スキル管理システムとは?スキル管理表や社員の能力管理ツールと作成手順を紹介
スキル管理表とは、業務上必要なスキルを洗い出し、社員がどのくらいのスキルを持っているかを一覧にし可視化した表のことです。そもそもスキル管理表とは何なのか、そして導入する目的や詳しい手順を、本記事では紹介いたします。
また、そのスキルを効率よく管理できるシステムについても紹介します。
スキル管理システムとは?
スキル管理システムとは、社員の資格や経験、技術や能力といった仕事にまつわるスキルを可視化することで、社内検索を簡単にしたり、共有することができるシステムのことです。
スキル管理システムの主な機能
- 保有している資格、能力や経験プロジェクトについての登録・管理
- 社員のスキル検索
- スキルの可視化や共有、それによるプロジェクトへのアサインシミュレーション
- 社員同士のコミュニケーション促進
- 評価シートや1on1面談の記録の管理、人事評価
- 満足度アンケートなどモチベーション促進
- eラーニングシステムと連携した人材の育成
スキル管理システムのメリット
スキル管理システムを導入することによって得られるメリットを紹介します。
①スキル管理業務の効率化
社員が増えてくるにつれて、Excelの管理だけでは追い付かなくなってきます。また、社員の更新作業やExcelの編集・修正など時間がかかってしまいます。
しかし、スキル管理システムを利用することによって、スキルや資格の管理のみならず、人事評価やプロジェクトの経験などあらゆるデータを検索・確認することができます。また、フォーマットの編集や修正なども必要ないので、担当部署の工数を減らすことができます。
社員にとっても、スマホからの回答ができるようになるため、手軽さからより多くの情報収集ができるようになります。
②プロジェクトへのアサイン、人材配置の最適化
クライアントからの要望で必要なスキルを持った人材を簡単に検索し、アサインすることができるようになります。また、組織のバランスに留意しながら人事異動をおこなったり、得意分野を伸ばすための配置転換の提案をすることができるようになります。
複数の条件を掛け合わせた検索をすることによって、Excelでは実現することができなかった検索や、漏れがなくなり、リスト化もスピーディーにすることができます。
③人材情報の活用
Excelにまとめられた情報は、公開範囲を限定していることがほとんどでせっかく収集した情報が活用されません。
スキル管理システムを入れることによって、必要な情報のみを公開設定できるため、スムーズかつ安全に共有が可能になります。そのため、Excelの管理に比べ人材情報の活用促進に繋がります。
④社員育成の促進
社員のスキルや能力の情報を一元管理することによって、キャリアプランの作成が容易になります。特に、伸ばしてほしいスキルや歩んでほしいスキルを、データを基に提案することができます。
そのため、上司・部下の面談もスムーズになり、指導も的確になります。また、システム上から人材育成・研修計画を通知することができます。
⑤監査対応の効率化
品質マネジメントシステムの国際規格であるISO9001のスキルマップ(力量表)や顧客監査に対応するための、管理業務を効率化することもできます。
スキルマップでは、社員の力量を可視化し、不足している部分の教育・訓練を行いその内容の記録を記入する必要があります。この作成には膨大な作業と時間が必要です。そのため、なかなか活用されず形骸化してしまっている会社も多く存在しています。
スキル管理表(スキルマップ)とは
スキル管理表とは、業務上必要なスキルを洗い出し、社員がどのくらいのスキルを持っているかを一覧にし可視化した表のことです。スキル管理表を理解するために、3つの項目に分けて説明します。
- そもそもスキルとは
- スキル管理表の定義
- スキル管理表の例
以下で、それぞれの項目について詳しく説明します。
①そもそもスキルとは
「スキル」とは、業務で用いるビジネス能力のことを指します。実務で必要なエクセルスキルやスライド作成スキルはもちろんのこと、英会話能力や自己マネジメントスキル、コミュニケーション力など、業務に直接関係はなくても、業務上必要とされる能力を「スキル」と呼びます。
②スキル管理表の定義
スキル管理表とは、①で挙げた業務上必要な「スキル」を洗い出し、社員がどのくらいのスキルを持っているかを一覧にし可視化した表のことです。スキルマップと呼ばれることもあります。
スキル管理表を作成することで、
- 社員がどのスキルを持っているか
- スキルの習熟度はどれくらいか
- それぞれの社員がスキルを発揮できる部署はどこか
- 不足しているスキルは何か
- 社員を今後どう育成すればよいか
などが一目でわかります。
また一人一人のスキルだけではなく、組織全体の人員配置のバランスやスキル総量も見えるため、部署ごとに人材の偏りがある場合、補充の優先度が適切に分析できます。例えば業務上必要な専門的スキルを習熟した人材が部署に一人しかいないなど、潜在リスクも可視化されます。
③スキル管理表の例
スキル管理表は「業務上必要なスキルを詳細に分類し、項目別にその社員がどれくらいのレベルで業務を遂行できるのか、数字や記号などで評価できるように一覧になっているもの」が一般的です。
以下が、スキル管理表の一例です。
スキル管理表導入の目的
スキル管理表導入の目的は大きく分けて3つあります。
- 各社員のスキルをわかりやすく可視化すること
- 社員に合ったスキル強化
- 業務改善の具体策の明確化
以下で、スキル管理表導入の目的について紹介します。
①各社員のスキルをわかりやすく可視化すること
スキル管理表を使うと、各社員のスキルが可視化されます。
- 誰がどのようなスキルを持っているか
- 習熟度はどれくらいか
- そのスキルをどう業務に活かせるか
- 新規事業を立てる際、誰に何ができるか
といった指標になり、業務を効率化することが可能です。
そしてスキルの可視化は、社員や組織全体の弱み・強み分析にも役立ちます。スキル管理表を用いることで、社員・組織の弱みを正確に把握し、人材育成や研修などの参考にすることで、組織のレベルアップが可能になります。
②社員に合ったスキル強化
部署や役職によって、業務上必要なスキル、伸ばすべきスキルは異なります。
部署や役職に応じたスキル管理表を作成することで、その部署・社員がどんな弱みを持っているのかを把握し、部署や社員に合った適切な人材育成や研修ができるようになります。
③業務改善の具体策の明確化
スキルマップを作成することにより、その組織や部署でボトルネックとなっているポイントを分析することが可能です。個人のスキルを可視化して弱みを把握し、人材育成などの具体策を明確化することで、組織全体の業務改善・レベルアップも可能です。
スキル管理表作成の7つのメリット
スキル管理表を作成するメリットは7つあります。
- 業務の効率化ができる
- 組織や個人の弱みが一目瞭然になる
- 適切な人材配置が可能になる
- 適切な能力評価が可能になる
- より効果的な人材育成の計画が立てやすくなる
- 社員のモチベーション増加につながる
- リスク管理が可能になる
以下で、それぞれのメリットについて詳しく紹介します。
①業務の効率化ができる
スキル管理表を個人だけでなく組織全体で共有することで、部署ごとの問題点・目標が具体的に見えてきます。その問題点を正確に分析し、それを解決できるような具体的な目標を立て行動することで、業務の大幅な効率化ができます。
②組織や個人の弱みが一目瞭然になる
社員一人ずつのスキル管理を行い弱いスキルを把握することで、個人だけでなく組織全体の弱みも一目瞭然になります。分析しにくい組織の弱みも、スキル管理表を用いることでわかりやすく可視化され、組織の弱みを解決するための具体策も立てやすくなります。
③適切な人材配置が可能になる
個人のスキルを適切に把握することで、個人・組織の双方に合った適切な人材配置・人事異動が可能になります。新規事業を立てる際も、必要なスキルを持った人材を的確に探し、配置できます。
④適切な能力評価が可能になる
基本的に評価は社員からは見えにくく、また管理職が社員一人一人のスキルを正確に把握し評価するのは難しいです。
スキル管理表を作成し社員と共有することで、その社員は自分がどのような理由でどんな評価を受けているのかを公平に知ることができます。また、管理職も評価基準が明確化されることで、適切で公平な評価をすることができます。
⑤より効果的な人材育成の計画が立てやすくなる
各社員の様々なスキルを可視化することで、組織や部署に足りていないスキルを把握し、適切な教育を適切なタイミングで行うことが可能です。また組織が強化するべきスキルの優先順位をつけることで、長期的な人材育成計画も立てやすくなります。
⑥社員のモチベーション増加につながる
スキルを公平・正確に評価されることで、社員のモチベーションアップにもつながります。また社員は自分のスキルを客観的に把握できるので、学ぶ意欲・向上心も増加します。
それは結果的に、社員のスキルアップ、組織のレベルアップへとつながります。
⑦リスク管理が可能になる
スキル管理表を作成し組織のスキルを可視化することで、今後のリスク管理も可能になります。例えば、専門性の高い重要なスキルを持っているメンバーが部署に一人しかいない場合、その人が休暇を取ったり突然休職・退職をしてしまうと業務が回らなくなってしまいます。スキル管理表を作成し組織のスキルを可視化することで、このようなリスクを人材配置を変えるなどして事前に防ぐことができます。
スキル管理表の作成から運用までの8つの手順
スキル管理表を作成して運用するまでには、8つの手順があります。
- スキル管理表を作成する目的を明確化する
- 作成責任者を決める
- スキル管理表の項目・階層を決める
- 評価レベルを設定する
- テスト導入をし、現場のフィードバックを反映させる
- マニュアルを作成する
- 社員一人一人のスキル管理表を作成する
- 組織への定着化
以下で、8つの手順を詳しく紹介します。
①スキル管理表を作成する目的を明確化する
なぜスキル管理表を作成するのか、どのように活用するのか、何を改善したいのかなど、目的を明確化します。目的の明確化は、8つの手順を進めるうえでとても重要になります。
②作成責任者を決める
スキル管理表を誰が作成するのかを決定します。組織全体のスキル管理表を社長が作成するのか、各部署ごとのスキル管理表を部署の責任者が作成するのかは、組織や業態により異なります。
どのような役職・階層の人が作成するのかをまず決定し、作成責任者を決定します。
③スキル管理表の項目・階層を決める
スキルを管理する上での、スキル管理表に記載する項目・階層を分けて決め、評価基準を策定します。
厚生労働省では職業能力評価基準の策定について、以下のように述べています。
「職業能力評価基準では、仕事の内容を「職種」→「職務」→「能力ユニット」→「能力細目」という単位で細分化しています。そのうえで、成果につながる行動例を「職務遂行のための基準」、仕事をこなすために前提として求められる知識を「必要な知識」として整理・体系化しています。」
(引用元:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_07949.html)
ここでは厚生労働省の職業能力評価シートをもとに、以下の流れでスキル管理表のスキル項目を決めていきます。
(1)業務内容と、それに必要なスキルを洗い出す
まずは、詳しい業務内容と、それに必要なスキルを詳しく洗い出します。
ここでは厚生労働省のシートも参考にし、自社や各部署にも必要だと思われるスキルがあれば書き加えるとより効率的になるでしょう。
また同時に、自社や各部署に不要だと思われるスキルを取捨選択し削除したりもします。
<参考>厚生労働省:「職業能力評価基準の策定業種一覧」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04653.html
(2)階層を整理する
次に、業務の階層を整理し、必要なスキルを割り振るための階層を決めます。
行程を確認してグループ分けを行い、大きなグループから小さなグループへと細分化していきます。
厚生労働省の枠組みでは「職種→職務→共通能力ユニット→能力細目」のように細目化し、分岐ツリーを作成しています。
(3)スキルを分類する
(2)で細分化した階層に、洗い出しておいたスキルを振り分けます。
④評価レベルを設定する
評価レベルを、以下の2つの手順から設定していきます。
(1)評価の段階を決める
厚生労働省ではスキル区分を4段階に分け、「レベル1~レベル4」と分類しています。
自社に合わせて評価段階を増やしても問題ありませんが、段階を細分化しすぎるとかえってわかりにくく、評価がしにくくなります。
(2)段階ごとに自社の役職制度などと照らし合わせる
自社の役職制度などと(1)で決めた段階を合わせ、合わない部分があれば微調整を行います。
⑤テスト導入をし、現場のフィードバックを反映させる
④までで作ったスキル管理表を組織内でテスト導入し、組織内のフィードバックを回収します。
ここで不要な項目や不足している項目がないかを調査し、フィードバックを反映させ、スキル管理表の調整を行います。
⑥マニュアルを作成する
スキル管理表の使い方や見方、記入方法、評価基準など、見た人がスキル管理表を詳しく理解できるようなマニュアルを作成します。
マニュアルには、誰が評価するのか、誰がスキル管理表を管理するのかも制定し明記します。
⑦社員一人一人のスキル管理表を作成する
マニュアルまで出来上がった後は、評価をする人が社員一人一人のスキル管理表を作成していきます。
⑧組織への定着化
社員への通達・定着化を図ります。例えば、社宝で通知したり、会議で会議資料として実際に用いたりします。
スキル管理表活用のための4つのポイント
スキル管理表を活用する際には4つのポイントがあります。
- 評価者を明確にする
- 評価基準を適切に定める
- スキル管理表を定期的に更新する
- 評価後のアクションを決める
以下で、それぞれのポイントについて紹介します。
①評価者を明確にする
誰が社員の評価を行うのかを明確にします。管理職が評価を行う場合もあれば、担当が評価したものを管理職が確認する場合もあります。誰が評価するとどうなるのか、メリット・デメリットを分析し、社内状況に合わせて評価者を検討することが重要です。
②評価基準を適切に定める
評価基準は、個々の組織、役職や現場により異なります。厚生労働省ではレベルを4つに区切っていますが、自社に合った評価段階・評価基準を適切に定めることが重要です。
③スキル管理表を定期的に更新する
スキル管理表を定期的に更新します。業務内容が変わったり組織構造が変化すれば必要なスキルも変わるためです。半年ごとや人事異動ごとなど、更新するタイミングを決めておき、その都度スキル管理表を更新します。
④評価後のアクションを決める
スキル管理表での評価後、どのように弱みを強化し強みを伸ばしていくのか、人材育成の方針を検討します。複数名が同じ課題を抱えている場合、セミナーや勉強会を開く手もあります。
スキル管理表として使えるテンプレート
厚生労働省
スキル管理表として使える職業能力評価シートは、厚生労働省のサイトでダウンロードすることが可能です。
- 表紙(使用方法を記載)
- 評価シート(本体)
- サブツール(本体の詳細を記載)
ダウンロードファイルは、上記の3つに分かれています。
スキル管理表の機能を持つスキル管理システム
スキルナビ
タレントマネジメントシステム「スキルナビ」でも、スキル管理表の作成ができます。
経営者や人事担当だけでなく、マネージャーや一般社員も使える機能も充実しています。
また、システムもクラウド型で管理しやすく、汎用性の高いデータを出すことが可能です。
この機会にぜひスキルナビの導入をご検討ください。
⇒スキル管理システムについて詳しく知りたい方はこちら
スキル管理表は手軽に導入可能でとても便利!
この記事ではスキル管理表について紹介しました。
スキル管理表は、手順さえわかれば手軽に導入することができます。
まずはスキル管理表を作成する目的を明確にし、導入してみてください。
この記事がスキル管理表作成と運用のヒントになれば幸いです。