ビジネスにおけるメルクマールの意味とは?最終目標の達成に役立つ優れもの
企業が事業を大きくするとき、または新しい事業を始めるときに大切なのがゴール設定です。目標が定まっていることで、企業は事業をブレずに成功を導けます。
目標を達成するためのフレームワークやツールは多種多様に存在します。中でも「メルクマール」は、計画どおりに事業を進める上で効果的です。
今回は、メルクマールの定義や使い方、具体的な設定手順などを解説します。
メルクマールとは?意味を解説
「メルクマール(merkmal)」とは、ドイツ語を起源とする単語です。
目標を達成するまでの道のり、中間目標、ゴールなどといった意味で使われます。
具体的な意味は、
- ある目標を達成するまでに必要な道程
- 中間目標
- 最終的なゴール
- ビジネス上の判断基準、目安
などです。
企業では事業規模によらず、どの業種でも最終的なゴール地点を設定するものでしょう。さらにその最終地点に到達するために、各部署でもスモールスケールの目標が設定されます。
企業全体、部署単位、従業員個人など、さまざまなスケール・ビジネスシーンで使われます。主に、重要な部分を指す際に使われ、ゴールの過程において必要なアクションが実行されているかを判断する基準とされます。
最終的なゴールを決めた後、それに対して必要なステップを細分化する方法なので、マイルストーンやKPIなどのビジネス用語に「似ている」と感じる人は多いでしょう。
具体的な使い方は、
- 契約を受けるかというメルクマールは取引先の対応によって決められる
- 経験のない分野で新規事業を始める際は、メルクマールの設定が欠かせない
- メルクマールを確認すると、プロジェクト全体の進捗が遅れている
などのように使われます。
意味を知っていれば日常的に活用しやすい単語です。使い方を誤らないように注意して、コミュニケーションをスムーズに進めましょう。
メルクマールを設定するメリット
メリットは3つあります。
中間目標が明確になる
ゴールに到達するまでに通るべき地点は複数あります。企業がよりスピーディにゴールとする目標を達成するには、その中間地点を抜けもれなく通過する必要があるでしょう。
効率的に事業を展開していくためには、具体的な中間地点を設定して最短距離を可視化することが重要です。そこでメルクマールを活用すると、通過すべき中間地点が明確化できるでしょう。
企業の事業進捗だけでなく、部署でのプロジェクト管理や個人の目標達成のためにも利用できます。
ミスの軌道修正ができる
ゴールまでの道程を具体化できるメルクマールですが、軌道修正にも役立つのが特徴です。あらかじめ詳しく工程を明らかにするので、定めた道から外れた際にすぐ気付ける点は大きなメリットでしょう。
もしも、事業やプロジェクトなどの進捗が悪い際は、事前に決めた中間目標を振り返って「どこで遅れが生じているのか」を確認できます。そこで初めて、見逃していたミスを発見したり、管理職と現場で異なる方向性を持っていたりすると発覚するかもしれません。
逆に、ミスなく進んでいる工程が成功している理由も判明します。それを利用すれば、全体の事業展開に成功のポイントを流用できるため、さらにスムーズに事業が進むでしょう。
ミスの発見と成功のポイントを探りながら実務に活かすことで、全体の軌道修正が可能となります。
やるべきことを上司や同僚と共有できる
企業の管理職や経営陣にとって大きな悩みの種となるのが「報連相(報告・連絡・相談)」ではないでしょうか。業務進捗が共有できていなければ、上司は部下が取り組んでいる業務内容やスピード感が把握できません。
メルクマールによって、目標達成までに必要な業務内容を具体化していれば、進捗状況の共有が容易になります。スモールスケールの目標を達成するたびに、業務の振り返りをしたり面談をしたりすると、部下の成長につながるでしょう。
進捗状況の共有は、部下の状態を上司が把握するだけではなく、業務に相互関係のある同僚にとってもメリットがあります。お互いの業務量や忙しさを確認しやすくなるため、協力を仰いだりといったコミュニケーションが発生しやすくなります。
メルクマールを設定する手順
4つの手順に沿って設定しましょう。
最終目標を立てる
まず必要なのが「最終目標」です。メルクマールを設定する目的となる、事業の最終到達点やプロジェクトが成功したといえる理想形を考えてみましょう。
例えば、
- 新プロジェクトで新規顧客を獲得する
- 上場企業と業務提携をする
- 時代のニーズに合った新サービスを開発し提供する
などがあります。
目指すゴール地点は、現地点よりも遠く、達成まで時間を要するものであるのが一般的です。
ただし、あまりに長期的な目標になると中間地点の洗い出しが難しくなるほか、計画が頓挫する可能性が高まります。現実的に達成できそうで、達成までの道程がイメージできる最終目標にすると良いでしょう。
行動計画を決める
最終目標を達成するために必要となる、具体的な行動・アクションを明らかにしましょう。できるだけ細かく分析して、どの部署のどのような人材が、どのような業務をどのくらいの期間をかけて実行するのかまで詳しく言語化することが重要です。
具体的な行動が明らかにできたら、作業期間などを考慮して着手する順の計画を立てます。具体的であるほど、メルクマールの設定がしやすくなるでしょう。
また、定期的な見直しによる改善の必要性が少なくなるので、時間をかけてでも慎重に進めることをおすすめします。
メルクマールを設定する
最終目標達成までの道程のうち、特に重要かつ定期的に確認できるような中間目標を設定しましょう。
最終目標までに必要となるアクションは複数あります。細かく分析すると数えきれないほどのアクションが必要になるでしょう。その中から、特に欠かせない行動や必ず通るべき中間地点は、メルクマールとして設定しておくべきです。
その上で、進捗確認がしやすくなるような中間地点を設定しても良いでしょう。メルクマールが事業の進捗を関係者全員が確認できるような内容であれば、全社で協力して事業成功に向かっているというポジティブな印象を与えます。
また、中間目標を達成することは従業員の小さな成功体験となります。従業員のモチベーションアップにつながるため、メルクマールは少なすぎず多すぎない量で調節すると良いでしょう。
可能であれば、メルクマールの内容には数値を含めるのが理想的です。数値目標は具体的かつ客観的評価が可能なので、誰もが進捗状況を確認しやすくなります。
進捗を確認する
設定したメルクマールのステップを実行する際には、定期的に進捗を確認することが重要です。「設定して終わり」となっては、方向性がズレたり進捗が遅れていたりしても気づけません。いつの間にか事業が大幅に遅れ、損害が発生していたという事態を防ぐためにも、進捗確認は必須です。
設定したメルクマールを見て、各ステップが計画通りに進んでいるかどうかを確認します。業務の内容が正しいか、設定した期間に遅れはないかなどを細かく振り返りましょう。
もし遅れが生じていれば、都度調整します。最終目標を達成するまでの道程を最短にするためにも、最初の設定内容にこだわらず状況に応じた変更を行いましょう。
進捗確認をしながら軌道修正をしていれば、目指すゴール地点にスムーズに到達できます。
目標管理の詳細は「目標管理とは?目標管理制度や、目標設定、導入や流れを解説!」でも紹介しています。
メルクマールの活用ポイント
3つのポイントを押さえましょう。
メルクマールを意識する
せっかく設定しても「やって終わり」となっては意味がありません。費やした時間が無駄になるため、日々メルクマールを意識するようにしましょう。
一見、常にメルクマールを意識して内容を確認するのは時間の無駄に感じられるかもしれません。しかしこれは、意識的に取り組めば、無駄な工程を踏んだり、作業のヌケモレを防いだりすることにつながります。結果的に、作業効率のアップが期待できるでしょう。
ただ「意識しよう」と思っても、日々の忙しさから後回しにしてしまうケースもあります。日常的に確認できるように、設定した内容の貼り出しや定期的な上司との面談など、従業員が意識しやすい仕組みづくりに取り組みましょう。
定期的に達成状況を評価する
メルクマールは、1つの目標達成までの道程を可視化するものです。最終目標を達成するまでに必要な小さい目標や細かい業務内容まで明らかにするため、それに従って進めば、理論上は問題なくゴール地点に到達できます。
だからといってメルクマールを設定後、業務を部下に丸投げしては危険です。定期的に達成状況を共有して、進捗や進行方向のズレがないか、部下が抱える悩みはないかなどを確認しましょう。
定期的な評価を行うタイミングは、メルクマール設定時に取り決めることをおすすめします。部下にとってはあらかじめタイミングがわかっているので、達成状況をまとめておく余裕が生まれるでしょう。
コミュニケーションを密にとる
メルクマールはあくまでも最終目標に到達するまでの予定です。最初に予定した通りに事業が進むことは少ないかもしれません。進捗の遅れや認識の違いが生まれている可能性があるため、密なコミュニケーションを取って、できるだけ早期に問題を見つけられるようにしておく必要があります。
問題の発生予防には、定期的に進捗確認する場を設けることが重要です。しかし、その時がこなければ問題が発覚しない状態は、場合によっては手遅れになり得るので注意しましょう。
日頃から上司から部下に声掛けをしたり、雑談をして気軽に相談できる関係性を築いたりしておくことが重要です。
コミュニケーションを取る中で、設定したメルクマールが現状とズレていると判明するケースもあります。最初の目標にこだわらず、柔軟に改善をしていくと良いでしょう。
メルクマールの具体例
3つの例を紹介します。
営業のメルクマールの例
営業では、架電数や成約率、リピート率など、営業成績を確認するためにメルクマールが用いられることがあります。
顧客を獲得するまでに行う過程においてもメルクマールを活用できます。
例えば、
- 市場動向のリサーチ
- 潜在顧客のリサーチ
- 商品開発
- 広告掲載
- 営業活動
- クロージング
など、営業に関わる過程は複数あります。
それぞれの工程で目標を設定することで、営業活動がスムーズに進められるはずです。定期的な見直しを行ったり、達成率を数値で出したりすれば、営業活動の改善が見込めるでしょう。
Webマーケティングのメルクマールの例
Webマーケティングでは、自社の潜在顧客を獲得して、営業チームまで引き継ぐ役割を持ちます。
企業はオンライン広告やソーシャルメディアを活用して、自社製品やサービスの潜在顧客にリーチします。 興味を持ちそうなユーザーは、ウェブサイトに訪れたり、コンテンツをダウンロードしたりするでしょう。さらに潜在顧客が購入を検討する際は、営業チームに引き継ぐための準備を行います。
マーケティングにおいて重要なのは、自社が掲載した広告の効果を正しく測定して改善すること、自社の潜在顧客を正確に把握することです。
メルクマールを活用する際は、顧客へのリーチ率や費用対効果などの具体的な目標を掲げると良いでしょう。数値を見ながら改善を続けると、効果的なマーケティングが可能になります。
人事のメルクマールの例
人事の仕事の最終目標は「会社運営に必要なスキルを持つ人材を必要人数確保する」ことだといえます。
そのために必要な小さい目標は、
- 自社にマッチする人材を確保する(採用活動)
- 自社に必要なスキルを備えた人材を育成する(研修実施)
- 優秀な人材が流出しない仕組みづくりをする(職場改善・人事評価の見直し)
などが挙げられます。
より詳細に目標を設定すると、確実に最終目標の達成に近づきます。メルクマールを活用してスピーディな目標達成を実現しましょう。
メルクマールの類義語は?他の用語との違い
似た言葉との違いを解説します。
マイルストーンとの違い
「マイルストーン」は、プロジェクトやタスクの進捗を評価するための重要なポイントや目標です。
事業の進行中に発生する特定のタスク、あるいは成果物が達成された際に到達するポイントであり、事業が計画通りに進んでいるかどうかを確認できます。
ヤード・ポンド法の長さを表す単位「マイル」という言葉を用いて、ゴール地点までの進み具合を知る指標として使われています。
マイルストーンを設定すると、事業全体を俯瞰したときの中間地点がわかりやすくなります。そのため、関係者が進捗状況を正確に把握できるようになるのです。
「メルクマール」との違いは、評価の有無にあるといえます。進捗状況のみ確認できるマイルストーンに対し、メルクマールは進捗状況の評価改善を伴います。
ベンチマークとの違い
「ベンチマーク」は、基準点や水準点などの意味を持つ言葉です。比較対象ありきの言葉であり、比較する際の基準となる指標を指します。
例えば、ある組織やプロジェクトのパフォーマンスを他の組織やプロジェクトと比較し、自身の進捗や成果を評価します。ベンチマークは、業界最高水準の製品や世界標準を参考に自社の状況を把握するのが一般的です。そのため、自社と他社を比較して、自社の強みや改善点を見極めるための重要な手法として知られています。
一方、メルクマークは比較をせず、自社の目標に対する達成状況を評価する指標です。自社で打ち立てた最終目標に対する小さい目標を設定する方法なので、全体を俯瞰して進捗状況を把握できます。
KPIとの違い
KPI(Key Performance Indicator)とは、特定の目標や目的に対する進捗や成果を測定するための指標です。日本語にすると「重要業績評価指標」です。
組織やプロジェクトのパフォーマンスを定量的に評価し、目標の進捗や優先順位を把握するために用いられます。数値や割合、比率など、具体的な数字を使って目標設定を行うのが特徴です。
目標に対する進捗を確認して評価するという点で、メルクマールと大きな違いはありません。どちらも最終目標に対する中間目標を設定して活用されます。
KPIについて詳しくは「KPIとは?KGIやKFSとの違いや設定のポイントを解説」で紹介しています。
メルクマールを活用しましょう
メルクマールは、企業が始めるプロジェクトや事業の進捗を管理する上で重要な指標です。最終的な目標に対する過程を明らかにできるため、ブレずに目標達成を目指せるようになるでしょう。また、目指すゴール地点が明らかになることで、現場判断がしやすくなるといったメリットがあります。
メルクマールを活用する際は、いくつかの注意点を押さえておきましょう。メルクマールを導入後、部下に業務をすべて任せっきりにならないように定期的な進捗確認の機会を設けるなどの配慮が大切です。
正しく導入を進め、事業全体をスムーズに成功に導きましょう。