人材管理の意味と人事管理を行うメリット、今後の課題とは?
企業が目指すミッションの達成において、人材の適切な活用はもっとも重要な要素といわれています。目指すものは企業によって様々ですが、人材が最も重要視されるのはどの企業においても同様です。しかし、人材を管理する「人材管理」について正確に理解している人は少ないのでないでしょうか。本コラムでは人材管理についてわかりやすく解説していきます。
人材管理とは?
まず、人材管理についての定義や人事・労務との違いといった基本的な事柄についてしっかりと理解しておきましょう。
人材管理の定義
人材管理とは、人材マネジメントともいわれ、企業の経営戦略と目標達成のために必要な人材について、自社での採用から育成までを管理することです。競争に打ち勝つ企業を作り上げるためには、もっとも重要ともいえる施策です。
人材管理においては、目標達成へ向けて評価制度の見直しや社員研修などを導入したり、採用や異動の情報を適切に管理することで人材のモチベーション維持と人材と職務のマッチングを実現します。
人材管理と「人事・労務」の違い
人材管理は「人事・労務」と混同しがちなので注意が必要です。
人材管理はあくまでも「経営戦略に基づいた目標達成」のための人材管理のことを指します。
一方、以下のような定常的な人事業務はいわゆる「人事」と呼ばれます。
- 人事評価
- 人事異動
さらに、以下のような業務は「労務」に該当します。
- 福利厚生
- コンプライアンス
- 給与計算
- 就業規則
- 労働安全衛生
このように、経営戦略に基づいた人材管理かどうかによって人材管理か人事・労務なのかが明確に分かれます。この違いをしっかりと理解することで、人材管理をしているつもりが、実は単なる人事・労務に過ぎなかったという失敗を避けることができます。
企業が人材管理を行う目的
人材管理の目的は、ビジネスのグローバル化や顧客ニーズの多様化、そして今回のコロナ禍のような社会情勢の大きな変化に備えることです。
人的資源を適切に効率よく活用することにより、他社との差別化を図ることができ、付加価値を創出することができます。
人材管理を行う2つのメリット
人材管理をすることによって、組織力アップや社員のモチベーション向上など様々なメリットを享受できます。
企業の組織力がアップ
人材管理を実施することで、以下のような効果があるので、企業の組織力がアップします。
- 社員全員が同じベクトルを向いている
- 適切な人事配置
- 助け合いの精神が醸成される
- 環境の変化に柔軟に対応できる
適切な人材管理によって、社員全員が同じ目的意識を持てるようになるので、チームワークが育まれ組織力の向上につながります。
社員のエンゲージメントの向上 ・モチベーションの向上
人材管理によって社員のエンゲージメントも向上します。エンゲージメントとは、社員の「愛社精神」のことです。
人事管理において以下の対応を行うので、その過程でエンゲージメントの向上につながりやすいからです。
- 目指すビジョンの共有
- コミュニケーションの活性化
- 適切な人事評価とフィードバック
このように、目指すビジョンを共有し、適切に評価されることで社員は自分自身の存在価値を感じることができます。
また、社員のエンゲージメントが高い状態であれば、社員は企業に対して成果を出して報いようとする気持ちが生まれるのでモチベーションの向上にもつながります。
人材管理の方法とポイント
人材管理の方法は、課題の明確化と現状認識、要員計画などがポイントになります。
目標達成したい課題を明確化させる
まずは目標達成したい課題を明確にします。
企業としての経営計画と、社員ひとりひとりの目標をリンクさせることが重要です。
経営計画と個人としての目標の足並みを揃えることで、社員が目指すべきゴールをしっかりと把握できるため、業務が効率化され生産性が高まります。
自社の現状と不足部分を確認する
次に、自社内における人材の現状と目標を比較し、不足部分を明らかにします。
自社内に適した人材が全くいない場合もあれば、経験やスキルがわずかに適さないといった場合もあります。後者の場合は、研修や育成で補えるものなのかどうかによってその後の要員計画に影響してきます。
必要人員の予測と要員計画
次に、計画に対しての必要人員を予測し、要員計画を策定します。
まず、計画に対しての必要人員数を算出し、アサイン候補の社員のスキルを把握した後で、目標達成のための必要人数やスキルなどに過不足がないかを確認します。この過程で計画と現状との間に不足があれば、それを補う要員計画の策定に移ります。
要員計画は主に、以下の2つの観点で策定します。
- 自社内での人事異動により、適材適所で人材を配置
- 不足分を補えるスキルを保有する人材を新たに採用
まずは、自社内の異動で不足分を補えるかどうかを検討し、不可能であれば新たな人材を採用を検討することになります。平行して社員のスキルアップ向上のための研修や、学習のための補助金支給や休暇付与などを通じて既存社員のレベルの底上げも目指していきましょう。
配置転換、採用、育成施策の実行
要員計画までを終えたら、最後にその要員計画を実行していきます。配置転換や新たな採用活動、社員の育成施策を実行していきましょう。
育成計画は以下のようなものが一般的です。
- 集団研修
- OJT、OFF-JT
- メンター制度
新卒社員や中堅社員、管理者などそれぞれの役職に応じた最適な育成計画を実行することで、効果的な社員育成につなげることができます。
パフォーマンスの評価
要員計画の実行までが終わったら、それまでの各プロセスについてのパフォーマンスを評価します。
以下の計画について、目標に対しての達成度合いをKPIを用いて明確化しましょう。もし未達成の項目があれば、原因と対策を検討し、次回の計画時に反映します。
- 人事異動計画
- 採用計画
- 要員計画
計画→実行→振り返りといったPDCAを繰り返すことで、徐々に人材管理計画の精度が高まっていき、計画から実行までが経営戦略に基づいた一貫性のあるものになります。
⇒エクセルで行う人材管理について詳しく知りたい方はこちら
人材管理の今後の課題
人材管理は社員の働き方の多様化や、モチベーション維持など多岐にわたる情報をいかに適切に管理していくかが今後の課題と言えます。
多様な働き方に適応する
現在の日本では、少子高齢化に伴う労働人口の減少や、育児や介護との両立などに伴い働き方のニーズが多様化しています。
働き手の多様化するニーズに応じる形で、2019年4月1日に「働き方改革法案」が施行されました。
この法案により、社員一人ひとりが能力を発揮できるような環境整備が企業に求められています。優秀な人材を確保するという意味でもする、多様な働き方に適応できる体制づくりが必要です。
社員のモチベーションの向上
社員一人ひとりが企業の目標についてしっかりと理解し、そのために自分が何をすべきか、解決すべき問題はなにか、目指すべきゴールへ向かって自主的に行動できることが重要です。
入社時にはやる気があふれていたものの、時間が経過して中堅社員になるにつれてモチベーションが落ちてしまいがちです。
そのため、企業としては社員が高いモチベーションを維持しながら働ける待遇や環境を用意する必要があります。
情報の一元化
人材管理では、目標に対しての進捗がわからない・社員一人ひとりの経歴やスキルを把握していないなどの問題が起こりがちです。担当部署と人事部でそれぞれ個別に情報を管理しているケースもあるほどです。こうなってしまうと、社員の正しいデータをすぐに参照できずに手間がかかり、人材管理をする上では大きな支障になります。
人材の情報を一元化することで、社員一人ひとりの情報をデータベース化できるため以下のように適切な人材管理につながります。
- 適材適所の人材配置が可能
- 人材育成計画の策定、実施
- 非正規雇用社員やパートなど多様な人材を効率的に管理
このように、情報を一元化することで人材管理を正確かつ効率的に行うことができます。最近では生産性向上の観点から、人材管理を一元化できるシステムに注目が集まっています。
⇒人材管理ツールについて詳しく知りたい方はこちら
人材管理事例
システムを用いた人材管理の事例を紹介します。
このように、人材管理システムを用いることで、社員育成や人材配置などを理想的な形で行うことが可能になります。
企業の成長のためには人材管理は必須!
企業の成長のためには、社員という人材の成長も併せて考える必要があります。そのためには社員のモチベーションが向上するようなビジョンの共有や、評価・人材配置などの人材管理を適切に行うことが重要です。効率性向上だけではなく、社員という人材を大切に育てるために人材管理システムの導入を検討されてはいかがでしょうか。