顛末書とは?始末書の違いや作成する際の注意点を解説
業務上のミスや事故は、どんなに注意深く行動していても避けられない場面があります。そのような時、事の経緯や原因を正確に伝える「顛末書」は、組織の信頼回復や将来の予防策の策定において、欠かせない役割を持っています。
しかし、顛末書を適切に作成するためのポイントは多く存在します。この記事では、顛末書の基本から、作成・提出の際のポイント、さらには事故やトラブルを予防するためのアドバイスまで詳しく解説します。
顛末書とは
顛末書は、業務上のミスやトラブルの経緯、結果、原因を詳細に記載する文書です。
具体的な事実を中心に、その後の対応や再発防止策もまとめられることが一般的です。この文書は、事の経緯を明確に伝えるためのものであり、関係者や上層部への報告、将来的な参考資料としての役割も果たします。
顛末書には、事実を正確に伝えることはもちろん、それに関する評価や分析、改善策の提案も求められることがあります。
始末書とは
始末書は、職場でのミスや過ちに関して、その内容や原因、反省点を記述する文書です。
これは、個人の行動や判断による問題に対して、その原因や背景、そして今後の改善策を明記することを目的としています。始末書は、自らのミスをきちんと記載し、それを正すための手段として記載する、もしくは上司や組織に対する説明の一環として作成されるものです。
顛末書と始末書の違い
顛末書と始末書、これら二つの文書は似ているようで異なる特徴を持っています。
顛末書は事実の経緯や結果を中心に記述し、ある出来事や事故の全体像を捉えるのに対して、始末書は個人のミスや過ちを反省する内容が中心です。顛末書は、関わる多くの要因や背景を網羅的に記述するのに対し、始末書は、特定のミスなどに焦点を当て、その原因や背景、そして改善策を具体的に記述します。
また、顛末書は組織全体や外部の関係者への報告としての意味合いが強いのに対して、始末書は個人の責任と認識を明確にするための文書としての意味合いが強いという点が異なります。
顛末書が必要なケース
顛末書は、特定の出来事や状況を詳細に記録し、関係者や上層部に報告するための不可欠な文書として位置づけられています。その活用シーンは多岐にわたりますが、必要となるケースを紹介します。
- 事故やトラブルの発生時
事故やトラブルが起きた際には、その原因や経緯、影響範囲を正確に記録することが求められます。これを通じて、関係者間での事実共有や適切な対応策の検討が可能となります。 - 重大なミスの発覚時
重大なミスが明らかになった場合、ミスの内容、原因、そして影響範囲を詳細に記述することが重要です。これにより、組織内での情報共有や今後の対策ができるでしょう。 - 社内外への報告が必要な時
企業や組織の運営において、外部の関係者や取引先、あるいは社内の他部署への報告が求められる場面があります。このような場合、顛末書を通じて情報を伝達することで、透明性の確保や信頼関係の維持、さらには協力関係の強化が期待できるでしょう。
顛末書は、これらのケースをはじめ、さまざまな状況での情報共有や記録のツールとして活用されています。正確な情報を記載することで、組織全体の問題解決や改善の取り組みを効果的に進めることが見込めます。
顛末書の内容
顛末書は、特定の出来事や事故の詳細を網羅的に記述するための文書です。そのため、内容は具体的かつ詳細であることが求められます。この章では、顛末書を作成する際に必要な項目とその内容について説明します。
問題の発生日時、発生場所
問題が起こった日時と場所を正確に記載します。
発生日時は「令和〇年〇月〇日〇時頃」という形式で、問題が発生した時間を具体的に記載します。場所の詳細に関しては、外部関係者への報告の際は施設名やビル名、社内で共有する場合は、関連するチームや部署名まで細かく明記しましょう。
どのような問題が起きたのか
事実を中心に、具体的に何が起きたのかを詳細に記述します。
この部分には、具体的な状況、関与した人物や物品、発生した結果や影響など、事故の背景や状況を明確にするための詳細な情報を記載します。発生から収束まで、時系列に沿って分かりやすく記載しましょう。
問題の原因
問題の背景や原因を客観的に分析し、記述します。
ここでは、単なる原因だけでなく、より詳細な要因や背景まで記載することをおすすめします。原因を明確にしておくことで、再発防止策の検討や今後の対応がスムーズに進められるでしょう。
被害や損害の規模
具体的な数字や詳細をもとに、被害の大きさや影響範囲について記載します。
物的損害、金銭的損失、人的被害、業務への影響などを明確にし、それらがどのような影響を及ぼすかについても記述します。
対応状況
問題発生後の対応や処置の経緯を記述します。
具体的には、問題発生直後の対応、関係者への情報共有の方法やタイミング、外部への報告や公表の有無、緊急時の対策や中長期的な対応策の状況などを詳細にまとめます。
再発防止対策
今後同様のトラブルを防ぐための対策を記述します。
たとえば、業務の見直し、チェック体制の導入、システムの改善や更新など、具体的な対策を列挙します。さらに、それらの策を実施する際のスケジュールや期限、担当者、必要なリソースや予算も明記することで、再発防止策の実現可能性や進捗管理を明確化することができます。
作成者の意見など
事故に対する考えや提案、意見などを自由に記述します。
この部分には、作成者が事故に対して感じ取った課題や、今後の業務改善のための提案、さらには他の関係者や組織全体に対するメッセージなどを具体的に記載しておきましょう。
ただし、感情的な表現や主観が強くなりすぎることなく、建設的な意見や提案を中心にまとめることが望ましいです。
顛末書を作成する際の注意点
顛末書を作成する際には、情報の正確性や客観性が求められます。また、第三者が読んだ際にも内容が理解しやすいように工夫することが重要です。
この章では、顛末書を作成する際の注意点について解説します。
5W1Hを意識する
顛末書を作成する際は「5W1H」を意識することが重要です。
5W1Hの手法は、情報を整理し、詳細に記述する際の手法として広く用いられています。「いつ、どこで、誰が、なにを、なぜ、どのように」を意識してまとめることにより、より正確にそのときの状況をまとめることができます。
箇条書きにする
情報を見やすく、分かりやすくするため、箇条書きにすることをおすすめします。
特に、多くの情報や複雑な内容を伝える際には、箇条書きを用いることで重要な情報を見やすく可視化することができます。
感情を記載しない
顛末書には、個人の感情は入れず、客観的な事実のみを記述しましょう。
特に、事故やトラブルの報告においては、感情的な表現や偏った見解が入ることで、誤解を招くリスクが高まることがあります。
顛末書に資料や書類を添付する場合は紐付ける
関連する資料や証拠を添付する際は、文中での記載内容と紐付けることが重要です。
具体的には、文中で特定の事実や状況を記載する際、その情報の根拠となる資料が明確になる形で紐づけを行います。
第三者が見て分かりやすい内容を心がける
顛末書を作成する際は、他の人が読んでも理解しやすい内容を心がけましょう。
専門用語の使用を避けるなど、一般的な言葉での記述を心がけることで、多くの人に情報を伝えることができます。また、文の構造をシンプルにして、重要なポイントを明確にすることも大切です。
顛末書を提出する際の注意点
顛末書の提出は、事故やトラブルの正確な情報を共有し、組織としての対応を進めるための重要なステップです。そのため、提出する際には、情報の正確性、そして文書の形式など、様々な点に注意を払う必要があります。
この章では、顛末書を提出する際の注意点とその詳細について解説します。
状況が落ち着いたらすぐに提出する
顛末書は状況が落ち着いた段階で、速やかに提出しましょう。
事故やトラブルの直後は、混乱が生じやすく、情報が錯綜するリスクが高まります。また、時間が経過することで、関係者の記憶が薄れたり、事実関係が曖昧になったりする可能性もあるため、できるだけ迅速に提出することが求められます。
上司に確認してもらう
顛末書を作成したら、誤解や不足がないか、上司に確認してもらいましょう。
顛末書は多くの場合、上層部や関係者に提出されるため、内容の正確性や完全性が非常に重要です。上司や経験者に一度確認してもらうことで、ミスや不足を未然に防ぐことができます。
添付資料の確認を行う
添付すべき資料が全て揃っているかのチェックを必ず行いましょう。
顛末書には、事実関係を裏付けるための関連資料や証拠が添付されることが多いです。これらの資料は、問題の詳細や背景を明確にする上で非常に重要となるため、必要な資料が確実に添付されているかの確認は念入りに行いましょう。
フォーマットを確認しておく
顛末書のフォーマットは、企業や組織によって異なる場合があるため、事前に確認しておきましょう。
顛末書を提出する際は、組織内のルールやガイドラインに従い、正しいフォーマットで文書を作成することが求められます。特に、外部の関係者へ提出する際には、フォーマットの確認は欠かせない作業となります。
捺印は社判の場合もある
顛末書を提出する際、その文書の公式性を示すために、捺印が要求されることがよくあります。
特に、文書の内容が重要な場合、社判の使用が推奨されることが多いです。社判は、企業や組織の正式な決定や意向を表すためのもので、文書の認証や信憑性を保証する目的で使用されます。
顛末書を書かないために
顛末書は、事故やトラブルに関する詳細を伝えるための文書ですが、その作成が必要となる事態は避けたいものです。事前の予防策や注意が、後の大きなトラブルを防ぐ鍵となります。
ここでは、事故やトラブルを事前に回避するための方法や、日常業務での留意点について紹介します。
何事も確認する
作業前後の確認を徹底することは、ミスを防ぐための基本的な方法です。
この確認作業は、単なる形式的なものではなく、実際の作業の質を向上させるための重要な方法です。また、コミュニケーションの際にも、情報の伝達や共有が正確に行われているかを確認することで、誤解や不明点を解消することができます。
自分が対応できる範囲で仕事を行う
過度なリスクを取らないことは、ミスやトラブルを未然に防ぐための基本的な考え方です。
自分のスキルや経験、知識の範囲内で業務を進めることで、安定した業務遂行が可能となります。また、不明確な点や不安要素がある場合は、上司や同僚に相談することで、より適切な判断や対応を取ることができます。
しっかりと休む
適切な休息は、身体だけでなく心の健康にも欠かせない要素です。
ミスを減少させるためには、疲れやストレスが溜まらないように注意することが必要です。疲れが溜まると、判断力や集中力が低下し、それがミスの原因となります。休息は、単にリラックスするためだけでなく、次の業務に向けての準備としても非常に重要な役割を果たします。
スキルアップを目指す
現代の業界は日々進化し、変化のスピードは速まっています。そのため、常に自己成長を目指し、各々がスキルを磨いておくことも対策のひとつです。
新しい知識や技術を学ぶことで、自分の業務の幅を広げるだけでなく、業務の効率化や質の向上を図ることができます。ミスやトラブルのリスクを低減するための知識や技術を身につけることで、より確かな業務遂行が期待できるでしょう。
状況によっては転職も検討する
長期間同じ環境で働いていると、自分の成長やキャリアの方向性に疑問を感じることがあるかもしれません。
職場の環境や業務内容、人間関係などが自分のスキルや価値観と合わない場合、それがストレスの原因となり、業務の質や生産性に影響を及ぼすことも考えられます。
転職を検討することで、新しい環境での活躍や成長の機会を追求することができるでしょう。自分のキャリアや人生の質を向上させるための一つの選択肢として、真剣に考えることが大切です。
モチベーションアップ、モチベーションの維持を心がける
モチベーションは、私たちが日々の業務を効果的に遂行する上での大きな原動力となります。
モチベーションを上げることは、業務の質を高めるだけでなく、自身の成長やキャリア形成にも繋がり、さらに業務に対する意識や集中力が向上することで、結果としてミスやトラブルを大幅に減少させることが期待できるでしょう。
さらに、同僚や上司、メンターとのコミュニケーションを深めることで、自分の業務に対する価値観や意識を再確認し、モチベーションを再燃させるきっかけを得ることもできます。日々の業務の中で、自分自身を振り返り、モチベーションの維持や向上に努めることが、持続的な成果を生む鍵となります。
顛末書の作成例
顛末書は、事故やトラブルに関する具体的な情報や対応の過程をまとめるための文書として用いられます。
提出の対象や状況に応じて、その構成や表現が変わることが考えられます。ここでは、社内向けと社外向けの顛末書の作成方法の違いやポイントについて紹介します。
社内へ提出する場合
社内の関係者への報告や説明を目的とした顛末書は、組織内での共有や今後の対応策の検討のための重要な情報となります。
この場合、具体的な事実や経緯、再発防止策などを詳細に記述することが求められます。また、関係者が事故の背景や原因を正確に理解するため、具体的なデータや証拠も併せて記載することを推奨します。
社外へ提出する場合
取引先や関連する外部の組織への報告を目的とした顛末書は、外部との信頼関係の維持や情報の透明性を保つための手段となります。
この場合、事実のみを中心に、詳細な経緯や再発防止策は簡潔に記述することが一般的です。外部への情報開示は、必要最低限の情報のみを提供し、機密情報の漏洩を防ぐことも重要なポイントとなります。
顛末書を受け取った後に行うこと
顛末書を受け取った際、その内容を基に適切な行動を取ることが求められます。
顛末書は事故やトラブルの詳細を伝えるだけでなく、その後の組織の対応や改善のための重要な情報源となります。以下は、顛末書を受け取った後に行うべき主要な行動とその詳細についての説明です。
- 事実の確認
顛末書の内容を基に、事実関係や経緯を正確に把握します。必要に応じて、関係者や目撃者からの情報収集を行い、事実の裏付けや確認を進めます。 - 対応策の検討
事故やトラブルの内容を踏まえ、適切な対応策を検討します。短期的な対応としては、被害の拡大防止や状況の安定化を目指し、長期的な対応としては、再発防止策の策定や改善活動の推進を考えます。 - 再発防止策の実施
事故やトラブルの原因を分析し、同様の事故を未然に防ぐための再発防止策を実施します。具体的な行動計画や期限を設定し、組織全体での取り組みを進めます。 - 関係者への報告や説明
事故やトラブルの内容、原因、対応策などを関係者や上層部に報告し、説明します。透明性を保ちつつ、関係者の理解や協力を得ることが重要です。
顛末書を提出の際は不備が無いように書きましょう
顛末書は、事故やトラブルに関する詳細な情報や経緯、対策を整理・記録するための不可欠な文書です。
この文書の作成や提出の際には、情報の正確さや客観性を確保することが重要。ただし、顛末書の真の価値は、事実を単に伝えるだけでなく、組織の反省や学びの材料として活用することにあります。
再発を防ぐための策や、関係者との円滑なコミュニケーションのためのツールとして、顛末書は組織の進化や向上に寄与します。その核心は、顛末書を活用して組織内の意識を共有し、同じ過ちを繰り返さないよう努力することにあるのです。