ジョブ型雇用とは?メンバーシップ型との比較や、解雇などの影響、メリット・デメリット、導入事例、導入の流れや注意点、支援システムについて
ジョブ型雇用とは?
ジョブ型雇用の定義とは?
一般的にジョブ型の定義は下記のものになります。
「特定のポストに空きが生じた際にその職務(ジョブ)・役割を遂行できる能力や資格のある人材を社外から獲得、あるいは社内で公募する雇用形態のこと」
一般社団法人 日本経済団体連合会(2020)|採用と大学教育の未来に関する産学協議会・報告書「Society 5.0 に向けた大学教育と 採用に関する考え方」
ジョブ型雇用がトレンドとなっている背景
大きく分けて二つの背景があります。
国際競争力の強化
産業の新陳代謝が激しくなる中で、単一企業でジョブを守り切ることは難しくなっています。企業間の人材流動性が高まることで、新興産業や新興企業の成長を後押しすることに繋がると期待されています。
結果的に、国内の企業や産業の国際競争力が強化されていくと考えられているのです。
コロナ禍でのリモートワークの推進に伴う人事制度の見直し
コロナウイルスの感染拡大に伴うリモートワークの増加により、対面で仕事の進捗を確認したり、部下をマネジメントしたりすることが難しくなってきました。仕事のプロセスを評価したり、「空気を読ん」だりすることにより賄われてきた人材マネジメントが機能しなくなった結果、個々の職務内容が明確であり、自身のジョブへの責任所在が明確なジョブ型雇用への注目度が一気に高まったのです。
メンバーシップ型との違いは?
メンバーシップ型雇用の定義
「新卒一括採用を主軸とし、多くが総合職として雇用され、転勤や異動、ジョブローテーションを経て、長期的に企業を支える人材として育成していく雇用制度」と定義され、別名日本型雇用とも呼称されます。
メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の比較
メンバーシップ型 | ジョブ型 | |
企業と社員 | 企業が雇用を保護する関係 | 両者が対等な関係 |
採用 | 新卒一括採用であり、定年雇用が一般的 | 職種別に採用 |
キャリア育成 | 企業に委ねられており、転勤も多い | 本人の同意が不可欠であり、公募中心である |
報酬 | 社内でのばらつきは小さく、年功序列 | 外部競争力を重視しており、職種別の給与体系になっている |
退職 | 定年退職や自己都合退職が大半 | クビ(退職勧奨)もある |
新卒採用の方法の違いが着目されることがとりわけ多いですが、本来着目すべきポイントは、そのキャリア形成の違いにあります。
メンバーシップ型では、会社側のなかば一方的な意思決定により社員の職務が決定されます。しかし、ジョブ型では、社員の職務を決定する際には、社員の同意が必要になり場合が殆どです。そのため、部下の目標の設定や個人評価には、部下との密なコミュニケーションが必須になります。
ジョブ型への移行による影響は?解雇されやすくなる?
ジョブ型雇用に移行することで、解雇されやすくなるのでしょうか?
コーポレートガバナンス・コードの策定の中心人物であった、経営創出基盤(IGPI)の冨山和彦氏によると、
「ジョブ型にすると失業が増えるという見方も誤解だ。日本は希望退職や退職勧奨などが(解雇自由とされる)米国よりも容易で、中小企業では不当解雇で泣き寝入りせざるをえない人が多い。ジョブ型の導入とともに解雇ルールを整備し、きちんとした金銭補償の仕組みをつくることが労働者の保護につながる。」
(2020/10/8、日経新聞、「ジョブ型雇用への道筋は」より抜粋)
解雇に関する法整備や社内規定を整えることで、現状よりも労働者の保護が進む可能性が高いとの観方が強い状況です。
ジョブ型雇用のメリットとは?
企業側のメリット
そのジョブに最適なスペシャリストを採用しやすくなるため、企業全体の生産性や競争力の向上に繋がります。また、社員の昇進や昇給は本人の業績に強く紐づくため、社員のモチベーションを向上させる公算が高いです。
従業員側のメリット
まず、自身の専門能力を高める環境が整うことが挙げられるでしょう。また、自身の成果が明確に評価に繋がるため、モチベーションは向上する場合が多いでしょう。また、転勤がないことも、ポジティブなポイントだと捉えられることが多いです。
ジョブ型雇用のデメリットとは?
企業側のデメリット
契約外の業務を依頼しにくく、業務に隙間が生じる可能性はよく指摘されます。社員との契約時には、細心の注意が必要でしょう。
従業員側のデメリット
個として強みが無い場合、仕事が見つかりにくい可能性が指摘されます。例えば、大学生が新卒として採用されることを目指している場合、在学中に身に着けた強みが企業に評価されなければ、採用には至らないでしょう。就職までに「何者か」になる必要があります。
ジョブ型雇用導入の流れと注意点
主に4段階に分けられることが多いです。
①職務内容の定義
自社の職務内容を洗い出し、専門性が強かったり、キーポジションであったりす職務の職務内容の定義を行います。
②ジョブディスクリプションの設定
ジョブディスクリプション(Job Description)とは、職務の内容をより詳しく定義した物で、主に下記の項目が包含されます。
- 職務名称
- 目的
- 職務内容
- 責任
- 職務の範囲
- 求められるスキル・知識・資格など
③評価制度の設計
次に、ジョブ型に即した評価制度を設計する必要があります。社員各々の職務と評価を結びつけ、評価基準を設定する作業です。この時に注意すべき点が、その評価方法が絶対評価か相対評価かという点です。
(参考:人事評価からタレントマネジメントへ)
④従業員へのジョブ型雇用制度への移行の説明
最後に、従業員にジョブ型雇用に移行することを伝達し、ジョブ型雇用が適用される社員と目標設定を行う必要があります。この際、管理者とスタッフの間で合意を得ることが不可欠になります。
ジョブ型雇用の導入事例
日立
日立は、新卒採用方法を職種別にすべく、ジョブ型を導入するとしています。
KDDI
KDDI様は全社的にJOB型に移行することを発表しています。
KDDI様には、弊社タレントマネジメントシステムも導入していただいています、併せてご覧ください。
(参考:人財育成プラットフォームとしてスキルナビを導入)
富士通
富士通は、社員個々の職責を明確にする等、ジョブ型雇用を導入し、オフィスの数を減らすとしています。
ジョブ型雇用をスムーズに導入するためには?
日本企業にジョブ型雇用を導入しようとすると、ドラスティックな変化が伴うことが多く、頓挫してしまうか、中途半端な導入になってしまい、社内に混乱を引き起こすことが多くあります。
それでは、スムーズにジョブ型雇用制度を導入するにはどのようにすれば良いのでしょうか?
最も求められることは、人事担当者による管理職(評価者)へのきめ細かな説明や研修です。先述した通り、ジョブ型雇用では評価や目標について評価者と被評価者が合意する必要があります。そのため、ジョブ型雇用におけるマネジメントや評価方法についての評価者の習熟度が、ジョブ型雇用制度の成否を決定付けると言っても過言ではないのです。
しかしながら、多くの企業の人事担当者の業務量は多く、ジョブ型雇用制度導入に伴う説明や研修にかける時間が確保しにくいのが現状です。そこで、多くの企業ではジョブ型雇用制度導入に伴う人事制度改定に伴いHRテックを導入することで、業務効率化を図り、ジョブ型雇用制度導入のための業務時間を確保しているようです。
また、HRテックを導入することで、従業員個々に合わせた情報提供や情報管理が可能になるため、ジョブ型雇用制度を運用する際のい業務効率化も併せて進める事ができるのです。
特に、タレントマネジメントシステムなどは、従業員管理に留まらず、評価管理や研修管理が可能であるため、ジョブ型雇用制度の導入に際して検討されることが多いようです。
タレントマネジメントシステムとは?
タレントマネジメントシステムとは、タレントマネジメントの導入・運用を支援するシステムの事を指します。SaaSモデルのビジネスの登場により、多くのタレントマネジメントシステムが市場に供給されるようになってきています。タレントマネジメントシステムについてはこの記事をご参考ください。