OODAはなぜ注目されている?導入メリットと実践手順を解説
変化の激しい時代に対応できる手法としてOODAが注目されています。手軽に導入しやすく、スピーディーな判断が可能な点も後押しし、現在は多くの企業で導入中です。
とはいえ一体どのようなフレームワークなのでしょうか。そこで今回はOODAが注目されている理由と導入手順を中心に解説していきます。
OODAとは?
OODAについて解説します。
OODAの読み方、意味
OODAはウーダと読み「Observe(観察)」「Orient(方向付け)」「Decide(判断)」「Action(行動)」の頭文字を取った人事手法です。
OODAは目の前に起きた事象に対し、正しく対処するサイクルになります。
現在は企業の人材難がささやかれており、優秀な人材を確保するのは困難な状況です。そこでほとんどの企業は採用から育成へと舵を切っているのが現状。育成にあたっては部下へ裁量を与える必要があります。決定権を持った部下は自分自身で判断しなくてはいけません。
そのため、正しく判断するための手法としてOODAが注目されているのです。
OODAの歴史
OODAがうまれた背景には戦争の歴史が大きく関係しています。1950年代に戦争を経験したアメリカ空軍のジョン・ボイド氏によって提言されました。
ボイド氏は戦争中、上司に判断を仰げる環境におらず、自分自身で攻撃の判断を下さなければいけなかったのです。そこで瞬時に判断できる考え方としてOODAがうまれました。
OODAは適切な判断を下せるだけでなく、なによりもスピード感を持って判断できるのが大きな強みです。当時は「40秒ボイド」とも呼ばれ、40秒あれば不利な形勢から逆転できたとも呼ばれています。
OODAが活用できる場面
OODAが活用できる場面としては大企業の新規事業発足時や起業時です。新たな事業を立ち上げた際は右も左も分かりません。トラブルが発生するのは日常茶飯事であり、そのたびにスピーディーかつ正確に判断しなくてはいけないのです。
起業時も同様、少ない資金の中で冷静に判断を下す必要があります。そこでOODAを導入すると目の前の出来事に対して、柔軟に対応可能。市場の変化にも状況に応じて処置できるのです。
他にも社員育成やリーダー採用時など、現在はOODAは幅広く利用されています。
OODAループとは
OODAループとは観察→方向付け→判断→行動のサイクルを正しく迅速にまわす手法です。
判断を下す前には観察し、そして方向づけを行う必要があります。判断を下した後は適切に行動へと移さなければいけません。
このようなサイクルを正しく回せば、たとえ問題が発生してもすぐに立ち直れるのです。移り変わりの激しい現代を生き抜くには最適なフレームワークと言えるでしょう。
OODAとPDCA
OODAとPDCAについて解説します。
PDCAとは
PDCAとはPlan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)の4要素からなるフレームワークです。目標達成に向けて組まれるサイクルであり、現在は多くの企業やチームで活用されています。
行動へ移すためには計画を立て、実行後は反省を行って次に活かす流れが重要なのです。業務効率の向上や社員育成など、様々なシーンで使われています。
また汎用性が高いため、日常生活においても気軽に利用できるのも特徴。例えば、ダイエット実施に向けて次のように活かせます。「1ヵ月以内に2kg痩せる(Plan)→毎日30分散歩する(実行)→結果、1ヵ月で1.7kgしか痩せなかった(評価)→来月は散歩の時間を1時間に増やしてみる(改善)」
このように、誰でも状況を選ばずに利用できるのは大きなメリットです。
OODAがPDCAに代わり注目される理由
OODAがPDCAに代わり注目されている理由は時代の変化が大きいでしょう。各社から新しいサービスが続々と発表される中で、自社も変化に合わせて価値を提供する必要があります。
となれば、PDCAのような目標設定や振り返りを逐一行っている時間はないです。目の前の出来事へ迅速に対処する必要があり、作業が完了すると新たに次の行動を取らなければいけません。
そのようにスピーディーな行動を取るためには、PDCAよりもOODAが最適なのです。
OODAとPDCAは使い分けが重要
OODAとPDCAは使い分けが重要です。OODAはあくまで目の前に起きる事象に対し、瞬時に行動へ移していく手法になります。
「自分自身で判断しなければいけない」「上司に判断を仰いでいる時間はない」などの状況で活用するのが理想でしょう。ゆえに短期的な視点で使われるケースが多いです。
一方、PDCAは目標に沿って実行し、結果分析を行うまでの手法になります。「プランを立てて確実に遂行したい」「じっくり目標を決めて行動計画を立てていきたい」などの状況で活用できます。
OODAとは違い、長期的な視点で使われる場合が多いでしょう。このように両者は根本的に意味合いが違い、状況に応じて使い分けるのが重要です。
OODAを行うメリット
OODAを行うメリットを解説します。
即座に問題に対応しやすくなる
OODAを導入すれば、即座に問題に対応しやすくなります。
OODAは目の前の出来事に対してスピーディーに取り組むフレームワークです。PDCAのように目標を決めてから行動を起こすわけではありません。
そのため「考えながら行動に移す」が可能となるため、トラブルやエラーに対していち早く対処できます。もともとOODAは結果よりも行動を重視する概念であるため、行動を起こしやすいのです。
行動指針を決定する際に役立つ
OODAを採用すると、行動指針を決定する際に役立ちます。OODAは目標決定ではなく観察や方向付けから行っていきます。目の前の事象をあらゆる角度から観察し、今後取るべき行動を決めていくのです。
具体的な動きや活動が明確になるため、先行きが不透明な問題に対してもスムーズに取り掛かれます。結果的に様々な問題を正しく適切に対処していけます。
個人の裁量を大きくできる
OODAを導入すると、個人の裁量を大きくできます。OODAは基本的に一人もしくは少人数で実践を繰り返すフレームワークです。上司の判断を必要とせず、自分達で決断を下していきます。
結果的に決定権が大きくなり、一人一人が責任感を持って仕事に取り組めるのです。リーダーとしての自覚が芽生えて大きな成長へとつながるでしょう。
とくに人材育成が急務となっている現代においては最適な手法と言えるでしょう。
実践を通して試行錯誤できる
失敗を繰り返しながらも少しずつ改良を重ねられます。自分たちで実践を繰り返していくため、自然とより良い判断を模索していくわけです。
例えば「今回判断を誤ったから次回はもう2歩先を見通して判断しよう」のように、実践の中で判断力が磨かれていきます。
正確な判断が下せるようになれば事前にトラブルを回避でき、周囲へ目を配る余裕も出てくるのです。
OODAを行うデメリット
OODAを行うデメリットを解説します。
思い付きで行動しやすい
OODAは目の前に起きた出来事に対し、瞬時に対応していきます。
ゆっくり考えてアイディアを絞って結論を出すわけではありません。となれば、思い付きで行動してしまう瞬間もあるでしょう。とくに実践経験の少ない方がOODAを実践すれば、勘を頼りに判断してしまうケースもあるかもしれません。
そのためにも方向付けを正しく行うのが重要です。「今取り組むべき内容は何か?」「最優先で行うべき作業はどれか?」など、頭の中で整理する癖をつけるのがポイントになります。
計画策定時には適さない
OODAが計画策定時には最適でないと念頭に置いておきましょう。
OODAは計画を立て、立案したプランに基づいて実行するわけではありません。あくまで発生した事象に対して、瞬時に判断していくフレームワークです。
そのため、計画策定時はPDCAを導入すると良いでしょう。PDCAであれば計画から改善までのプロセスが整っており、中長期的な計画にも最適です。状況に応じて使い分けるのが重要と言えます。
中長期的改善や定型作業の改善には適さない
OODAは中長期的改善や定型作業の改善には適しません。
なぜなら、OODAは短期的または一時的な問題を解決するためのフレームワークだからです。OODAの最終ステップが行動である事実からも、瞬間的な手法だと分かるでしょう。
PDCAのように改善や反省をするわけではなく、行動が終わるとさらに次の行動へ移っていくのです。
そのため、すでに出来上がっている仕組みを整えたり、1年以上かかる作業に着手したりするのは向いていません。OODAの目的を正しく把握して導入していきましょう。
結果のデータが残らない、共有されないことが多いため暗黙知が発生する
OODAは反省や評価よりも行動が重視されます。いかに行動を繰り返していくかがポイントなのです。
そのため、周囲の社員と結果を報告しあったり、成功体験を共有しあったりする機会は失われがちです。大人数で協力して作業を進めるよりも、一人や少人数で黙々と行動へ移すシーンが多くなるでしょう。
そうなれば「本人にしか分からない判断方法」「言葉にできない判断基準」などがうまれてくるのです。このように、OODAは閉塞感を抱きやすいのは念頭に置いておきましょう。
大きな失敗のリスクを伴う
OODAを導入すると大きな失敗のリスクも伴います。とくに社歴の浅い社員や経験の少ない社員がOODAを実践すれば、管理職だけでなく会社全体へのダメージとなるでしょう。
万が一リスクを最小限に抑えたい場合は「経験のある社員に限定する」「2年目以上の社員から実践させてみる」など、適用する範囲を制限するのもおすすめです。
とはいえOODAを取り入れる場合は、少なからず失敗のリスクがつきまとうのは覚えておいてください。
OODAを行う手順
OODAを行う手順を解説します。
ステップ1:Observe(観察する)
OODAを行う際、まずはじめに取り組むのが観察です。
起こっている状況を様々な視点から細かく見ていきます。「トラブルが起こったのは何が原因か?」「どの問題点に着目すれば物事は解決するか?」などを観察していくのです。
この際重要となるのが常識や過去の経験にとらわれてはいけません。目の前にある事象に対し、客観的かつ論理的に観察していきましょう。
ステップ2:Orient(情勢判断する)
観察が終了後、次に行うのは情勢判断です。観察した情報に対して方向付けを行っていきます。
「人事異動で問題解決を図れないか?」「月1回の勉強会実施でスキルアップできないか?」などを考えていきます。
経験に基づいたアイディアや磨かれた感性をもとに、最良の手段を導き出していきましょう。
ステップ3:Decide(意思決定する)
方向付けが決まったら最終確認を取っていきます。
前述した例に沿っていくと「実際に人事異動を活用してみる」「試験的に月1回の勉強会を実施してみる」などです。
また、期間設定や費用対効果なども加味した上で決定すると、より正確な判断が下せます。次のステップは実行であるため、この段階で形を整えていきましょう。
ステップ4:Act(実行する)
意思決定が明確になったら実行に移していきましょう。実行で重要なのは次回にどう活かすかです。
例えば前述した内容に沿うと「人事異動を行って部署売上が上がったものの、残業時間が増えてしまった」となれば、人事異動の実施に不安が残ります。
そこで今回の教訓を次回に活かしていくのがポイントです。例えば「異動メンバー選出時にスキルを見極める」「異動ではなく育成に切り替える」なども視野に入れられるでしょう。経験を重ねていけば適切な判断が下せます。
OODAを取り入れる際にやるべきこと
OODA導入時にやるべきことを解説します。
ビジョンを共有する
OODAを取り入れる際は目標やビジョンを共有していきましょう。進むべき方向が明確であると、判断する際に迷いがなくなります。スピード感を持って判断でき、良い結果がうまれやすいです。
そのため「想定と違った判断をする社員が多い」「間違った判断でトラブルに巻き込まれるケースが頻発している」などの事態も防げるはずです。
OODAを正しく導入するためにもまずはビジョンを共有していきましょう。
仮説を立てる
OODAを適切に運用するためにも、仮説を立てていきましょう。主に仮説を立てるのは観察の段階です。より正確な判断を下すためにも、様々な視点から仮説を立てるのが重要になります。
例えば「今本当に重要なのは採用ではなく育成ではないか?」「従業員が成長するためにはモデルとなる社員の存在が必要なのではないか?」など、自分の中でイメージしていきましょう。
仮説が立てられると、方向付けの定まった判断が下せます。
対話の機会をつくる
OODAを導入する場合は対話の機会も設けていきましょう。上司と部下でコミュニケーションが取れれば、部下が誤った判断を行うケースも減っていきます。結果的にトラブルやミスが発生する確率を最小限に防げるのです。
また、対話の機会をつくる際は、1on1の導入を検討してみましょう。1on1は上司と部下による両方向のコミュニケーションを実現します。目標やビジョンの共有ができるため、判断の正確性が向上するのです。
一度メンバーに任せ、評価を行う
管理者は従業員へ一度判断を任せてみましょう。部下へ判断を任せれば、責任感を持って仕事へ取り組みます。結果的に成長スピードも速く、優秀な人材へと育つ可能性が高いのです。
とはいえ全てを部下に任せるわけではありません。あくまで責任は上司が持ち、従業員には自由に行動させます。たとえ失敗しても?責せず、次につながる行動を一緒に考えていくのが重要です。
問題への迅速な対応のためにOODAを正しく導入しましょう
OODAは観察・方向付け・判断・行動の4つからなるフレームワークです。目の前に起きる事象に対し瞬時に行動へ移していく手法であり、多くの企業で重宝されています。
とくにベンチャー企業や大企業の新規事業立ち上げ時はOODAの導入がおすすめです。個人の裁量を大きくできるため、早期の社員育成につながります。
OODAを正しく導入するためにも、まずは導入手順をあらためて把握しておきましょう。