企業間の競争が激しくなり、組織力の強化が求められている昨今。組織力を強化し他社との差別化を図るために有用な、企業文化が注目を集めています。しかし、どのように形成すると良いのでしょうか。作って終わりとしないためにはどのようにすると良いのでしょうか。

ここでは企業文化とは何か、その重要性について解説します。さらに、これから企業文化を作ろうとした場合に役立つ作り方のポイントを紹介します。

企業文化とは？

企業文化とは、各企業の「価値観」や「行動規範」を指します。企業ごとに持っている特色と言えるものが企業文化であり、経営方針や事業内容に影響を与えています。なぜなら、企業文化には経営者の考えや企業の歩んできた歴史が反映されているからです。

企業文化に沿って選択する事業や行動は、社外の人にも企業イメージとして伝わるため社外へ企業の考えをアピールする効果を期待できる点も重要です。

社内にとっても明確な行動規範が提示され企業が目指す将来像がはっきりとイメージしやすくなり、連帯感を持って業務に臨むことができます。

企業文化に正解はなく、歩んできた歴史や経営陣の持っている考え方を踏まえた最適な企業文化を作ることを目指すと良いでしょう。

企業文化の重要性

企業文化の2つの重要性について解説します。

組織としての土台づくり

企業文化を作ることは、組織としての土台づくりに大いに役立ちます。企業の考え方や行動規範を明確にする過程を経ることで、企業文化に合わせて経営の仕方を決定づけることができます。さらに、従業員全員が同じ目標に向かって行動できるようになる効果も期待できます。企業文化はある種組織の指針となるもの。時代の変化が大きい現代において、はっきりとした指針を掲げていると、不測の事態でも速やかに各企業にとって適切な判断が下せるでしょう。

こうした意味で、組織が強固になる土台づくりを進めるために企業文化の形成は重要です。企業文化に沿った行動を選択すると、組織全体が一体化して目標達成に向けて尽力できる環境が生まれるのです。

従業員のモチベーション向上になる

従業員のモチベーション向上にも企業文化の形成は効果的です。企業がはっきりと企業文化を提示し、目指すゴールや考え方を共有しておくことは、従業員自身にも同じように歩めるかと考えるきっかけを与えます。さらに、従業員一人ひとりがどうしたら企業文化に沿った行動ができるのか、どのように自分は貢献できるのかなどを考える機会ができるのです。これにより会社全体が活性化し、成長し続ける環境が整うでしょう。

企業文化に沿った行動を選択して成果を生み出すと、その企業から高く評価されます。評価された従業員は、自信がつく上に上司からの信頼を勝ち取るでしょう。そうした成果の積み重ねがモチベーション向上につながり、積極的に仕事に向き合える状態になります。

企業文化を形成するために必要なこと

企業文化形成のために必要なことを紹介します。

ビジョン

重要なのは「ビジョン（Vision）」です。未来像や見通しを意味する英単語ですが、企業においては主に「理念」と表記される場合が多いでしょう。各企業が目指す理想像や、目標がビジョンであり、企業文化の根源です。最終的な目標が定まっていると、目標達成までの道のりや必要な価値観も言語化しやすくなります。

ビジョンを決定する際には、分かりやすく簡潔であることを意識すると良いでしょう。意図が明確で簡潔な優れたビジョンは、従業員にとっても行動の基準にしやすく、社外からも良い企業イメージを持たれやすくなります。

果たすべき使命

各企業が成し遂げたい物事が「果たすべき使命」です。事業展開の基礎となる考え方になり、企業の存在意義や社会的価値にも強く影響するものです。

企業が事業を通じて社会にどういう貢献をしていくのか。使命を明らかにして社外へも伝えていくようにすると、企業のイメージを好転させる良いアピールにもなります。企業文化を作る上で、重要な要素の一つが果たすべき使命なのです。

価値観

企業が持つ「価値観」もまた、企業文化の形成において重要です。価値観とはつまり評価基準を意味します。物事の重要度の決め方は、企業によって異なります。重要でない事柄と重要な事柄を判断する際に用いる判断基準が、価値観なのです。

価値観は、ビジョンや果たすべき使命を実現する過程における指針となるでしょう。意思決定の際の行動様式や考え方の基準となります。そのため、ビジョンと価値観は関連した内容にする必要があります。

さらに、価値観は評価の基準となるため仕事の質から顧客満足度、社内の関係性にも影響を与えます。広く受け入れられ、社内外に信頼される価値観が重要です。

人材

企業文化を形成する上で大切なのは、「人材」です。どれだけ明確にビジョンを掲げ価値観を定めても、それに共感する人材がいなければ組織としての一体感は強化されません。思いに共感し、目指す未来像を共有できる人が多いほど、同じ目標に向かって同じように努力できるでしょう。そうすることで企業文化はより明確に、かつ揺るぎないものになるのです。

さらに、企業の思いに共感する人材は離職率が低いのも特徴です。そのため、安定した経営が可能になりますし、生産性の向上も期待できるでしょう。

ストーリー

「ストーリー」とは、企業の歩んできた歴史のことです。数多く存在する企業のそれぞれが独自のストーリーを持っています。創業のきっかけや創業時の事業、手掛けてきた商品やサービスもさまざま。商品やサービスの一つ一つにも、生み出すまでのストーリーがあるでしょう。こうしたストーリーがあることは、企業文化形成の重要な要素です。

企業のストーリーを共有し、現代の文化も取り入れながら時代に合わせて変化していくことで、企業文化は重みを持ちより強固になるのです。

外部からの影響

企業文化は各企業それぞれが持つ独自の文化ですが、「外部からの影響」を受けて変化する場合も、もちろんあるでしょう。移り変わる時代に合わせて、企業を取り巻く環境や企業の置かれている状況も多様に変化します。そうした社外の様子に合わせて最適な企業文化を作ることも企業が生き残るために大切です。

また、外部からの影響を受けて一度定めたビジョンや価値観を変更する場合もあるでしょう。その場合は、今後の企業の方向性を見極めた上で見直しを図ると良いでしょう。

企業文化のつくり方

ここからは企業文化の作り方を解説します。

企業文化の可視化

まず取り組むのは、企業文化の可視化です。企業文化を作る際の第一歩として現状の把握が重要です。従業員が持っている個々の考え方であったり、それぞれが望んでいる将来像をヒアリングして現状把握に努めると良いでしょう。この時、アンケートを実施したり話し合いの場を設けたりすると、効率的に従業員の声を集められます。

現状を把握した上でどのような企業文化を作るか定めていきます。その後は、企業文化を言語化して従業員はもちろん社外へも周知しましょう。言語化できるほどに明確にして提示すると、従業員一人ひとりの行動も企業文化に沿い、社外から持たれる企業イメージも変化します。

企業文化の維持

企業文化を周知し、社内外にアピールを開始してもその効果は一朝一夕には得られません。企業文化が浸透するまでは長い時間を要するのです。一般的には、少なくとも3年が経過しなければ効果が実感できないとされています。

そのため、企業文化を作ってから3年以内に、効果がないからと方針転換や取りやめなどを行わないようにしてください。企業文化が浸透するまでの期間も考慮して継続することが重要です。

企業文化の醸成

企業文化をより完成されたものに作り上げるためには、企業文化の醸成も欠かせません。考え方や雰囲気を徐々に形成する醸成の過程を経て、最適な状態を目指しましょう。そのために、企業文化に沿った社内制度の導入や仕組みづくりが求められます。

企業文化を可視化後、周知を一度で終わらせずに日常的に意識できるような社内研修やイベントを開催することも従業員が企業文化を再認識するきっかけになるでしょう。

企業文化に基づいた評価の徹底や、社内制度を充実させるように見直しを行いながら整備していくことが重要なのです。

まとめ

企業文化の定義から、その作り方まで解説しました。企業文化の形成と浸透には長い時間が必要ですが、企業文化を作ることで社内外に良い影響をもたらします。企業の行動指針や目指す未来を見据えながら、従業員一丸となって仕事を進められる環境づくりに役立つでしょう。