テレワーク時の労務管理とは?課題と解決策を3つ紹介!
「テレワーク」は現在では当たり前のように使われる言葉ですが、その意味を聞かれた時に、正確に答えられる人は少ないのではないでしょうか。
今回は、テレワークの分類や、テレワーク時の労務管理の課題と、その解決策を紹介します。
テレワークとは
最初にテレワークの定義ですが、日本にテレワークが導入されてから推進を続けてきた「日本テレワーク協会」によると「ICT(情報通信技術)を活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のこと」とされています。
元々テレワークという働き方が最初に生まれたのは、1970年代のアメリカに遡ります。石油危機により、大気汚染などの環境問題が深刻化し、その対策としてテレワークが導入され始めました。日本へのテレワークの普及は1990年代後半です。バブルにより地価が高騰したことにより、都市郊外に住む人たちが増加し、通勤によるストレスが社会問題になったことがきっかけです。
現在では、働き方の多様化に伴い、テレワークを導入している企業は増加傾向にあります。新型コロナウイルスの蔓延による外出自粛、緊急事態宣言により、テレワークがより一層普及を進めています。
テレワークの分類
単純にテレワークと言っても、その種類は大きく3種類に分けられています。今回は、その3つについて解説します。
- 在宅勤務
- モバイルワーク
- サテライトオフィス勤務
在宅勤務
在宅勤務は、文字通り自宅で業務を行うことを言います。これにより、通勤の必要がなくなったため、本来であれば通勤に使った時間を家事などの他の時間に充てることができます。特に育児をしながら働く人にとっては、保育施設と働く場所の距離を大幅に近くすることができるため、育児と業務の両立が可能になる働き方と言えます。
モバイルワーク
モバイルワークとは、勤務を行う場所を指定せず、ノートパソコンやタブレット端末を持ち歩き、自分に都合の良い場所で勤務を行うことを言います。自宅やカフェなども勤務可能な場所となるため、自分のワークスタイルに合わせて効率的に業務を行うことができます。
サテライトオフィス勤務
サテライトオフィス勤務とは、自分が所属する企業のオフィスで勤務するのではなく、それ以外に企業が開設する「サテライトオフィス」で勤務することを言います。この働き方を導入する場合は、例えば都市を中心としている企業は地方などに、地方を中心としている企業は都市部にサテライトオフィスを開設します。これにより、社員の勤務可能な場所が増え、自分の生活する地域に合わせて勤務を行うことが可能になります。
サテライトオフィスには、企業が独自に開設を行う場合と、数社で共同でオフィスを開設する場合や、レンタルオフィスなどを利用する場合もあります。
リモートワークとの違い
テレワークと同時によく耳にするのが「リモートワーク」という言葉ですが、これも「遠隔(Remote)で勤務を行う」という意味なので、テレワークとほぼ同じ意味であると考えてよいでしょう。
テレワークの方が先に浸透したとされ、そのため中小企業向けの助成金支給制度に「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」という名称がついています。
テレワーク時の労務管理の課題
テレワーク時の労務管理については、実際に運用を開始してみないと、どのような課題があり、解決策はどのようなものであるのかが見えにくいものです。テレワーク時の労務管理をどのように行うか悩んでいる担当者も多いのではないでしょうか。
今回は、テレワーク時の労務管理の課題を5つに分けて解説します。
- 労働時間の管理が難しい
- 長時間労働
- 意思疎通が取りにくい
- 労災認定が難しい
- 人事評価がやりにくい
労働時間の管理が難しい
テレワークは、社員にとっては時間を効率的に使うことができるのが魅力の1つとなっています。しかし、企業や管理者側からすれば、イレギュラーな勤務状況の記録や管理が複雑になってしまい、手間が増えてしまうという課題も考えられます。
また、テレワークでは社員がタイムカードによる打刻ができないため、勤怠管理システムやメールなどで勤務時間を確認し、管理する必要があります。このような多様な働き方に柔軟に対応できる設備の確保が求められています。
長時間労働
テレワークでは、社員一人一人が担当する業務が比較的見えにくいため、業務の量が偏りがちになることがあります。場合によっては、業務のオンとオフの境目が曖昧になり、長時間労働になってしまう社員も出てくる可能性があります。
このようにテレワークでは社員の労働時間の把握が困難なため、長時間労働の発見が遅れてしまう場合が考えられます。社員の就業状況を細かくチェックし、適切な業務や労働時間の配分を行うことが、企業には求められています。
意思疎通が取りにくい
Web上の会議システムや、チャットツールの普及によって、テレワーク時の意思疎通は取りやすくなっ多用に思えます。しかし、それでもテレワーク時の上司と社員の意思疎通は不足しやすいため、注意する必要があります。
ここで過度に意思疎通を図ろうとして連絡しすぎてしまうと、社員はかえってストレスを感じる場合もあります。例を挙げると、夕食の準備などで多忙な時間帯に、上司から業務の報告を求められると、社員はストレスを感じてしまうことがあります。このような不要なストレスを与えないためにも、あらかじめ定時連絡の時間を決めておいたり、連絡は基本的にメールで行うなどの方法を話し合っておくと良いでしょう。
労災認定が難しい
テレワーク時は業務とプライベートの線引きが曖昧になってしまう点があり、労災認定の判断が困難になってしまう場合があります。企業のオフィスへ出社しなくとも、業務中での傷病は労災の適用範囲になります。しかし、テレワーク時の傷病は、本当に業務によるものなのか判断が難しくなってしまいます。
労災を申請する際は、業務によるものであるという事実の認定が重要になります。なので、テレワークを行う時間帯や、実際に業務を行う場所などを明確にしておく必要があります。退席する場合はその連絡を入れるなどの規則を定め、業務時間とプライベートを明確に区別しておくと良いでしょう。
人事評価がやりにくい
勤務状況が見えにくいテレワークでは、人事評価がやりにくい点も課題の1つとして挙げられます。営業職をはじめとした、成果を数字で表すことができる業務は評価がしやすくなりますが、事務職などの成果が表せない業務の場合は、評価の基準が曖昧になってしまいます。
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テレワーク時の労務管理の課題解決策
様々な働き方が認められ、社員にとっては魅力的であるテレワークですが、このように労務管理においては課題が多いことが分かります。
今回は、テレワーク時の労務管理の課題解決策を3つに分けて解説します。
- 企業に最適な労働時間の管理方法を検討する
- 社員の就業状況を正確に把握する
- 人事評価の方法を明確にする
企業に最適な労働時間の管理方法を検討する
労働時間の管理については、様々な方法が考えられます。なので、企業に適した方法で労働時間を管理するのが良いでしょう。
テレワーク時の労働時間の管理方法には、メールやチャットでの報告、電話での報告、パソコンのログをチェックする、勤怠管理システムの導入などが挙げられます。
コストはかかりますが、手軽さや正確さを重視するのであれば勤怠管理システムの導入が良いでしょう。勤怠管理システムは、自動で集計や管理を行うことができ、給与計算システムと連携できるものが増えてきているので、他業務の効率化にも役立てることができます。また、社員の休憩時間やプライベートの時間も打刻が可能なため、労災かどうかの判定もしやすくなります。
社員の就業状況を正確に把握する
テレワーク時の業務量の偏りや、長時間労働を避けるためにも、社員の就業状況は正確に把握しておく必要があります。プロジェクトの進捗状況の確認がしやすい管理ツールの利用がおすすめです。社員の業務量や、ペース配分などを一目で確認することができるほか、社員との意思疎通にも活用することができます。
勤怠管理システムやチャットツールの活用により、毎日の就業状況の確認を簡単に行うことができます。
人事評価の方法を明確にする
テレワーク時は、実際に社員が業務を行っている様子を確認することができないため、評価の項目を細分化し、明確にすることが重要です。評価の基準が明確であれば、離れた場所で業務を行っていても、適切な評価ができるようになります。
また、社員本人が自己評価できる制度も取り入れると良いでしょう。目標の達成や、達成までの過程を評価の対象にできるように、目標管理制度を導入するなどの工夫もしてみると、社員のモチベーション向上にもつながる可能性があります。
システムを導入し、円滑にテレワークを進めましょう
テレワークを企業に導入する際は、社員の就業状況や労働時間、労災保険の範囲など、多くの労務管理の業務を見直す必要があります。テレワーク時の労務管理は、社員の健康や、企業に対する満足度に関わる内容ですので、一度確認し、整備を行ってから導入を進めましょう。導入後も、定期的なメンテナンスが必要になります。
テレワーク時の労務管理を円滑に行う際には、勤怠管理システムやタスク管理ツールなど、様々なシステムを活用するのが良いでしょう。企業に適したシステムの導入を検討し、テレワークを進めていきましょう。