「働き方改革」はコロナで変化した?働き方改革の3つの課題と解決するためのポイント
働き方改革とは、「働く人々が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で選択できるようにするための改革」です。これは2019年に厚生労働省が定義し、進められてきました。しかしその背景やメリット、課題、進め方についてはぼんやりとした認識の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では働き方改革の目的や進める際のポイントについてご紹介します。
働き改革とは
「働き方改革」とは、一億総活躍社会の実現に向けた、労働環境を見直す取り組みのことです。これは一部の大企業に限った問題ではありません。中小企業を含む、全ての企業で対応する必要があります。働き方改革に着手していない企業は、今後労使トラブルや人手不足に一層頭を悩ませることになるかもしれません。
「働き方改革」は目的を正しく理解し、適切な取り組みを行うことで、企業の労働環境の改善や労務問題の解決が可能です。実情では煩わしさが先行し、法令の基準を満たすために形だけの取り組みが行われるケースも少なくないようです。しかしせっかく時間とコストを投じるのですから、働き方改革の必要性を正しく知り、形だけではなく、本当の意味で働き方改革の実現を目指すべきです。
働き方改革の背景
なぜ働き方改革の必要性が叫ばれるようになったのでしょうか。その背景には、近頃日本で問題となっていることが深く関係しています。
労働人口の減少
15歳以上65歳未満の生産年齢人口、所謂「労働力」は1995年から減少の一途を辿り、現在深刻な人手不足に陥っています。さらに、この生産年齢人口に当たる人々は、育児や介護といった事情によって、一時的に離職したり復帰が困難な状態になっているケースが多いです。
「労働生産性」の低下
「労働生産性」とは、「労働者1人あたりが生み出す成果」あるいは「1時間あたりに生み出す成果」の指標です。この労働生産性は、国の経済成長に関わります。日本の労働生産性は、主要先進国の中では特段低く、公益財団法人日本生産性本部によると、令和元年の日本の時間当たり労働生産性はOECD加盟37カ国中21位、一人当たりの労働生産性はOECD加盟37カ国中26位です。
長時間労働や過労死の問題
高度成長期以降、日本には、「従業員は企業のために私生活を犠牲にしてでも業績向上を目指すべきである」という考え方を良しとする企業文化がありました。結果として長時間労働の常態化を招き、現在に至ってもなお、この文化がはびこっていることは否めません。
長時間労働やこれによる過労死は国内の大手企業でも発生し、メディアで取り上げられることもあります。そのおかげか国民全体に社会問題として意識が高まりましたが、依然として事件は起こっています。
⇒働き方改革の残業について詳しく知りたい方はこちら
働き改革のメリット
「働き方改革」のメリットは、企業と従業員それぞれにあります。
企業のメリット
企業は生産性やモチベーションを向上させることができます。旧来のような「労働時間=成果」という判断基準を廃し、適切に休暇を取得させることで、従業員が働きやすい労働環境が整います。また創造的な環境の構築にも結びつきます。
加えて有給休暇の取得しやすさは「従業員を大切にする企業」であると社内外にアピールできます。福利厚生が行き届いた企業だというイメージは、新卒・中途を問わず採用活動におけるメリットになります。
従業員のメリット
従業員のメリットとしては、「ワーク・ライフバランス」が最も大きなポイントです。仕事のオン・オフを切り分けることで、趣味や、家族と過ごす時間が増えます。私生活が充実することで、仕事のシーンでもパフォーマンスを高める効果を生み出すことができます。
労働力不足解消のための施策
労働力不足の解消には主に3つの対応策があります。
- 働き手を増やす
- 出生率を上げる(将来の働き手を増やす)
- 労働生産性を増やす
1,2は労働力の増加につながります。
3の労働生産性についてですが、労働生産性とは「従業員1人当たり、または1時間当たりに生み出す成果」を表した指標です。
実は日本の労働生産性は先進国にしてはかなり低く、OECD加盟国35ヵ国中、22位となっており、主要7ヵ国では最下位となっています。簡単に言うと「生産性を上げよう」ということです。
働き改革の課題
働き方改革を進めるに当たって、具体的に課題となる点が主に3つあります。
課題①長時間労働
日本は世界的に見ても長時間労働に従事する割合が多く、2013年に国連から「多くの労働者が長時間労働に従事している」、「過労死や職場における精神的なハラスメントによる自殺が発生し続けていることを懸念する」という内容の是正勧告をされました。
現在は長時間労働の割合は下がっており、改善はされています。ただし、「週労働時間が60時間以上の労働者の割合を5%以下にする(2020年)」という政府目標の達成にはまだ遠く、さらなる長時間労働の削減が必要です。
課題②非正規社員と正社員の格差
非正規社員と正社員との待遇差や賃金格差は、日本企業が抱え得る長年の問題の1つです。「派遣切り」や、「交通費・通勤手当の有無(金額の差を含む)」という不平等があります。不当な扱いは法律で禁止されていますが、取り組む仕事やその責任に違いがあるのである程度仕方ない部分があるのも確かです。
日本のパートタイムの賃金水準はフルタイムで働く人の約6割です。ヨーロッパ諸国やアメリカでは7,8割となっており、9割近い国があることも含めると、格差があるといえます。
⇒働き方改革における管理職の役割について詳しく知りたい方はこちら
課題③高齢者の就労
内閣府が調査した令和2年版高齢社会白書/内閣府によると、「男性は60代後半でも過半数が働いている。」としており、同時に「約4割が働けるうちはいつまでも働きたい」という結果になりました。
一方で「希望者が65歳以上でも働ける企業は7割」という結果にもなっており、非正規の格差改善、また女性の働き方の制限をなくしていくことを踏まえると、現在労働市場から撤退した高齢者の労働参画も重要になっています。
⇒働き方改革の問題点について詳しく知りたい方はこちら
なぜ働き方改革を推進するべきなのか
企業が働き方改革を推進する理由は「法律が改正されたから」だけではありません。
企業が働き方改革を推進するべき具体的理由を紹介します。
人手不足倒産の対策
先述した通り、日本では今労働人口が減少しています。
労働人口の減少によって起こる「人手不足による企業の倒産」も今後深刻化していくといえるでしょう。
働き方改革を積極的に取り入れ、労働者が働きやすい環境づくりを進めていく必要があります。
労働生産性向上
現在の働き方を見直し、労働生産性を高めていくことが重要です。
業務ごとの適切なツールやシステムを導入し、効率的に業務を進めていけば、従業員の負担や労働時間の削減にもつながります。
コロナによって起きた働き方改革
皆さんもご存じの通り、新型コロナウイルスの世界的な万円により、私たちの働き方のみならず、経済全体で大きな変化を迫られています。
では次世代の働き方改革とは何でしょうか。現時点んで正解はありません。ですが日本の長期的な政策にヒントがあるかもしれません。
変化①テレワーク
多くのビジネス街やオフィスが閉鎖され、テレワークを行う企業が急激に増加しました。テレワークとは、勤務先に出社せず、パソコン等のIT機器を活用して仕事を行うことです。
感染を防ぐためやむを得ない処置とは言え、労働環境の変化に戸惑う声も上がっているようです。
⇒働き方改革とテレワークについて詳しく知りたい方はこちら
変化②労働生産性の向上
上記のテレワークに付随する問題なのですが、テレワークにより自宅で仕事ができるため電車に乗ったり無駄な時間が減った一方で、労働環境の急激な変化で個人の労働生産性が問題になりました。
「自宅では集中できない」、「オンとオフの切り替えがうまくできない」等の声もあり、まだまだ試行錯誤の段階だといえるでしょう。
働き方改革で押さえておくべきポイント
「働き方改革」は行ってすぐに効果が発揮されるものではありません。社会情勢や景気、企業の状態などもあります。ですので現実に即した形に日々変化・改訂されていくべきものなのです。
「働き方改革」の推進にあたって、押さえておくべきポイントは以下の通りです。
ポイント:「ガイドライン」の随時確認
「働き方改革」を推進する企業は、現在目の前にある企業課題に対応するだけでなく、数年先を見据え、中長期的に計画を立てておく必要があります。厚生労働省が「働き方改革」について各種ガイドラインを設けていますので、これらに従い抜けや漏れがないよう随時確認していくとよいでしょう。
ポイント:働き方改革促進のための「補助制度」や「労務管理システムの活用」
「働き方改革」の促進には時間も労力も必要です。あまりコストのかけられない中小企業は、地方自治団体が助成金を支給していることもあります。
助成金の支給に条件がある場合もあります。労働時間等の改善を含めた「改善計画」を作成し、計画に基づいた効率的な実施などが条件になります。「働き方改革推進支援助成金」や「業務改善助成金」、「キャリアアップ助成金」の活用も選択肢になるでしょう。
また、効率的に業務を進めるために、「労務管理システム」を活用して従業員の労働状況の管理することも可能です。ただし、システムの導入には時間的・金銭的なコストがかかります。導入する際には、状況にマッチするシステムを検討しましょう。
働き方改革を実行しなければどうなるか
働き方改革は「限度基準告示」から「罰則付き」に引き上げられ、時間外労働の上限規制を守らなかった場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金となりました。
働き方改革は法律改正以外にも取り組むべき理由やメリットがあります。
企業が働き方改革を間違いがないようしっかりと理解し、働き方改革を積極的に取り入れていきましょう。
⇒働き方改革関連法について詳しく知りたい方はこちら
人事システム導入で働き方改革を推進しよう
「働き方改革」はうまく進めることができれば、企業のイメージや生産性の向上だけでなく、従業員のエンゲージメント向上で離職率が下がり、更なる効果を生むかもしれません。「働き方改革推進していくためにも、法改正のこまめなチェックはもちろんのこと、注意すべき問題点や押さえたいポイントをいま一度チェックしたうえで、実行に移しましょう。
また、効率化を行うにはシステムの導入がおすすめです。人事の工数削減を行うため、スキルナビを導入した企業は、140日分削減できたという事例もあります。