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これからの企業が意識すべき生産性とは?生産性分析の指標と定義を徹底解説

生産性分析の指標と定義

厚生労働省が推進している「働き方改革」を背景に、生産性分析の重要性が再認識されています。少ない労働力で業績を伸ばしていくためには、現状を理解し効果的な取り組みを実施することが必要不可欠だといえます。そのため、企業はまず生産性分析を行う必要があるのです。

生産性を測る指標は複数あり、その計算方法もさまざまです。各指標を活用して企業の現状を理解し、改善に努めましょう。今回は、生産性分析のために知っておきたい言葉の定義や、生産性の指標と計算式について詳細に解説します。

生産性の定義と計算式

効果的な分析を行うために、まずは「生産性」という言葉が何を意味しているのかを理解する必要があります。生産性とは単位あたりに生み出された会社の成果や業績を可視化したもので、何を基準に算出するかによって結果が変わります。そのため、一口に生産性と言っても種類が異なる点には注意が必要です。例えば、労働者一人当たりが生み出す量を測る「労働生産性」や、資本金単位額当たりが基準の「資本生産性」などがあります。

生産性は、産出量(アウトプット)に対して、投入量(インプット)がどれだけの割合を占めているかを「生産性=産出量÷投入量」の式に沿って計算し割り出します。基本的に数値が高いほど高い生産性を実現できているといえるため、企業は投入量に対してより多くの産出量を得ることを目標にするとよいでしょう。生産性の定義を理解しておくと、今後の経営戦略もより効果的な選択ができるはずです。

投入量(インプット)

投入量というのは会社が持っている資源を意味します。経済学においては生産要素と呼ばれ、特に「生産の3要素」と呼称されます。生産の3要素は以下の3つです。

  • 自然(土地)

「自然」の要素は、会社が所有している土地や、生産過程で使用する水や電気、熱や空気などの自然資源を指します。ネットビジネスもある昨今ではイメージしにくい要素ですが、オンライン上で完結する事業を展開している会社であっても、オフィスがある土地なども自然に含まれるため、生産のためには「自然」が必要不可欠だといえるでしょう。

  • 労働

どんな生産物も、人間の「労働」の結果生み出されます。近年はAIなどによる業務の自動化がされていますが、そうしたAIを生み出すために誰かが労働しているのです。「労働」には、思考力を活用する「精神的労働」と、肉体の筋力などを活用する「肉体的労働」の2種類が含まれます。

  • 資本

「資本」は時に「生産された生産要素」と表現されます。資本とは単純にお金を指しているのではなく、誰かの「労働」の結果を購入して得られた要素です。例えば、工場で製品を製造するために機械を購入した場合は、その機械を作った人の労働が投入されています。また、工場自体も建設会社の労働が投入された結果建てられています。このように、第三者の労働を投入して形成された要素を「資本」と呼ぶのです。

投入量が少ないほど生産性は高くなります。生産性を高めるためには、いかに投入量を減らして産出量を増やすかが重要なのです。

産出量(アウトプット)

産出量(アウトプット)は、会社の保有する資源を投入することで得られる成果や価値を意味します。評価したい指標によって数値が変化し、例えば物的生産性を算出する場合には「生産量・重量や面積・売上数・売上額」などを総合的に参照して数値化します。それとは逆に、付加価値に着目して算出する場合には、金額のみ用いて生産性を割り出します。

アウトプットする量が多いほど、生産性が上がりやすくなります。

付加価値

付加価値は、労働手段を用いて新たに生まれた価値を意味しています。企業が商品やサービスを販売した際、結果的に利益として会社に入る部分に当たります。その計算方法は以下の2種類です。

  • 控除法

「控除法」は簡単に扱えるため一般的に使用されている計算方法です。ここでの付加価値は、売上高から外部で購入した分の費用を差し引きしたものであると捉えます。外部購入分の価値とは、販売商品の材料費や購入部品費、商品を店頭に陳列するまでの運送費などを指します。

付加価値=売上高- 外部購入価値」の式で計算することができます。

  • 加算法

「加算法」は、付加価値は製造過程で段階的に付与されるものだという考え方に基づいて算出する点が特徴です。

付加価値=経常利益+人件費+賃借料+減価償却費+金融費用+租税公課」で割り出されます。

生産性を分析する指標と計算式

7つの指標と計算式を紹介します。

付加価値労働生産性

労働者一人当たりが生み出した付加価値がどれほどあるかを表します。一人当たりに限らず、部署単位や会社という1つのチームそれぞれが作り出した付加価値を算出する際にも利用されます。限られた人数でどれだけ効率的に利益や成果を生み出せたかを数値化でき、計算結果の数値が大きいほど、生産性は高いといえます。

付加価値労働生産性=付加価値額÷労働者数

さらに、労働時間も掛け合わせて計算することで、1時間当たりの生産性を算出することも可能になります。人員不足や人員の過剰投与に気づくきっかけになる指標になるでしょう。

物的労働生産性

労働者一人当たりが販売、あるいは作り出した商品やサービスの数量を数値化します。以下のような計算式で算出され、物量に着目している点が特徴です。

一人当たりの物的労働生産性=生産量÷労働者数

こちらも労働時間を含めて計算すると単位時間当たりの生産性を算出できます。業務効率がどの程度かを可視化できる指標であるため、業務フローの中のボトルネックを見つけ出すきっかけになり得るでしょう。業務効率化ができればより高い生産性も実現できます。

労働分配率

付加価値に占める人件費の割合を表す「労働分配率」は、会社の資産の一つである人材にかける金額が適正かどうかを判断するために有効な指標です。人件費は会社の成長に欠かせない投資であると同時に企業にとってはコストでもあるので、高すぎても低すぎても生産性向上は期待できません。

労働や成果に見合った給与や福利厚生を設定し、労働分配率を適性に保つことが重要です。

労働分配率=(人件費/付加価値)×100

労働装備率

従業員一人当たりの設備投資額を算出できます。土地、建物、設備機械などの固定資産が従業員一人につきどのくらいの金額で分配されるかを示しています。これによって設備投資の合理性や妥当性を評価することが可能になり、数値が高いほど自動化や最新化が進んでいるといえます。

ただし、大規模な工場を持つメーカーとパソコンだけで業務が完結するIT企業とでは、数値に差が出ます。業種の適正値を見極めて自社の分析をする必要があるでしょう。計算式は、以下の通りです。

労働装備率=有形固定資産÷従業員数×100

売上高付加価値率

売上高に対してどれほどの付加価値があるのかを明らかにします。企業が商品やサービスを通して新しく生み出した成果を基準に、企業の収益率を可視化することができる指標で、以下のように表されます。

売上高付加価値率=付加価値÷売上高×100

総資本回転率

総資本に対する売上高の割合を見る指標です。会社の資本がどれだけ有効活用されているかを評価できる点が特徴で、以下の計算式で求められます。

総資本回転率=売上高÷総資本×100

回転率が悪い場合、商品の在庫が過剰に残り、保有している資本が無駄になっていることがあります。

有形固定資産回転率

企業が保有している資産をどれだけ有効に活用できているかを測ることができます。数値が高いほど設備や建物単位での生産性が高いと判断でき、その計算式は以下のとおりです。

有形固定資産回転率(回)=売上高÷有形固定資産×100

生産性の目安

設備投資額や必要な人員数などは業種や業態によって異なるため、生産性となるような数値は設けられていません。ただ、業種による生産性の目安は、中小企業庁が発表している「中小企業白書」から確認することができます。

例えば、2020年の宿泊や飲食を伴う飲食業における付加価値生産性の平均値は労働者一人当たり327万円です。小売業であれば548万円、情報通信業であれば851万円と幅広く分布しています。

もちろん同業種の企業内でも会社規模などによって差はあるため、あくまでも目安として捉えるとよいでしょう。

生産性分析の活用方法

生産性分析を行うと、会社の現状把握が可能になります。会社が保有している人的資源や固定資産、資本などの要素がどれだけ効率的に運用できているか数値化することでそれまで気付けなかった改善点が見つかる可能性もあります。

生産性分析は一度で終わらず、年度ごとや月ごとなど定期的に実施することが重要です。定点観測によって業績の変化との関連性を確認でき、さらなる生産性向上が期待できるでしょう。

まとめ

激化する国際競争や労働人口の減少の中で企業が成果を生み出し各企業が生き残るためには、生産性向上への取り組みが欠かせません。企業にとって重要な課題として注目されている今、これからも中小企業が生き残っていくためには、生産性分析を実施して改善策を実行していくことが求められます。

生産性を測る指標は複数あるため、自社の状況に合わせた指標を正しく設定してから生産性分析を行いましょう。