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びっくり退職?いきなり退職届を受け取ったら、人事や上司はどう対処すべき?

びっくり退職とは

「え、まさかあの人が辞めるなんて」と、驚いた経験はありませんか?

特に不安もなく見えていた従業員がある日突然、退職願を届け出てきたら、悲しみよりも驚きが勝る人は多いでしょう。

このいわゆる「びっくり退職」は、職場全体に心理的なストレスを与えるだけでなく、急な業務引き継ぎの影響で業務の偏りが生まれやすくなります。

企業はびっくり退職が生まれる理由を知り、対策を講じる必要があるでしょう。具体的な対処方法も含めて、びっくり退職の原因などを解説します。

びっくり退職とはどんな退職の仕方?

「びっくり退職」という言葉に耳慣れていない人事担当者は多いでしょう。これは、従業員から退職の相談を受けて初めて、退職を考えていたと発覚することです。

思わず「まさか」と反応してしまうような人材が退職を検討していると、現場の上長はもちろん、人事担当者も驚きを隠せないものです。

特に、優秀な人材や重要度の高い業務を担う人材の突然の退職は、部署や会社全体へ与える影響が大きくなります。

つい引き留めてしまいそうになりますが、まずはなぜその決断に至ったのかをしっかり聞き出すことが大切です。

びっくり退職につながりやすい予兆

4つの予兆に注意しましょう。

長期的なビジョンに興味がなくなる・避けたがる

びっくり退職をする人の多くは、表には出さずに「退職しよう」と考えているケースがほとんどです。そのため、将来的に辞めようとしていることを理由に、長期的なプロジェクトに関わりたがらなくなるでしょう。

この行動には、

  • 近いうちに退職するから、長期的な業務は避けたい
  • 退職するから周囲の評価や期待はもう関係ない

といった心理が働いています。

かつては積極的に業務をこなしていた人材が、自身のキャリアアップやスキルアップになる業務に興味を持たなくなったら、退職を考えている可能性があるので注意しましょう。

発言が以前より消極的になる

びっくり退職の予兆は、日々の通常業務への取り組み方から感じられる可能性があります。ミーティングや社内会議などで、発言する回数が減ったり、あいづちが少なくなったりするときは要注意です。

従業員の取り組み方が以前より消極的になる背景には、「この会社にはもう期待できない」といった不満や「何を言っても変わらない」などの諦めの感情が潜んでいます。

何気なく業務をこなしていると「ただ体調が悪いのかもしれない」と見過ごしてしまいやすいサインなので、日頃から従業員一人ひとりを注意深く観察することが大切です。

営業成績が急に悪くなる

社内の営業担当者の成績が悪化していたら、その原因を探りましょう。営業成績が悪化する要因はさまざまありますが、退職を心に決めた従業員が仕事へのモチベーションを保てなくなっているケースも考えられます。

退職しようと考えている従業員は、

  • どうせ退職するから頑張っても意味がない
  • 今頑張って会社の業績に貢献しようと思えない

という気持ちになっているでしょう。

会社への貢献意欲が失われ、仕事へのモチベーションが低下することで、営業成績が悪くなっていくケースがあります。急な変化があった際は、単なる不調とせずに従業員本人にヒアリングを行うことをおすすめします。

勤務態度が悪くなる

欠勤(有給)や遅刻、早退が増えたり、上司からの業務指示を断ったり、席を立つ回数や時間が増えたりといった勤務態度の変化は、びっくり退職の予兆の1つです。

従業員は上司からの評価を得たいと意欲的に仕事に取り組み、周囲への迷惑をかけないように勤務調整をするのが一般的な思考です。

しかし、退職を決意すると上司や周囲からの評価が「どうでも良い」と思えてしまいます。

その結果、自分のやりたいことを優先して欠勤や遅刻といった行動が現れるのです。転職活動中であれば、転職先企業とのやり取りのために私用携帯で電話をする姿が増えるかもしれません。

どうして突然退職意向を示すの?

理由は3つあります。

人事評価やフィードバックに納得がいっていない

従業員が人事評価やフィードバックに納得感を得られていない場合、びっくり退職が起こり得ます。

誰しも強さの差はあれど「自分を認めてもらいたい」という承認欲求を持っています。そして、自分が思っている能力値と会社が評価した自身の能力値にギャップがあると、「正当な評価をされていない」と感じやすくなるのです。

人事評価は給与額に大きく影響を及ぼします。だからこそ、納得感のある評価が従業員にとって重要です。

人事評価基準が不透明な場合も、納得感が薄くなるので注意しましょう。「なぜ今自分がこの評価を受けたのか」が客観的にも判断しやすい評価制度を整える必要があります。

また、フィードバック面談を通して会社が個人に期待する項目をしっかり伝えましょう。

会社のビジョンや理念に共感できなくなった

会社のビジョンや理念は、従業員が共感できるものでしょうか。人材管理において意外と重要視されないのが、会社のビジョンや理念の周知です。

従業員は、会社の思いに共感して、その思いを実現するために努力します。そのため、会社が掲げるビジョンなどは、あらゆる場面で行動指針となるでしょう。

企業理念が社内全体に浸透していないと、方向性がわからず判断に迷うシーンが増えてしまいます。期待される行動が判断できない不満や不安は、従業員のモチベーション低下につながるでしょう。その結果、やりがいのある企業への人材流出が起こります。

採用時や入社時に限らず、会社の「思い」を伝える機会をつくりましょう。方法としては、全社集会での通達や社内チャットツールでの定期的な周知、社内報への掲載などがあります。

業務量が多すぎる・ミスマッチがある

退職する要因として、業務量のバランスの悪さや従業員の希望と異なる業務内容が挙げられます。

昨今の働き方改革の推進の影響で、誰もが自由に働き方を選択できる社会が実現しつつあります。特に、ワークライフバランスの実現は多くの人にとって重要視されているため、ワークライフバランスが保てないと感じる就業環境は好ましくありません。

例えば、

  • 業務が多く残業が続き、プライベートの時間がない
  • 休日に出勤して仕事をしなければならない
  • 自身のキャリアビジョンとズレた業務をしている
  • 自分にしかできない仕事があり休日でも会社から連絡が来る

といったことは、従業員の負担になります。

従業員が効率的に業務を終えてプライベートを楽しむ時間をつくることは、企業が社内体制を整備することで実現できる場合があります。

外部人材の活用やIT化を進めるなどして業務効率化を図り、従業員が業務過多に陥らないように配慮しましょう。

また、適材適所な人材配置を行えば、従業員が少ないストレスで高いパフォーマンスを発揮しやすくなります。

びっくり退職を起こさない・防止する方法は?

具体的な方法は3つです。

メンバーとマメなコミュニケーションを取る

人間関係の悩みを軽減するためにも、社内のメンバーとマメにコミュニケーションを取るようにしましょう。

円滑な社内コミュニケーションを実現し、意見の食い違いや個人の悩みにいち早く気付ける人間関係を築いておくことが大切です。

気軽に相談できる関係性があれば、もし退職を検討して悩んでいる従業員から事前に相談を受けられるかもしれません。退職の意思が固まる前に相談されれば、引き留めもしやすくなります。

1on1ミーティングを定期的に実施する

「1on1ミーティング」とは、定期的に従業員個人とその上長が話す機会を設けることです。「面談」という堅苦しいイメージではなく、フランクに思っていることを話す場として取り入れる企業が増えています。

定期的に実施することで従業員の気持ちの変化に気づきやすくなったり、本人の希望を具体的に聞き出しやすくなったりする効果が期待できます。

さらに、従業員一人ひとりを対象に行う性質上、従業員が「気にかけてもらっている」という実感を得やすく、会社への帰属意識や貢献意欲を高める際にも効果を発揮します。

従業員エンゲージメントの活用も考える

従業員エンゲージメントを活用すると、従業員のちょっとした変化が見つけやすくなります。一人ひとりの仕事に対するモチベーションが可視化できれば、意欲が低下している従業員を注視したフォローが可能となるでしょう。

利用するシステムによっては、従業員エンゲージメントを数値化したりグラフ化したりできます。その上で、時期や部署ごと、年代ごとなどの傾向を判断できるようになり、各属性ごとの対策を講じられるようになります。

従業員エンゲージメントについて詳しくは、「【人事必見】従業員エンゲージメントとは?構成要素やメリット・デメリットを徹底解説」で紹介しています。

もしも突然、退職届を提出されたら……

3つの対処方法を紹介します。

就業規則の確認など、事務的な部分の確認

就業規則を見ながら、自社が規定する退職に関する項目の詳細を把握しましょう。

例えば、

  • 退職届の提出期限
  • 最終出社日の決め方

などの項目をチェックします。

規則上は問題なくても、従業員が担っている業務によっては長期の引き継ぎ期間が必要な場合があります。

退職を認めた場合は、業務を引き継ぐ人の選定や事務的な手続きを進めましょう。

じっくり話を聞く

退職したい本人の気持ちを、できるだけ具体的に時間をかけて聞く時間を設けます。びっくり退職は、想定外の人が退職する意思を持つため、思いもよらぬ社内の課題や本人の希望が聞ける可能性があります。

話を聞く際は、引き留めようと必死にならないように注意しましょう。本人の言葉に耳を傾け、退職を決意するに至った理由や本人が抱える悩み、キャリアに関する希望などを詳細に聞き出すことが重要です。

あまり根掘り葉掘り聞くと、話す意欲がなくなるため、できるだけフランクな雰囲気づくりを心がけると良いでしょう。従業員が話しやすいように、話を聞く相手は人事部に限らず、信頼している上司などでも問題ありません。

状況によっては人事評価や給与の見直しを

従業員の退職理由を探っているうちに、自社の人事評価制度の問題点が明らかになるケースがあります。また待遇に納得していない従業員がいれば、給与水準の見直しが必要になる場合もあるでしょう。

給与水準の引き上げは、一朝一夕にできるものではありません。問題があると判断した場合は、長期的な計画を立てて徐々に水準を引き上げる方が安心です。

人事評価制度に課題が見つかった場合、その課題点を解決できる方法を探ります。客観的に納得感のある人事評価制度を導入し、透明性の高い評価を実現しましょう。人事評価では上司の主観的な評価がないように、「360度評価」などの手法や専用のシステムを取り入れるのも効果的です。

退職兆候にいち早く気づいてフォローアップしましょう

びっくり退職は、企業全体にとっても退職者が所属する部署全体にも大きな驚きと影響を与えます。

社内に不安や不信感が広がる要因となるため、企業はびっくり退職が起きないように対策をしておく必要があるでしょう。

社内の体制を整えたり、従業員がモチベーション高く業務に取り組める仕組みづくりに注力し、従業員の離職防止につなげることが大切です。