ISO 9001はどんな規格?規格取得メリットと取得方法を解説
現在ISO 9001を取得する企業が増えており、大企業だけでなく10人以下の企業も積極的に取得する動きが見られています。企業の信用が重視される現代において、今後もISO 9001の取得が活発化されるでしょう。
では取得する利点は何でしょうか。そこで今回はISO 9001の導入メリットと取得方法を中心に解説していきます。
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ISO 9001とは
ISO 9001は国際機構が発行する品質を管理するための国際規格です。品質と呼ばれる背景からも、工場や倉庫などの製造業で目にする方も多いでしょう。しかし、製造業に留まらず、業界問わず多くの企業で取得が目立ちます。
その理由はISO 9001が品質に特化した資格ではないからです。前述の通り、ISO 9001は品質を「管理」するための資格になります。良質なモノやサービスを提供するのはもちろん、高品質な状態で提供するための管理体制が見られています。
そのため、ISO 9001は製造業に限らず、顧客満足度の高いモノやサービスを提供する、「管理の仕組み」が整った企業に与えられるのです。例えば、建設業に特化した企業コンサルティングを行う企業があったとしましょう。適切なコンサルティングを行うためには「建設業専門のカウンセリングシート」が必要になります。カウンセリングシートがなければ、カウンセラーの提供サービスにバラつきが出ます。加えて、お客様が本来抱えている問題をクリアするのは困難です。以上のような問題を防ぐためにも、カウンセリングシートを例にした、管理を徹底させるためのルールづくりを行っていきます。
また、ISO 9001はルールをつくるだけでなく、常に改善が必要になるのです。本例でいくとカウンセリングシートの内容を見直し、必要であれば項目を増やしたり、修正したりする必要性が出てきます。このように、ISO 9001の取得にあたっては、適切な業務管理体制が見られているのです。
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ISO 9001の取得方法
ISO 9001を取得するには、まず社内で規格取得に向けた準備を行っていきましょう。そのために重要なのは規格取得チームの決定です。規格取得を目指すにはある程度の人数が必要になります。社内に精通した人材であるとプロジェクトがスムーズに進むため、管理職や社歴が長い人材で固めると良いでしょう。
人材が決まれば、次に行うのは予算決めです。後述しますが、ISO 9001の取得にあたってはコンサルティング依頼費用や維持費用などが掛かります。あらかじめ予算が高額になるのを念頭に置いておきましょう。
無事予算決めが終わったら、社内への周知を行っていきます。ISO 9001の取得に向けた情報を共有することで、全社員が責任感を持って仕事ができるからです。仕事の質を上げるためにも、規格取得を社内に周知していきましょう。
社内への情報共有が終わったら、いよいよ本格始動です。まずはチームメンバーの知識を深めるため、研修や勉強会を行っていきます。専門家への講師依頼やITツールの導入を検討しておくと良いです。効率的に学べるだけでなく、より実践に特化したスキルが習得できます。
チームのベースが出来上がると、次に行うのはシステムの構築です。ISO 9001の規格要求事項を踏まえた上で、自社オリジナルの規格を作成していきます。作成する際は製品・支店・組織などの適用範囲を定めていきましょう。ISO 9001は一部に限定することが可能なため、チーム内で打ち合わせていくと良いです。
作成が完了すると、実際に運用が開始されます。運用時には「この仕組みで誰もが質の高いサービスを提供できるのか?」「全員が理解できる、分かりやすい仕組みか?」などの改善も同時に行っていきましょう。細かい課題をひとつひとつ解決していけば、効果が見込める管理体制が築けます。
そして最後に専門機関による審査を通過すれば、晴れてISO 9001の取得となります。
ISO 9001の規格要求事項
ISO 9001の規格要求事項は全10章から構成されていますが、メインとなるのは4~10章です。それぞれの章について簡潔に解説していきましょう。
4章では組織づくりについて明記されています。内部と外部を分析した上で、環境の変化に対応できる強い組織づくりの構築を課しています。また、結果だけでなく過程も重視されているため、自然と好結果を生み出せる仕組みづくりが重要です。
5章ではリーダーシップについて記述されています。リーダーは行動で示すだけでなく、言葉で部下を統率する必要があります。ときには厳しい言葉で社員の背中を押すケースも出てくるでしょう。
6章は計画について書かれています。管理体制を構築するには、計画・実行・評価・改善の流れが必要です。その中の計画が本章に該当します。計画はリスクを踏まえたものであると同時に、チャンスを見逃さないための積極性が重要です。バランスを考えた計画作成が大切になります。
7章は管理体制を整えるための支援についてです。計画を実行するためには、人・モノ・金・情報などの資源が必要になります。自分達で用意できるもの、外部からサポートしてもらわなくては実現しないものを分けていきましょう。
8章は実際に運用するためのポイントについて明記されています。準備した計画を実際に落とし込んでいく工程です。社員がミスしないための流れや物を調達するための手順などを具体的に考えていきましょう。全員が理解できるシンプルな手順書の作成が必要です。
9章は評価について書かれています。運用が適切に行われているかを第三者目線で査定します。課題点に関してはトップがとりまとめ、社内に共有していきます。
最後の10章は改善についてです。評価で問題となった点に関して改善をはかり、より質の高い運用を目指していきます。以上の規格要求をクリアしていくことで、パフォーマンスの高いマネジメントシステムが完成していくのです。
ISO 9001とISO 14001の違い
ISO 9001とISO 14001の大きな違いは焦点を当てる場所の違いです。
ISO 9001はここまで説明したとおり、品質管理の国際規格になります。「管理」にフォーカスされ、良質なモノやサービスを提供するための管理体制に注目されます。
一方、ISO 14001は環境に関する国際規格です。「どれだけ環境にやさしい商品をつくれているか?」「商品ロスをどのくらい減らせているか?」などの基準を満たした企業に与えられる規格になります。「環境」に焦点が当てられるため、管理に重きを置かれるISO 9001とは異なるのです。
とはいえ、全く別物であるとも言い切れません。例えば、ISO 9001は最終的にはお客様へ最良のサービスを提供するための仕組みづくりです。ISO 14001は環境に配慮することで、より良いサービスを提供していきます。
両者に共通するのは、結果的に顧客満足へ重きを置いている点です。通常ISO 9001とISO 14001の内容は異なるものの、根本的には通じるものがあると念頭に置いておきましょう。
ISO 9001取得のメリット
ISO 9001の取得メリットは次のとおりです。
メリット①:課題解決につながる
ISO 9001の取得を目指せば、企業の様々な課題解決につながります。例えば「社内ルールの統一化を図りたい」という企業目標があるとしましょう。規格取得に向けては組織管理の徹底が重視され、当然その中には社内ルールの一本化も含まれています。そのため、規格取得を目指すだけで、課題解決につながるのです。
他にも「組織内コミュニケーションの強化」「コスト削減」など、組織管理に通ずる目標であれば、規格取得に向けた行動がそのまま課題解決につながります。とくに現在は効率性がより重要視されるようになりました。企業は組織管理に注目せざる得ない状況となっています。ISO 9001取得を目指すだけで組織管理の課題解決につながるのは、それだけで大きなメリットと言えるでしょう。
メリット②:組織の品質向上に繋がる
ISO 9001は冒頭の通り、品質を管理するための国際規格です。そのため、企業の品質を最も見られている規格であるのは念頭に置いておきましょう。
それ故に、念願叶って規格取得できた日には、組織の品質が国際的に認められたということです。ISO 9001を目指すと、品質向上に繋がると言ってもよいでしょう。
組織の品質とは「お客様への信頼」にあたる部分です。時代のニーズを先取りしたモノやサービスを提供するのはもちろんですが、なにより商品が安心安全でなければいけません。「あらゆるリスクを踏まえたモノをつくる」「繰り返しテストを行ってクレームのない商品やサービスを提供する」などの行いが必要になります。安心安全を追求した先に、お客さまからの信頼を獲得できるのです。
以上のように、ISO 9001を取得できれば、周囲から信頼される企業へと成長できます。
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ISO 9001取得のデメリット
ISO 9001の取得デメリットは次のとおりです。
デメリット①:維持費がかかる
ISO 9001は取得費用とは別に維持費がかかります。具体的には維持審査と更新審査費用がかかるのは念頭に置いておきましょう。
維持審査とは定期審査と呼ばれ、1年に1回前年の企業管理審査を行います。後述する更新審査よりも簡易的な審査です。一方の更新審査は3年に1度行う審査になります。審査員が前2年間の振り返りを行い、管理体制の整備具合をチェックしていくのです。
費用は業界・業種・社員数によって異なりますが、約20~150万円。維持審査は簡易的な審査になるため、更新審査よりも割安になります。尚、費用の内訳は、審査料+規格登録料+審査員の移動宿泊費です。審査料は最も費用のウェイトを占める部分となり、文字通り審査を行うための費用です。審査は自社で行われるため、審査員の移動宿泊費が掛かってくるのも注意しておきましょう。
デメリット②:社員の負担が増える
ISO 9001は場合によって社員の負担が増える可能性もあります。社員が品質・組織管理について熟知していれば、規格を問題なく取得できるでしょう。
しかし、知識の薄い社員が規格取得を目指すとなると、労力は必然的に掛かってきます。研修や勉強会の実施を行い、新しいルールを覚える必要があるのです。社歴の浅い社員であれば、時間外に勉強するケースも出てくるでしょう。言わば、新入社員のような状態からスタートしなければいけません。
とはいえ、ISO 9001の取得に向けては様々なメリットがあります。個人で見れば、顧客満足度の重要性を勉強できるため、今後チームを離れても更にお客様視点に立ったビジネスを行えるでしょう。このように、規格取得は負担こそかかるものの、苦労した分だけ見返りがあるのです。
ISO 9001の取得にかかる費用
ISO 9001取得に向けては大きく分けて、審査費用+マネジメントシステム構築費用+設備投資費用の費用がかかります。その中でも、必ず発生する審査費用から見ていきましょう。
審査費用は規格取得の審査にかかる費用です。審査にはステージ1とステージ2があり、ステージ1(書類審査中心)に合格すると、ステージ2(現場調査中心)へ進みます。ステージ2に合格すると規格取得です。費用は業界や会社規模によって異なりますが、ステージ1・2合わせて40~120万円。費用の内訳は規格取得後の維持・更新審査同様、審査料+規格登録料+審査員の移動宿泊費です。まず審査費用はかならず必要であると念頭に置いておきましょう。
次のマネジメントシステム構築費用は適切な管理づくりをするための費用です。一般的にはコンサルティング企業への依頼費用となります。しかし、管理システムに精通した方がいれば、コンサルティング企業へ依頼せず費用を抑えることも可能です。
最後の設備投資費用は企業管理にあたって、新たに必要となる費用です。例えば、管理シートの作成費用や車検費用など。当費用もマネジメントシステム構築費用と同じく、かならず必要となる費用ではありません。会社の人材や設備状況を確認し、費用を抑えていくと良いでしょう。
ISO 9001取得で、組織の品質向上へ
ISO 9001は世界的に認められた品質規格であり、取得企業が年々増加しています。理由としては、取得できれば信頼性を得られるだけでなく、組織の品質向上につながるからです。ネットが普及した現代において、信頼性は最重要と認識されているからでしょう。
規格取得にあたってはまず専門チームをつくり、管理システムをつくりあげていくのが一般的な流れです。全社員が納得する組織管理体制が築ければ、審査を受けましょう。無事審査が通れば、晴れて規格取得です。
取得に当たっては負担がかかるものの、それ以上に取得メリットは大きいと言えます。取得メリットをあらためて把握した上で、ISO 9001の取得を検討してみましょう。
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