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ITスキルの教育に必須!ITSSやスキルマップの活用方法

ITスキル

現代のビジネス環境において、企業の競争力を高めるためには、従業員のITスキルの強化が不可欠となっています。企業は高度なITスキルを持つ人材を求めており、従業員はキャリアアップのためにITスキルを磨く必要があります。

しかし、ITスキルの多様性と急速な進化により、自社ではどのような教育プログラムを組むべきか、悩んでいる担当者の方も多いのではないでしょうか。

この記事では、IT人材に必要なスキルやITスキル標準(ITSS)、スキルマップの活用方法について詳しく解説します。ITスキル教育を取り入れたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

ITスキルの意味とは?IT人材に必要なスキル

ITスキルとは、情報技術(IT)領域での業務を行う上で必要となる技術や知識のことを指します。これには、コーディング能力やネットワーク知識などの技術的側面だけでなく、コミュニケーションスキルや文章作成スキルといったソフト面のスキルも含まれます。

IT人材として成功するためには、一般的に次のようなスキルが求められます。

プログラミングスキル

プログラミングスキルとは、コンピューターソフトウェアを開発、修正、および最適化するために必要な一連の能力のことです。これには、特定のプログラミング言語の知識、アルゴリズムとデータ構造の理解、問題解決スキル、論理的思考力などが含まれます。

代表的なプログラミング言語には次のようなものがあります。

  • Python
    データ分析、機械学習、ウェブ開発など、幅広い用途で使用されている言語。シンプルで学びやすいことから初心者にも人気が高い。
  • Java
    「一度書けばどこでも実行できる」を理念としたオブジェクト指向プログラミング言語で、マシンに依存せずさまざまなプラットフォームで動作する。
  • JavaScript
    主にウェブブラウザ内で動作するスクリプト言語で、ウェブページにインタラクティブな要素を追加するために使用される。
  • C++
    ゲームエンジンなどパフォーマンスが重要なアプリケーションでよく使用される高度な言語。

これらの言語はすべて異なる目的と利点を持っているため、特定のタスクやプロジェクトに最適な言語を選択することが重要です。また、開発に必要な言語は、Webシステム、業務システム、スマホアプリケーションなどの開発領域によっても異なります。

論理的思考力

IT分野における論理的思考力とは、システム設計やプログラミングなどの過程で必要となる思考スキルのことです。

システムを設計する際には、ユーザーやクライアントの要望を理解し、それに基づいて最適なシステム仕様を策定する必要があります。プログラミングにおいても、抽象的な概念を具体的なコードに変換するためには、直感に頼るのではなく論理的に考える力が不可欠です。

また、論理的思考力は問題解決の場面でも大きな力を発揮します。たとえば、システムに障害が発生した場合、その原因を特定し、適切な対策を立てるためには論理的な思考が必須となります。

このスキルを身につけるためには、「MECE」「ビジネスフレームワーク」「ロジックツリー」のようなフレームワークを活用するとよいでしょう。これらを使いこなすことで、より高度な論理的思考力を身につけることが可能になります。

コミュニケーションスキル

IT分野におけるコミュニケーションスキルとは、エンジニアやIT技術者が業務を遂行する上で必要となる対人スキルのことを指します。

特に、エンジニアはクライアントと直接会話する機会が多いため、良好な関係を築くためにもコミュニケーションスキルは必須です。

基本的な「報連相」の意識を持つことはもちろん、相手が求めていることを汲み取る能力、自分の提案をわかりやすく伝える能力を鍛えることで、エンジニアやIT技術者としての価値や信頼性を高めることができます。

また、実際の業務ではクライアントとの交渉が必要となる場面も出てきます。その際、相手との信頼関係を傷つけることなく、自分の提案や要望を通すことのできる交渉力を身につけておくことで、より円滑に業務を進めることが可能になります。

文章作成スキル

IT人材としてのキャリアを築くには、文章作成スキルも欠かせない能力のひとつです。

日常の業務において、エンジニアは次のようなドキュメントの作成を求められることが多いです。

  • 要件定義書
    システム開発のプロジェクトを始める前の段階で、必要な機能や要求を明確にまとめたドキュメント。
  • 基本設計書
    クライアントが求める機能を実現するための機能やユーザーインターフェースの動作など、そのシステムの基本的な枠組みを記述したドキュメント。
  • 詳細設計書
    コーディングフェーズにおいて参照される、システムの詳細な仕様やコーディング基準を記載したドキュメント。

このほかにも、単体テスト仕様書や結合テスト仕様書、総合テスト仕様書などさまざまなドキュメントが必要となる場合があります。

これらの文書をスムーズに作成するには、IT分野における専門的な知識はもちろん、基本的な文章作成スキルを普段から身につけておくことが重要です。

ITスキル教育の方法

ITスキルの教育は、企業にとって非常に重要な戦略のひとつです。ITに強い人材を育成することで、企業は業界の変化に対応できる柔軟性と競争力を持つことができます。

ITスキルの教育を効果的に行うためには、以下の3つのポイントが重要となります。

自社のビジョンを明らかにする

自社のビジョンを明らかにすることで、従業員が目指すべき方向が明確になります。

経営陣がITに関する知識を持ち、これから会社がどう変わっていくのか明確なビジョンを示すことで、従業員にもITスキル習得の重要性を理解してもらいやすくなるでしょう。また、ビジョンに基づいた教育プログラムを設計することで、IT人材に必要なスキルと知識をより効果的に習得できるという利点もあります。

ビジョンの明確化は、従業員のモチベーション向上や組織の一体感を高めることにもつながる、ITスキル教育の第一歩だといえます。

ITスキルを学べる環境を整える

IT人材を育成するには、ITスキルを学べる環境を整えることも重要です。

まずは自社で必要となるスキルを明確にし、それに合わせたセミナーやオンライン学習の場を提供することで、従業員がITスキルを磨ける環境を整えます。社内での教育が難しい場合は、社外から講師を招くなど外部の企業と連携することも視野に入れましょう。

スキルを習得した従業員には、新しいスキルを実際の業務環境で活用できる機会を提供することも大切です。これにより、理論的な知識だけでなく経験を通じてスキルを磨くことが可能となります。

従業員のITスキルを可視化する

ITSSやスキルマップを活用して、従業員のITスキルを可視化することも重要なポイントのひとつです。

従業員が現在どのようなスキルを持っているか、そして将来どのようなスキルが必要になるかを明らかにすることで、企業は従業員のスキルレベルを正確に評価し、適切な教育プログラムや研修を計画することができます。

さらに、従業員が自らのスキルやキャリアパスを明確にとらえることで、具体的な目標を設定し、それを達成するための努力を続けることが可能となります。ITスキルの可視化は、企業と従業員双方にとって多くのメリットをもたらします。

ITスキル標準(ITSS)とは

ITスキル標準(ITSS)は、IT分野で要求される技術や能力を定義したものです。これは、IT人材に対しての評価および教育、そしてキャリアパスを設計する際などに活用されます。

この章では、ITスキル標準の概要や7段階のレベル評価、そしてその中でも分類される11の職種について紹介します。

ITスキル標準の概要

ITスキル標準は、経済産業省によって2002年に立ち上げられました。

現在は独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が管理を行っており、IT関連職の技術力評価の指標としてたくさんの企業で導入されています。また、2011年には「ITスキル標準V3」に改訂されています。

ITスキル標準は、IT分野の職種を11のカテゴリーに分けて、それぞれの職種ごとに7段階のレベルを設けています。各レベルの評価はIPAによって明確に定義されており、ITプロフェッショナルとして必要なスキルの度合いを表しています。

この指標を活用することにより、従業員が持つスキルを可視化できるようになり、新たな人材の採用や既存の従業員の育成など多くのシーンで効果を発揮します。

ITスキル標準の7段階のレベル評価

ITスキル標準では、11の職種と35の専門分野に対して、それぞれ7段階のレベルが設定されています。各レベルの定義は以下の通りです。

レベル  各レベルの定義
レベル1情報技術に携わる者に最低限必要な基礎知識を有する。スキル開発においては、自らのキャリアパス実現に向けて積極的なスキルの研鑽が求められる。
レベル2上位者の指導の下に、要求された作業を担当する。プロフェッショナルとなるために必要な基本的知識・技能を有する。スキル開発においては、自らのキャリアパス実現に向けて積極的なスキルの研鑽が求められる。
レベル3要求された作業を全て独力で遂行する。スキルの専門分野確立を目指し、プロフェッショナルとなるために必要な応用的知識・技能を有する。スキル開発においても自らのスキルの研鑽を継続することが求められる。
レベル4プロフェッショナルとしてスキルの専門分野が確立し、自らのスキルを活用することによって、独力で業務上の課題の発見と解決をリードするレベル。社内において、プロフェッショナルとして求められる経験の知識化とその応用(後進育成)に貢献しており、ハイレベルのプレーヤとして認められる。スキル開発においても自らのスキルに研鑽を継続することが求められる。
レベル5プロフェッショナルとしてスキルの専門分野が確立し、社内において、テクノロジやメソドロジ、ビジネスを創造し、リードするレベル。社内において、プロフェッショナルとして自他共に経験と実績を有しており、企業内のハイエンドプレーヤとして認められる。
レベル6プロフェッショナルとしてスキルの専門分野が確立し、社内外において、テクノロジやメソドロジ、ビジネスを創造し、リードするレベル。社内だけでなく市場においても、プロフェッショナルとして経験と実績を有しており、国内のハイエンドプレーヤとして認められる。
レベル7プロフェッショナルとしてスキルの専門分野が確立し、社内外において、テクノロジやメソドロジ、ビジネスを創造し、リードするレベル。市場全体から見ても、先進的なサービスの開拓や市場化をリードした経験と実績を有しており、世界で通用するプレーヤとして認められる。
引用元:https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/plus-it-ui/itss/itss2.html

ITスキル標準の11の職種

ITスキル標準では、IT業界における職種を以下のように分類しています。それぞれの職種と主な業務内容について紹介します。

職種主な業務内容
マーケティング        市場調査を基に、顧客のニーズに適したITサービスやソリューションのプロモーションを企画・実行する。
セールス顧客のビジネス課題を理解し、適切な製品やサービスを提案するとともに、顧客との良好な関係の構築を目指す。
コンサルタント顧客のビジネス戦略やIT課題の解決に貢献するため、効率的なシステム導入や業務改善を支援する。
ITアーキテクトハードウェア、ソフトウェア関連技術を活用して、最適なシステムアーキテクチャの設計と構築を担当する。
プロジェクト
マネジメント
ITプロジェクトの計画から実施、完了までの全過程を管理する。
ITスペシャリストIT技術を駆使して、システム基盤の設計、構築、運用、保守など幅広い技術的支援を行う。
アプリケーション
スペシャリスト
アプリケーション開発に関する専門技術を活用し、アプリケーションの設計、開発、構築、活用、テスト、保守まで実施する。
ソフトウェア
デベロップメント
ソフトウェアエンジニアリング技術を活用し、企業のニーズに適したソフトウェアの設計、開発、テスト、導入を行う。
カスタマーサービス顧客のシステム環境に合致したハードウェアやソフトウェアの導入、カスタマイズ、保守、修理を行う。
ITサービス
マネジメント
システム運用関連技術を活用して、システム全体の安定稼働を目指す。
エデュケーションユーザーのスキル開発要件を踏まえて、研修カリキュラムなどの設計や開発、運営、評価などを実施する。

ITスキル標準については、下記の記事でも詳細に解説しているので、合わせて参照することをおすすめします。

https://www.101s.co.jp/column/it-skill-standard/

ITスキル標準(ITSS)認定資格

ITスキル標準では、スキルレベルに対応した認定資格が設けられています。

認定資格には次のようなものがあります。

ITパスポート

ITに関する基本的な知識を証明する初心者向けの資格です。

ITSSレベルは「1」で、情報処理技術者検定の中でも最も難易度の低い試験となっています。試験問題はテクノロジ系、マネジメント系、ストラテジ系の3分野から出題され、ITの基礎知識だけでなく、マーケティングや経営戦略などの基礎についても学ぶ必要があります。

IT業界だけでなく、日常的にITを活用する社会人やこれから社会に出る学生など、幅広い層から支持されている国家資格です。

基本情報技術者試験

情報処理技術者としての基礎的な能力を認定する資格です。

1969年から実施されている国家資格であり、ITSSレベルは「2」に該当します。この試験では、プログラミング言語の構文やデータ構造、システム開発など、IT技術の利用と活用に関する幅広い知識が問われます。

高度IT人材を育成するための入門的な資格として位置づけられており、基本的なITスキルを持つ人や実務経験のある人を対象とした試験となっています。

応用情報技術者試験

この資格は、情報処理技術者として技術や対応力を示すことができる資格となっています。

ITSSレベルは「3」であり、ITの活用において必要となる応用的な知識やスキルをもち、高度なIT人材としての方向性を確立している人を対象としています。

試験ではシステム設計やシステム導入における上流工程、高いプログラミングスキルなど、専門的な知識や技術が問われます。

基本情報技術者試験の上位試験として位置づけられ、ITエンジニアとしてのレベルアップを図るのに最適な試験です。

ITスキル標準(ITSS)におけるキャリアフレームワーク

ITスキル標準では、SEやプログラマーなどの名称によってIT技術者を一括りにするという考えではなく、実際のビジネスの内容に沿った職種で分類し、各レベルに相当したスキルを評価していきます。

ITスキル標準における職種は11種類に分類され、それぞれの職種に応じた35もの専門分野が設けられています。それぞれの分野には7段階のレベルがあり、これは専門職に値する実務能力のレベルを示しています。

詳細については、IPAのホームページにキャリアフレームワークの図が掲載されていますので、下記のリンク先を参照してください。

https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/plus-it-ui/itss/hjuojm000000j2qk-img/hjuojm000000j2yx.png

ITスキルの把握にスキルマップの活用もおすすめ

ITスキルの把握には、 スキルマップを活用するという方法もあります。

スキルマップは、 ITスキル標準をより具体的に実務レベルに落とし込んだシートとして、業種を問わずさまざまな企業で利用されています。

スキルマップとは

業務を行う上で必須となるスキルを表形式で表したものを「スキルマップ」と言います。

企業によって呼び方は様々で、能力マップや力量表、力量管理表と呼ばれる場合もあります。

スキルマップを作成し、この表を生かした取り組みを行うことで従業員の強みや弱みを明確にし、より精度の高い人材育成や人事評価が可能となります。また、習得済みのスキルや不足している能力が一目で分かるようになっているので、従業員のやる気を引き出すなど、社員の士気向上につながるといえます。

スキルマップの作成方法

スキルマップの作成は厚生労働省の「職業能力評価シート(事務系職種)のダウンロードページ」を利用することをおすすめします。

内容を一部抜粋すると、職務遂行のための基準として下記のような項目が用意されています。

  • PCの基本的な操作方法を身につけ、セキュリティに留意して適切な使用をしている
  • ワープロソフト、プレゼンテーションソフト、表計算ソフト等を用いて、見やすい事務文書、表・グラフ作成を行っている
  • 電子メールの活用やインターネットを使った情報検索を支障なく行っている

これらの項目に対して、自己評価や上司からの評価・コメントを記入する欄があり、それぞれ〇・△・×で評価を行います。

今回は情報システム部門におけるレベル1のシートを紹介しましたが、厚生労働省のホームページではレベル4までの職業能力評価シートが配布されているので、ぜひ活用してみてください。

うまく活用してITスキルを向上させましょう

この記事では、IT人材に必要なスキルやITスキル標準(ITSS)、スキルマップの活用方法について詳しく解説しました。

IT人材に必要なスキルは、プログラミングスキルや論理的思考力、コミュニケーションスキルなど多岐にわたります。こういった場合には、従業員のITスキルを可視化することが重要となります。

本記事にて紹介したITスキル標準(ITSS)やスキルマップの活用は、高度な技術を持つIT人材を確保・育成する上で、非常に有効な手段となります。ITスキル教育の手法で悩んでいる教育担当者の方は、ぜひ導入を検討してみてください。