離職票とは?離職票にまつわるルールや注意点を徹底解説!よくあるトラブルも紹介
退職後の生活の支えとなる失業給付(失業手当)を受けるには、離職票が必要です。離職票の交付が遅くなるほど、失業給付申請ができず受給できない期間が生まれてしまいます。
今回は、離職票のもらい方、どのような場合に必要なのか、その他の書類との違いやトラブル回避方法などを解説します。
離職票とは
「離職票」とは、従業員が会社を退職する際に会社側が発行する文書のことです。
書面には、
- 雇用期間
- 退職に至った理由
- 退職した日
などが記載されています。
また、手続きが正式に完了したことを証明する重要な文書でもあります。
離職票は、従業員が新しい職場に就く際や就職活動を行う際に、過去の雇用状況を証明するために提出されるほか、失業手当を受け取るために必要な書類です。
企業は退職後10日前後までに、本人に離職票を届けなければなりません。遅れると、退職者とのトラブルに発展する可能性もあるため注意しましょう。
離職票が必要なケース
離職票は個人のそれまでの雇用状況を証明する重要な文書です。そのため、さまざまな公的機関や個人的な手続きで必要とされます。
必要となるケースは以下の通りです。
- 転職時
新しい職場での雇用手続きにおいて、以前の雇用状況を証明するために必要となるケースがあります。転職先から提出を求められるので、企業は従業員の離職票を用意しておきましょう。
- 雇用保険の受給時
離職した後に失業手当(基本手当)を受け取りたい場合、管轄のハローワークに提出して受給申請をします。申請は離職日の翌日から可能です。
離職票はいつ、どこから届くのか
離職票は通常、労働者が雇用契約を終了した直後に手渡されるか、郵送されることが一般的です。
では具体的にどのタイミングで届けられるのでしょうか。
- いつ届くのか
退職者が離職票を受け取るのは、退職してから1ヶ月ほど経った頃が一般的です。
企業は発行に必要な2つの書類を管轄のハローワークへ提出します。それから10日ほどかけて企業へ離職票が交付されます。そしてようやく企業から本人へ書類が送付されるため、時間がかかるのです。
ただし例外もあります。届け出が有人窓口で為されたときは即日受け渡しされるため、本人に届くまでの期間は短くなります。
- どこから届くのか
離職票を作成するのは、企業の所在地を管轄するハローワークです。作成後の書類は企業へ届き、その後企業から退職者本人へ届けられます。
発行に関しては、企業ごとにルールが設けられている場合があります。具体的なスケジュール感は人事部門に確認することが重要です。
離職票の発行手続きの流れ
離職票の完成まではいくつかの過程を踏む必要があるため、どのタイミングで何をすべきか確認しておくことをおすすめします。
具体的な流れを紹介します。
1.雇用保険の加入状況を確認
失業手当を受給するためには、雇用保険へ加入していることが必須条件です。加入していなければ申請しても手当が認められないため、あらかじめ加入状況を知っておきましょう。
2.退職者が発行を依頼
退職者が発行を希望する場合、雇用主や人事担当者は速やかにその依頼に対応し、離職票発行準備を進めます。
ただし一部の企業では、依頼がなくても発行手続きに入るケースがあります。
3.企業がハローワークに申請
企業は管轄のハローワークに「離職証明書」と雇用保険の「資格喪失届」を提出します。
4.離職票が交付される
申請後、2種類の離職票が企業宛てに交付されます。これらの書類には雇用履歴や離職理由が記載されています。
5.企業が退職者に離職票を送る
発行された書類は、企業から退職者に送られます。一般的な送付方法は郵送や手渡しです。
離職者がこれらの書類を受け取ることで、その後必要な手続きや給付の申請が可能になります。
離職票の種類
離職票は以下の2種類あることをご存じでしょうか。
- 雇用保険被保険者離職票-1
- 雇用保険被保険者離職票-2
両者には違いがあり、使用用途も異なるため、どちらも紛失しないように注意しましょう。
それぞれどのような役割を持つのかを解説します。2つの違いを正しく認識して、滞りなく手続きを済ませましょう。
雇用保険被保険者離職票-1
簡易的に「離職票-1」と表記されます。用途は、「失業手当」の振込先となる金融機関を指定するためです。
カードタイプの書類であり、本人の記入のみならず金融機関の確認印が押印されている必要があります。
雇用保険被保険者離職票-2(離職証明書)
「離職票-2」と簡易表記され、「離職証明書」とも呼ばれます。これには、雇用契約を解除した従業員の離職に関する詳細情報が記載されています。
具体的には、
- 離職者の基本情報
- 雇用契約の終了日
- 離職理由
- 給与
などがあります。
詳細に記載されるのは、失業手当の支給額や支給開始のタイミングや期間が離職理由や給与額によって変わるからです。
そのため、適当に記載せずにできるだけ正確かつ具体的に記入しなければなりません。
離職理由と離職区分
離職票には、会社を辞めるに至った理由を記載しなければなりません。また、その記載内容はある程度決まりが設けられているため、間違いのないように注意して進めましょう。
具体的には、以下の13通りに区分されています。
- 1A:解雇(1B、5E以外)
- 1B:天災等の理由で事業の継続が不可能になったことによる解雇
- 2A:特定雇止めによる離職(雇用期間3年以上雇止め通知あり)
- 2B:特定雇止めによる離職(雇用期間3年未満等更新明示あり)
- 2C:特定理由の契約期間満了による離職(雇用期間3年未満等更新明示なし)
- 2D:契約期間満了による退職(2A、2B、2C以外)
- 2E:定年、移籍出向
- 3A:事業主からの働きかけによる正当な理由のある自己都合退職
- 3B:事業所移転に伴う正当理由のある自己都合退職
- 3C:正当な理由のある自己都合退職(3A、3B、3D以外)
- 3D:特定の正当な理由のある自己都合退職(被保険者期間6ヶ月以上12ヶ月未満)
- 4D:正当な理由のない自己都合退職
- 5E:被保険者の責めに帰すべき重大な理由による解雇
一人ひとりの状況によって該当するものが異なります。さまざまなパターン分けがされているため、それぞれの状況に合わせて正しい理由を選ぶのは難しいかもしれません。
会社都合の理由としては、「倒産」「リストラ」「支店の廃止」「パワーハラスメント」などが挙げられます。
一方、自己都合だと、「個人のキャリアアップ」「結婚」「子育て」「介護」「懲戒解雇」などが当てはまります。
企業は、関係する法令や規定に基づいて、正しい理由を選択する必要があるでしょう。理由によって受給できる失業手当の内容が変動するので、間違った項目を選んでしまえば、離職者に不利益が生じる可能性があります。
離職票を書く方法と注意点
実際に記入するときの注意点を解説します。
離職票-1の書き方
離職票-1は、退職者が失業手当の給付を受け取る金融機関を指定するために使われます。
記入する箇所は、
- 個人番号(マイナンバー)
- 求職者給付等払渡希望金融機関指定届
の2つです。
マイナンバーは、窓口で本人が記入しなければなりません。先に記入してからでは失業手当の受給資格が認められない可能性があるので注意しましょう。
また、失業手当を振り込む口座は自由に選択できます。記入の際は、金融機関から確認印をもらう必要があるとされています。ただし、キャッシュカードや通帳が提示できれば必要ありません。
離職票-2の書き方
離職に関する情報を詳しく記載する離職票-2では、4項目記入する必要があります。
具体的には、
- 離職理由
- 具体的事情
- 本人の意思確認
- 署名
を記入します。
離職理由はあらかじめ定められた13区分の中から、適切なものを選択します。その上で、具体的な内容を記載しましょう。離職区分に間違いがなければ、「同上」や「自己都合による退職」「会社都合による退職」などと記載されます。
事実と異なるなら、本来の離職理由を記入することが求められます。
また、離職理由に異議があるかどうかを離職者本人が確認します。異議ありの場合もなしの場合も、本人が選択肢に丸を付ける必要があります。
すべて記入後、本人が間違いないことを認めたら署名を行います。
離職理由の確認が大切な理由
企業に雇用されていたことを証明する書類に、なぜ離職理由の記載が必要なのでしょうか。トラブルの元になりやすい点でもあるため、改めて認識しておきましょう。
多くの場合、退職者は転職先を見つけるまでの期間、失業手当の支給を受けます。支給条件は離職理由によって大きく変動するため、間違った理由で申請すると退職者のその後の生活に大きな影響を与えてしまいます。
変動するのは、支給を受けられる日数や支給開始日などです。会社都合の場合は長期間支給を受けられますが、自己都合の場合は期間が半分になるなど、その差は大きく感じられるでしょう。
失業手当の支給を受けるためには離職票が必要
具体的な離職票の扱いを紹介します。
受け取る期間
受け取りはできるだけ早く完了させて失業手当の申請をしたいのが、離職者の本音です。しかし、離職票の作成にはある程度日数を要するので、退職日当日に受け取ることはできません。
一般的には、退職した日を起点に、10日間から1ヶ月ほどの期間が必要となります。
受け取り方
発行するまである程度の期間を要することから、郵送で届くのが一般的です。中には、退職者が直接企業に出向いて、手渡しで受け取るケースもあります。
提出先
退職者が離職票を提出するのは、転職先企業やハローワークなどです。
失業手当の給付申請をするタイミングや、転職先への入社手続きのタイミングで必要となります。
離職証明書、退職証明書、雇用保険被保険者資格喪失届、雇用保険被保険者資格喪失届とは
よく似た書類について解説します。
離職証明書
発行者は離職者の前の雇用主(主に企業)です。正式には「雇用保険被保険者離職証明書」という名称であり、これをハローワークに提出することで離職票の作成依頼が可能です。
企業は作成を求められた場合、拒否できません。退職者の希望があれば速やかに交付する義務があります。
注意すべきは、提出期限です。退職者が雇用保険の資格を失った日を起点に、10日以内の提出がリミットです。誤って期限超過しないように、社内体制の整備やチェックの徹底を心がけましょう。
退職証明書
事業主が発行する書類の1つで、退職者が出たことを証明するものです。法的に効力のある公文書ではない点が特徴だといえるでしょう。公文書のように書式が定まっているわけではないため、企業によって書類の見た目などは異なります。
ただし記載する項目は、労働基準法第22条にてある程度決められています。
具体的な項目は、
- 雇用されていた期間
- 業務内容
- 当該事業における地位
- 賃金
- 離職理由
です。
発行義務のある公文書と違い、発行するタイミングは退職者から依頼されたときに限られます。例えば、離職票が手元に届く前に転職先から証明書を求められたケースなどに必要とされます。
雇用保険被保険者離職証明書
企業が離職票作成を依頼するために、2つの書類を提出します。そのうちの1つとなる書類です。退職者が出たときに作成して、管轄のハローワークに提出します。
記載内容は、
- 被保険者番号
- 事業者番号
- 離職日
- 離職理由
- 賃金額
などです。
企業は、できるだけスピーディに作成して、離職票の交付を受けるように心がけましょう。提出期限は雇用保険脱退日から10日以内とされています。
雇用保険被保険者資格喪失届
企業が発行する書類で、離職者が雇用保険に入っていた場合にのみ作成されます。発行するタイミングは、従業員の退職時だけではありません。就労時間が週20時間未満となったり、死亡したりしたケースでも発行が必要です。
記載内容は、
- 個人番号
- 被保険者番号
- 事業所番号
- 資格取得年月日
- 離職した年月日
- 喪失した理由
などです。
提出すると「確認通知書」がハローワークから交付されます。これも10日以内の発行が必要なので、その他の書類作成と並行してスピーディに進めましょう。
離職票にまつわるトラブルを防ぐ方法
3つのトラブルを紹介します。
離職理由に関するトラブル
最もトラブルに発展しやすいのが、離職理由です。
離職理由は「自己都合退職」「会社都合退職」「契約期間満了」の3つに大別されますが、どの理由かによって失業手当の金額や受給期間が変わります。離職理由が「特定受給資格者」や「特定理由離職者」に当てはまるかどうかも重要です。
万が一、会社都合なのに自己都合として退職理由を申請すると、支給される失業手当が少なくなってしまい、退職者に不利益が生じてしまいます。
そのため、離職理由に対して退職者は異議を唱えることが可能です。申し出によってハローワークは事実確認を行うことになり、追加の資料や書類提出を求められるでしょう。
トラブル予防には、離職理由を正確に把握することが欠かせません。書類作成後も、本人に詳細まで確認してもらうことが重要です。
離職票の発行時期に関するトラブル
退職者が失業手当を受け取るためには、離職票の提出が必須となっています。そのため、提出が遅れるほど失業手当の受給をスタートするタイミングが遅くなります。
転職先が未確定の場合、失業手当が生活費となる人は少なくありません。受給のタイミングによっては、十分な生活が送れなくなる可能性もあるのです。
雇用保険法において、企業は雇用保険の資格喪失日から10日以内の届け出をするよう決められています。期限間近になってから動き出すのではなく、早めの行動を心がけましょう。
助成金の受給に関するトラブル
ハローワークが企業向けに実施している助成事業において、離職票が関わるケースがあります。例えば、「キャリアアップ助成金」「トライアル雇用奨励金」などの助成金は、一定の条件をクリアした企業が対象です。
解雇された従業員や会社都合退職した従業員がいると、助成条件に合致せず、助成対象とならない可能性があります。助成金申請するための条件は細かく規定されているので、十分に確認することをおすすめします。
離職票の特徴について把握しておきましょう
退職者が出た際に交付される離職票は、退職者が正当に失業手当を受け取るためにも欠かせない書類です。離職票の発行手順や種類を正しく理解し、ミスなく記入することが重要です。
企業には速やかに必要な手続きを行い、退職者とのトラブルがないように対処することが求められます。
トラブル予防のためには、退職者への確認が欠かせません。特に、離職理由の選択には注意して発行準備を進めましょう。