シエスタ制度とは?導入するメリット・デメリットを解説
近年、日本においてもシエスタ制度を導入する企業が増えてきています。この制度は、従業員に昼休みに一定の時間を与え、リフレッシュや休息を取る機会を提供する試みです。
企業にとって従業員の健康と働きやすさに良い影響を与えると期待されており、 効果的に導入することで、生産性向上や従業員の満足度向上にも寄与する可能性があります。
この記事では、シエスタ制度とは何か、メリット・デメリット、国内外で制度を導入している国の事例などについて紹介していきます。業務効率を高めたい、従業員の満足度を高めたいという企業の担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
シエスタ制度とは?
そもそもシエスタとは、「長いお昼休憩」のことを指します。
生産性が高まるということから注目されており、この習慣を制度として取り入れる企業も増えてきています。
シエスタ制度について、詳しく見ていきましょう。
シエスタはスペインの習慣
シエスタは、スペインの伝統的な習慣であり、午後の仮眠のことです。この習慣は、スペインの気候や文化に根付いており、特に初夏の高温な地域で盛んに行われています。
スペインでは、昼食後に活動が一時停止し、人々は涼しい場所で休息をとることが一般的で、この時間は仕事から離れてリラックスし、体力を回復する大切な時間とされています。シエスタによって、疲労感やストレスが軽減され、心身のリフレッシュの促進が期待できます。
スペインの文化として根付いているシエスタは、生産性向上や健康面へのポジティブな影響が期待されており、最近では他の国でも注目されています。
しかし、シエスタの導入には環境や労働文化の適応が必要であり、それぞれの国や企業に適した方法で取り入れることが重要です。
シエスタは、忙しい現代社会において働き方改革の一環としても注目されており、労働者の働きやすさと生産性向上の両立を目指す取り組みとして、今後の展開が期待されています。
日本の企業がシエスタ制度を導入している目的
Googleなど世界的な大企業がシエスタ制度を導入し、業務の生産性が向上していることから、日本の企業もシエスタ制度を導入し始めています。
注目が集まる理由として、以下の2点があげられます。
・昼食後の眠気解消
昼食後に眠気に襲われたことがあるという方も多いでしょう。体内時計が正しく機能していた場合、午後2時くらいに眠くなるよう体のサイクルができています。
そのため、仮眠を取ることで昼食後の眠気により集中力が低下することを防ぎ、生産性の向上が期待できます。
・厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針2014」の発布
厚生労働省は、「健康づくりのための睡眠指針2014」を発布しました。この中で、「勤労世代は必要な睡眠時間を確保することが難しい」とし、「午後の眠気による仕事の問題を改善するのに昼寝が役に立つ」と記しています。
シエスタ制度におすすめ睡眠時間は30分以内
厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針2014」によると、以下の条件で昼寝をすると作業効率が改善するとしています。
・午後かつ早い時刻に昼寝を取る。
・ 30 分以内の短時間で済ませる。
このことからも、昼食後に短時間の休憩を取ることができるシエスタ制度は、効果的であると言えるでしょう。
シエスタ制度を導入する6つのメリット
シエスタ制度を導入することで、多くのメリットがあると考えられています。詳しく見ていきましょう。
①仕事に集中できる
集中力が切れてしまう原因の1つとして、長時間の労働、休息時間が短いことでの疲労などが考えられます。
シエスタ制度を導入することで、これらの問題を解消することにつながり、仕事の集中力を高めることが期待できます。
②睡眠不足が解消される
睡眠不足は、集中力が低下する1つの要因です。
仮眠を取ることで睡眠不足の解消へとつながり、生産性の向上へつながります。
③認知能力の向上
認知能力とは、記憶力・言語能力・判断力・計算力などのことです。
眠気が襲うと、これらの能力が低下しやすく、ミスが起きやすくなります。
どのような業務においても認知能力は必要な能力であるため、生産性の質を保つためにもシエスタは重要です。
④体力の回復
体力面での疲労も、集中力の低下にもつながります。
体力回復という意味においても、業務の間で一度休息を取ることは効果的と言えるでしょう。
⑤ストレス解消
睡眠は、ストレス解消にも効果的であると言われています。
一時的にストレスをシャットアウトする効果があり、身体だけでなく心のリフレッシュにもなります。
⑥企業への満足度
シエスタ制度を導入することは、単に昼休憩が長くなる、仮眠が取れるというだけでなく、働き方の選択肢を広げることもできます。
働き方の選択肢が増えることは、従業員の満足度につながり、結果として企業への満足度や信頼へとつながることが期待できます。
シエスタ制度を導入する3つデメリット
メリットが多いシエスタ制度ですが、デメリットもあります。
デメリットを把握した上で、導入を検討しましょう。
①夜眠れなくなる
昼寝を過度にすると体内時計が乱れ、夜に眠れなくなり睡眠不足になる可能性があるため、昼寝の時間を適度にコントロールすることが重要です。
昼寝はリフレッシュや疲労回復に役立つ一方で、長く寝すぎると夜の睡眠リズムが乱れ、入眠困難や浅い眠りにつながることもあります。
また、昼寝時間が長すぎると夜間の眠気が減少し、睡眠不足になる恐れもあります。したがって、昼寝は15~30分程度にとどめ、静かな場所で快適な環境を整えることが大切です。
また、昼寝後は体を動かす活動や気分転換を行うと目覚めがスムーズになります。バランスの取れた昼寝は日中のパフォーマンスや集中力の向上、良質な睡眠の維持につながるでしょう。
②頭痛が発生する可能性がある
昼寝をすることで、頭痛が誘発されることがあります。睡眠中は身体がリラックスし、血管が拡張するため、睡眠後には血流量が増えて強くなります。 この血流量の変化が頭痛を引き起こす原因となるのです。そのため、昼寝後に頭痛が起こる可能性があることを認識しておきましょう。
また、昼寝中に姿勢が悪くなったり、寝具や枕が適切でなかったりすると、首や背中の筋肉に負担がかかり、頭痛を引き起こす可能性があります。
他にも、昼寝の時間や長さ、睡眠の質にも関連して頭痛が生じることがあります。昼寝後に頭痛が起こる場合は、自身の睡眠環境や姿勢を見直し、適切な休憩時間や睡眠の質を確保しましょう。
③寝過ぎてしまう
睡眠時間が長すぎると深い睡眠に入り、目覚めが悪くなる可能性があります。朝起きた時に頭がすっきりしないと、仕事の効率も低下します。
睡眠は質と量のバランスが重要であり、長時間眠るだけでなく、質の高い睡眠を確保することを意識しましょう。睡眠の質を向上させるためには、日中の生活習慣にも注意が必要です。
規則正しい生活リズムを保ち、就寝前にリラックスできる環境を整えることや、適度な運動やストレスの管理も睡眠の質に影響を与えます。仕事の効率を高めるためには、適切な睡眠と規則正しい生活習慣を整えることが重要です。
シエスタ制度の導入方法・導入するポイント
シエスタ制度を取り入れる際の導入方法、導入のポイントについてもご紹介していきます。
仮眠環境を整える
仮眠を取る場所は人それぞれであると思いますが、どの場所においても仮眠環境を整えることを意識しましょう。
デスクで仮眠を取る場合は、姿勢が取りやすいようネックピローなどを活用しましょう。肩や首に負担がかかりにくくなるため、寝起きに頭痛が起こりづらくなります。
さらに、周りの音や光が入らないよう、耳栓やアイマスクなどを使用することも効果的です。
また、休憩スペースが設けられている企業もありますが、横になると眠りが深くなりやすいため、足だけ伸ばすなど工夫しましょう。
社内アンケートで可否を決める
従業員の生産性や働き方に課題がある場合は、シエスタ制度の導入を進めるべきかもしれませんが、現状の方法が適している場合もあります。まずは現状を知り、導入を検討しましょう。
また、シエスタ制度には、メリットもデメリットもあります。社内の上層部だけで導入の可否を決めるのではなく、実際に制度を利用する従業員の意見を聞くことも選択肢の1つです。
社内アンケートの活用も検討してみましょう。
退勤時間のリミットを決めておく
シエスタ制度の導入により、退勤時間が遅くなってしまうケースがあります。
退勤時間のリミットを決め、従業員の生活リズムが崩れたり、従業員への負担になったりしないよう、配慮することが重要です。
国内外でのシエスタ制度の事例
国内外で、どのようにシエスタ制度が導入されているのでしょうか。
導入事例について、みていきましょう。
日本
2011年に東日本大震災により電力危機が生じた際、電気使用量を抑えるために岐阜県庁でシエスタ制度が導入されました。
13時から15時に制度を導入し、2時間分の電力使用料を例年と比べ20%減らすことを目的としました。
アルゼンチン
アルゼンチンも真夏は気温が高いことなどもあり、シエスタの習慣が根付いています。また、昔スペインの植民地だった歴史もシエスタが根付く理由の一つのようです。
なお、多くの企業が午後1時から4時までをシエスタの時間帯として導入していため、一般的な業務時間は午前8時から12時と、シエスタの後の午後4時から8時となっています。
アルゼンチンでは、このシエスタの取り組みにより、労働者たちの生産性や健康面が向上しているとされています。
メリット・デメリットを理解した上でシエスタ制度を導入しましょう
シエスタは海外の一部の国では長い歴史のある習慣であり、現在でも根強く残っています。
また、GoogleやNASAなど世界的な大手企業においてもシエスタ制度は活用されていることや、政府もその効果を公表していることから、日本でも導入する企業が増えています。
残業が多い、真夏にはかなり気温の高い日が増えてきていることなどから、日本もシエスタ制度に適した企業が多いかもしれません。
シエスタをうまく取り入れることで、生産性の落ちやすい午後の時間帯でも作業効率が向上する可能性があります。メリットとデメリットを十分に理解した上で、制度の導入を検討しましょう。