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評価制度がない会社のメリットは?事例を用いて廃止する利点を解説

仕事における成果を測る手段として、人事評価制度が一般的でしょう。各項目に対し、どれだけ達成できたかが一目でわかります。しかし、最近は評価制度を用いない企業が見受けられるのです。

では一体どのような手段で査定しているのでしょうか。そこで今回は人事評価制度をなくす理由や実際に評価制度をなくした企業事例を解説していきます。

人事評価制度をなくす理由

人事評価制度をなくす企業が増えている流れは、元をたどるとアメリカが由来となっています。米国では約10年前から、一般的な評価制度を廃止する企業が増えています。今までのランク付けによる評価では査定が困難になったからです。アメリカでは日本よりも終身雇用廃止の流れが進みつつある中で、より多面的に評価する必要が出てきました。

例えば、社員が業務に取り組む姿勢や専門的なスキルの保有の有無など。社員を360度見渡しての評価が必要不可欠なのです。そのため、アメリカでは人事評価制度をなくし、ノーレイティング制度が主流になっています。

日本でも年功序列制度の廃止が進むにつれ、後を追うように評価制度が撤廃されているのです。このように、様々な角度から評価する必要が出てきた背景により、アメリカにならい日本でも人事評価制度が廃止傾向にあります。

人事評価制度がないことによる問題

人事評価制度がないことによる問題を解説します。

生産性の低下

人事評価制度がなくなれば、社員一人一人のモチベーション低下につながる可能性もあります。明確な基準がなくなるため、目標達成に向けた行動の段取りも悪くなるでしょう。

例えば「ランク制度撤廃によって昇格基準が不明瞭になったため、モチベーションを保ちにくくなった」「今までと同じ成績を残しても評価されにくくなり、どのように行動を取ればよいか分からない」など、社員間で悩みや不安を抱えるケースもあります。

社員が不満を感じてしまうと、社内全体の生産効率も下がってしまうのです。今まで評価制度を基準に頑張っていた方にとっては、大きな影響がうまれます。そのため、評価制度を無くす際は、このような点も考慮する必要があるでしょう。

人間関係の悪化

人事評価が撤廃されると、人間関係が悪化する可能性があります。評価という納得できる基準がなくなるため、不平不満がうまれやすい環境をつくってしまうのです。

例えば「成績を残しているのに、なぜ評価が他の社員よりも低いのか」「上司の査定が厳しいのは、私のことが嫌いだからではないか」などの人間関係トラブルが生まれてしまいます。本来であれば明確な評価ラインがあったため、たとえ他の人が結果を出しても納得出来ていました。

しかし、人事評価がなければ、ある程度評価者の主観が入ってしまいます。部下を好き嫌いで判断するケースもあるため、社員間で溝がうまれやすいのです。このように、人事評価制度がないことによるメリットはあるものの、人間関係が悪化する可能性もあります。

人材流出

人事評価がなければ、正しく査定されない社員が出てきます。不満がたまってしまうと、活躍の場を移さざるを得なくなるのです。「しっかり査定してくれないのであれば、正しい評価制度がある会社に転職しよう」「自分の仕事を認めてくれる会社に移ろう」など、心変わりしてしまいます。

とくに優秀で仕事ができる方は、次のステージへ上がるために努力を欠かしません。そんな中、自分自身の成長が認められない状態であると、不満が残っても仕方がないでしょう。

今まで会社に貢献してくれた社員が、査定方法の違いによって退職する可能性があるのは念頭に置いておきましょう。

人事評価制度の課題

人事評価制度には課題がつきものです。中でも大きな課題は作成に時間が掛かる点です。評価項目をつくり、社員に周知させるまでにはある程度の時間を要します。完成しても、高品質な評価を維持するために、日々磨きをかけていかなければいけません。

社員から不満が出たり、企業の方針が変わったりすれば、あらためてつくる必要があります。また、現在テレワークの導入が進められていますが、人事評価では対応しきれないケースも出てくるのです。

「どんな業務を行っているのか分からない」「業務に対する積極性が評価しづらい」など、日々顔を合わせないがためにうまれるデメリットもあります。ウェブ会議やチャットでのコミュニケーションを増やす企業も増えましたが、対面に比べると評価の質が落ちるのは否めません。

以上のように、人事評価制度には課題が山積みであり、評価制度の撤廃も視野に入れるのが賢明でしょう。

人事制度作成のポイント

人事制度作成のポイントを解説していきます。

経営戦略と一致しているか

人事制度を作成する際は、評価項目が経営方針と合致しているかの確認をしましょう。一致していなければ、企業が目指す人材を育てるのは不可能です。

例えば「10年後までに100店舗増やす。そのために、チャレンジ精神を持った人材を増やす」とあったとしましょう。にもかかわらず、評価対象に積極性や主体性の項目がなければ、企業が目標とする人材は育ちません。失敗を恐れた消極的な人材が増えてしまうのです。実際にこのようなケースは様々な企業で起こっています。

そのため、人事制度を作成する際は経営層と入念に打ち合わせしていきましょう。現場で作成した後「社長の考えが評価に反映されているか?」「将来を見据えた評価項目になっているか?」などを確認していくと、経営戦略と合致した制度が完成するはずです。

従業員が納得しているか

人事評価は従業員の納得度を把握したかたちでつくっていきましょう。社員の意見を反映せず人事主導でつくってしまうと、従業員から不満がうまれる原因となります。社員のモチベーション低下は社内全体の業務効率悪化につながってしまうのです。

そのため「どの点に納得していないのか?」「どのように対応すれば納得するのか?」などを確認していきましょう。よく聞かれる意見としては「評価項目が明確でない」「項目が一部のスキルや業績に偏りすぎている」などです。社員から出そうな意見をあらかじめ参考にし、人事制度をつくっていきましょう。

とはいえ、もちろんすべての意見に合わせる必要はありません。全員の意見を反映させていては、企業の方針とブレてしまう可能性もあります。そのためにも、従業員が納得できるよう、明確に分かりやすく制度を周知させていきましょう。

評価と待遇の関係性が明確になっているか

人事評価が待遇に結び付いているかの確認も行っていきましょう。たとえ評価が高くても、待遇に結び付いていなければ従業員は納得しません。「評価が高いのに、なぜいつまでも昇格できないのか?」「毎回評価ランク上位につけているものの、給料が上がらない」などの不満を持つでしょう。

結果、評価をつける目的が不明瞭になってしまうのです。そのため、個人だけでなく、部署全体の目標も共有しておきましょう。例えば、個人で高評価を得ても、企業の利益が上がらなければ昇給や昇格は望めないでしょう。

評価項目には「部署全体で対前年比売上110%」のようなチーム全体の目標を組み込んでおくと良いかもしれません。結果、たとえ個人成績だけが高い社員でも、納得したかたちで業務に取り組んでくれるはずです。

評価をしない「ノーレイティング」とは

評価をしない査定手法としてノーレイティングがあります。ノーレイティングは、従来評価の現場で採用していたランク制度を撤廃する評価手法です。S・A・Bランクなど社員に対して格付けせず、代わりに1on1ミーティングを用います。

1on1ミーティングは週や月に1度、上司と部下で面談を設ける手法。ランクを廃止する代わりに、1on1ミーティングによって上司が査定していくのです。1on1ミーティングは部下の意見を取り入れるのがメインであるため、双方向によるコミュニケーションが実現します。

そのため、現状の問題点や悩みをスピーディーに解決できます。面談による査定だけではなく、部下の成長を後押しできるのです。より納得したかたちで評価できるため、現在は多くの企業で人事制度に変わるノーレイティングを導入しています。

評価制度をなくした会社の事例

評価制度をなくした会社の事例を紹介します。

GE(ゼネラル・エレクトリック)

最初に紹介する企業はGEです。家電製品・映画・金融など、幅広い事業を手掛ける世界最大の米国企業になります。GEでは本来9ブロックと言われる評価手法を導入していました。9ブロックは業績軸とポテンシャル軸をそれぞれ3つ設け(高・中・低)、社員に当てはめていく評価手法です。9つのブロックに対する配置により、処遇が決まっていきます。

しかし、2016年に9ブロック制度を撤廃し、あらたにノーレイティングを導入。最大の理由は事業変革が求められたからです。GEを代表する電子事業は変化の流れが早く、時代の変化とともに、人材の評価もスピード感をもって取り組まなければいけなくなりました。今までの9ブロック制度の面談定期は1年に1回。とても人の成長や時代の変化に追い付けません。

そこで、定期的に1on1ミーティングを設けたのです。社員の失敗や挫折に対して素早く対応できるため、成長スピードが増したとのこと。強い組織をつくるために、日々密なコミュニケーションを取っています。

アドビ株式会社

続いて紹介する企業はアドビ株式会社です。米国に本社を持つソフトウェア関連企業になります。従業員数合計約2万2千人。そんなアドビも従来の人事評価制度からノーレイティングへと移行した企業のひとつです。

なかでもアドビは「チェックイン」と呼ばれる独自の手法を採用しています。チェックインは3ヵ月に1度、上司と部下による面談を実施。掲げた目標に対しての進捗報告や不明点を相談し合っています。今までは1年に1度評価結果を上司から部下へ伝えるのみ。コミュニケーション頻度が少なく、社員のモチベーションが低下したり、職務に対しての不満がうまれたりする原因となりました。

チェックイン導入後は満足度が向上。「正しく評価されている」「自分を見てくれている感覚がある」などの声もあがっているそうです。アドビでは現在も社員のモチベーションを上げるべく、チェックインに磨きをかけています。

カルビー株式会社

最後に紹介する企業はカルビー株式会社です。カルビーは日本の大手食料品製造企業になります。カルビーはノーレイティングと人事評価制度を融合させた手法を導入。年度初めに1on1ミーティングを取り入れ、仕事内容や目標を記した契約書にサインします。

合意した契約書をもとに、評価を決めていくのです。目標は社員の意見が優先され、さらに年に数回面談を実施。上司と部下の風通しを良くした評価手法になりました。当手法を導入し、カルビーの利益は大きく増加。カルビーの査定方法を参考にする企業が増えていったのです。

ノーレイティングで多面的な評価を行いましょう

今までは人事評価制度ありきの査定が当たり前でした。明確な基準があるため、査定側も評価がしやすかったのかもしれません。

しかし、現在は時代の流れが速くなったことにより、従業員とのスピード感を伴ったコミュニケーションが必要になりました。そこで注目されているのがノーレイティング。ノーレイティングはランク付けよりもコミュニケーションに重きを置いた査定方法です。

従業員が抱える悩みや疑問を早く解消でき、査定に対する不満もうまれにくくなります。是非この機会に評価制度のない会社を目指してみてはいかがでしょうか。