます。「残業するのが当たり前」の時代から「定時退社が当たり前」の時代へと変わりはじめました。企業はいかに残業を減らすかが課題と言えます。
収入が多い
労働に見合った報酬を適切に支払っている企業は離職率が低いです。社員はお金を得られると幸福感を味わえ、自分や家族へ還元できます。さらに年収を上げるモチベーションへと変わるはずです。
反対に「こんなに働いているのになぜ給料が低いの?」「いつまでも頑張りが認められない」と感じれば、人の気持ちは冷めてしまいます。結果的に離職へとつながってしまうのです。売り手市場だからこそ社員を正しく評価し、成果に見合った報酬を支払っていきましょう。
充実した福利厚生が用意されている
福利厚生は社員が気にするポイントと言えます。福利厚生を充実させるには、基盤が安定しなければ実現できないです。結果的に「福利厚生が充実している=労働環境が良好」と認識され、離職率が低下します。
また、リゾート施設の割引券や社員食堂を提供できると、仕事以外の楽しみを見つけられるキッカケにもなります。出社するモチベーションが上がり、愛社精神が高くなるのです。
離職率が高いことによる影響
ここまで『離職率』が高くなってしまう理由について解説しました。では実際に、『離職率』の増加によってどんな影響があるのか見ていきましょう。
採用・教育コスト
最初にお話しした通り、人材を確保するためにも時間的にも金銭的にもコストがかかってしまいます。つまり企業にとっては、わずか1人の離職者だったとしても大きな損失になってしまうのです。
また離職してしまった従業員の代わりを見つけるためにも、求人サイトへの掲載料金や人事課への人件費、説明会や面接場の手配料金などの更なる費用がかかるため、全体的に非常に大きな無駄に繋がってしまいます。
企業のノウハウや人材のスキル
時間的・金銭的コストが無駄になるだけではなく、離職してしまった人材のスキルや経験についても失うことになるので、企業にノウハウが溜まりにくくなってしまいます。さらには離職するだけではなく、その社員が競合他社に移ってしまった場合は、自社のノウハウや情報が流れてしまうリスクもあり、結果として会社の損失に繋がるでしょう。
企業イメージの悪化
例えば最近の新卒採用ページには『離職率』の項目があり、就活生はその数字を基準に企業選びをする傾向にあります。就活サイトには、「離職率○%以上の企業はブラック」と書かれているものもあり、そのせいで悪い印象を与えてしまいかねません。またブラック企業という評価は、新たな人材を確保する弊害になるだけでなく、社内の人間の働くモチベーションを下げるきっかけになってしまいます。
業務の進捗に対する影響
離職率が高くなると、業務の効率も悪くなります。例えば退職者が出ると、あらためて人材を採用する必要があります。育成にかける時間は必然的に増え、教育者が本来の業務に割ける時間は減ってしまうのです。
また、上記のケースですぐに人材を採用できればよいです。しかし、企業に見合った人材をなかなか採用できない場合もあります。その場合は離職者が行っていた業務を既存社員がカバーする必要がでてきます。結果的に社員一人一人の業務負荷が増え、仕事の進捗が遅くなります。
離職率を下げるための対策方法
『離職率』を低下させるための取り組みは可能な限り早く行う必要があり、離職につながる根本の部分を解決しなければなりません。一体どのようにすれば、下げることができるのか解説します。
評価制度の見直し
従業員の働きに見合った評価が客観的にされるべきであり、そこに感情が入り込んではなりません。もしも評価制度自体に欠陥があり、公正な評価を受けられない場合は、次第に社員のモチベーションが下がってしまいます。
対策としては、評価の基準を明確に公開したり、上司からの一方的な評価だけにしないという方法が考えられるでしょう。従業員自身が自分を評価できるシステムの導入を検討することもお勧めです。
人材育成の取り組み
『離職率』の低下には、社員のキャリアを第一に考えられるような人材育成にしっかりと取り組むことも重要です。企業が目指す先と従業員の目指す先が異なれば、この会社で長く働いても思うようなキャリアは積めないと判断されて、離職に繋がってしまいます。
社員が望むキャリアプランを目指すには、その企業でどんなキャリアが形成できるのか、直属の上司に限定せず、別の部署の人とも話し合ってみることをお勧めします。仮に社内だけでは達成できそうもない場合は、社外の研修制度を活用させるのも1つの手でしょう。考えるべきなのは、社員が自社に不満を感じた結果として転職を考えるというようなことを防ぐことです。自社でキャリアパスをいくつか用意できれば、そのような事態を避けられるでしょう。
社内コミュニケーション
社員同士の交流を増やして、居心地の良い職場を作ってあげることも『離職率』の低下に繋がります。上司から積極的にコミュニケーションをとってあげることも大切ですが、それ以上に交流しやすい環境を提供することが重要です。例をあげると、固定席を設けない『フリーアドレス制度』や『社内SNSの活用』、『休憩スペースの確保』などが最適です。こういった環境のおかげで、社員が自然と交流できるような空気になるでしょう。そして、お互いに悩みを打ち明けたり、意見を交換できるようになると考えられます。
このような風通しの良い職場づくりのおかげで、パワハラやセクハラなどの防止につながるのも大きな利点です。
メンター制度の導入
メンター制度というのは、新入社員や若手社員などの悩みに対して、上司以外の先輩社員が助言する制度のことです。先輩社員は年齢が近く、社歴も似ている人が選ばれると良いでしょう。直属の上司がメンターとして携わらない理由は、客観的なアドバイスが求められるからです。
近年、雇用形態の多様化や雇用の流動化など企業・労働者を取り巻く環境は変容しました。それを受けて、職場内における新しい人間関係の構築とキャリア開発を促進する取り組みとして、厚生労働省もメンター制度を推奨しています。これにより、若手社員の早期離職を防ぐことが期待できるでしょう。
待遇・福利厚生の改善
社員は企業からの待遇面に不満を感じ続けると離職しやすくなるため、十分な待遇・福利厚生が整っていないのであれば即座に改善すべきです。もしも改善することができれば、従業員の満足度も自ずと向上し、働きがいを感じることでしょう。
また、待遇・福利厚生が充実すれば働く環境も良くなるおかげで、一人一人が高い集中力を持って労働に励むことができ、結果として従業員の生産性が上がることにも繋がります。
経営者がすべきことは、自社で働く社員が今の待遇と福利厚生にどの程度満足しているのかを確認することです。
労働環境の見直し
従業員に対して無理な仕事量を割り振り、その結果として「残業時間の大幅な増加」や「生産性の低下」に繋がってしまいます。残業が続くと、私生活とのバランスが崩れてしまうので、会社への不満が溜まる一方です。過酷な労働環境による離職を避けるためにも、アウトソーシングを活用して業務量を減らしたり、AIやIoTなどのテクノロジーを駆使するといったような取り組みが求められます。
また、従業員のワークライフバランスを考慮するために、「フレックス制度」や「時短勤務」等を取り入れると良いでしょう。自身にあった働き方のおかげで、心身共にゆとりが保たれ、積極的に仕事と向き合うことができます。
採用段階でのミスマッチ
『人間関係』と『労働環境』について、入社前と後でギャップを感じてしまい、結果的に会社を辞める選択を取ってしまう若手社員は多いです。先述した通り、人材採用にかかるコストは莫大で、すぐに退職されてしまうと企業として見過ごせないほどの損失となってしまいます。
ミスマッチが起こってしまう原因には、「開示している情報が不足している」、「面接で自社に合う人材かどうか見極められていない」ということがあります。それらを防ぐためにも、「入社後のことをリアルに伝える」、「企業が候補者に求めるパフォーマンスを事前に伝える」、「候補者自身の考えを聞いておく」という対策をすべきでしょう。
従業員満足度を高めて離職を防止しましょう
対策をなさずに『離職率』が高いままにしておくと、企業にとって多くのリスクが付き纏います。長期的な経営を考えた上でも不安定になる要素なので、まずは社員の離職に繋がる原因を特定しましょう。
そのためには退職理由をしっかりと把握したり、社員と今の働き方について話し合うことが不可欠です。『離職率』が高い状態を放置せず、企業の利益のためにも社員が辞めたがらないような環境を目指しましょう。