コラム

人事関連でお役に立つ情報を掲載しています。ぜひご活用ください。

  1. トップ
  2. コラム
  3. 人材育成・マネジメント
  4. ストレスチェック制度とは?事前準備から導入後までの流れを解説

ストレスチェック制度とは?事前準備から導入後までの流れを解説

近年、社員のメンタル面の問題によって退職や休職が増加しているにも関わらず、日本においてはまだまだ未然に問題を防ぐためのアクションが不足していると言えます。

そんな中、ストレスチェック制度によって現状を改善しようとしている企業が増えてきました。ストレスチェックは労働者のメンタルヘルス状態を把握し、早期の問題解決や適切なサポートを行うための仕組みです。

導入にはガイドライン策定や従業員教育、プライバシー保護の配慮が必要ですが、従業員の健康と働きやすい環境の確保のためには必要なものです。

メンタルヘルス問題は現代の課題であり、ストレスチェックの導入は従業員の健康や組織の成長のために重要な取り組みと言えるでしょう。

本記事では、メンタルヘルス制度の目的、事前準備から対応までを詳しく紹介します。

ストレスチェック制度とは

労働者がメンタルヘルスの不調になることを防ぐため、平成27年12月から施行された制度です。

概要について、ご紹介していきます。

対象の労働者

厚生労働省は対象の労働者について、「常時使用するもの」と定めています。具体的には、以下の通りです。

【対象の要件】

  • 契約期間が1年以上
  • 1週間の労働時間が、通常の労働者の4分の3以上

上記いずれかの要件を満たす場合、対象となります。

なお、常時雇用者、直雇用のパート・アルバイトは対象者となりますが、事業者(社長、役員、派遣労働者など)は対象外となるため注意しましょう。

ストレスチェックの目的

ストレスチェックの大きな目的として、労働者のメンタルヘルスの不調を未然に防ぐことがあげられます。医師や保健師などがチェックを行い、検査結果を労働者へフィードバックすることで、労働者が自身のストレス状態を把握する機会を設けます。

また、検査結果をもとに職場環境を見直し、働きやすい環境を作ることも目的の1つです。なお、ストレスチェックの結果は、医師や保健師などから直接労働者本人に報告されます。

結果は個人情報のため、本人の同意がなく事業者など第三者へ伝えられることはありません。また、労働者が医師による面接指導を希望する場合、事業者は必要な措置を行うことが義務付けられています。

ストレスチェックの頻度

「労働安全衛生法」が改正され、労働者が50人以上のいる施設では、1年ごとに定期的にストレスチェックを実施することが義務付けられています。

また、具体的な内容も定められており、以下の項目について定期的な検査が必要です。

  1. 当該労働者の心理的なストレスについて
  2. 当該労働者の心身における自覚症状、心理的なストレスについて
  3. 当該労働者への職場内の支援について

これらの項目は、労働環境の改善と従業員の健康を促進するために重要な役割を果たしています。労働者の心理的な負荷の要因を理解し、自覚症状や心理的なストレスに適切に対応することは、労働者の幸福感と働きやすさを向上させる上で不可欠です。

また、職場内のサポートは労働者の健康やパフォーマンスに直結し、生産性や労働満足度の向上に寄与します。組織はこれらの項目に積極的に取り組むことで、労働者の心理状態を良好なものにし、健全な労働環境を確保することが重要です。

参考資料:厚生労働省|心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針

ストレスチェックの事前準備

ストレスチェックを実施する前に、事前準備を行いましょう。導入前にきちんと準備を行うことが、スムーズな実施のためには欠かせません。

以下のステップで準備を進めて行きます。

  1. 会社の方針や意図を社員にきちんと共有する。
  2. 事業所の衛生委員会などにおいて、実施方法について確認する。
  3. 決定事項を社内規定として明文化し、労働者に対して周知する。

それぞれの内容について、詳しく解説していきます。

会社の方針表明

ストレスチェック制度の実施にあたり、まず会社として方針を明確に表明する必要があります。「ストレスチェックの実施により、メンタルヘルス不調を未然に防止する」という目標を社員と共有しましょう。

方針表明には、情報を共有するためのツールや社内で使用している掲示板などの利用がが有効です。

以下は方針表明の例文です。

 「当社は、労働安全衛生法に基づき、ストレスチェック制度(「心理的な負担の程度を把握するための検査等」)を適切に実施いたします。

ストレスチェック制度を通じて、従業員のメンタルヘルス不調の発生を未然に防止し、働きやすい環境の構築に積極的に取り組んでまいります。」

ストレスチェックシートの項目

実施する際にはチェックシートを使用しますが、フォーマットの指定は特にありません。ただし、国が推奨する「職業性ストレス簡易調査票」という57項目の質問票があるため、それを活用することをおすすめします。

チェックシートの作成においては、労働者のプライバシー保護に十分な配慮を行い、個人情報の適切な管理を徹底します。また、質問項目の選定や回答方法のわかりやすさにも注意を払い、労働者が正確に回答できる環境を整えることが重要です。

なお、チェックシートに記載が必要な内容は以下の3つです。

  1. ストレスの原因に関する質問項目
  2. ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目
  3. 労働者に対する周囲のサポートに関する質問項目

参考資料:厚生労働省|ストレスチェック制度 導入マニュアル

従業員へ案内を行う

ストレスチェック実施にあたり、社員へ事前に案内を行います。実施を強制することはできませんが、必要性を理解してもらい実施を勧めましょう。

なお、ストレスチェック制度についてはプライバシーが保護されています。企業が労働者の秘密を不正に入手することは禁じられており、個人の情報を取り扱った者には法律で守秘義務が課されます。

会社としても、ストレスチェックの結果などの個人情報は、適切に管理を行うようにし、内容を使用する場合は十分に配慮しましょう。

ストレスチェック実施後の流れ

ストレスチェックを実施し、ストレス状態を把握した後の適切な対応が非常に重要です。社員に対して結果を伝え、ストレス状態の高い社員には適切なケアを提供する必要があります。

また、労働基準監督署への報告義務も企業に課されていますので、社員の状況については適切な報告を行う必要があります。

ストレスチェック実施後の流れについても、それぞれ確認していきましょう。

労働者のメンタルヘルスを守り、労働環境の改善に貢献するためには、ストレスチェックの結果を真摯に受け止め、必要な対策を実施することが求められます。

ストレスチェックの結果を伝える

ストレスチェックの目的の一つは、従業員自身が自身のストレス状態に気付くことです。ストレスチェックの結果を適切に伝えることで、自身の状態について認識する機会を提供しましょう。

結果に応じて、医師による面接が必要とされる場合もあります。対象の社員が面接を希望した場合、会社は医師による面接指導を実施しなくてはなりません。

従業員のメンタルヘルスを支援し、必要なケアや対応を提供することによって、健康で働きやすい環境を整えることが大切です。

高ストレス者の選定

高ストレス者の選定は、ストレスチェックの結果に基づいて行われます。選定条件は、以下のような要素から判断されます。

  1. 自覚症状の顕著さや一定の自覚症状の存在:ストレスの原因や周囲のサポートの状況が著しく悪い方
  2. 職業性ストレス簡易調査票の領域における評価点数:特に「心身のストレス反応」の評価点数の高さや、「仕事のストレス要因」や「周囲のサポート」の評価点数の著しい高さ

ただし、これらの条件に完全に該当しない場合でも、補足的な面談によって高ストレス者と判定されることがあります。この面談は、心理職の専門家によって実施され、ストレス状態の適切な評価と必要なサポートの提供を目的としています。

高ストレス者の選定により、早期のストレス症状の発見や将来的な悪化の予防が可能となります。適切な支援策や対策の提供を通じて、労働者のメンタルヘルスの改善や職場環境の整備に取り組むことが重要です。

高ストレス者の補足的面談

高いストレスレベルを持つ人を選定する2点の条件に該当しなくても、補足的な面談によって高ストレス者として判断されるケースがあります。

補足的面談は必要に応じて実施され、ストレスチェックの一部分として行います。実施する目的は、ストレス状態を適切に評価し、適切な支援や対策が提供されるようにするためです。

なお、医師、保健師、精神保健福祉士などの心理職の専門職が面談を実施し、その結果に基づいて判断が行われます。

労働基準監督署への報告

社内のストレスチェックに対する対応が完了した後は、労働基準監督署への報告を行いましょう。ストレスチェックと面接指導の実施状況に関しては、年ごとに規定の書式で報告する義務があります。

報告を怠ったり、虚偽の報告をしたりした場合は、罰則の対象となる可能性があるため、慎重に注意しましょう。

適切な報告を行うことで、企業は法令順守を確保し、労働環境の改善や労働者のメンタルヘルス支援に寄与することが期待されます。

ストレスチェックを導入する際の注意点

ストレスチェック制度を導入する場合、いくつか注意するべき点があります。社員が安心して制度を利用し、会社としても検査を有意義なものとするために、注意点を事前に把握しておきましょう。

個人情報の取り扱いに注意する

ストレスチェックで使用する調査表や面談指導の内容は、個人のプライバシーに関する情報です。実施者、実施事務従事者には守秘義務があるため、違反者には罰則が科せられます。個人情報の取り扱いには十分注意しましょう。

個人の同意なしに調査結果を取得できない

ストレスチェックの調査結果は、あくまで個人情報です。本人からの同意を得ずに、事業者は結果を知ることはできません。

調査結果を職場環境の改善に活かしたいというケースもあると思いますが、個人の同意を得た上で、はじめて事業者は調査結果を取得することができます。

チェックシートは5年間保管する

チェックシート、面接指導の結果は、事業所で5年間保管する必要があります。保存方法は、紙媒体、電磁的媒体のどちらでも構いません。なお、保存が必要な内容は、以下となります。

  1. 個人のストレスチェックのデータ(数値、図表などでまとめたもの)
  2. ストレスの程度(高ストレス者に該当するかどうか)
  3. 面接指導の対象者かどうか

なお、医師からの報告をそのまま保存することも可能ですが、以下の内容が記載されている必要があります。

  1. 実施年月日
  2. 労働者の氏名
  3. 面接指導を行った医師の氏名
  4. 労働者の勤務の状況、ストレスの状況、その他の心身の状況
  5. 就業上の措置に関する医師の意見

参考資料:厚生労働省|ストレスチェック制度 導入マニュアル

ストレスチェック制度実施前に導入の流れについて理解しましょう

ストレスチェック制度は、労働者がメンタルヘルスの不調になることを未然に防ぐための制度です。

自身のストレス状態を客観的に判断することは難しく、制度を利用して自身の状態を把握することは非常に重要だと言えるでしょう。

強制的に会社が社員に対して実施することはできませんが、必要性を理解してもらうことで、社員にとっても会社にとっても有意義なものとなるはずです。

企業は、目的や実施の流れ、プライバシーに対する配慮、注意点など、実施前に十分理解した上で導入して行きましょう。