生産性向上の方法とは?具体的な取り組みと成功事例を解説
企業として成長を続けるためには、生産性の向上が必要不可欠です。しかし今の時代は人材の確保が難しいため、限られた人数で効率よく業務を回さなければいけません。
今回は生産性向上を目指すための取り組みや、企業が実行した成功事例についてご紹介します。
生産性向上とは
生産性とは、投資したリソース(人材や資金など)に対してどのくらいの結果を得たのかを表したものです。リソースが少ない、あるいは高い結果だと生産性は向上します。生産性と似た言葉で「効率性」があります。効率性とは作業のムダを省き、その分の労働時間を削減することです。そのため業務の効率化はあくまで「過程」であり、生産性の向上が「最終的な目標」といえます。「生産性」と「効率性」は似ているようでまったく意味が異なります。では企業が生産性向上を図る目的とは何でしょうか。
生産性向上の目的
企業が生産性向上を図る目的として、以下の2つがあげられます。
- 人材の減少対策
- 競合に対しての優位性の確立
高齢化社会が進んでいる関係で、労働人口も次第に減少してきています。人材の流動性も高くなっており、長期間企業に定着することは少なくなってきています。限られた人材で企業の成長につなげるためには、生産性の向上が必要不可欠です。今は人材の「量」より「質」が求められる時代となっています。
また競合となる企業は世界中に数多くありますが、日本の企業は決して優位性が高いわけではありません。時代の流れに乗ってニーズの変化に対応するには、競合に対して優位的な立場を確保する必要があります。優位性を確立するためには、企業が確保しているリソースをうまく活用して生産性を高めていくことが大切です。
生産性向上のための取り組み事例
生産性向上の目的について説明しましたが、実際にどのような取り組みを行えばいいのかわからない方もいると思います。今回は5つに分けて生産性向上のための取り組み事例と方法を説明します。
- 個人業務の可視化
- 業務の自動化と標準化
- 業務の断捨離の基準を明確化
- 従業員のスキルアップ
- 柔軟な労働時間
個人業務の可視化
生産性を高めるためには、従業員がそれぞれ行っている個人業務を可視化することが大切です。各業務の手順や進行度を従業員しか把握していないと、最終的な目標が不明確となります。細かい作業となってしまいますが、1つ1つの業務の流れについて把握することからはじめましょう。その際に従業員と協力して、業務の流れを書き出してもらうのもいいでしょう。
書き出しが完了したらその内容を確認し、ムダな業務があるか、効率化できる業務があるかを検討しましょう。業務を細かい部分まで可視化して管理することで、生産性を高める方法が明確化しやすくなります。またそれ以外に、従業員の数日〜1週間単位のスケジュールを確認し、業務の比重を分析することも効果的です。
業務の自動化と標準化
業務の自動化は企業の生産性向上のためには欠かせないものです。容易に業務を自動化できるツールとして注目されているのがRPAです。RPAとは「Robotic Process Automation」の頭文字をとった略語で、ロボットを活用して自動化を行うテクノロジーとして多くの企業に活用されています。RPAによりルーチンワークに近いノンコア業務を自動化すれば時間短縮につながります。日常業務として行うノンコア業務にリソースを割くことは生産性が低下する原因となるため、RPAの活用でコア業務に集中できるのは大きなメリットです。
また業務の自動化と同様に大切なことが、業務の標準化です。業務の標準化とは「従業員の誰が行っても同一の結果が出る業務」のことを指します。業務を標準化できないと属人化する部分が増えてしまい、特定の従業員がいないと仕事が進まなくなる可能性があります。そのために用意しておくべきものが、業務マニュアルです。マニュアルを参照して誰でも業務を行える体制を整えておけば、属人化している部分もなくなり生産性向上につながります。マニュアルは新しい人材の教育や業務の引き継ぎなど、さまざまな場面で活用できます。
業務の断捨離の基準を明確化
生産性を高めるためには、不要な作業を省いてムダな時間を短縮させる必要があります。個人業務の可視化ができたら、次第に非効率な業務、ムダな業務などが浮き彫りになっていきます。その段階になったら業務の断捨離を行いましょう。不要な業務は排除し、非効率な業務は自動化したり、他の業務と関連づけたりすれば生産性の向上につながります。
ここで注意したいのが、やみくもに業務時間を減らすことと生産性が向上することはイコールではないということです。ムダを取り除くには、以下の点を意識してみましょう。
- 必要性がない業務か
- ツールの活用で効率が高まる業務か
- 業務の流れを簡略化できるか
自社の方針にあわせて断捨離の基準を作っておくことも大切です。また個人が抱えている業務の偏りにも注目してみましょう。業務を見直しても、従業員ごとに抱えている業務の量が異なる場合もあります。1人1人のマネジメントも生産性を高めるきっかけになります。
従業員のスキルアップ
RPAによる業務の自動化だけでなく、従業員のスキルアップも生産性を高めるうえで大切なポイントです。従業員のスキルアップを図り労働時間内でのパフォーマンスを高められれば、生産性の向上につながります。生産性につながるスキルは以下のとおりです。
- ITスキル
- PCスキル
- ヒューマンスキル
- 資料作成スキル
このようなスキルを伸ばしておけば、スキルを持っていない従業員と比較して業務の時間も質も大きく変わります。また対人でのコミュニケーションコストを最小限におさえられるようなスキルも、生産性に直結します。従業員のスキルを伸ばすことは簡単なことではなく、費用や時間もかかってしまいますが、それに見合ったリターンも大きいといえるでしょう。そのためには企業内での勉強会や研修を積極的に行い、従業員がスキルアップできる体制を作りましょう。
柔軟な労働時間
従業員のモチベーションを高めることも生産性に大きく影響します。高いパフォーマンスを発揮してもらうためには、従業員が気持ちよく働ける環境を作ることが大切です。その環境作りの1つとして、柔軟な労働時間の設定があげられます。昔の時代と異なり、現在はテレワークやフレックスタイム、時短勤務といった勤務形態の多様化が進んでいます。「仕事は9時から17時まで」という概念は薄まりつつある今だからこそ、労働時間の見直しを行ってみましょう。労働体制の融通がとれず、雰囲気の悪い職場環境になってしまうと、従業員の退職につながる危険性もあります。
まとめると、生産性向上のための取り組みは以下のとおりです。
- 個人業務の可視化
- 業務の自動化と標準化
- 業務の断捨離の基準を明確化
- 従業員のスキルアップ
- 柔軟な労働時間
生産性を高めたい企業は、まずこの5つの取り組みからはじめてみましょう。
生産性向上を成功させた企業の事例
こちらでは実際に生産性向上に成功した3つの企業の事例を紹介します。
株式会社サイバーエージェント
幅広いIT事業を手がけているこの企業では、チャットツールを導入することで生産性向上に成功しました。株式会社サイバーエージェントの今までの悩みは、メールを使用して具体的な説明を行ったり、解決策のアドバイスを行ったりする際に手間がかかることでした。その悩みを解決するために、よりカジュアルにやり取りができるようなチャット機能を搭載したツールを導入。その結果コミュニケーションにかかる業務の大幅な短縮が可能となり、集中すべき業務の時間を確保できるようになりました。
日本航空株式会社
日本航空株式会社では、業務の見直しで長時間労働となる原因を取り除き、生産性向上に成功しています。取り組み内容として、「20時には退社する」というルールを作りました。もう1つは企業に設置している固定電話は撤去し、Wi-Fi環境を整えたうえで従業員それぞれにスマートフォンを支給。この取り組みで残業を減らすとともに、従業員の勤務形態の選択肢を広げられるように環境を整えていきました。その結果時間外労働が減少し、従業員の満足度も高くなりました。
株式会社日立マネジメントパートナー
株式会社日立マネジメントパートナーではRPAの導入で生産性向上に成功しました。今までの悩みとして、企業が増えるごとにノンコア業務の処理が間に合わなくなることに頭を抱えていました。そのためRPAを導入した結果、ノンコア業務にかかる時間が短縮しコア業務へのリソースを十分に割けるようになりました。生産性に直結しないような業務にはRPAが効果的だということを、あらためて実感できる事例といえるでしょう。
まとめ
企業の生産性を高めるためには、業務全体を見直すだけではなく、従業員1人1人のマネジメント管理も大切です。また働きやすい環境作りも生産性に直結することから、業務以外にも視野を広げてみることもおすすめです。企業として今後も成長したい方は、この記事を参考にして生産性向上に努めてみましょう。