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職業能力評価基準(スキル評価基準)とは?基本構成や導入ステップについて解説

企業において人材の育成や適切な評価の実施は従業員のモチベーションを高めるだけでなく、生産性の向上にもつながります。しかし人材の指導方法がわからない、あるいは最適な評価をする方法が定まっていないなどの悩みを抱えている企業も存在します。今回紹介する「職業能力評価基準」は、それらの問題点を解決する役割を持っているといえるでしょう。この概要を理解し、段階を踏んだうえで活用できるように学んでいきましょう。

職業能力評価基準(スキル評価基準)とは

それぞれの職種が行う仕事において、知識・スキル・職務実行能力を細かく分けたものが「職業能力評価基準」です。これは国内で採用されている評価制度の大きな要素でもあります。2021年の段階では、どの職種にも共通して求められる経理や人事などの他にも、ホテル業、在宅介護などの計56種類が追加されています。

スキル評価とは?

職業能力評価基準よりも広義的な意味を持つ言葉に「スキル評価」や「スキル評価基準」があります。

「スキル評価」という言葉は、業務を進めるにあたって必要な能力や知識、経験を従業員1人ごとに評価することを意味します。

必要とされる能力を持っているか、能力値としてはどのレベルまで到達しているのかなどを可視化できるため、人材育成の現場で取り入れる企業が増えています。

この評価は、直属の上長が判断するケースと、自己評価したものを上長がチェックするケースの2パターンに分かれます。

職業能力評価基準を企業が活用することのメリット

評価基準を採用すると、どのような効果が得られるのでしょうか。ここでは企業が活用するにあたってのメリットについて説明します。

人材育成への活用

人材のスキルや能力を可視化することによるメリットは、人材育成がスムーズに進むという点にあります。

従業員一人ひとりについて保有スキルが分かっていれば、個人に合わせた効果的な指導や、効率の良い育成計画が立てられるでしょう。

従業員本人にとっては、自分の能力値を客観的に確認できる良い機会です。どのスキルが不足しているのかが明確になり、自分が目指すキャリアビジョンに沿ったスキル習得に励みやすくなるのもメリットだといえます。

社内制度・人事評価の基準への活用

社内で行われる制度や評価方法について、あらためて検討するための材料にもなります。内部の仕組みを現代の流れにあわせて変更しないと、従業員のモチベーション低下にもつながります。そのためには企業として1から見直し、既存の制度をうまく調整する必要があるでしょう。従業員をより深く評価するためにも、うまくPDCAを回す要素として取り入れてみましょう。

採用への活用

企業としてどんな能力を持っている人材が重要なのか、あるいはどんな役割を行ってもらうのかなど、採用時の参考になります。「採用した人材の能力が不足していた」「企業として優先する能力が違っていた」などの失敗を防ぐためにも、明確な採用戦略を構築する必要があります。従業員の育成や社内の制度の見直しの他にも、採用の面でもぜひ活用してみてください。

職業能力評価基準(スキル評価基準)の基本構成

おもに仕事の内容を以下の4つに分けて、構成されています。

  1. 職種:業務内容や種類が類似している業種をまとめたもの
  2. 職務:それぞれの社員が行うべき業務内容
  3. 能力ユニット:各業務内容を効率的に行うスキルをまとめたもの
  4. 能力詳細:3の項目をさらに細かく分けたもの

このように4つに分かれているだけではなく、それぞれの項目で行われる仕事の範囲や責任の大きさによってレベルが区分されています。このレベルは1〜4まであり、数値が大きいほど業務遂行における範囲や責任がともないます。

提供されているツール

評価基準をうまく活用するために、さまざまなツールが使用されています。ここでは提供されているなかでも、よく使用されるツールについて説明します。

キャリアマップ

評価で決められている4段階のレベルにあわせて、ロードマップのような役割をしているのが「キャリアマップ」です。各職種で仕事に取り組むとき、どんなキャリアを進んでいるのかが明確となります。さらにレベルを高めるためにどのくらいの年数が必要なのか、どんなことを実施するべきなのかが表示されています。

職業能力評価シート

それぞれの従業員に求められる職務を行うために、どんな基準を達成すべきかを評価するシートです。チェック型に作成されたシートに記入すれば、従業員がどのくらいのスキルを持ち合わせているのかを評価できます。このシートの他にも、保有すべき知識やスキルの基準を表したツールもあります。自社にあったシートを選択しつつ、うまく組み合わせながら評価を行うことが大切です。

モデル評価シート・モデルカリキュラム

厚生労働省が公開している公開ツールの1つです。「モデル評価シート」と「モデルカリキュラム」は、職業訓練に役立ちます。

業種別や職種別に必要な能力がまとめられているので、自社で検討せずともスキルレベルの評価ができるようになっています。

さらに、同じように業種と職種別にモデルカリキュラムが公開されているため、どのような過程を踏むのが望ましいかがイメージしやすくされているのです。

推奨されている導入ステップ

評価基準をうまく自社に取り入れるためには、どのような手順を行えばいいのでしょうか。ここではおすすめのステップについて説明します。

目的の明確化

まずは導入にあたって、どんな目的を持っているのかを明確にする必要があります。自社にとってなにが必要なのか、どんな課題を達成したいのか、などをあらためて考えてみましょう。これらを明確にすれば、どのような活用ができるのかが見えてくるでしょう。目的が曖昧な状態で導入しても思うような効果が現れないので、最初の土台を固めることが大切です。

職業能力評価基準を自社にあわせる

評価基準は固定的なものではなく、自社にあわせて自由にカスタマイズが可能です。必要のない項目は取り除き、足りない項目はオリジナルで付け加えることで、自社にフィットしたものが完成します。導入後も「必要な項目があった」「この項目は消す必要がなかった」などの発見があるはずです。少しずつトライアンドエラーを繰り返して内容をブラッシュアップしましょう。

レベル設定を行う

基準を明確にしたうえで、適切なレベルを設定します。経験年数ごとにレベルを上げていくようにすれば、従業員も仕事に対してのモチベーションが上がりやすいです。基準が不明瞭となると、自身の知識・スキルが上がっているのかわからなくなるだけでなく、どのように仕事を行うべきか困惑する可能性があります。従業員の不満につなげないためにも、納得のあるレベル設定を行いましょう。

現場に展開し、意見をもらう

テスト運用として部分的に現場で導入を開始し、従業員に実際の手応えを聴取します。一度にすべての機能を導入すると修正点が見つけにくいので、焦らずいくつかの段階に分けながら進めましょう。導入前には気づかなかった修正点が見つかった場合は改善を行い、徐々に質を高めます。このようにPDCAを回すことで、企業に最適な評価基準が生まれます。

自社内でカスタマイズを行う場合のチェックポイント

導入の4ステップで自社の独自性があるような評価基準を作成しますが、どのように構築すればいいかイマイチわからない人も多いと思います。ここではカスタマイズの際におさえるべき点について説明します。

自社に合った制度になっているか

第一に、自社の型にはまるような制度になっているのかを考える必要があります。評価基準の項目は、決してすべての企業にフィットするように作られているわけではありません。企業によっては「この項目はボリュームを増やしたい」「この項目は必要ない」ということも多いです。そのまま取り入れるのではなく、自社の目的やニーズを踏まえたうえで追加・削除項目を選択しましょう。

名称は適切か

評価基準の項目の取捨選択も重要ですが、名称を吟味することも忘れてはいけません。名称によって意味を誤認してしまったり、納得しにくい内容となったりした場合、本来の機能を遂行できなくなる可能性があります。名称がわかりにくい場合は、意味が通じるように変更しておきましょう。

現場の社員に使ってもらえそうか

せっかく評価基準を自社のスタイルに変更しても、うまく活用しなかったら意味がありません。従業員が十分に使用できるかを確認する必要があります。もし上司が従業員に対して評価を行うとしたら、その層の人たちが問題なく使用できるかどうかをチェックします。人によって使い方が異なる、内容が複雑すぎてなかなか進まないなどがある場合はすぐに修正をしましょう。

そのほかのスキル評価の方法

2つの方法を紹介します。

スキルマップ(力量管理表)を用いる

スキルマップ(力量管理表)をつくると、スキル評価がやりやすくなる可能性があります。個人のスキルを可視化できるようになれば、評価も容易になるはずです。

作成時は活用の目的を明確にするように心がけましょう。人材育成が目的なら、将来獲得したいハイレベルなスキルも含める必要があります。

業務内容ごとに求められるスキル、獲得してほしいスキルなどをできるだけ詳細に書き出すとより効果的です。

スキルマップ(力量管理表)では、わかりやすく使いやすい評価基準の設定が欠かせません。上司が評価するケース、自己評価するケース、どちらであっても活用しやすいように配慮しましょう。

ルーブリック評価

活用しやすい手法の1つに「ルーブリック評価」があります。これは、従業員の学びや成長の達成度を「見える化」できるとして、多くの企業が注目しています。

複数の評価項目について、それぞれの到達レベルを明らかにできます。

項目例は、

  • 技能(スキル)
  • 表現力
  • 理解度
  • 興味・関心
  • 意欲
  • 態度

などが設定されます。

項目を決めたら、すべてをまとめた「ルーブリック表」を作成してみましょう。

一目で従業員個人のそれぞれのスキル到達度が判断できるため、積極的に取り入れることをおすすめします。

自社のスタイルに合った評価基準を作成しましょう

職業能力評価基準の活用は企業にとって適切な評価を行えるだけでなく、人材の育成にもつながるほど重要といえます。しかしそのまま活用しようとしても、思うような効果が得られない可能性が高いです。最大限の効果を引き出すためにも、自社のスタイルに適した項目の追加・修正を行いましょう。現状評価や人材育成に悩んでいる企業は、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。